暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

連作ショートショート「野良――ノラ――」

2005年09月15日 13時05分10秒 | 小説系
その1【ケジメ】

「俺は……病んでいる」
「勝手に言ってろ」
 ――誰も私を認めない。
「お前も見ただろ、心理テストの結果」
「あんなもんアテになるか」
 ――誰も私を信じない。
「採用試験で使われるものだぞ」
「それでも自分の意志でヤバイ答え選べるじゃないか」
 ――誰もが私の心を偽りとする。
「そんなことしてないさ」
「信じられない」
 ――誰もが本物の私を見ようとしない。
「ま、そう思うならそれでいいさ」
「………………」
 ――何を言っても無駄だ。
 世の中はいつだってそうだ。
 無個性の偽善者を肯定し、個性的な異常者を否定する。
 誰も私のような病んだ人間を受け入れようとしない。認めようとしない。信じようとしない。
 だから、私は一般社会の中では生きていけない。
 つまはじきにする世界の中で、生きていくことはできない。
 私は私を受け入れてくれる、認めてくれる、信じてくれる、およそ一般的でない世界で生きていくしかない。
 人はなぜ普通でないものを拒むのか。
 人はなぜ自分たちと違うものを排除するのか。
 人はなぜ無個性の集団の中に埋没したがるのか。
 人はなぜ普通でいたいと思うのか。他人に合わせようとするのか。
 私には分からない。なにも分からない。理解できない。
 そして――分かりたいとは思わない。
 差別をするな、と言いたいわけじゃない。
 つまはじきにするな、と言いたいわけじゃない。
 あんたたちが避けるのなら、私は喜んで去ってやる。
 あんたたちが不快に思うのなら、目の前から消えてやる。
 自棄(やけ)ではない。
 馴染めない社会にいたって疲れるだけだ。つまらないゲームをやっているのと同じ。まるで意味がない。
 だから、出ていく。離れる。去る。
 それだけだ。
 未練なんてなかった。これっぽっちもなかった。
 ただ、なんとなく義務があったのだ。
 普通であることを良しとする社会の中で、ごく一般的な家庭に生まれ、育った。だから自分も普通でなくてはならない、と昔は思っていた。
 しかしそれは自己欺瞞でしかなくて。自分に嘘をついているだけで。ただ面倒なだけで。
 だから、私は自分に正直に生きることにした。
 たとえ普通じゃないと罵られようと、我を貫くことに決めた。
 そして私は世界につまはじきにされるようになった。
 自分で決めたことだから、構わない。どうだっていい。諦めではなく、それは達観だった。
 そうして今日、私はこの世界と決別する。
 明日から私は――自由だ。
 

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1 コメント

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注意 (作者)
2005-09-15 13:09:00
この作品は連作の第一作である。

また、18歳最後に書いた作品でもある。

次回からは19歳の私がお送りする。
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