空飛ぶ自由人・2

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あゝ総選挙

2024年10月28日 23時00分00秒 | 政治関係

衆議院議員選挙が終わり、
自民、公明両党合わせて過半数を割り込んだ。
政権与党の大敗北である。

この結果の予兆として、
9月の自民党総裁選があった。
1回目の投票で過半数に達した候補者がいなかったため、
2回目の投票で石破茂氏が自民党総裁に就任し、
首相に選ばれた。

その後、わずかな時間で、
石破氏の変節が明らかになった。
総裁選の間、
就任してすぐには解散はせず、
国会での論戦をした上で、
信を問うと言っていたのに、
直ちに解散総選挙を行うと
路線変更をした。
自民党総裁選や新内閣発足の勢いを
衆院選にそのまま持ち込んだ方が有利だと、
森山幹事長、小泉選対委員長の説得に
石破氏が折れたためだと言われる。
首相就任から8日後の衆院解散、
26日後の投開票という
「戦後最短日程」での決戦。
「総裁選での石破人気があるうちに」
という目論みだったのだろうが、
それは第一の判断ミスだった。

そして、派閥パーティーのノルマ達成分以上の
金銭還元を受けて、
それを報告書に記載しなかったという
政治資金規正法違反事件を巡る
国民の怒りは、自民党内の処分では
到底収まるものではなかったのに、
それが分からなかった。
これが第二のミス
国民は、国会議員たちが
こんなに姑息な手段で金銭を取得していたことに、
なんと品性下劣な人たちだと、あきれ、嘆き、
これに鉄槌を打たなければならないと決心していたのだ。

自民党は政治資金問題があった前議員らを
非公認にする対応をとったものの、
その裏には、旧安部派の勢力を削ごうという
目論みのあったことを
賢い国民はちゃんと見抜いていた。
それにしても、10人を公認せず、
34人を比例区との重複立候補を認めない、
とすることで、
貴重な自分の党の議席をなくそうというのだから、
まともではない。
これが第三のミス

そして、極め付きは、
非公認候補が代表を務める党支部に
党本部が2000万円を支出したことが判明し、
非公認がまやかしであることが明らかになってしまった。
これが第四のミス

こうした数々の判断ミスを重ねた末が
自民党65議席減の191議席という結果だった。

そもそも、石破氏を総裁に選んだ時点で、
自民党支持者の中の
強固な保守層は、
石破自民党から心が離れていた。
その証拠に、史上3番目の低投票率で、
低投票率は組織票のある自民有利、
という定説が成り立たなかった。
それを見抜けなかったのも
判断ミスの一つだろう。

重大な判断ミスを重ねたのだ。
その責任は取らざるを得ない。
森山幹事長や小泉進次郎選挙対策委員長らの辞任に加え、
「首相の責任は重大で、続投は難しい」
という声が沸き起こるのを止めることは出来ないだろう。

いや、自分が最高指揮官で負けたのだから、
誰に言われるまでもなく、
自分から潔く辞任するのが筋だと思うが。
それとも、「史上最短の内閣」と言われたくないのか。

石破氏は選挙前の勝敗ライン
自公合わせて過半数確保、としていた。
それが達成されなかったのだから、
進退を問われるのは当たり前。
かじりつく方が筋が通らない。

選挙の結果は、
石破氏の「国民的人気」というものが、
マスコミが作り上げた虚構であったことが明らかになってしまった。
顔のことを言っては恐縮だが、
颯爽としたイケメンの小泉進次郎氏ならまだしも、
あんな陰気な顔で三白眼の人に
人気があると考える方がどうかしている。


総裁選の第2回投票で、
石破氏に投票した自民党議員たちも、
その架空の「石破人気」に乗ったのだ。
そのことは、総裁選後の本ブログで、
今回の総裁は、
国会議員が選んだものだ。
その選択の結果は、
議員たち自身が受け止めなければならない。
仮に落選したとしても、
それは自身の選択の結果だ。
と書いたとおりだ。

結局、石破氏は「党内野党」の人だったのだ。
自民党執行部への批判をしていただけの人物だ。
それがいざ責任ある立場に立った時、
その重さに愕然としたのではないか。
それは、2009年の総選挙で
政権交代を成し遂げた当時の民主党が
野党時代の主張をことごとく反故にしたのに似ている。

来年7月の参院選を考えると、
改選対象の自民党参議院議員たちは
内心おだやかではないだろう。
「石破では闘えない」
それが今回の衆議院議員選挙で明らかになってしまったのだから、
「石破降ろし」の声は起きるに違いない。
なにしろ、先の自民党総裁選が
「岸田では衆院選を闘えない」という
声の高まりで岸田氏が立候補を辞退したことで始まったのだから。

では、これから日本の政治はどうなるのか。
他の政党を組み込んでの連立の再編をするのか、
それとも、「少数与党」として、
他の党と政策ごとに協力する「部分連合」
政権運営を継続するのか、
あるいは、野党側が連合して、政権を奪取するのか、

1993年の衆院選では、
宮沢首相率いる自民が過半数割れし、
野党の新生党や日本新党が躍進し、
その後の連立協議で、
「非自民」勢力が
日本新党の細川護熙代表をかついで新内閣を樹立した。
自民党は下野したのだ。
その後、自民党と社会党とさきがけで
「自社さ連立政権」として自民党は政権に復帰した。

2009年の衆院選では、
民主党が過半数を制し、
政権交代が実現した。

日本維新の会、国民民主党が
今、連立に参加したら、
裏切り行為と見られる。
立憲民主党を中心とした野党連合は
事実上考えにくい。
まさか自民党と立憲民主党の「与野党大連立」などはあるまい。
それこそ、政権交代を標榜していた
立憲民主党が国民を裏切ることになる。

今後、日本の政治は揺れ動く。
衆院選後30日以内に特別国会が召集され、
首相指名選挙が行われる。(11月7日の公算大)
与党が過半数割れしたことで、
維新や国民を含めて与野党の駆け引きが活発化する。

混乱は続くが、
しかし、この選挙結果をよしとする人もいる。
長かった自民党独裁体制が終焉、
自民の政権が続いたとしても、
少数与党のために、
他党の意見を取り入れざるを得ないという形で
良い政策が進むのではないか、
国民民主党や日本維新の会の主張が受け入れられて
自民党の古い体質ではできなかったことが
改善されるというのだ。
たとえば、政治資金パーティーの禁止、
企業団体献金の禁止、
政策活動費の廃止など、
すぐにでも立法化できるものがある。
それだけでも日本の政治は変わる

そう期待したいが、
さて、どうなるか。


小説『照子と瑠衣』

2024年10月26日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

直木賞作家・井上荒野による
ともに70歳の女性2人の愛と友情を描いたシスターフッド小説

専業主婦の照子は横暴な夫に愛想をつかし、
シャンソン歌手の瑠衣は
老人マンションの陰湿な人間関係に嫌気が差し、
照子の運転するBMWで逃避行を果たす。
「まだまだこれから、なんだってできるわよ、あたしたち」。
到達したのは、長野のとある別荘地。
そこで一軒の別荘の鍵を破壊して無断で住居に。
照子は町内の喫茶店で占いを始め、
瑠衣はレストランで歌を歌い始める。
本物の別荘の持ち主が現れることを恐れつつ、
地元に定着していくが、
実は照子にはある目論みがあって・・・

親友同士の女性二人が
車で逃避行をする、
となれば、
往年の名作映画「テルマ&ルイーズ」を思い出すが、
主人公の名前が照子と瑠衣となれば、
この映画を意識したことは明らか。
作者によれば、
最初は「ワルナスビとワルボックリ」(植物の名前)という題名で、
「テルマ&ルイーズ」は後から出てきたものだという。
ただ、「テルマ&ルイーズ」のオマージュということは知らせたいと思って、
「照子と瑠衣」にした。

「テルマ&ルイーズ」・・・
1991年の映画。
「1990年代の女性版アメリカン・ニューシネマ」
と評されたロードムービー。
監督はリドリー・スコット。
ジーナ・デイビスがテルマ、スーザン・サランドンがルイーズを演じ、


キャリア初期のブラッド・ピットも脇役で出演し、注目された。


アカデミー賞では、監督賞、主演女優賞(サランドン/デイヴィス共に)、
撮影賞、編集賞、脚本賞の延べ6部門でノミネートされ、
脚本賞(カーリー・クーリ)がを受賞した。
スコット監督自身の監修により製作された4Kレストア版で
今年リバイバル公開された。

まあ、70歳の老女の話だし、
ここは日本なので、
映画のようなレイプや殺人事件や銀行強盗は起こらない。
犯罪と言えば、別荘の不法侵入くらい。
あとは、ごく平和的に話は進む。
ラストも映画のような結末にはならない。
ただ、主人公が70歳というのがミソで、
それまでの人生を捨てて、
新たな人生に歩み始めるのが現代的。
趣味が合ってるわけでもないし、
性格も違う2人なのに、
なぜかウマが合う。
中学時代の同級生で、
卒業以来初めてのクラス会で再会して親しくなった仲。

作者は言う。

「私、自分が老人に近づいてきたのもあると思うんだけど。
 老人だからっていろんな欲望が
 なくなるってことはないと思うんですよね。
 もちろんできなくなることが増えてくるんだけど、
 だからって心の中まで老人にふさわしくっていうか、
 みんなが思っている「老人」にふさわしく
 枯れていく必要はないんじゃないかって思っていて。
 死ぬ時まではやりたいようにしていきたいっていうのが
 あるんですよね」

作者は今、63歳。
なお、父は作家の井上光晴

 


映画『トラブル・バスター』

2024年10月25日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

大型家電量販店で働くコニー。
離婚した彼は、娘のジュリアと
隔週で会えることを楽しみにしている。


ある日、大型テレビを設置するために訪れた家が
殺人事件の現場となり、
そこに居合わせたコニーは、
殺人容疑で誤認逮捕されてしまう。
無能な弁護士だったため、
有罪判決を受け、無実の罪を着せられ、
刑務所に収監されたコニーは、
自ら真犯人を追い、
証拠を集めて無実を証明することを決心し、
刑務所から脱獄を決行。
殺された被害者が口にした、携帯電話を探すが、
うまくいかず、
他の犯罪者の脱獄の片棒を担ぐことになってしまう。
しかし、予期せぬトラブルに次々と見舞われ・・・。

という、典型的な巻き込まれ事件。
真犯人は意外なことから判明し、
後半は犯人との対決になるが、
犯罪ミステリーというよりは、
コメディの味付けが強い。
冤罪を晴らすストーリーだが、
重苦しい雰囲気は全くなく、
むしろ軽快なテンポで進む。
次々と襲って来る難題を解決して、
コニーが無実を証明するまでの過程は、
スリリングでありつつも、
コミカルな要素が随所にちりばめられている。

1988年公開のスウェーデン映画のリメイクだが、
ストーリーは現代風にアレンジされている。
家電マニアであるコニーの専門知識を生かして
犯人を追い詰めるところなど、現代風だ。
テンポも良く、展開も見事。
途中から相棒になる女警官との関係もイイ。

監督は、スウェーデン出身のジョン・ホルムバーグ
主人公・コニーを演ずるのは、フィリップ・バーグ


映画全体に、なんとも言えないユーモアが漂うのは、
この人の功績だ。

Netflix で10月3日から配信。

 


虎ノ門ヒルズ

2024年10月24日 23時00分00秒 | 名所めぐり

金刀比羅宮の後、ここへ。

虎ノ門ヒルズ

2013年に開業した森タワーを中心に
ビジネスタワー、
レジデンシャルタワー、
ステーションタワーの4棟から構成され、
2023年に全面開業。
管理運営は、ご存知、森ビル。

ステーションタワーから
森タワーへ向かう
桜田通り↓上を横断する


大規模歩行者デッキ「Tデッキ」が整備されている。

オーバル広場

虎ノ門ヒルズ森タワー


虎ノ門ヒルズ」の中核を担う。


地上52階・地下5階建てで、
高さは247m、東京都内の超高層ビルでは3番目に高い。

1- 4階は商業施設。
6- 35階はオフィスが入る。
37 -46階にはマンション。総戸数は172戸。
47階 -52階はホテル「アンダーズ東京」が入る。

マスコット「トラのもん」


100年後の22世紀のトーキョーからタイムマシンでやってきた
ネコ型ビジネスロボットという設定で、
姿はドラえもんそっくりだが
白黒のトラ縞(ビルディングをイメージ)、
また猫耳がある。

オフィスロビー

オフィスには、ここで入館証をかざす。


どんな会社が入っているのでしょうか。
どこかのビルから移ってきたのですが、
元のビルの空室は埋まったのでしょうか。

虎ノ門ヒルズビジネスタワー


地上36階、地下3階、
高さ185m 。
2020年6月に開業。


東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」と直結し、
1階にはバスターミナルが設置されている。

地下1階から地上3階には58店舗の商業施設が入る。
5- 36階はオフィス。

3階にある飲食店街、「虎ノ門横丁」

人気店26店舗が集まる。
行った時はまだ開店前だったので、

拝借した写真を。

虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー

地上54階、地下4階
高さ  221m 。
森ビルのタワーマンション。
住宅約550戸と低層部に商業施設が入る。
2022年1月に開業。

虎ノ門ヒルズステーションタワー


地上49階、地下4階
高さ266m 。


東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」と一体的に開発され、
商業施設、ホテル、フォーラムなどで構成される。

すごいですねえ。
駅まで作ってしまうとは。

増々発展する東京でした。

 


連作短編集『うたう』

2024年10月22日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

小野寺史宜(おのでら・ふみのり)による書下ろし連作短編集。

大学でバンドを組んでいた4人の男女の物語。

バンドの名前は「カニザノビー」
由来は、「かに座(星座)のB型(血液型)」。
絹枝の読んだ小説の主人公だが、
リーダーはじめ二人がかに座のB型だったことで採用された。

曲はオリジナル。
そこそこの実力で、
コンテストで準グランプリになったこともあったし、
ライブハウスに出まくり、
ファンも付いた。
しかし、コロナでライブハウスもスタジオも閉鎖され、
活動できなくなり、解散

4人のメンバー(GBDV)の
過去と現在と未来を追う。

Gは、ギター
伊勢航治郎は、
解散後、鳴かず飛ばずで、ギターへの情熱も失せる。
付き合っている女性に同棲を迫るが断られ、
アパートを追い出され、
ついにギターを売ることを決意し、
家具職人への道を選ぶ。

Bは、ベース
堀岡知哉はファンの女性と結婚し、
バー「インサイド」でアルバイトをしているが、
バーのオーナーから店を引き継いでくれるよう要請されている。
妻はそれでいいと承諾し、
ベースを売ろうとする堀岡に、
子どもが出来たら聞かせてやってくれ、と言う。

Dは、ドラムス
永田正道は家庭教師をしながら、
行政書士になるための勉強をしている。
それは、離婚した父が進もうとした道だった。
ドラムは売り、残ったのはスティックだけだった。

Vは、ボーカル
古井絹枝は、4人の中で唯一就活し、
書店に勤めている。
中学生時代、母が所属するコーラスグループに誘われて断り、
母を傷つけたのを悔やんでいる。
27歳。母が絹枝を生んだ歳に至り、
合唱団を作ることを思い立つ。
その歌詞を書くことで永田を誘う。

素人バンドの中でプロになれるのは一握り
それは役者でも作家でも同じ。
スポーツ界だって同じ。
好きなことを見つけ、
それでプロになれるのは、幸運な人で、
大多数は途中であきらめていく

そういう、どこにでもいるで若者たちを描いて、
いかにも小野寺史宜らしさが発揮される小説。
小野寺の作品は、「まち」「ひと」「ライフ」など、
「空飛ぶ自由人・1」で紹介している。
久しぶりに読んだが、
小野寺節は健在で嬉しかった。

登場人物が住んでいる町の情景が素晴らしい。

東京には、全国気各地から人々が集まっている、
映画は倍速再生が可能だが、
音楽は無理、
曲を倍速再生して楽しめるはずがない、
という記述は、なるほどと思わせた。

「わたしたちは、いいタイミングでやめたんだと思う。
 コロナのせいでもない。
 あれが限界」
という絹枝の論は正しい。
「夢は叶う」というが、
夢を叶えることが出来るのは、ほんの わずか
ほとんどが夢を叶えられずに、人生を終える
そのような生き方を歩いた4人を描いて、胸にせまる。

今でも高校や大学でバンド活動は盛んなのだろうか。