ぼくは見た。
全身を黒の衣でかためた、黒ずくめの少年を。
表情の全くない、無表情。
吸い込まれそうなほど黒い黒瞳。
黒々とした黒光りのする黒髪。
無地の黒いTシャツに少し色褪せた紫がかった黒のチノパン。
黒い靴。
そして、全身を取り巻く黒いオーラ……。
いや、ただ黒いだけじゃない。
露出された肌は、ぞっとするほどに、白い……。
しかし、それは一瞬だった。
彼の黒く昏い雰囲気は、一瞬にして霧散した。
次の瞬間、彼は彼でなくなった。
そう感じられるほどに、彼の存在感の質が急速に変化したのだ。
今は、柔和な、本当の意味で穏やかな雰囲気を醸し出している。
あれほどまでにきつく異彩を放っていたのに、今はただの少年にしか見えない。人の良さそうな好青年だ。
ぼくは、その変化に戦慄をおぼえた。
夢でも見ていたのではないかとさえ、思った。
なんなんだ……あの少年は。
ぼくは頭を混乱させた。
ふと気がつくと、彼は消えていた。
日常の風景に溶け込んだのだろう、すうっと消えるように、少年は姿を消していた。
買い物帰りだったぼくは家に帰った。
食事の時間、彼のことを母親に話そうと思い、記憶をたどってみた。
思い出した彼の顔はのっぺらぼうだった。
ただ黒いという印象だけで、顔は覚えていなかったのだ……。
ぼくは結局、誰にもこの話をしなかった。
全身を黒の衣でかためた、黒ずくめの少年を。
表情の全くない、無表情。
吸い込まれそうなほど黒い黒瞳。
黒々とした黒光りのする黒髪。
無地の黒いTシャツに少し色褪せた紫がかった黒のチノパン。
黒い靴。
そして、全身を取り巻く黒いオーラ……。
いや、ただ黒いだけじゃない。
露出された肌は、ぞっとするほどに、白い……。
しかし、それは一瞬だった。
彼の黒く昏い雰囲気は、一瞬にして霧散した。
次の瞬間、彼は彼でなくなった。
そう感じられるほどに、彼の存在感の質が急速に変化したのだ。
今は、柔和な、本当の意味で穏やかな雰囲気を醸し出している。
あれほどまでにきつく異彩を放っていたのに、今はただの少年にしか見えない。人の良さそうな好青年だ。
ぼくは、その変化に戦慄をおぼえた。
夢でも見ていたのではないかとさえ、思った。
なんなんだ……あの少年は。
ぼくは頭を混乱させた。
ふと気がつくと、彼は消えていた。
日常の風景に溶け込んだのだろう、すうっと消えるように、少年は姿を消していた。
買い物帰りだったぼくは家に帰った。
食事の時間、彼のことを母親に話そうと思い、記憶をたどってみた。
思い出した彼の顔はのっぺらぼうだった。
ただ黒いという印象だけで、顔は覚えていなかったのだ……。
ぼくは結局、誰にもこの話をしなかった。
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