暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

6年前に書いたショートショート、書き直してみた。その2

2012年07月02日 19時02分39秒 | 小説系
ショートショート
【山川】

原作:加辻後 石矢
加筆・修正:無酩

(1のつづき)

   2

 じゃんけんというゲームには必勝法がある。
 その方法をもし二人ともが知っていたとしたら、いったいどちらが勝つのだろう?
 その答えがここで出る。
 ……海パン二人の熱いじゃんけん勝負は、弟に軍配が上がった。
 しょっぱな。最初の手から、弟は必勝法の逆をあえて突いてきたのである。
 一世一代の大勝負でそんなひねくれたことができる。それが彼の長所であり致命的な欠点でもあるのだが、今回ばかりは功を奏したと言うほかない。
 初手で負けた――完敗である。私は彼の自殺の手伝いをするハメになったが、いっそすがすがしい思いであった。
 自分が水中にもぐるので上から押さえつけてくれ、と弟は言った。私はうなずいた。
 そうしているあいだにも時間は過ぎていき目撃される危険性が高まっていった。
 兄貴、サンキュー。そう言って弟は川にもぐった。私は彼の体を押さえつけようと腕をのばしかけた。
 そのとき気づいた。
 これは自殺の手伝いという以前に殺人ではないのか……
 私は恐ろしくなって伸ばしかけていた腕を戻した。
 別に、これから死ぬのだから弟を殺したところでどうとも思わない。しかし万が一殺人行為の途中で誰かに見つかって通報されたら自殺できないのである。私はその可能性に恐怖したのだ。
 沈んだままの弟を見て思った。
 これはもしかしてどちらかが死んでもう一人が生きた状態で発見された場合、否応なく殺人犯扱いされてしまうのではないか。私も弟も自殺するようなそぶりを見せたことがなく遺書も用意していなかったので、他殺扱いされてもおかしくなかった。
 つまりこれは先に死んだほうが有利なのだ。先に死ねば天国で、あとに残されたほうは殺人犯として地獄を味わうという寸法である。天国か地獄か。これは究極の争いなのだ。
 なかなか手伝ってくれない私に不審を感じた弟が水中から顔をだし、立ち上がった。
 視線が合う。
 その一瞬ですべてを悟ったのか、弟は目の色を変えた。

(3へつづく)


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