歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪序盤の布石と定石~坂田栄男『囲碁名言集』序盤編より≫

2021-10-03 16:38:10 | 囲碁の話
≪序盤の布石と定石~坂田栄男『囲碁名言集』序盤編より≫
(2021年10月3日投稿)

【はじめに】


 前回に引き続き、坂田栄男『囲碁名言集』(有紀書房、1988年[1992年版])の内容を紹介してみたい。 
 今回は、その序盤編の布石と定石に関したテーマを扱う。とりわけ、「星へのカカリに対する受け方の特質」、「小目は実質、目外しは勢力」、「星打ちの性質」、「両ガカリの常識」といった点に絞って紹介してみることにする。
 あわせて、橋本宇太郎『囲碁定石集』(山海堂、1994年[2007年新装版])を参照にして、定石に関した問題を出してみたので、興味のある方は解いてみてほしい。



【坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房はこちらから】

囲碁名言集




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・はじめに
・星へのカカリに対する受け方の特質
・小目は実質、目外しは勢力
・星打ちの性質
・両ガカリの常識:格言「両ガカリはハサミのないほうにツケよ」
・星の定石に関する問題~橋本宇太郎『囲碁定石集』より
・目外しの定石に関する問題~橋本宇太郎『囲碁定石集』より






星へのカカリに対する受け方の特質


「2 序盤編」に、「星にカカられて一間トビに受けるのは、次に攻めるのが目的。守るつもりなら大ゲイマまたは小ゲイマに受ける」というのがある。
この項目について、説明しておきたい。

明治時代の中頃までは、星は「置碁の置石を置くところ」とされ、互先での星打ちは、ほとんど見られなかったそうだ。(だから星の定石といえば、そのまま置碁定石だった)
それが近代になって星打ちの優秀さが認められ、白黒を問わず、互先の碁でも、どんどん打たれるようになった。
定石にも、現代碁の息吹きが吹きこまれて、だいぶ考え方が変化してきている。

【星への小ゲイマガカリに対する受け方】
≪棋譜≫(59頁の1図)
棋譜再生

・星へのカカリは、白1の小ゲイマが90パーセント以上を占める。
・これに対する黒の受け方は、次の三つがある。
 イ:一間トビ(14, 四)
 ロ:大ゲイマ(13, 三)
 ハ:小ゲイマ(14, 三)
※以前は、ロの大ゲイマに決まっていた。
 イの一間トビした例はきわめて少なく、ハの小ゲイマに至っては、打ってはならない禁じ手とさえされていたという。
※ところが、最近では一間トビがもっとも多く、次いでハの小ゲイマが愛用され、ロの大ゲイマはすっかり影が薄れてしまった。
⇒それだけ碁が積極的、攻撃的になったといわれる。

まず、イの一間トビの場合からみてみよう。
【小ゲイマガカリに一間トビで受けた場合】
≪棋譜≫(59頁の2図)
棋譜再生
・黒1の一間トビで受けた場合、これは「次に白を攻めよう」という受け方である。
※がんらい攻めを目的とすれば、それだけ守備がおろそかになるのは、やむを得ない。

・高姿勢の欠陥をついて、白からも2と、逆に攻めをねらってくる手がある。
⇒こうなると、一方はイ(18, 四)、他方はロ(14, 二)と、両側から白に走る手があって、不安な感じがする。
※この白2がいやなばかりに、黒1の一間トビを打たない人がいる。しかし、ここで萎縮してしまってはダメで、黒はあくまでも積極的な態度をつらぬき、攻勢に出なくてはいけない。

【続いてハサンで攻めよ】
≪棋譜≫(59頁の3図)
棋譜再生
・続いて黒は1、またはイ(9, 三)と、白をハサンで攻めるのが大切である。
※現在、白黒とも兵力はおなじ二つずつであるが、黒が強固な一間トビなのに対し、白は一個ずつ左右に分散している。
⇒それだけ黒が優位なのであり、その優位を活かすためには、攻撃が最上の策なのである。

【失敗:作戦が混乱して一貫性なし】
≪棋譜≫(60頁の4図)
棋譜再生
・スソあきの不安定をおそれるあまり、コスミツケを打つ人がいる。つまり、黒1、3そして5などと打つ。
※早く安心したい、隅を地にしたいという気持はわかるが、これでは首尾が一貫せず、作戦が早くも混乱している。というのは、攻めるつもりの一間トビを打ちながら、一転して守りについたからである。
・その結果は白2、4と立たせて白を固め、隅は地になったといっても、まだ白イ(15, 三)とノゾかれるアジが残る。
※あとをこんなふうに打つくらいなら、はじめから一間トビはやめたほうがいい。

【隅を守るなら大ゲイマに受けよ】
≪棋譜≫(60頁の5図)
棋譜再生
※攻めるなら攻めるように、守るなら守るように、態度を一貫させることが望ましい。
・隅を守ろうとすれば、黒1と大ゲイマに受ける。
・白2なら3とサガリ、4には黒5と、しっかり囲っておく。
(黒5では一路左の一間トビもある)
※黒5は、すぐ打つとは限らないが、打たなければ、白イ(15, 三)と打込む筋が残っており、守りは完全ではない。

【隅を守るなら小ゲイマでもよい】
≪棋譜≫(61頁の6図)

棋譜再生

・この黒1の小ゲイマも守りの手である。
・白2のとき、今度は3とトンで隅を確保する。

※上図の大ゲイマと小ゲイマを比べてみると、小ゲイマのほうが手間がかからず、しかもスマートに守れることがわかる。
ことに小ゲイマの場合、黒3が単なる守りではなく、次に黒イ(17, 八)のハサミを有力にしている。
⇒こうした判断から、大ゲイマが次第にすたれ、小ゲイマが用いられるようになってきたようだ。
※いずれにせよ、受けの本質を知り、それに合った運用を心がけなくてはならない。
(坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房、1988年[1992年版]、58頁~62頁)

小目は実質、目外しは勢力


「2 序盤編」に、「小目は実質的な着点。目外しは勢力的な着点。目外しからはすぐ辺にヒラけるが、小目からは、いっぺん位を高くしてからでないと、ヒラくわけにいかない」というのがある。
この項目について、説明しておきたい。

小目と目外しの対峙関係は、序盤ではもっとも多く現われるものである。

【1図:小目と目外し】
≪棋譜≫(62頁の1図)
棋譜再生
・黒が小目、白が目外し。
 小目の黒が白にカカったと見てもいいし、目外しの白に黒がカカったと見てもよろしい。
☆ともかく、この関係は一番多く現われるものだけに、それぞれの立場、特色といったものを、よくのみこんでおく必要がある。

【2図:小目は実質、目外しは勢力】
≪棋譜≫(62頁の2図)
棋譜再生
・まず黒(小目)のほうからいうと、いつでも実質を占めやすい、地をとりやすい、ということができる。
・黒1、3と打てば、隅はすっかり黒地になってしまう。地に関する限り、白からこれほど効果的な手段はない。
・白イ(17, 二)と走っても、黒1、3と打つほどには、効果的とはいえないだろう。
☆このように隅の地に関しては不利であるが、白(目外し)には、ほかに小目にない有利な面がある。
それは「勢力を張りやすい」ということである。

【3図:白のカケによる圧迫】
≪棋譜≫(63頁の3図)
棋譜再生
・白1とカケて圧迫し、黒2、白3、黒4までとなる。
※白1とカケれば、いつでもまず絶対にこうなる。
 この結果は、小目と目外しの性質をもっともよく現わしたものである。
 小目の実利、目外しの勢力を、はっきり示している。

さて、以上の知識を基礎にして、考え方をもう一歩進めてみよう。
こういうことがいえる。

【4図:白のヒラキ】
≪棋譜≫(63頁の4図)
棋譜再生
・目外しからは、白1と広くヒラくことができる。
 だが、小目からは、黒イ(17, 九)、黒ロ(17, 十)などとヒラくことはできない。
ところで、二立三析はヒラキの原則である。
二つ立った石からは三間にヒラけるが、一つの石からは二間にしかヒラけない。それが安全なヒラキの限界であるといわれる。

☆それなのに、なぜ白が1とひろく四間にヒラいていいのか。
⇒理由は3図につきている。
白からはいつでも3図の1、3と圧迫できる。
これは二立どころか、三立にも四立にも匹敵する勢力である。目には見えないけれど、白は強いカベを持っているに等しい。したがって、それを背景に、ひろくヒラいてもいい、ということになる。

※白としては、3図の1、3を決めてから、4図の1とヒラくことはできるが、決めないでおくほうおが、作戦の範囲がひろい。
場合によってはカケではなく、小目の黒をハサンで打つかもしれないから。
〇必要があるまで決めない、というのは高等戦術の一つ。

※黒のほうには、そういう厚みも勢力もないので、ジカに黒イ(17, 九)、黒ロ(17, 十)とはヒラけない。

【5図:もし黒がヒラいた場合】
≪棋譜≫(64頁の5図)
棋譜再生
・もし黒が1とヒラいたとする。
・すると白は得たりとばかり、2とカケてくる。
・黒3、5と定石通りに選んでも、白6となお押されると、黒7とツガねばならない。
※そして、この黒7のツギが、いかに働きに乏しいバカみたいな手か、わかる。
⇒かりに黒1の石がないとして、白2から7までは必然である。
 そのあと黒がここを打つのに、1などと打つはずはない。結果的にそういうバカな手を打たされているのは、最初の黒1が不当だったからである。
※黒1は棋理に反した悪手、白2はそれをトガめた好手、ということになる。

【6図:黒が辺にヒラくにはコスミ】
≪棋譜≫(64頁の6図)
棋譜再生
・だから黒が辺にヒラこうと思えば、まず1とコスミ、位をとる必要がある。
・白2と受ければ、そこで初めて3とヒラくことができる。
・白2で3のほうに打てば、黒はイ(14, 四)とカケて圧迫するか、ロ(12, 三)とハサんで攻めるとか、ハバのひろい作戦でのぞむことになり、碁が変ってくる。
(坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房、1988年[1992年版]、62頁~65頁)

星打ちの性質


「2 序盤編」に、「星打ちは速度において優るが、三々をねらわれる弱点があって地にアマい。星からもう一手打っても、隅は地にならない」というのがある。
この項目について、説明しておきたい。

星打ちの長所は、そのまま短所と表裏をなしている。
その最大の特色は、左右どちらにも位置が偏しない、ということで、第四線の交点にあり、必要に応じて好きなヒラキが打てることである。

【1図:星にヒラキ】
≪棋譜≫(74頁の1図)
棋譜再生
ヒラキで辺が打ちたければ黒1、右辺が打ちたければ黒イ(17, 十)。
※どちらを打っても、隅の星との関係は変らない。
 これは小目や目外しにはない星の優秀さである。
 小目などはひとまず隅をシマリ、それから辺に展開するのが原則である。それに対して、星はシマリを打つことなく、ただちにヒラキを打てる。

※もっともシマろうとしても、星には適当なシマリ方がない。
 黒イ(14, 四)の一間、黒ロ(17, 七)の大ゲイマ、黒ハ(17, 六)の小ゲイマ、どれを選んでも、それはシマリとはいわないようだ。
⇒星にはシマる手がなく、だからこそ、ただちに辺に展開できる、ともいえる。

【2図:大ゲイマにシマリを加えた形】
≪棋譜≫(74頁の2図)
棋譜再生
・黒1と打って、これを「シマリ」と思っている人が多いらしい。
(だとしたら、間違いだという)
※シマリとは、「戸締まりをする」の意味で、隅を締めきって地にするのがたてまえであるが、黒1と打っただけでは、その目的は果たされてはいない。
・黒イ(17, 四、つまり星の右)ともう一手かけて、はじめて隅は黒地となる。したがって、黒イがシマリなのであるという。

※黒1の手は、大ゲイマに「構えた」にすぎない。黒がイ(17, 四)とシマる瞬間までは、隅は黒地となるか、白地となるか、まだ条件は五分五分である。

【3図:白の三々入り】
≪棋譜≫(75頁の3図)
棋譜再生
・黒1と構えて、黒は隅に二手かけた。
・しかし白2と三々に入られると、大いばりで活きられてしまう。
・黒3とオサエて閉じこめても、白4から14までで、すぐに活きる。
⇒いや、活きるどころではない。七目もの白地ができる。
・しかも黒は15と備えねばならず、白の先手。15を省いて、白15と動き出されてはいけない。

このように、星打ちは二手打っても(つまり二手かけても)、隅は地にできない。
では3図の結果は黒がつまらないのかというと、そんなことはない。
白を活かしたけれど、周囲をがっちりととり囲んだ黒の形は、絶大な厚みとなっている。

碁は、ただ活きればいい、地を囲えばいいという単純なものではない。だから、白としても、いつ白2と三々にもぐりこむか、時機を選ぶ必要がある。
⇒あまり早いうちに入りこむと、黒に強大な厚みをつくられるし、ためらって黒にもう一手打たれると隅には手がつかなくなる。
そのへんのかねあいが腕の見せどころというわけである。

【4図:小ゲイマにコスミを加えた形】
≪棋譜≫(75頁の4図)
棋譜再生
・黒1と小ゲイマに構えたときは、シマるには黒イ(17, 五)とコスんで打つ。
※小ゲイマは堅い形だから、それに黒イ(17, 五)で黒ロ(17, 四、つまり星の右)とサガる堅い手を加えるのは、石の働きが重複し、凝り形の感じになる。
※黒イ(17, 五)と多少は欲ばって、これでも隅を荒らされるおそれはない。

【5図:小ゲイマに大ゲイマを加えた形】
≪棋譜≫(76頁の5図)
棋譜再生
・小ゲイマに黒1と大ゲイマを加えた形。
 こんな手を打つとき、「すこし欲ばってやれ」などという人がいるが、これはお笑いであると、坂田栄男氏はいう。
⇒なぜなら、黒1とひろげて当人は欲ばったつもりでも、これではまだ白2と三々に打込む余地があり、隅は守れていない。
※裏口をあけっぱなしで、いくらおもてを大きく構えてもつまらない。
¥欲張ったように見えて、実は黒1の大ゲイマは地にアマい、欲のない手なのである。
⇒ただし、この形、白2と入っても無条件には活きず、コウになる。

【6図:三々入りでコウに】
≪棋譜≫(76頁の6図)
棋譜再生
・黒1とオサエ、白は2とハッて6まで、黒7のアテに8とがんばって、コウになる。
※すこし逆説めいたいい方になるが、コウによって死活の危機に立たされたのは白であるが、このコウの負担は、黒のほうが重い。
⇒かりにコウに負けて殺されても、白はたいしてコタエない。
 というのは、この隅は黒が先に三手も打ち、それから白が入って行ったのだから、コウに負けてもともと、勝って活きれば儲けもの。
 だが、黒のほうは、さんざ元手をかけているだけに、おいそれとは負けられない。
 ことに、コウに負けて白イ(19, 五)と打ちぬかれると、黒の形はガタガタになってしまう。それだけ負担が重いことになる。
※こんな点まで考えて、前図の5図の黒1の大ゲイマは、まずい手、損な手とされる。
(坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房、1988年[1992年版]、73頁~77頁)

両ガカリの常識:格言「両ガカリはハサミのないほうにツケよ」


「2 序盤編」に、「星にカカってきた石をハサみ、両ガカリされたときは、ハサミのないほうにツケる」というのがある。
この項目について、説明しておきたい。

両ガカリというのは、星打ちだけにある定石群である。
左右にカカった石のどちらかにツケる型が一般的である。

【1図:白の両ガカリ】
≪棋譜≫(96頁の1図)
棋譜再生
・白1とカカられ、黒2とハサんだのは有力な作戦である。
・白としては、黒が普通に受ければ2、またはその二路下に迫って打つつもりで、そうなっても黒が悪いということはない。
〇黒2は相手の裏をかく意味でおもしろい。
⇒黒2とハサみ、それが同時に、右下の一間トビからのヒラキになっている点に注目したい。
※このように、一つの手がハサミとヒラキの二つをかねるのは、つねに有力である。
 というわけで、黒2は置碁と互先とを問わず、しばしば用いられる。
・とすると、白3と両ガカリされることが当然考えられる。

☆黒2のハサミを打つためには、かならず両ガカリの定石を心得ていなくてはならない。
 白3と両ガカリされ、さてどうするか?
⇒両ガカリに対しては、黒はイ(16, 六、つまり白1の左)かロ(14, 四、つまり白3の下)か、どちらかにツケて打つのが定石である。
 そして、どちらを選ぶか、その判断の基礎となるのは、どうすれば黒2のハサミを活かせるか、ということである。
黒は白1の石を攻めるつもりで、黒2とハサんだのだから、次の着手は、その意図を継承するものでなくてはならない。
黒はイ(16, 六)と黒ロ(14, 四)と、あなたはどちらにツケるのか?
黒2のハサミを活かすためには、それに近い黒イ(16, 六)のほうを選ぶとしたら、それは間違いである。

【2図:「ハサミのないほう」にツケよ】
≪棋譜≫(97頁の2図)
棋譜再生
・黒は1とこちらにツケるのが正しい打ち方。
・黒1と「ハサミのないほう」にツケ、白2に黒3、白4には黒5と運ぶ。
※こういうふうに石を盛りあげて、ハサんだ石をしぜんに孤立させ、大きく攻める形に導く。
 こうなれば、はじめのハサミが活きてくる。

【3図:両ガカリの基本定石】
≪棋譜≫(97頁の3図)
棋譜再生
・続いて白は1とコスみ、黒は2とコスミツケ、以下黒10までとなるのが、基本定石である。
※手順中、黒4、8、10の三つが大切な手。
 黒4は記憶すべき手筋であるし、黒8も、これでイ(13, 五)とマガってはならない。
 黒8とコスんで黒ロ(13, 三)の切りはねらい、白9とそれに備えたとき、黒10とサガって自身を安定する。
※こうなると、白は左右を打ったというものの、どちらも弱く、ことに白1以下の一団は、最初のハサミにおびやかされて、根拠を持っていない。
⇒したがって、白ハ(17, 十二)、ニ(16, 十三)などの強襲は決行することができず、黒の作戦は、ひとまず成功をおさめたといえる。
「ハサミのないほう」にツケたのが、この結果につながった。

【4図:石の方向の誤り~ハサンだほうの白にツケた場合】
≪棋譜≫(98頁の4図)
棋譜再生
・これを逆に黒1とハサンだほうの白にツケると、白は2、4から8までと、たちまちおさまってしまう。
※攻めるつもりでハサンだのに、そのハサミがすこしも効果を発揮しない。
⇒かえって黒のほうに白イ(16, 五、つまり白6の左)と突き出される欠陥が生じる。
また、白ロ(17, 十二)のきびしい打込みなども、今度は平気でやってこられる。
※石の方向を誤ると、まずい上にもまずくなるのが碁というものである。
 ハサンで両ガカリされたら、かならず「ハサミのないほう」にツケなくてはならない。

【5図:両ガカリで高くカカってくる場合】
≪棋譜≫(99頁の5図)
棋譜再生
☆ただし、両ガカリは小ゲイマばかりではなく、白2と高くカカってくる場合もある。
⇒この場合、ハサミのないほうにツケる原則からいえば、黒はイ(14, 五)とツケるわけだが、このほうは変化がやや複雑で、まぎれを招く危険があるようだ。
※いろいろ変化を調べて、白の出方にすべて対抗できればいいけれど、そうでないと、イ(14, 五)のツケはすすめられないという。

坂田栄男氏の指導碁の経験からいうと、この形では次図のように、黒1とツケる定石にしたがっていいそうだ。
【6図:両ガカリでの対応策の例外】
≪棋譜≫(99頁の6図)
棋譜再生
・白の両ガカリで高くカカってきた、この形では、黒1とツケる定石にしたがっていい。
・黒7までとなり、この7のハネが白の一子を殺しているので、ハサんだ白を活かしても十分という考え方である。
・それに活きたといっても、4図ほどには白も堅固ではなく、多少は黒から攻めるねらいも残っている。
(坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房、1988年[1992年版]、95頁~99頁)

星の定石に関する問題~橋本宇太郎『囲碁定石集』より


【問題70】<黒先活=三手>
≪棋譜≫(139頁の問題図)
棋譜再生
☆白1に黒イ(9, 三)とハサミ、白ロ(12, 五)、黒ハ(14, 六)は積極的な打ち方であるが、スミを取る打ち方もある。
 どうやるか?

【問題70の解答:黒のコスミツケとケイマ】
≪棋譜≫(140頁の解答図)
棋譜再生
・黒1とコスミツケ、白2に黒3とケイマして、大きく地にする打ち方もある。
(地だけなら簡単である)

【参考図:白のスベリへの対応】
≪棋譜≫(140頁の参考図)
棋譜再生
・黒のコスミツケに、白2と侵入して来たら、黒3とこちらの白石を制する。
(橋本宇太郎『囲碁定石集』山海堂、1994年[2007年新装版]、139頁~140頁)

目外しの定石に関する問題~橋本宇太郎『囲碁定石集』より


【問題181】<黒先活=五手>
≪棋譜≫(361頁の問題図)
棋譜再生
☆これよりモクハズシ定石である。
 白1の低いカカリには、上辺に黒模様を作るチャンスがある。
 どう打つか?

【問題181の解答:カケてノビてからヒラキ】
≪棋譜≫(362頁の解答図)
棋譜再生
・黒1とカケ、白2の受けに3とノビる。
・ここで白4の一間トビなら、黒5までと模様を拡げる。

【参考図:ヒラキを妨げる白の打ち方】
≪棋譜≫(362頁の参考図)
棋譜再生
・但し、白4、黒5とノビたとき、白6とヒラキを妨げる打ち方もある。
・黒は代りに7とオサエて、右辺が厚くなる。
(橋本宇太郎『囲碁定石集』山海堂、1994年[2007年新装版]、361頁~362頁)

【問題182】<黒先活=五手>
≪棋譜≫(363頁の問題図)
棋譜再生
・上辺の中央の星方面に黒石があるときは、模様を一層拡げることができるが、先ずどうやるか?

【問題182の解答】
≪棋譜≫(364頁の解答図)
棋譜再生
・黒1、3とオシ、白4のハネにも、5と盛り上げる。
※このように白をオシツケて壁を作るのが目外しの利点である。

【参考図:黒オシてもよい】
≪棋譜≫(364頁の参考図)
棋譜再生
・白4とノビれば、黒は5とオシてもよい。
・黒イ(15, 十)とハズすのもある。
(橋本宇太郎『囲碁定石集』山海堂、1994年[2007年新装版]、363頁~364頁)

【橋本宇太郎『囲碁定石集』山海堂はこちらから】

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