暇人に見て欲しいBLOG

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『小生物語』を読んで

2006年11月06日 23時39分49秒 | 感想文
 いったい何度目になるのか忘れたが『小生物語』を読了した。『小生物語』というのはつまり、乙一先生の嘘日記集のことである。乙一先生がその大半を“小生”という一人称で綴ったホラ話ばかりの日記である。
 毎回言うが、これが実におもしろい。くだらなすぎておもしろい。こんなくだらないことをかなり真剣に書いている乙一先生のまっすぐな(でも内容はかなり歪(ゆが)んでいる)姿勢が素晴らしい。嘘だとわかりきっているのに物語(日記)の世界に入り込んでしまうのである。とてつもなくおもしろいファンタジー小説のようなものだ。
 嘘を書く技術というのは重要だと、ぼくは思う。なぜならそもそも小説イコール嘘だからである(ノンフィクション小説を除く)。現実には起こっていないことをあたかも起こっているように書く。それはつまり、嘘を書くということなのだ。つまり作家というのはたいてい嘘吐きなんである。
 世の中には嘘をつくのが上手なホラ吹き小僧なる人物が多数いらっしゃるが、そういう人に限ってまじめに働いたりする。決して作家などにはならない。
 なぜだろうか。
 それは、ぼくが思うに、「嘘をつく」ということと「嘘を書く」ということが、別の次元の話だからであろう。
 嘘吐きはぺらぺらと思いついた嘘をかたっぱしからしゃべってしまう。しゃべらない、という能力に欠けているのだ。よって、嘘は薄っぺらいその場限りのものとなってしまい、小説のように長くまとめることは不可能なのである。
 嘘を書く技術とはつまり、思いついた嘘をすぐにはしゃべらず頭の中でどんどん膨らませる技術なのだ。ようするに妄想力なのである。いかに頭の中に現実とは乖離した嘘世界を構築できるか。それが作家に重要な能力・技術なのだ。妄想力をうまく使いこなせば長い物語(=小説)に昇華させることが可能である。
 ゆえに、作家を目指すならまず妄想力を鍛えるべきなんである。
 妄想作家として有名な乙一先生などはすごい生き方をしている。なんと、持ってもいないゲームを攻略本を読んで想像(妄想)して頭の中でプレイする、という遊びを毎日延々とおこなっていたのだそうだ。そんな貧乏ひきこもり人間の鑑みたいな所業を、小学生の頃からつづけていたというからすごい。恐れ入る。
 作家になる技術とは、ときにノープライスで手に入るのであった。
 ぼくも見習いたいと思う。



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