暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

ショートショート「誤解に因る矛盾」

2006年04月21日 08時12分25秒 | 小説系

 この世界は、誤解と――それに因る矛盾に、満ちている。

 たとえば。
 ここに、少女がひとり、いる。

「わたしはお肉が好きです」

 好きなたべものは何ですか? という質問に対しての、それが少女の答えだった。
 質問をしたのは、彼女の目の前にいる少年だ。
 彼は、少女の答えに頷いて、言う。

「じゃあ、今度、ぼくと一緒に焼肉屋さんに行きましょう」

 その言葉に、少女は一瞬、怪訝な顔をする。
 そして、こんなことを言うのだ。

「焼肉屋さん……ですか? わたし、行ったことないんですけど、本当にそんなところがあるんですか?」

 少年は不審に思った。
 お肉が好きなのに、焼肉屋に行ったことがなく、それどころかその存在自体、知らないのである。
 これは矛盾ではないのだろうか。
 そんな疑問を表情には出さずに、少年は言った。

「ありますよ。知らないんですか? ほら、生の肉をその場で焼いて食べる、アレですよ。もしかして、家でしかそういうの、食べないんですか?」

 少女は少しのあいだ、無表情になり、小さな声で、言った。

「あの……。わたし、生でしか食べたことないんですけど……」

 おもわず、少年は眉を吊り上げる。驚きのあらわれだ。
 しばしの絶句のあと、彼は言った。

「へえ。見た目によらず、ワイルドなんですね……。
 ――生で食べるって、何のお肉なんですか? やっぱり牛肉かな」

 彼が本当に絶句するのは、このあとだった。
 少女は、妖しげな、ぞくりとする微笑で、こう言った。

「いいえ。――人肉よ」

「……………………」


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