[映画紹介]
テキサス出身の大学生のナタリーは、
男友達のゲイブと、成り行きで一夜を共にする。
数カ月後の卒業パーティーの夜、
体調不調を感じたナタリーは、
トイレで妊娠検査薬を試してみると、
結果は陰性。
よかった、これで予定どおり、
親友のカーラと共に、
ロサンゼルスに行くことが出来る。
と、再び同じトイレの場面が。
今度の検査結果は陽性。
困った。
ロサンゼルスには行けない。
地元に留まって、子供を生まなければならない。
というわけで、妊娠を境に、
二つの人生に分岐した姿が並行して描かれる。
並行というより、交互に。
「妊娠しなかったパート」では、
ロサンゼルスでアニメスタジオに潜り込むが、
そこで知り合ったジェイクと恋に落ちる。
しかし、ジェイクはドキュメンタリーを撮るために遠くに行き、
その間の行き違いで破局に。
その上、アニメスタジオからは「オリジナリティーがない」と解雇。
行き詰まったナタリーは自力で短編アニメに挑戦するが・・・
「妊娠したパート」では、
実家に帰り、地元で子供を生んだナタリーは、
育児に専念するが、
ゲイブとの結婚もかなわず、
行き詰まった結果、
再びイラストに手を染めるが・・・
分岐した2つの人生が同時並行で描かれていく中で、
人生において本当に重要なものは何なのか、
が判明して来る。
(と言うほどごたいそうなものではないが)
また、LGBTなど、現代を切り取る問題も描かれる。
「千と千尋の神隠し」の話も出て来る。
卓抜した着想に見えるが、
実はこのアイデアは、先行作品がある。
「スライディング・ドア」(1997)では、
地下鉄に乗れた場合と乗れなかった場合で
その後の人生が分岐していく様が描かれている。
今作で、人生の分岐となるのは「女性の妊娠」。
元々ナタリーは「5カ年計画」や
「計画なくして成功なし」という名言をモットーの
人生を計画的に生きようとするタイプ。
しかし、その計画が、妊娠という事実で崩れた時、どうなるか。
やはり女性にとって、妊娠は、
人生の計画変更を余儀なくされる一大事件だと分かる。
とりわけ「キャリア形成」という観点で見た時、
女性にとって「妊娠」は、大きな障害だ。
長期にわたってキャリアから離れなくてはならず、
戻れるかも分からず、
自分が社会から取り残されていくかのような孤独感を抱くことにもなる。
従って、「妊娠したパート」の方が重要だが、
「妊娠しなかったパート」の方も、特に目立ったことは起こらない。
二つの人生を描いて、特に混乱しないのは、
片方には子供がいる、
片方にはいない、
ということで、視覚化されているからだろう。
そして、二つのパートの登場人物が、
意外なところで交差したりするのも妙味。
そして、終盤、あるイベントで2つのパートが交差し、
二人は、人生の岐路となったある場所へ。
2つのパートのナタリーが同一の画面で登場し、
ある感慨を語る。
「計画」が全てではない。
大切なのは「計画」に変更が起こった時、
どう柔軟に対応できるかどうかだということ。
「二人」が過去の自分にかける「大丈夫」という言葉は、
「計画」に固執する過去の自分を励まし、
その呪縛から解放する言葉でもあるのだろう。
まあ、全体的には、軽いノリで観る作品。
製作を兼ねたリリ・ラインハートが主演。
監督はワヌリ・カヒウ。
Netflix で、8月17日から配信。
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