空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

映画『奪された七人の花嫁』

2022年08月22日 23時00分00秒 | 映画関係

[旧作を観る]

「ジプシー」と一緒にツタヤDISCASで借りたのが、この作品。
何を隠そう、隠しません。
この映画、私が生まれて初めて観たミュージカル映画なのです。
(その後、リバイバル公開で大人になってからも観ている。)

私は東京に出るまで、
私のベルファスト、伊豆にいた。
駿豆線(すんずせん)の南の方のとある駅前で生まれ育った。
当時、三島には映画館が5つほどあり、
既に映画少年だった私は、
お金を握りしめて、一人で電車に乗り、よく三島へ。
主に、東映の映画館で3本立ての「三日月童子」だの「七つの誓い」だったが、
何をどう間違えたのか、
駅前の映画館で観たのが
「略奪された七人の花嫁」と「第三の男」の二本立て。
伊豆にいたのは小学校4年までだったから、
おそらく小学3年くらい。
さすがに「第三の男」は小学生には難しかったが、
「略奪された七人の花嫁」は子供でも楽しめた。
なお、この映画館では、
「わんわん物語」も観ているが、
その時の併映が石原裕次郎の「鷲と鷹」。
どういう組み合わせだったんだろう。

「略奪された七人の花嫁」は、
1954年7月22日全米公開のアメリカ映画。
舞台の映画化ではなく、映画オリジナルのミュージカル作品
日本公開は同年の10月3日。
原作はピューリッツァー賞作家スティーヴン・ヴィンセント・ベネットの
短編小説「The Sobbin’Women」(泣く女たち)。

まず、しょっぱなに「シネマスコープ」と出る。

映画館がテレビの攻勢に対応し、
大型化していた時代の産物。
1953年に最初の作品「聖衣」が公開されたばかり。

主演はジェーン・パウエルハワード・キール

後に「ウエストサイド物語」でリフを演ずるラス・タンブリンの名も。

作詞はジョニー・マーサー
作曲はジーン・デ・ポール


名曲ばかり。

振付は大振付師のマイケル・キッド

監督はスタンリー・ドネン

1850年のオレゴン。
山奥で農場を営むアダムが町を訪れて嫁捜しをする。

絵に描いたような美男子のハワード・キール。
歌もバリトンの美声。

食堂のミリーに一目惚れし、その日のうちに結婚。

農場に連れ帰るが、
行ってびっくり。

アダムの家族は男ばかり6人で、
ぞろぞろ出て来る荒くれ男たち。


アダムは「言うのを忘れた」ととぼけるが、
言ったら来てもらえないだろうから、
だまし討ちに近い。
名前がアダム、ベンジャミン、カレブ、ダニエル・・・と、
ABC順なのが笑える。


弟たちも町に嫁捜しに出かけるが、
すぐに暴力沙汰に。
ミリーにマナーと
女性に付き合うエチケットを教育されて、町を再訪。

それぞれ惚れた町娘をみつける。

この映画で一番有名なダンスシーン「納屋作り」

町の男と娘たちを取り合って踊る。

シネマスコープの横長の画面を生かした
ダイナミックなダンス。

この場面を娘に観せたら、
「ウエストサイド物語」と「メリー・ポピンズ」を思い出したと。


なるほど「体育館のダンス」「屋根の上のダンス」に
影響したかもしれない。

山に帰った男たちは、
町の娘のことが忘れられない。

ここで歌うのが、「淋しい山猫」


オノやノコギリを使ってのダンスナンバー。

公開時の字幕は「淋しい山猫」だが、
このDVD では、「スカンク」。


スカンク?
英語歌詞は「polcat」で、

日本語訳はスカンクでもいいが、
正しくは、ヨーロッパ・ケナガイタチ。
でも、イタチもなあ。
やはり、語感的には「淋しい山猫」が一番いい。

そこでアダムの提案。
「パルターク英雄伝」にある
古代ローマの「サビーニの略奪」の故事にならい、
娘たちを略奪しようと計画する。
(今でも東南アジアには、そういう風習がある)

町に行った弟たちは、
それぞれ意中の娘を拉致し、
北朝鮮へ、いや、山奥へ。

途中追ってきた町人の前で
意図的に雪崩を起こし、


春まで道は遮断される。

それを知ったミリーは激怒し、
娘たちを母屋に隔離、


弟たちは納屋暮らし。

しかし、ちょっとずつ接触するうち、
みんないい仲に。

雪が溶けて町人が取り返しにやってきた時は、
それぞれカップルが出来上がっており、
めでたく結婚に。

よく考えてみると、ひどい話だが、
まあ、ミュージカルだからね。

エンドマークの後は、
配役が出るだけで、
今のように延々とクレジットが流れることはない。

1997年に作られたメイキングを観ると、
次のような事実が明かされる。

○はじめ題名は原作と同じ「泣く女たち」だったが、
 映画の題名としてはふさわしくないので、
 「SEVEN BRIDES FOR SEVEN BROTHERS 」に。
 「略奪された七人の花嫁」は日本で付けたもの。
 いい邦題だ。
○振付のマイケル・キッドは舞台明けで断ったが、
 「振付しないでいい」とだまされて、担当した。
 しかし、やはり天才の仕事、「納屋作り」のダンスは評判に。
○実は兄弟のうち、踊っているのは5人。
 2人は俳優で、ダンサーではなかったのだ。
○シネマスコープ用とスタンダード用の2テイクが撮影された。
 当時はまだシネマスコープの大型スクリーンを設置している映画館が少なかったため。
 しかし、実際はスタンダード版が公開されることはなかった。
 (以前、シネマスコープ第一作「聖衣」もスタンダード版を撮影し、
  公開されたという話を聞いたことがある。)
○会社は同時制作の「プリガドーン」に力を入れていたので、
 予算は大幅に削られた。
 しかし、公開してみると、「プリガドーン」をしのぐヒットだった。

アカデミー賞は作品賞、脚色賞、撮影賞、編集賞にノミネート。
作曲賞(ミュージカル映画音楽賞)を受章。
アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。

1982年には舞台化バージョンがブロードウェイで上演された。
「納屋作り」のダンスシーンは舞台でも評判に。

今は、映画→舞台というのが盛んだが、そのはしりと言えるだろう。

生まれて初めてのミュージカル映画に、
こんな傑作が当たったのは、本当に運がいい。
その後の私の人生を決定づけたかもしれない。

なお、リバイバル公開の時は、70ミリ版だった。

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿