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小説『ハンティング・タイム』

2024年01月14日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

本書を開いて、うわっ、と思った。
近頃では珍しい二段組み
その上、377ページもある。
ちょっとおぞけたが、
すいすい読み進めて、読了した。

著者のジェフリー・ディーヴァーは、
デンゼル・ワシントン主演で映画化もされた
大ベストセラー「ボーン・コレクター」で知られる人気作家。

その作家の人気シリーズ、
“懸賞金ハンター”コルター・ショウものの第4作目。

優秀なエンジニア、
アリソン・パーカーが娘とともに姿を消した。
家庭内暴力で、
アリソンに怪我をさせて投獄されていた
元夫ジョン・メリットが
わずか10カ月で予定より早く出所、
自分を告発したアリソンを殺すと
所内で言っていたという。
アリソンの雇い主である
小型原子炉開発ベンチャー企業の社長から
ジョンより早く彼女を発見し、救ってほしい
という依頼を受けたコルター・ショウは、
様々な情報を頼りにアリソン母子の行方を探る
一方、元刑事であるジョンは、
そのスキルを駆使してアリソンを追い
また、ジョンと関係の深い犯罪組織からも
二人組の殺し屋が送り込まれ、
アリソンを殺すために追跡している。
三つ巴の追跡作戦の中、
アリソンも危険を感じて、
居場所を転々としていた・・・

私は「面白い小説の3パターン」という独自の見解を持っているが、
その一つは「サクセスストーリー」、
次に「復讐物語」、
最後の一つが「追う者、追われる者」
まさに、本作がその3番目に当たり、
命の危険を感じた母子を
3組のプロ追跡者が後を追う。

面白くなる要素も満載で、
まず、アリソンが超小型原子炉の部品を製造する
優秀なエンジニアである点。
この発明部品を巡る争奪戦も、背景としてある。
頭がいいので、追跡者の心理を読み、
それをあざむく逃亡計画を選択する。
その娘のハンナが反抗期のティーン・エイジャーで、
母親への反抗が
二人の命を危うくすることもある。
父親であり、元夫でもあるジョンは優秀な警官だったが
飲酒と薬物の問題で人格が変わってしまった。
しかし、捜査能力は抜群で、
妻の逃亡経路を推理で割り出す。
コルターは、
父親ゆずりの「べからず」集に縛られており、
また、何でもパーセンテージで状況判断して、ことに当たる。
サバイバル技術を駆使して立ち向かう姿は爽快だ。
ハンナとの間に新たな絆が生まれる。

協力して捜査するソーニャ・ニルソンは、
美人で、実は謎の過去を持っている。
途中、コルターとソーニャと間で、
若干の恋模様もある。
二人の殺し屋は、
一人がスーツ、一人がジャケットで、
凸凹コンビのような間抜けぶりを発揮する。

ディーヴァーは読者をミスリードしてあざむき、
驚かせるのが得意で、
ある描写で章が終わると、
えっ、そんなことに・・・
と思わせて、次の章で逆転する、
という手法に読者は何度も翻弄される。
(ある人が数えたら、
 どんでん返しの数は21あるという。)
特に、最後の65ページ当たりで明らかにされる新事実は、
お話の構造そのものを反転させる驚愕の事実だ。
そして、あぶり出される、真の黒幕の姿・・・

コルターが市警の刑事から
懸賞金ハンターについて、
「そういう仕事が好きなら、
警察に入ればいいのに、
なぜそうしないんです?」
と訊かれ、
規則やディスクに縛りつけられたくないからだ、
と心の中で答えながら、
口では「旅行が好きなので」と答えるあたり、なかなかいい。

コルターがソーニャの緑色の目を
生まれつきか、コンタクトかとずっと気にかけていて、
最後に太陽の光で、
コンタクトレンズではない、と確信するところも、いい。

このシリーズ、近くテレビドラマ化されるらしい。
日本でも観れたらいいのだが。

 



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