歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』を読んで≫

2022-06-28 19:55:33 | 私のブック・レポート
≪片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』を読んで≫
(2022年6月28日投稿)

【はじめに】


今回は、次の蕎麦についての本を紹介してみたい。
〇片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年

ソバの生産に少し関わってみようかと考えている。
その際に念頭に置いておかなくてはならないのは、うまい蕎麦とはどのような蕎麦なのかということ、そして、うまい蕎麦はどのようにつくられるのかということである。
今回、紹介する本は、いわば「食べる側」の本である。
著者の片山虎之介氏は、「あとがき」(193頁~196頁)にもあるように、もともと写真家で各地を旅するうちに、蕎麦に興味を持ち、おいしい蕎麦屋を食べ歩き、取材したという。その集大成が本書であるといえる。そのタイトルにもあるように、蕎麦屋に焦点が当てられている。だから、「生産者の側」の本ではない。

しかし、おいしい蕎麦とは何かを探究しているので、おのずと、ソバ畑にも関心が向いている。(事実、『仲佐』という蕎麦屋の主人は、ソバ畑で農作業にも汗をかき、蕎麦粉にこだわっている)。そして、著者は生産者の方々を取材して、ソバ栽培の難しさ、楽しさをも教わったと、「あとがき」で述懐している。
この本を読むと、おいしい蕎麦にもバリエーションがあり、地方の文化が反映されていることがわかる。私の地元である島根県にも郷土蕎麦の一つ「出雲蕎麦」があり、片山氏も言及している。その発展には、松江藩の第七代目藩主、松平不昧公の影響が大きい。
ソバのつくり方を教える本ではないが、生産者も大いに学ぶべきことが述べられている本である。
以下、私の関心に沿って、内容を紹介してみたい。





【片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新書)はこちらから】
片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新書)







片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年

【目次】
まえがき

第一章 「藪蕎麦」を知れば蕎麦がわかる
第二章 蕎麦屋の常識・非常識
第三章 蕎麦のうまさは、どこからくるのか
第四章 手打ち蕎麦と機械打ちの蕎麦
第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代
あとがき
参考文献
掲載店情報




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・意外に多い蕎麦の常識
・色の白い蕎麦と黒っぽい蕎麦
・蕎麦の味を決める要素
・在来種と改良品種のソバ
・手で刈るか、コンバインで刈るか
・ソバの栽培は、痩せた土地がよい?
・岐阜県下呂市の『仲佐』という蕎麦屋
・各地の郷土蕎麦
・どじょう蕎麦を味わう『ふなつ』






意外に多い蕎麦の常識


「意外に多い蕎麦の常識」(44頁~45頁)では、蕎麦にまつわる“常識”について検討している。

蕎麦には、守らなくてはいけない常識というものがあるといわれる。
たとえば、
「蕎麦はぐちゃぐちゃ噛んじゃいけない。ザッとのどごしで味わるものだ」といった類いのことである。
その他、
「蕎麦つゆを蕎麦湯で割って飲んだとき、甘さ、辛さのバランスが崩れず、鰹節や醤油の味が出しゃばってこないものが、よい蕎麦つゆだ」というのも、蕎麦つゆに関する常識のひとつとされる。

こうした常識は、蕎麦好きの先輩から蕎麦の初心者に、蘊蓄の一部として語られる。
懐石の作法のように厳格な決まりではないようだが、それが蕎麦屋の常識だと言われれば、やはり気になるが、「なぜ、そうなんですか」と尋ねたところで、教えてくれた先輩本人も理由を説明できなかったりするものらしい。

〇「ソバ」「そば」「蕎麦」の三種類の表記について、著者は次のように使い分けている。
・「ソバ」というカタカナの表記
 植物としてのソバを指す場合に使う。
 畑に栽培されているのはソバであり、畑に蒔くのはソバの実である。
・「蕎麦」という漢字の表記
 人間が食べる食品になると「蕎麦」という漢字表記に変わる。
 (「そば」とひらがなで書く場合もある)
⇒このように、基本的には植物の意味で使う場合は「ソバ」。食品の場合は「蕎麦」あるいは「そば」と表記するという。

※難しいのは、畑で育ったソバの実が、どの段階から食品としての「蕎麦」に変わるのかという判断である。
 収穫し、乾燥させるあたりまではソバだとしても、ソバの実の汚れをとる「磨き」をかけたら、これは食べることが目的の作業なのだから、その段階で「蕎麦」になる。
 ただ、磨きをかけた蕎麦であっても、翌年畑に蒔いて発芽しないわけではないので、ソバであるとも言えるらしい。
(もっとも、磨きをかけると発芽率は低下するようだが)

〇「生蕎麦」の読み方について
・この文字には、「なまそば」「きそば」という二通りの読み方がある。
・茹でる前の麺は生蕎麦と書いて「なまそば」と読む。
・つなぎを入れない十割蕎麦の場合も同じく生蕎麦と書くのだが、こちらは「きそば」と読む。
 小麦粉のつなぎを入れずに、純粋に蕎麦だけで打った麺という意味である。
(だから、茹でる前の十割蕎麦なら、生蕎麦(きそば)の生蕎麦(なまそば)ということになる)

・蕎麦屋の暖簾に書いてあるのは「きそば」のほうである。
(暖簾を見て、頭の中で「なまそば」と読んだとしても、口に出すときは「きそば」と発音すること)

蕎麦つゆにどっぷり浸してはいけないか


・東京では、蕎麦をつゆにどっぷり浸してはいけないと言われている。
(落語にもそんな噺が出てくるが、そうした影響も大きいとされる)
☆箸で持ち上げた蕎麦を、蕎麦つゆに全部浸すと、どういうことが起こるのか。
 最大の問題は、蕎麦の香りがわかりにくくなると、著者は考えている。
 蕎麦の表面が蕎麦つゆで覆われてしまい、蕎麦のほのかな香りや味を感じるのが難しくなる。
 だから、下のほうだけちょっとつけて、蕎麦つゆのついていない部分から立ちのぼる香りを楽しみつつ、つゆも味わうのがよい食べ方と言われている。
 ⇒このアドバイスは、蕎麦の香りが失われないようにするための知恵だと、著者は考えている。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、44頁~48頁)

色の白い蕎麦と黒っぽい蕎麦


〇東京の蕎麦は、細くて白い蕎麦である。
・蕎麦の色が白いということは、ソバの実の中心部の粉を主に使って蕎麦を作っているということである。
・米にたとえれば、精米した白米を食べるのに似ている。白い蕎麦は、つまり炊きたての白米のようなもの。甘くて軟らかくて、癖がない。毎日食べても飽きない食べ物。
⇒白いご飯を、おいしいおかずで味わうのと同じと考えると、東京の白い蕎麦と蕎麦のつゆが、どういう関係であるのかがわかってくる。

〇一方で、いわゆる田舎蕎麦などと呼ばれる、色の黒っぽい蕎麦を出す店もある。
・これは、ソバの実の外側の部分まで、しっかり挽き込んだ蕎麦粉を使った蕎麦である。
・蕎麦の香りは主に実の外側の部分にあるので、黒っぽい蕎麦は香りが強い。
・食感も白い蕎麦とは微妙に異なり、蕎麦独特の風味が強くなる。
・この黒っぽい蕎麦を米にたとえると、玄米ご飯に相当するようだ。
 よく噛むと味が濃厚でおいしいが、主張が強いために、何度も続けて食べると飽きるかもしれない。

※白い蕎麦と黒い蕎麦。どちらを好むかは、人それぞれである。
 同じ人でも、ときにはさっぱりした白い蕎麦をごまだれで食べたいときもあるだろうし、冷たくキリッと締まった風味の強い蕎麦を、ササッと手繰りたくなることもあろう。

〇東京では、つゆにどっぷり浸してはいけないと言われることが多いが、信州へ行くと、少し事情が変わってくる。
⇒信州の蕎麦つゆは、東京に比べると、薄いものが多いようだ。
 地元の人たちは、この薄めの蕎麦つゆに、やや太めの蕎麦をどっぷり浸して、ときには箸でしっかり沈めてから食べたりする。

・信州の蕎麦屋で東京風の濃い蕎麦つゆを出すと、地元の人には「しょっぱすぎる」と敬遠されてしまうという。
 濃いつゆだからといって、麺の下のほうだけつゆに浸けて食べるということは、あまりしない。
 信州では、蕎麦は蕎麦つゆにしっかり沈めてから食べるものである。

・この違いについて、次のように著者は考えている。
 昔ながらの信州の蕎麦は、ソバの実の、風味の強い外側の部分まで粉に挽き込んで使ったものが多い。だから、色も黒っぽくなり、香りの強い蕎麦になる。
 香りの強い蕎麦ならば、麺の表面がつゆに覆われたとしても、香りが失われる心配はない。
 噛むことで、蕎麦の持つ香りや味が、麺の内部からあふれ出してくるからである。
⇒これが、信州など、蕎麦そのものがおいしい地方の、蕎麦を楽しむための知恵なのだと、著者は考えている。
 つまり、ところ変われば蕎麦も変わる。蕎麦そのものが違うのだから、つゆも異なり、食べ方もまた別の方法になるのは、当然の成り行きだというのである。
 蕎麦は、蕎麦つゆにどっぷり浸してはいけないのか。その答えは、その土地の食文化によりさまざまであるという。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、48頁~50頁)

蕎麦のアクについて


・蕎麦の強い風味は、実の外側に近い部分とか、甘皮などに多く含まれる。
 また蕎麦のアクといわれるものも、主に甘皮やソバの実の外側部分に含まれている。
・蕎麦のアクとはいったい何か?
 一言でいうと、アクとは、不味(ふみ)成分のことであるという。
(食品に含まれる、苦みや渋み、いやな臭いなどのもととなる物質を、このように呼ぶ)
・具体的にいうと、食品の渋みのもとは、タンニンやアルデヒドなどである。
・タンニンは、お茶などに含まれる重要な成分である。
 濃いお茶を飲むと、口の中がシワい感じになるが、これがタンニンの影響である。
 アクは不味成分といわれるが、お茶のタンニンはうまさのもとでもある。
・また、タンニンには、魚などの生臭さを消す働きもある。
 蕎麦つゆには醤油や鰹節、鯖節などが使われるが、こうした醤油臭さや魚臭さを消すのに、蕎麦のタンニンは役立っている。

・ポリフェノールもアクの成分のひとつに数えられている。
 ダッタン蕎麦が苦いのは、ポリフェノールのルチンがたくさん含まれているからである。
 ルチンも蕎麦が体にいいといわれる重要な成分のひとつである。

※甘みでもうまみでも同じであるが、必要以上に強すぎれば、味を壊すことになる。
 苦み、酸味、渋みも、適量であってバランスがよければ、おいしさのもとになる。
 だから、アクは蕎麦にとって、必ずしも悪いものではない。
 むしろ全粒粉を使った十割蕎麦などは、わずかなアクが蕎麦の魅力になっている。
 しかし、かすかな甘みが持ち味のさらしな蕎麦では、苦みや渋みは雑味となる。だから甘皮部分を徹底的に取り去り、実の中心部のさらしな粉だけで作るそうだ。

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、168頁~170頁)

本当の蕎麦の風味


「本当の蕎麦の風味」(53頁~57頁)では、蕎麦の風味について著者は考えている。

・「やっぱり新蕎麦は最高!」かどうかについて、著者は異論を唱えている。
蕎麦は収穫してすぐよりも、2~3カ月経過した後のほうが、どうやらおいしくなるという。
 甘みも増し、豊かな穀物の香りが生まれ、本当の蕎麦の風味が備わってくるとする。
・「新蕎麦よりも、2~3カ月してからのほうがうまくなる」という評価は、科学的な研究を積み重ねた結果、たどりついた結論というわけではないようだ。
 しかし、蕎麦の味を追求し続ける蕎麦職人の、名人たちの多くが感じていることであるそうだ。
 たとえば、岐阜県下呂市の『仲佐』主人、中林新一さんは、「香りの薄かった新蕎麦が、2~3カ月したある朝、ソバを打ち始めると突然、よい香りを漂わせる」と話している。

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、53頁~57頁)

蕎麦の味を決める要素


蕎麦の味を決める要素を列挙している。

〇そのソバは、どういう土の畑で育てられたのかということ。
〇種を蒔いたのはいつか。
〇品種は何か。
〇種を蒔いた後の天候は、どんな様子だったのか。
〇その年の夏は猛暑だったのか、あるいは冷夏だったのか。
〇畑の周辺の地形は、谷なのか平地なのか。
〇日のあたり具合はどうなのか。
〇昼夜の気温差は大きいのか小さいのか。
〇いつ刈り入れをしたのか。
〇収穫する際、種実の黒化率はどのくらいだったのか。

こうした、たくさんの要素の積み重ねで、味はきまってくる。
同じ産地といっても、そこで収穫され出荷されるソバの味は千差万別。
去年と今年でも、まったく違ったソバができたりする。

蕎麦は、産地や品種、そしてどのように栽培、処理されたかによる。
(栽培、乾燥を管理する生産者の意識のあり方次第で、蕎麦の味は決まる)

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、69頁、75頁)


在来種と改良品種のソバ


・蕎麦のほとんどは、在来種をもとに品種改良して作られた「品種改良」のソバの実が原料になっている。
・町の蕎麦屋さんで食べられているのは、概ね、「品種改良」のソバ
 つまり、大規模栽培、大規模流通で、生産コストを抑えて採算性をあげた、いわば合理的な方式で作られたソバ

・合理的な方式で作られたソバとは、次のようなソバである。
 北海道などの広い畑で大規模に栽培され、コンバインで刈り取られ、そのまま大型の乾燥施設に入れられる。
(地域によってはバーナーで石油を燃やした熱風を当てて乾燥処理される)
 
☆「品種改良」のソバと「在来種」のソバとの相違について
〇「在来種」のソバ
・とても生産性が低いことが特徴のひとつ。
・水はけの悪い畑を嫌い、種を蒔くときに雨が降ったり、畑が湿地だったりすると、発芽率も低下し、育ちも悪くなる。
・病気も出やすく、実のつきも少なくなる。
・風などにも弱く、倒伏しやすいのも大きな弱点。
⇒強い台風などがくると、畑のすべてのソバがなぎ倒されることも珍しくない。
 台風がくると、栽培農家はソバの様子が気になってしまい、強風の中を何度も畑に足を運ぶことになる。
・せっかく実っても、実が脱粒しやすく、刈り入れるとき、特に乱暴に扱っているわけでもないのに、ポロポロと落ちてしまう。
 草姿をみれば、枝の分岐も少ないので、そこに実の数も多くなりようがない。
・「在来種」のソバは極めて生産効率の悪い作物
 たとえば、在来種の「こそば」の場合
 「もり蕎麦」1枚分の蕎麦を作るのに、畑の面積で1畳分ほどのスペースが必要
 これでは、少々広い畑で栽培しても、収穫したソバはあっという間になくなってしまう。

〇「品種改良」のソバ
・枝の分岐を多くするなどして実のつきをよくし、広い畑で栽培して、機械で管理し、大量に流通させる。

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、69頁~71頁)

手で刈るか、コンバインで刈るか


「第二章 蕎麦屋の常識・非常識」の「手で刈るか、コンバインで刈るか」(71頁~75頁)で、手刈りかコンバイン刈りかについて、次のような議論を紹介している。

〇畑で、ほぼ理想的なソバが実ったとしても、その先には、ソバの味を左右するさらに大きな試練が待ち構えている。それが、刈り入れと乾燥の工程。

〇手刈りの場合
【刈り入れ】
・昔は生産者が鎌を持ち、手刈りで行っていた。
・手刈りの長所は、ソバをいたわって収穫できること。
⇒ソバは実が落ちやすい作物。特に在来種は脱粒しやすい。だから、そういうソバの実を、なるべく落とさないように注意しながら刈り入れることができる。
※昔からの言い伝え
 ソバの産地には、「ソバは蠅が三匹たかったら刈れ」という言い伝えがある。
 つまり、たくさんなっているソバの実のうち、三粒ほど黒くなったら、もう刈り取りなさいという意味である。
 まだ多くの実が緑色のうちに刈れば、脱粒が軽減できる。より多くの実を収穫するための、先人の知恵だそうだ。

※しかし、そこまで早い段階での刈り入れは、適正な収穫とは言いがたいと、著者はいう。
 早期に刈り取ることで発生する問題を是正するため、昔の方法では「後熟」という段階を設けた。
 手で刈り取ったあと、枝から実をすぐには離さず、「島立て」や横に渡した木の棒などにかけて干す「はざかけ」の状態にして、数日間置く。
 すると、すでに刈り取ったあとにもかかわらず、枝の栄養はソバの実に送り込まれ続ける。
 かくしておいしいソバの実ができるそうだ。

※その他の昔からの言い伝え
 ソバ産地には「ソバは刈られても三日気がつかない」といった言葉さえある。
 土から切り離されても枝になった実は熟し続けるためだという。

【乾燥作業】
・手刈りの場合、後熟させたあと、叩いて枝から実を落とし、それを広い場所に広げ、陰干しで乾燥させる。
※これが昔から連綿と続いてきた、ソバの収穫の基本となる手順

〇コンバインによる収穫の場合
・近年は大規模に栽培されるようになり、機械で収穫するのが主流。
【刈り入れ】
・昔ながらの方法では、脱粒を防ぐため早めに刈ったのが、コンバインを使う場合は、もっと実が熟してから収穫する。その理由は、なるべく多くの実を収穫したいから。
※「なるべく多くの実を収穫したい」という同じ目的であっても、手刈りでは早めに刈り、コンバインだとできるだけ遅く刈るという正反対の作業になる。

・コンバインによる収穫では、刈ったその時点で枝からソバの実を落としてしまう。
 その後、直ちに乾燥機に入れて、短時間で乾燥させるという手順。
 ※だから、ソバの実は、刈り入れる時点で熟していなくてはならない。
(つまり、後熟という、昔から行われていた時間のかかる工程は省略)

※しかし、この後熟の時間こそ、ソバの実の味と香りを醸成する大切なひとときだったと、片山氏は強調する。
 ソバは熟しすぎないほうが、風味はよくなるようだ。
 あまり黒化率を上げてしまうと、ソバの実の甘皮の部分は緑色を失い、香りが弱くなってしまう。
※したがって、どの程度熟したタイミングで収穫するのかは、蕎麦の味、香りを左右する大きな要素である。

【乾燥の工程】
・この乾燥のときに高熱をかけて乾燥させたら、ソバは確実に質が落ちる。
※困ったことに、そのような劣化した蕎麦でも、見た目では区別がつかない。
 そういう蕎麦から作った蕎麦粉で打つと、長くつながった麺を作るのは難しい。
 かつてはそのような蕎麦粉も出回り、それが、「十割蕎麦は、打つのが難しい。未熟な者が打つと短く切れてしまう」という誤信を生み出す一因になったのではないかと、片山氏は考えている。
 正しく処理された蕎麦粉なら、生粉打ちでも、つながった蕎麦を作るのはそう難しいことではないようだ。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、71頁~75頁)

ソバの栽培は、痩せた土地がよい?


「第三章 蕎麦のうまさは、どこからくるのか」の「ソバの栽培は、痩せた土地がよい?」(90頁~91頁)は、ソバを栽培する者にとって参考になる。

〇ソバという作物は、水はけのよい畑が大好きである。
 居心地のよい畑で気持ちよく育つと、うまい蕎麦ができる。
・「ソバは痩せた土地でも育つ」と、昔から言われている。
 しかし、それを取り違えて、ソバを栽培するには痩せた土地のほうがいいと思っている人がいるが、それは誤解だという。
 痩せた土地のほうがいい作物などというのは、たとえば、際立って辛い大根を育てたいといった特殊な目的がある場合などを除いて、基本的にはないようだ。
 十分な栄養がバランスよく含まれた土に、うまい蕎麦は育つ。

〇また、ソバの実の味は気候にも左右される。
 昼と夜の気温差が大きい場所に、うまい蕎麦ができる。
 日昼、ソバの葉は太陽の光を受け、光合成で糖を作り出す。夜になるとこれを、葉から実の中に送り込む。昼夜の気温差があると、この作業がうまくいくのだそうだ。
(逆の状態だと、あまり芳しくない)

・「うまい蕎麦ができる条件」と逆のことをするのが、ハードルを倒すということである。
 つまり、水はけの悪い畑や痩せた土の畑で栽培する、昼夜の気温差の少ない場所で栽培する、といったことである。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、90頁~91頁)

岐阜県下呂市の『仲佐』という蕎麦屋


・岐阜県下呂市は温泉で有名な町で、そこに『仲佐』という蕎麦屋がある。
 中林新一さんという蕎麦職人は、岐阜から県境を越えた長野県の農家に依頼し、ソバを栽培してもらっている。そして種蒔き、刈り入れの時期には、下呂の店を休業にしてソバ畑に行き、自分で農作業をするそうだ。
(収穫されたソバは、市場で売買される価格の3倍の値段で買い取る。)

・そのソバ畑の様子を著者は紹介している。
 そのソバ畑は、岐阜県から安房(あぼう)峠を越えて長野県に入った、松本市の稲核(いねこき)という地域にある。
 北アルプスの山ひだが深い谷をつくるその一角に、1ヘクタールほどの畑がある。
 そのソバ畑では、「稲核在来(いねこきざいらい)」というソバが栽培されている。
・この「稲核在来」の実は小粒で収量が少なく、脱粒しやすく、倒伏しやすいといった、いわば在来種の特性といわれるものをすべて備えたソバである。もちろん、おいしいという特性も備えている。

・土は水はけが良好で、栄養の管理にも留意している。
 畑は深い谷の底にあり、午前中は日が差すが、午後になると日が陰る。
 これは重要なことであるという。
 というのは、朝から晩までずっと日が当たり続ける畑では、太陽の熱で実が熱せられて、暑さの厳しい年には香りが弱くなる可能性があるから(「作焼け」と呼ばれる現象)。
※適度に日当たりの悪い谷間の畑が、ソバの栽培には理想的なのだという。

・加えて、その畑は、もうひとつ大きな特徴がある。
 ソバを栽培するには昼夜の気温差が大きいほうがよい。
 その畑の裏山は、天然の冷蔵庫になっているそうだ。
 というのは、山の内部を北アルプスの雪融け水が流れていて、山全体が冷たく冷やされているから。山の裾にはいわゆる風穴があり、中に入ると真夏でも肌寒いほどらしい。
(養蚕が盛んな時代は、ここに蚕の卵を保存したという)
⇒畑に隣接する山がそういう状態だから、夏の日中、日差しがあるうちは気温も上がるが、日が沈むと、裏山から冷気が下りてくる。かくして昼夜の気温差は、極めて大きくなる。ソバを栽培するには絶好の環境である。

・この畑で稲核在来を育て、しかも手刈り、天日干し。そのソバを小さな石臼で手で回して、毎日、必要な量だけを手挽きする。こうすると、製粉時に蕎麦粉に発生する熱も抑えられるので、風味豊かな蕎麦に仕上げることができるそうだ。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、91頁~96頁)


各地の郷土蕎麦


「第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代」の「魅力あふれる各地の郷土蕎麦」(151頁~154頁)において、全国的に知られている郷土蕎麦のある蕎麦処を紹介している。
それは青森県、岩手県、福島県、長野県、福井県、島根県などにある。
これらの土地にある郷土蕎麦を、簡単に述べておこう。

①青森県の津軽蕎麦
・これは水に浸した大豆を擂(す)りつぶし、蕎麦粉に混ぜて打つ蕎麦である。
・蕎麦の保存性がよくなるといわれ、温かいかけ蕎麦などで食べることが多い。

②岩手県のわんこ蕎麦
・客の脇に給仕役が控え、客が椀の中の蕎麦を食べると間髪を入れず、椀の中に途切れることなく蕎麦を投げ入れる。お代わりを無理強いする蕎麦振る舞いで、旧南部藩領では、これが一番の御馳走とされた。
(客が椀にふたをするまで給仕は続けられる)

③福島県の高遠蕎麦
・福島県の会津地方の郷土蕎麦は、もとは信州・伊那の高遠藩で行われていた蕎麦の食べ方。
⇒大根おろしの汁で、冷たい蕎麦を食べる。
・その食べ方が、高遠藩の領主であった保科正之(ほしなまさゆき)が、会津の領主として赴任した際に、この地方に伝えられたといわれる。
(本家本元の信州・高遠では、いつしかその食べ方が忘れられていった)
・保科正之が藩主として会津の地に赴いたのは、寛永20年(1643)のこと。
 保科は会津領主として農業政策に力を入れ、会津藩の米の収穫量は、かつてないほど増大したという。
・寛永20年(1643)には、江戸時代初期の代表的な料理書『料理物語』が登場している。
 この本には、蕎麦の「汁」として「煮貫(にぬき)」と「垂味噌(たれみそ)」が挙げられ、そこに大根の汁を加えることが薦められている。

④長野県の信州蕎麦
・信州蕎麦といっても、特定の食べ方があるわけではない。
 県内各地にその地域特有の蕎麦の食べ方があり、信州蕎麦は、それらの総称といえる。
・代表的なところでは、戸隠神社周辺で食べられる戸隠蕎麦や、柄のついた小さな籠に蕎麦を入れ、鍋の汁でしゃぶしゃぶのように温めて食べる「とうじ蕎麦」などがある。

⑤福井県の越前おろし蕎麦
・福井県の越前地方では、大根おろしをかけて味わう。

⑥島根県の出雲蕎麦
・色が黒めの蕎麦を、割子(わりご)と呼ばれる器に入れて食べる。
(これも知名度が高い蕎麦)

※「郷土蕎麦」とは、その地域の人々が、「この食べ方はおいしいね」と、暗黙のうちに了解し、多くの人々が日々の生活の中で、その食べ方を実践している蕎麦のことをさすと、著者は定義している。

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、152頁~154頁、159頁~161頁)

どじょう蕎麦を味わう『ふなつ』


「第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代」
〇どじょう蕎麦を味わう『ふなつ』
〇奥深く多彩な出雲蕎麦
〇神話の時代から
〇松平不昧公の功績
(175頁~192頁)

どじょう蕎麦を味わう『ふなつ』


「第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代」の「どじょう蕎麦を味わう『ふなつ』」(175頁~177頁)
〇「どじょう蕎麦」とは
・出雲の人たちが、自分たちの郷土蕎麦を、親しみを込めて呼んだ蕎麦。
・短くて、色が黒くて、ちょっと太めで、曲がっていたりする。
・島根県松江市『ふなつ』の「割子そば」は、昔のスタイルを踏襲した出雲蕎麦で、「どじょう蕎麦」というネーミングに、ふさわしい容姿をしている。
※関東地方の食べ方のように、細くて長い蕎麦を、ザッと手繰って、のどごしを楽しむなどという芸当は不可能。
・昔の人々は、どじょう蕎麦を愛し、その味を伝統として伝えてきた。
 松江藩七代目藩主、松平治郷(はるさと、不昧[ふまい])公(1751~1818)は、蕎麦と茶を愛した風流大名として知られる。
 蕎麦好きの間では不昧公が詠んだ、次の歌が有名である。

≪茶をのみて道具求めて蕎麦を食ひ 庭をつくりて月花を見ん そのほか望みなし 大笑々々≫

不昧公は、正しい蕎麦の食べ方について、次のように言ったと伝えられている。
「汁は少し辛めに作り、蕎麦にはなるべく少なくかけ、十分攪拌(かくはん)したあと、よく噛み締めて食うのがよい。」
※ここでも、やはり、のどごしではなく、よく噛んで食べるのがよいと勧めている。

・出雲で栽培された蕎麦は、土の質の関係で、長くつながりにくい特徴を備えたものになるという。
 だから、地元の人たちは昔から、短く切れたどじょう蕎麦を賞味してきた。
 つながりにくい蕎麦は、あるがままの姿で食べるのが、最もおいしいものなのである。

・ところが交通事情がよくなって、関東方面からたくさんの観光客が訪れるようになると、蕎麦を食べた客が、「細く長くつながっていなくちゃ、蕎麦じゃない」などということを言い出した。
そこで蕎麦店は観光客の要望に合わせて、無理矢理、細く長くつながった蕎麦を作り出した。
その結果、いつの間にか出雲蕎麦は、関東風の細くて長い麺になってしまったらしい。

〇しかし『ふなつ』の蕎麦は、関東風になることを拒否した出雲蕎麦である。
 この店の「割子そば」を注文すると、昔はこのようであったのだろうと思われる、太くて短いどじょう蕎麦が運ばれてくる。
 この味は、一度食べたら忘れられないと、片山氏はいう。
 出雲蕎麦とは、本来、どういうものであったのかを教えてくれる蕎麦である。
※この店の味を知らないのは、一生の不覚と言っても過言ではないと賞賛している。
 特に「かまあげそば」(出雲蕎麦のもうひとつの主役)というメニューをぜひとも賞味してほしいという。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、175頁~177頁)

奥深く多彩な出雲蕎麦


「第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代」の「奥深く多彩な出雲蕎麦」(177頁~181頁)

・出雲蕎麦とは何かと問われれば、「小さな割子に入れた色の黒い蕎麦を、何段にも重ねて供する出雲地方の郷土蕎麦」という答えが一般的。
・出雲蕎麦のイメージはこのようなものだが、これだけでくくれるほど出雲蕎麦の全体像は単純ではないと、片山氏はいう。
 出雲地方には場所により、時代により、奥深い蕎麦の世界が広がっている。
 出雲にも、客の脇から給仕が椀の中に蕎麦を投げ入れる、「わんこ蕎麦」に似た風習があったそうだ。
 この食べ方を出雲では、「かけ蕎麦」と呼んだ。
 ※こういう食べ方は、長野県松本市の奈川地区にもあったし、瀬戸内海の小島にもあったようだ。

・出雲蕎麦は、基本的に生蕎麦(きそば)である。
 つまり小麦粉などのつなぎを用いない十割蕎麦である。蕎麦粉そのものがおいしい地方では、自然にこういう食べ方になるようだ。
 
〇出雲蕎麦には、多彩なバリエーションがある。
 地元では「釜揚げ蕎麦」も人気の高い食べ方である。
 「釜揚げ蕎麦」は、蕎麦の甘さ、香り、餅のような食感を、「割子蕎麦」より豊かなに楽しむことができる。
 「釜揚げ蕎麦」とは、釜で茹でた蕎麦を、その茹で汁とともに器に移し、熱いうちに食べる食べ方である。
 丼に入れられた熱い蕎麦なので、一見したところ、関東で食べる温かい「かけ蕎麦」と同じように見える。

【「かけ蕎麦」と「釜揚げ蕎麦」の違い】
・ただ、「かけ蕎麦」の作り方は、釜で茹でた蕎麦を、いったん冷水で締め、それを再び湯にくぐらせてから、丼に用意した温かい「かけ蕎麦」用の汁「甘汁」に入れて食べるというもの。
 一度冷水で締める目的は、麺にしっかり腰を与えるためである。
 それに対して、「釜揚げ蕎麦」は、途中で冷やすことなく、釜から熱いまま、直接、器に移して食べる。
 茹でて軟らかくなった蕎麦のおいしさが、ダイレクトに味わえる。
※「釜揚げ蕎麦」は、「かけ蕎麦」とは、似て非なる食べ物である。

〇そのほか出雲では、「茶蕎麦」や「たまご蕎麦」、「魚蕎麦」などと呼ばれる食べ方があった。
・「茶蕎麦」とは、蕎麦粉に薄茶と、生卵2~3個を割り入れて打った蕎麦。
 葛の餡をかけて食べた。
・「たまご蕎麦」は、蕎麦粉1升に、8個ほどの卵を混ぜ、その水分だけで打った蕎麦。
 昔は贅沢な食べ物であった卵を大量に使う「たまご蕎麦」は、出雲ならではの食べ方と言えるようだ。
・「魚蕎麦」は、珍しい蕎麦。
 魚肉をすり鉢ですり、蕎麦粉と塩、地伝酒(じでんしゅ)と卵少々を加えて作る。
 宍道湖や日本海に面した、この地方ならではの郷土蕎麦。
※地伝酒とは、「出雲地伝酒」ともいい、島根県で生産されている特殊な酒。
 製法は、もち米をベースに米麹を日本酒の倍量使う。だが、仕込み水は日本酒の半分ほどしか入れないため、かなり濃厚な味になる。十分に時間をかけて発酵させたところに、木灰(きばい)を加え、搾って仕上げる。
※地伝酒の特徴は、何より甘みが強いこと。うまみも日本酒の数倍。
 魚の生臭さを消す力もあるため、魚料理などに甘みの強い調味料として使用された。
 この地方の郷土料理である宍道湖七珍料理など、出雲の食文化の土台を支えてきた調味料。
 地伝酒はまた、出雲蕎麦の伝統の汁作りにも欠かせないものだった。
・出雲では元々「もり蕎麦」のような、蕎麦猪口に入れたつゆに蕎麦を浸けて味わう食べ方ではなく、器に盛った蕎麦に汁を直接かけて食べる「ぶっかけ」と呼ばれる食べ方をした。
 この「かける汁」の材料に地伝酒が使われた。
 基本は水と鰹節、それに地伝酒、砂糖、醤油など。
※このように本来の出雲蕎麦には、郷土に根づいた伝統的な食材が使われていた。
 まさしく、ここでしか味わえない、独特の汁だった。
※ちなみに「魚蕎麦」の薬味には、葱と大根おろしだけを使うという。
 いずれも魚の臭みを消すのに役立つ薬味。
 先人たちが工夫した、蕎麦をおいしく食べるための知恵が、出雲蕎麦にはぎっしり詰め込まれている。
(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、177頁~181頁)

神話の時代から


「第五章 蕎麦屋の個性を楽しむ時代」の「神話の時代から」(181頁~186頁)

『ふなつ』で使っているソバは、どのような畑で育つのか。
 それを知れば出雲蕎麦が、なぜこのようにうまいのか、理由の一端が見えてくると、片山氏はいう。

【島根県の奥出雲町とソバ】
・島根県東部の山間地域は、柔らかな曲線の山ひだに隠れるように、小さな盆地があちこちに開けている。季節を見計らって訪れると、白い花を付けたソバ畑が広がっている。
・山深い奥出雲町は、日本神話の舞台となった土地である。
 スサノヲノミコトが高天原(たかまのはら)を追放されて、降り立ったのが、出雲国の鳥髪(とりかみ)の地。(現在の地名だと、奥出雲町鳥上)
 ここでスサノヲノミコトはヤマタノオロチを退治するのだが、その尾から一口の剣が出てくる。これが後に草薙剣(くさなぎのつるぎ)とも呼ばれる、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)である。

・昔から奥出雲は良質な砂鉄の産地である。
 「たたら」と呼ばれる初期の製鉄が、6世紀ごろには行われていたと考えられている。
 この鉄で剣が造られた。
 たたら製鉄で砂鉄を集める方法は、鉄穴(かんな)流しと呼ばれる。
 山を切り崩し、その土を川に流して砂鉄を選別するという荒っぽいものであった。川に流された土砂は下流に堆積して、農業生産に被害を与えることになる。
 場所によっては川底に堆積した土で、川の高さが農地より上になってしまい、雨の季節にはそれが氾濫して、生活にまで深刻な打撃を与えたという。

・切り崩された山の斜面に火を放って焼き畑が行われ、栽培されたのがソバだった。
※奥出雲地方のソバ栽培は、「たたら」の歴史と、分かちがたく結びついている。
・耕作地が少ない山間部では、ソバは貴重な作物となった。 
 この地域は谷が多い地形のため、「谷風」と呼ばれる冷涼な風が吹き、昼夜の気温差が大きい。
 加えて土壌の水はけもよく、うまいソバが育つ条件は揃っていた。
 
〇特に奥出雲町の八川(やかわ)という地域でとれるソバは、際立って風味がよいと定評があった。
 江戸時代には松江藩が江戸幕府に納める献上蕎麦に、八川産のソバを使っていたという。
※その八川で作られていたソバが、現在の「横田小そば」と呼ばれる在来品種と同じソバである。谷が多い奥出雲には、当時、谷ごとに個性の異なる在来種の系統が栽培されていた。

・ところで、昭和44年から始まった米の生産調整は、平成7年からさらに強化され、奥出雲地方でも、米の作付けができない農地が増えることになった。
 そうした農地を荒らさないで維持するには、米以外の何か手のかからない作物を栽培しなければならない。
 そこで町は、水田転作の奨励作物にソバを選び、平成8年から作付け面積を増やしていった。

・横田の在来は粒が小さいうえに、倒伏が多いので収量が少ない。
 蕎麦の実、千粒の重さで比較する「千粒重(せんりゅうじゅう)」を見ると、「横田小そば」の場合、21グラムしかない。
 これを改良品種と比べてみると、信濃1号の場合、千粒で31グラム。
 ⇒「横田小そば」とは実に1.5倍もの開きがある。

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、181頁~186頁)

松平不昧公の功績


〇蕎麦という名前は同じでも、土地が変われば蕎麦も変わる。
 蕎麦が変われば食べ方も変わる。
 太い蕎麦を、よく噛み締めて食べることが正しい食べ方の土地があれば、それとは反対に、
 細い蕎麦を噛まずに丸呑みするのが「粋」だとされる土地もある。
 蕎麦を食べることは、人の生き方、価値観、美学にまで連動する、日常のなかの小さな儀式とさえ言えると、片山氏は述べている。
 人が真剣に取り組めば、蕎麦はきちんと応えてくれる。出雲蕎麦の伝統が人々に支持されている理由は、実はそこにあるのではないかという。

〇ところで、出雲蕎麦に真剣に取り組んだ先人、それは松平不昧公であるといわれる。
 とにかく蕎麦が大好きだった。このことは前述の歌をみればわかる。
 いったい蕎麦の何がそこまで、不昧公を虜にしたのだろうかという問いかけをして、不昧公について調べている。

・不昧公には、「楽山(らくざん)」という名の別荘があって、折にふれ、松江城から舟を出して楽山を訪れた。山全体を別荘にしたこの地を愛し、邸内を散策したり、茶会を催したりした。
ここに蕎麦職人が出向いて、蕎麦を打って差し上げたという。
 不昧公は明和4年(1767)、17歳の若さで松江藩主になった。
 18歳で茶道を、19歳で禅を志した。
 この時代、江戸では茶の湯の乱れがあったという。
 茶の湯の本質を理解していない人が多く、本来質素であるべきものが華美になり、料理も贅沢になっていると不昧公は嘆いている。
 そうした風潮への反発もあり、不昧公は、その時代の主流であった茶の湯よりも、茶の湯の原点である、利休の草庵の侘茶(わびちゃ)に返ることを理想とした。
 
※不昧の研究書『不昧流茶道と史料』などの著書がある島田成矩(しげのり)さんは、不昧の茶について、次のようにいう。
「不昧公が入門した茶の湯の流派は、『石州流茶道』。片桐石州が流祖です。この流派は、将軍家や大名が多く学んでいた流派で、不昧公は石州流の流れをくむ伊佐派の門人となりました。もとをたどれば不昧公が入門した流派は、利休が初代です。(中略)
 生真面目な石州流に学びながら不昧公は、原点である利休の侘茶を基本とし、不昧流を完成させたのです」

・松平不昧公が生まれた1751年は、『蕎麦全書』が書かれた年である。
 まさに蕎麦が最盛期であった時代である。蕎麦の食文化が花盛りの時代だった。
 江戸の蕎麦好きの人々は、蕎麦の食べ歩きをして、それを日記に書いたりしていたそうだ。
 さらしな蕎麦から、信濃の蕎麦、二八蕎麦から生粉打ちの蕎麦。細切りも、太打ちもあり、藪蕎麦と呼ばれる店もすでに現れていた。
 『本朝食鑑』に記録が残る幻の蕎麦「寒ざらし蕎麦」も、すでに将軍家に献上されていた。
 (当時の江戸には、蕎麦なら、なんでもあったようだ)

・江戸へは、松平不昧公も、参勤交代で何度となく出向いた。
 蕎麦が全盛のこういう状況を、その目で見て、体験していたことになる。
 そのころ、出雲の地元の蕎麦は、おそらく黒い蕎麦だったと推測される。
 出雲産の蕎麦をおいしく食べる方法は、短くてブツブツ切れる、黒いどじょう蕎麦がいちばんなのだから、そのようにして食べていたと考えるのが自然である。
 江戸の様子を見て、白い蕎麦も、黒い蕎麦も、不昧公は知っていた。

・また松平不昧公の時代の、葵の紋が入った蕎麦道具が、出雲に残されている。
 不昧公は徳川家康の孫の子孫であった。
 「越前おろし蕎麦」で知られる、福井、越前の、松平秀康の三男直政の後裔にあたる家系である。
※出雲文化伝承館に残されている蕎麦の器を見ると、面白いことがわかるという。
 これはいわゆる「ぶっかけ」の食べ方をするための器と考えられるそうだ。
 蕎麦猪口に入れた蕎麦のつゆに、蕎麦をつけて食べる食べ方ではなく、器の中に入れた蕎麦に、汁をかけて食べる食べ方である。
 (松平不昧公が書き残した、正しい蕎麦の食べ方も、まさに、ぶっかけの食べ方である)

・江戸の「ぶっかけ」は、元禄(1688~1704)のころからあったようだ。
 当初は下品な食べ方とされていた。
 その後「ぶっかけ」は、寒い季節に蕎麦と汁を温めて食べる「かけそば」に進化していく。
 ぶっかけという食べ方が江戸の町に流行ると、汁に蕎麦をつけて食べる食べ方を「もり」として区別されるようになった。
 安永2年(1773)の『俳流器の水』に載っている「お二かいはぶつかけ二ツもり一つ」がもりの初見であるそうだ。
 
だから、松平不昧公の時代、「もり」の食べ方もあったことになる。
 それなのに不昧公は「ぶっかけ」という気取らない食べ方をしている。
 葵の紋がついたぶっかけの器というのは、どう考えても不思議な気がする。
 松平不昧公はあえて、太くて短い黒い蕎麦をぶっかけで食べるという方法を選んだ。
 やはりそこには不昧公の、何らかの意図があったと、片山氏は考えている。

〇さて、不昧公は、なぜ江戸で流行の白い蕎麦ではなく、地元の野暮ともいえる黒い蕎麦を、自分の蕎麦として選んだのだろうか。
 当時の江戸の茶の湯の世界は華美に走り、本質を見失っていた。
 それを嘆いた不昧公は、利休の侘茶を理想とする自らの思いを、当世流行りの白い蕎麦ではなく、黒い蕎麦に託して表現したと、片山氏は考えている。
 太くて、ブツブツ切れる色の黒い出雲蕎麦は、不昧公にとっては侘びの精神を表現する道具のひとつだった。そう考えると、葵の紋が入ったぶっかけの器の謎も解けてくるという。
(そうであるならば、黒くて太くてブツブツ切れる、どじょう蕎麦こそが、松平不昧公の侘茶の精神が反映された「ほんとうの出雲蕎麦」の姿だということができるとする)

(片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』朝日新書、2012年、186頁~192頁)

掲載店情報


巻末には、この本で言及されていた店情報が付記されている。
都道府県の町名と電話番号まで記載されているが、詳しい情報は本を参照していただきたい。
掲載店のうち、『仲佐』(岐阜県下呂市)と『ふなつ』(島根県松江市)については、この記事でも比較的詳しく紹介してみた。

片山虎之介『蕎麦屋の常識・非常識』
掲載店 住所
1 かんだやぶそば 東京都千代田区
2 並木藪蕎麦 東京都台東区
3 上野藪そば 東京都台東区
4 藪蕎麦宮本 静岡県島田市
5 神田まつや 東京都千代田区
6 仲佐 岐阜県下呂市
7 桐屋(権現亭) 福島県会津若松市
8 大名草庵(おなざあん) 兵庫県丹波市
9 天山 福島県双葉郡
10 蕎麦切り きうち 大阪府大阪市中央区
11 ふなつ 島根県松江市
12 こそば亭 新潟県妙高市
13 美濃作 沖縄県那覇市



≪映画『ローマの休日』と英語≫

2022-06-25 19:34:17 | 語学の学び方
≪映画『ローマの休日』と英語≫
(2022年6月25日投稿)


【はじめに】


 『ローマの休日』(Roman Holiday)は、1953年製作のアメリカ映画である。
 監督はウィリアム・ワイラー。 アメリカ映画初出演となるオードリー・ヘップバーンと名優グレゴリー・ペック共演のロマンティック・コメディである。
 今回のブログでは、この映画の英語のセリフを考えてみたい。
 参考とするのは、次の著作である。
〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年

【『ローマの休日』のあらすじ】
・ヨーロッパを周遊中の某小国の王女アン(ヘップバーン)は、常に侍従がつきまとう生活に嫌気が差し、滞在中のローマで大使館を脱出。
・偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョー(ペック)とたった1日のラブ・ストーリーを繰り広げる。




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〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年

【目次】
・第1部 「ローマの休日」シーン別リーディング
・第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・「ローマの休日」シーン別リーディング の構成
・「真実の口の言い伝え」
・祈りの壁「かなわぬ願い事」
・アパート・室内「ジョーとアン王女の心中」
・車の中「ジョーとアン王女の切ない別れ」
・大使館の応接室「アン王女の記者会見」
・アン王女が口ずさんだ詩について

・第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式






「ローマの休日」シーン別リーディング の構成


〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年
 「第1部 「ローマの休日」シーン別リーディング」は、次のような構成になっている。

「ローマの休日」シーン別リーディング
Scene 1 ニュース映画 「アン王女のヨーロッパ親善旅行」
Scene 2 大使館・接見室 「アン王女の公式歓迎会・舞踏会」
Scene 3 大使館・アン王女の寝室 「アン王女のヒステリー」
Scene 4 大使館・アン王女の寝室 「医師の注射」
Scene 5 ホテルの一室 「記者仲間のポーカー」
Scene 6 フォロ・ロマーノ 「ジョーとアン王女の初めての出会い」
Scene 7 タクシー 「タクシーの行き先」
Scene 8 マルグッタ通り・ジョーのアパートの前 「運転手とのやり取り」
Scene 9 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」
Scene 10 大使館・大使の書斎 「アン王女の失踪」
Scene 11 ジョーのアパート・室内 「ジョーの寝過ごし」
Scene 12 アメリカン・ニュース社のオフィス 「ジョーの遅刻」
Scene 13 ヘネシーのオフィス 「ジョーの言い訳と支局長の追及」
Scene 14 ヘネシーのオフィス 「ジョーと支局長の賭け」
Scene 15 ジョーのアパート・中庭 「ジョーの借金話」
Scene 16 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の自己紹介」
Scene 17 彫刻家のスタジオ 「相棒のカメラマンへの電話」
Scene 18 ジョーのアパート・室内 「掃除婦のアン王女への説教」
Scene 19 ジョーのアパート・テラス 「ジョーとアン王女のお別れ」
Scene 20 ジョーのアパート・室内 「さようなら」
Scene 21 ジョーのアパート・中庭 「アン王女の借金」
Scene 22 横町・市場 「アン王女の青空市場めぐり」
Scene 23 理髪店 「アン王女の大胆ショートカット」
Scene 24 バー・電話 「電話使用中」
Scene 25 トレビの泉 「ジョーのカメラ探し」
Scene 26 理髪店 「カット終了とダンスへの誘い」
Scene 27 スペイン広場 「アン王女とアイスクリームと花」
Scene 28 スペイン広場の階段 「アン王女の告白と休日の始まり」
Scene 29 ロッカズ・カフェ 「お互いの詮索と相棒カメラマン」
Scene 30 ロッカズ・カフェの中 「ジョーとアービングの密約」
Scene 31 ロッカズ・カフェのテーブル 「アン王女の初めてのタバコ」
Scene 32 ヴェネツィア広場の通り 「スクーターの乱暴運転」
Scene 33 警察署 「ジョーたちの必死の説得」
Scene 34 サンタマリア イン コスメディン教会・真実の口 「真実の口の言い伝え」
Scene 35 モルガーニ通り・祈りの壁 「かなわぬ願い事」
Scene 36 サンタンジェロ城下の船 「パーティでの大騒動」
Scene 37 テヴェレ川・橋の下のアーチ 「ジョーとアン王女の初めてのキス」
Scene 38 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の心中」
Scene 39 アービングの車の中 「ジョーとアン王女の切ない別れ」
Scene 40 大使館・アン王女の寝室 「威厳のあるアン王女」
Scene 41 ジョーのアパート・室内 「支局長のジョーへの追及」
Scene 42 ジョーのアパート・室内 「アン王女の写真」
Scene 43 大使館・応接室 「アン王女の記者会見」


 

「真実の口の言い伝え」


上記の「ローマの休日」シーン別リーディング の構成の中から、幾つかのシーンを取り上げてみたい。
まずは、Scene 34 サンタマリア イン コスメディン教会・真実の口「真実の口の言い伝え」
について、みてみよう。


JOE : It’s the Mouth of Truth.
The legend is that if you’re given to lying, you put
your hand in there, it’ll be bitten off.
ANN : Ooh, what a horrid idea.
JOE :Let’s see you do it.
ANN : Let’s see you do it.
JOE : Sure.
ANN : No! No, no, no…
JOE : Hello!
ANN : You beast!
It was perfectly all right!
You’re not hurt!
JOE : I’m sorry, it was just a joke!
All right?
ANN : You’ve never hurt your hand.
JOE : I’m sorry, I’m sorry. Okay?

ジョー :“真実の口”だ
     言い伝えではウソつきが手を入れると
     食いちぎられる
アン  :恐ろしいわね
ジョー :試してみろよ
アン  :あなたの番よ
ジョー :もちろんさ
(アン  :いや! だめ)
ジョー :コンニチハ
アン  :ひどいわ
     心配したのに
     大丈夫なのね
ジョー :ごめんよ
     ただの冗談さ
アン  :手はケガしてないのね
ジョー :(ごめんよ ごめん)大丈夫?

(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、154頁~155頁)

映画『ローマの休日』といえば、このサンタマリア イン コスメディン教会の「真実の口」のシーンは有名である。

このシーンで編者は、次のようなコメントを付している。
 このニュアンスを味わう!
●if you’re given to lyingは「ウソをつくくせがあるなら」。
 Let’s see you do it.(さあ、やってごらん)とジョーとアンが互いに言っているが、互いにウソをついているので、このシーンは緊張感がでているという。

このトリビアで通になろう! 
●ジョーが手をかくして食いちぎられたかのように演じたのはペックのアドリブだったそうだ。
 ヘプバーンは本当にびっくりして叫んだが、それがすごくリアルでワンテイクでOKになった。
 この顔の石盤はローマ時代の井戸のふたで、海神トリトーネを模したもの。
 「真実の口」(The Mouth of Truth)はイタリア語では Le Bocca della Veritaという。
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、156頁~157頁)



このシーンで出てくる【語句】について記しておこう。
※以下の【語句】は筆者が調べたものであることを、お断りしておく。
(出典はすべて『ジーニアス英和大辞典』の電子辞書版)
【語句】
・legend  (名)伝説
 <例文>
 According to a legend, a Cretan king named Minos kept a beast called
the Minotaur penned up in a labyrinth at his palace.
  伝説によれば、ミノスという名のクレタの王は、ミノタウロスという名の怪物を、宮殿の
  迷宮に閉じこめていたという
・be bitten off <bite off かみ切る(off, away)
・horrid  (形)恐ろしい、背筋がぞっとするような(horrible)
  ◆horr-(戦慄)+-id(状態を表す形容詞語尾)
・beast  (名)動物、獣
 <用例>
  Beauty and the Beast 『美女と野獣』(童話の題名)
  You beast! けだもの、こん畜生
・hurt (他)を傷つける、~にけがをさせる
 <例文>
 As long as you’re not hurt, that’s the main thing.
  君が怪我をしていないのなら、それは何よりだ





祈りの壁「かなわぬ願い事」


Scene 35 モルガーニ通り・祈りの壁 「かなわぬ願い事」

IRV :I’ll park at the corner.
ANN :What do they mean ― all these inscriptions?
JOE :Well, each one represents a wish fulfilled.
All started during the war, when there was an air
raid, right out here.
A man with his four children was caught in the
street.
They ran over against the wall, right there, for
shelter, prayed for safety.
Bombs fell very close but no one was hurt. Later
on, the man came back and he put up the first of
these tablets.
Since then it’s become sort of a shrine.
People come, and whenever their wishes are
granted, they put up another one of these little
plaques.
ANN :Lovely story.

アビン :角に停めてくる
アン  :この文字が書かれた板は?
ジョー :願いがかなったしるしだ
     戦時中にさかのぼるが
     子供連れの男が空襲にあった
     この壁まで逃げ込み無事を祈った
     近くを爆撃されたが
     家族は無事
     後日彼はここに最初の板をかけた
     それ以来祈りの場所になった
     願いがかなうと
     新たな板をかける
アン  :いい話だわ

(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、158頁~159頁)

【語句】
・inscription (名)銘、碑文
・fulfill   (他)(予言・希望などが)実現する(realize)
・put up  ~を上げる、掲げる、立てる、~を掲示する
・grant  (他)人に(願いなど)をかなえてやる、人に(権利など)を与える
 <例文>
 God grant you success in this most recent effort.
  ごく最近の努力であなたの成功がかなえられますように

アパート・室内「ジョーとアン王女の心中」


Scene 38 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の心中」

ANN : A wonderful day!
RAD : This is the American Hour from Rome,
broadcasting a special news bulletin in English
and Italian.
Tonight, there is no further word from the bedside
of Princess Ann in Rome, where she was taken ill
yesterday on the last leg of her European
goodwill tour.
This has given rise to rumors that her condition
may be serious, which is causing alarm and
anxiety among the people in her country.
La Principessa Anna…
ANN : The news can wait till tomorrow.
JOE : Yes.
ANN : May I have a little more wine?
I’m sorry I couldn’t cook us some dinner.
JOE : Did you learn how in school?
ANN : Mmmm, I’m a good cook.
I could earn my living at it.
I can sew too, and clean a house, and iron.
I learned to do all those things.
I just.. haven’t had the chance to do it for
anyone.
JOE :Well, looks like I’ll have to move… and get myself
a place with a kitchen.
ANN : Yes.
   I…have to go now.

アン  :でも楽しかった
ラジオ :番組からニュースを
     お知らせいたします
     昨夜病気に倒れた
     アン王女のその後の容体は
     まだ知らされておりません
     病状悪化のうわさもあり
     母国にも懸念の色が
     広がっています
     (アン王女は…)
アン  :明日でいいわ
ジョー :そうだな
アン  :もっとお酒を
     料理ができなくて残念
ジョー :学校で習った?
アン  :料理の腕はプロも顔負けなのよ
     (料理で食べていけるわ)
     お裁縫もアイロンがけも
     何でも一通り習ったわ
     ただ披露する機会がなくて
ジョー :どうやら台所付きの家に
     引っ越したほうがよさそうだ
アン  :そうね
     もう行かなくては
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、174頁~177頁)


【語句】
・broadcast (他)(テレビ・ラジオで)を放送する
・bulletin (名)(新聞・ラジオ・テレビの)短いニュース、速報
 <例文>
 We interrupt our regular broadcast to bring you a bulletin.
番組を中断してニュースをお知らせいたします
・leg  (名)脚、1区切り、行程
 <例文>
 the first leg of a trip  旅行の最初の行程
・goodwill (名)親善、友好
 <例文>
 pay a goodwill visit to Norway  ノルウェーに親善訪問をする
・alarm (名)驚き、心配、不安
 <例文>
 The news caused alarm in the USA and UK.
 その知らせは米国と英国に不安をもたらした
・anxiety (名)心配、不安
 <例文>
 feel strong anxiety for her safety
 彼女の安否を大変気づかう

車の中「ジョーとアン王女の切ない別れ」


Scene 39 アービングの車の中 「ジョーとアン王女の切ない別れ」

ANN : Stop at the next corner, please..
JOE : Okay.
Here?
ANN : Yes. I have to leave you now.
I’m going to that corner there, and turn.
You must stay in the car and drive away.
Promise not to watch me go beyond the corner.
Just drive away and leave me, as I leave you.
JOE : All right.
ANN : I don’t know how to say goodbye.
I can’t think of any words.
JOE : Don’t try.

アン  :次の角で停めて
ジョー :分かった
     ここ?
アン  :ええ お別れしないと
     私はあそこの角を曲がるけど
     車から下りないでね
     あの角から先は見ないと約束して
     ただ車を走らせて私を置いたままで私もお別れします
ジョー :分かった
アン  :何とお別れを言えば
     言葉が思いつかなくて
ジョー :無理しなくても
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、178頁~179頁)

【語句】
・leave (他)(場所・人のいる所を)去る、離れる
 <例文>
 ・I’m leaving you tomorrow. 君とは明日お別れだ
 ・It pains me to leave you.  君と別れるのは辛い
 ・I must love you and leave you. (略式)もうおいとましなくては
・promise (他)約束する (名)約束
 <例文>
 ・I promise (you) that I won’t be late for dinner.
  =I promise (you) not to be late for dinner.
   夕食に遅れないと約束します
 ・I promise not to trouble you again.
   もうあなたにご面倒をおかけしないと約束します
 ・I will tell you the secret, but you must promise not to tell anyone.
   秘密は教えるけど、誰にも言わないって約束してくれ


大使館の応接室「アン王女の記者会見」


Scene 43 大使館・応接室 「アン王女の記者会見」

IRV : It ain’t much, but it’s home.
NOB : Ladies and Gentlemen, please approach.
MAJ : Sua Altezza Reale ― Her Royal Highness.
AMB : Your Royal Highness ― the ladies and gentlemen
of the press.
M.C. : Ladies and gentlemen, Her Royal Highness will
now answer your questions.
PRS : I believe at the outset, Your Highness, that I
should express the pleasure of all of us at your
recovery from the recent illness.
ANN : Thank you.
FRN : Does Your Highness believe that federation
would be a possible solution to Europe’s
economic problems?
ANN : I am in favor of any measure which would lead to
closer cooperation in Europe.
ITA : And what, in the opinion of Your Highness, is the
outlook for friendship among nations?
ANN : I have every faith in it ― as I have faith in
relations between people.
JOE : May I say, speaking from my own press service,
we believe that Your Highness’ faith will not be
unjustified.
ANN : I am so gland to hear you say it.
SWE : Which of the cities visited did Your Highness
enjoy the most?
GEN : “Each in its own way…”
ANN : Each in its own way was … unforgettable.
I would be difficult to ..Rome!
By all means, Rome!
I will cherish my visit here in memory as long as I
live.
GER : Despite your indisposition, Your Highness?
ANN : Despite that.

アビン :これが家か たいしたことない
式部官:皆様こちらへどうぞ
執事長:王女様のお出ましです
大使 :王女様 こちらが
    記者の方々です
式部官:これから皆様のご質問に
    お答えします
米記者:最初に一同を代表して
    先のご病気からのご回復
    お喜び申し上げます
アン :感謝いたします
仏記者:欧州の連邦化が
    経済問題の解決策だと
    ご自身もお考えですか
アン :欧州の緊密化促進の
    政策であれば賛成です
伊記者:国家間の友好関係について
    今後の見通しはどうですか?
アン :友好を心から信じます
    人と人との友情と同じく
ジョー :わが社を代表して申し上げます
     王女様のご信頼は裏切られないでしょう
アン :それをうかがい大変嬉しく思います
ス記者:訪問地でどこが一番
    お気に召しましたか?
アン :それぞれ忘れがたい思い出があります
    とても1つには…ローマです
    何と申してもローマです
    この地の思い出は一生大切にします
独記者:ご病気になられたのに?
アン :そうです

(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、198頁~201頁)

【語句】
・outset (名)初め、発端 ◆ beginning, start より堅い語
at the outset 最初は
・federation (名)連邦(にすること)
・favor   (名)好意、支持
  in favor of O=in O’s favor… …に賛成の[で]、…に味方して
 <例文>
 I’m very much in favor of cutting taxes.
 私は減税に大賛成です
・outlook (名)見晴らし、[物・事の]見通し(for)、見解(on, about)
 <例文>
 the outlook for recovery 回復の見通し
・faith (名)信頼
 <例文>
 I have great faith in her, she won’t let me down.
   私は彼女を大いに信頼している、彼女は私を失望させることはないだろう
・by all means ①[承認・許可のていねいな強調]もちろん
       ②[同意を強調して]まさにそのとおり
       ③[決意・信念を強調して]絶対に
・cherish (他)(人が)<望み・考え・感情など>を(大切に)心に抱く
 <例文>
 cherish the memory of my sweet grandmother やさしい祖母のことを懐かしむ
・despite (前)…にもかかわらず(◆ in spite of より堅い語;新聞などで好まれる)
 <例文>
 She went to Spain despite the fact that the doctor had told her to rest.
   お医者さんが休養するように言ったにもかかわらず、彼女はスペインに行った。


アン王女が口ずさんだ詩について


 アン王女が口ずさんだ詩について述べておこう。それは次のシーンで出てくる。
〇Scene 6  フォロ・ロマーノ「ジョーとアン王女の初めての出会い」
〇Scene 9  ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」

〇Scene 6  フォロ・ロマーノ「ジョーとアン王女の初めての出会い」
ANN : “If I were dead and buried and I heard your voice
-beneath the sod my heart of dust would still
rejoice.” Do you know that poem?
JOE : Huh! What do you know!
You’re well-read, well-dressed… snoozing away in
a public street.
Would you care to make a statement?
ANN : What the world needs is a return to sweetness
and decency in the souls of its young men and …
mmmmmhhhhhhhhmmmmm…
JOE :Yeah, I …uh…couldn’t agree with you more, but
um… Get yourself some coffee, you’ll be all right.
Look, you take the cab.

アン  : “死して埋められるとも君が声を聞かば
     土の下に眠るわが心は喜びに満ちるであろう”
     この詩をご存じ?
ジョー :こりゃ驚いた!
     学もあって身なりもいいのに
     道で寝ているとはね
     何かご意見があれば
アン  : 世界に必要なのは
     若者たちの心に優しさと
     品格を取り戻すことです
ジョー :ごもっともだけど
     コーヒーを飲めば良くなる
     君が乗りなさい

〇Scene 9  ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」
ANN : Do you know my favorite poem?
JOE :Ah, you’ve already recited that for me.
ANN : Arethusa arose, from her couch of snows, in the
Akraceronian Mountains. Keats.
JOE :Shelley.
ANN : Keats!
JOE :You just keep your mind off the poetry and on the
pajamas, everything will be all right, see?
ANN : It’s Keats.
JOE :I’ll be - it’s Shelley - I’ll be back in about ten
minutes.
ANN : Keats. You have my permission - to withdraw.
JOE :Thank you very much.

アン  : 私の好きな詩を?
ジョー :もうさっき聞いた
アン  :“雪の長椅子よりアレトゥサは立ち上がる
     アクロサロニアの山々に抱かれて”キーツよ
ジョー :シェリーだ
アン  :キーツよ
ジョー :詩はいいからパジャマを着ろ
     楽になる
アン  :キーツよ
ジョー :シェリーだよ
     10分ほどで戻る
アン  :もう下がってよろしい
ジョー :そりゃ どうも

(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、36頁~37頁、52頁~53頁)

『ローマの休日』の中の一場面として、このシーンは見逃せない。
睡眠薬で道端で眠っているアン王女がなにやら詩を口ずさむ。
「If I were dead ~rejoice」
「もし私が死んで埋葬されて、あなたの声を聞いたならば、土の下で私の心はなお喜ぶ事でしょう。」くらいの訳になるようだ。
 そしてアン王女は、ジョー(ペック)に、
 “Do you know that poem?”と尋ねる。
そしてジョーのアパートでアン王女が、
 “Arethusa arose ~Akraceronian Mountains.”
と口ずさみ、そして “Keats”という。
ジョーはそれに対し、 “Shelly”という。
アン王女はそれでも“Keats”という。
この映画では、ジョーは正しく解するレベルの人間だということを示しているそうだ。
(ジョーの言っている “Shelly”の方が正解だという)

編者も、次のようなコメントを付している。
●この詩「Arethusa」の作者をアンはKeatsと勘違いしており、ジョーが言うShelleyが正しい。2人とも19世紀イギリス・ロマン派を代表する詩人で、「キーツ・シェリー博物館」がスペイン階段の右手にあるとする。
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、53頁)

※この詩は、脚本家のオリジナルという説もあるそうだ。
ともあれ、どうも詩の吟誦も紳士淑女の条件の一つであるようだ。
新聞記者ジョーが、ただのポーカー好きのやくざな新聞記者ではなく、詩の吟誦もやろうとすればいつでもできる教養ある紳士だと知って、この映画を見ると、ひときわ味わいが増すだろう。ジョーはアン王女の相手役たる資格があるという。

第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式


英語の発音は七変化する


☆日本人はなぜネイティブが話す自然な英語が聞き取れないのか?
☆つづりを見れば知っている英語でも聞き取れないのはなぜか?
この疑問に対して、実際の会話では英語の音が変化するからと編者は答えている。

話し言葉は、語を省略したり、短くしたり、2つの語をつなぎあわせたりして、言いやすいように、発音が変化する。
その発音の変化が特に激しいのが英語。
実際の英語の発音は、個々の単語が発音されるときとは違って変化する。
(それは英語のリズムが関係している)

そこで、英語の発音の変化を次の7つの公式にして、紹介している。


【発音の変化7つの公式】
第1公式 音が弱くなる「弱化」
第2公式 音が短くなる「短縮」
第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)
第4公式 音が消える「消失」
第5公式 音が抜け落ちる「脱落」
第6公式 音がとなりの音に似る「同化」
第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」



そして、この知識があるだけでも、「ローマの休日」がかなり聞き取れるようになるという。

第1公式 音が弱くなる「弱化」


・英語では、すべての音がはっきりと発音されるわけではなく、弱くなる音がある。
(弱くなって消えることもある)
⇒音が弱くなることを弱化(じゃくか)という。
●音が弱くなる例―1
<例文>
 I spoke to him. →I spoke to ’im.
    トゥ ヒム    トゥイム
※himはふつうは「ヒム」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[h]が落ちる
※to ’imとつながり「トゥイム」のようになる

●音が弱くなる例―2
<例文>
 What’s her name? →What’s’er name?
 ワッツ ハー    ワッツアー
※herはふつうは「ハー」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[h]が落ちる
※What’s’erとつながり、「ワッツアー」のようになる

●音が弱くなる例―3
<例文>
 Tell them I said hi. →Tell ’em I said hi.
 テル ゼム     テルエム
※them はふつうは「ゼム」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[th]が落ちる
※カジュアルな発音では、Tell ’emとつながって「テルエム」のようになる

●よく起きる「弱化」の例
 tell him  →tell ’im
 ask her →ask ’er
 let them →let ’em
 what he →what ’e
 something →somethin’  →some’m
 can →c’n
 for →f’r
 from →fr’m
 some →s’me

第2公式 音が短くなる「短縮」


・英語では、音が短くなることがある。
 語の音が弱く発音されて一部が消えてしまったり、特定の語と語がつながって発音の一部が省略されたりするからである。
⇒音が短くなることを短縮(たんしゅく)という
・I’ve やThat’dのように短縮された形を短縮形という

●音が短くなる例―1
<例文>
 I will get it. →I’ll get it.
 アイ ウイル  アイル
※willの先頭が省略されて、’llと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される

●音が短くなる例―2
<例文>
 I have got to go. →I’ve got to go.
 アイハヴ     アイヴ
※haveの先頭が省略されて、’veと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される

●音が短くなる例―3
<例文>
 I would be glad to.→I’d be glad to.
 アイ ウッド   アイド
※wouldの先頭が省略されて、’dと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される

●よく起きる「短縮」の例
 <主語+have動詞>
 I have →I’ve
 you have →you’ve
 they have →they’ve

 <主語+had>
I had →I’d
 you had →you’d
 they had →they’d

 <主語+be動詞>
I am →I’m
 you are →you’re
 they are →they’re

 <be動詞+not>
are not →aren’t
 is not →isn’t
 was not →wasn’t

 <主語+will>
I will →I’ll
 you will →you’ll
 they will →they’ll

 <主語+would>
I would →I’d
 you would →you’d
 they would →they’d

 <助動詞+not>
 cannot →can’t
 will not →won’t
 could not →couldn’t

 <疑問詞+be動詞/will>
 what are →what’re
 what is →what’s
 what will →what’ll

第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)


・英語では、語句の音と音がつながって発音されることがひんぱんにある。
 特に子音と母音の組み合わせでは、音がつながるのが自然で言いやすいからである。
⇒音がつながることを連結(れんけつ)またはリエゾンという。

●音がつながる例―1
<例文>
 I’ll be back in an hour. →I’ll be back in an hour
     イン アン アワー   イナナワー
※[n] [a]で「ナ」、[n] [a]で「ナ」

●音がつながる例―2
<例文>
 Mind if I join you?  →Mind if I join you? (dと ifと Iが連結)
 マインド イフ アイ  マインディファイ
※[d] [i]で「ディ」、[f] [ai]で「ファイ」
 
●音がつながる例―3
<例文>
 I’ll give it a try.→I’ll give it a try. (ve とitと aが連結)
 ギヴ イット ア  ギヴィラ
※[v] [i]で「ヴィ」、[t] [a]で「タ」から「ラ」

●よく起きる「連結」の例
 [r]+母音
 are all →reとaが連結
 figure it →reとiが連結
[n]+母音
 in order →nとoが連結
 sign up→nとuが連結
 [d]+母音
 should I →dとIが連結
 find out →dとoが連結
 [t]+母音
 set it →tとiが連結
 at all →tとaが連結

第4公式 音が消える「消失」


・英語では、単語のなかの音が消えることが多々ある。
 英語のリズムの関係や [n] のあとに [t] が続くなど、音の組み合わせで発音しやすいように消えてしまう。
⇒単語のなかの音が消えてしまうことを消失(しょうしつ)という。

●音が消える例―1
<例文>
 How about you? →How ’bout you?
   アバウト     バウト
※aboutは「バ」にアクセントがあるので、その前の「ア」は弱く発音される
※「ア」がさらに弱くなって消えてしまうが、これがかなり一般的な発音

●音が消える例―2
<例文>
 We’ve got plenty of time.  →We’ve got plen’y of time.
     プレンティ        プレニィ
※plentyには[n] [t]と続く音があり、[n] の影響で[t]が消えてしまう
※アメリカ英語では、[n]+ [t]の組み合わせで、[t]が消えることが多い

●音が消える例―3
<例文>
 That’s exactly the point. →That’s exac’ly the point.
   イグザクトリィ     イグザク()リィ
※exactly には[t] [l]と続く音があり、[l] の影響で[t]が消えてしまう
※[t]が消えても[t]を発音するために口を構える一瞬の間(ま)がある

●よく起きる「消失」の例
 twenty →twen’y
 exactly →exac’ly
 certain →cer’n
 doctor →do’tor
 outside →ou’side
 expect →’xpect
 suppose →s’ppose
 believe →b’lieve
 suggest →s’ggest
 different →diff’rent
 appreciate →’ppreciate
 friend →frien’

第5公式 音が抜け落ちる「脱落」


・英語では、自然に話されるときに、単語と単語のつながりにおいて音が抜け落ちてなくなってしまうことが多々ある。
 同じ音や似た音を2度言うのは言いにくいので1つになったり、英語の強弱のリズムのせいで自然と音が抜け落ちるからである。
・しかし、ただ抜け落ちるだけではなく、その場所に一瞬の間(ま)が取られる。
⇒語と語がつながるなかで音が抜け落ちることを脱落(だつらく)という。

●音が抜け落ちる例―1
<例文>
 I’ll have hot tea. →I’ll have ho’ tea.
    ハットティー   ハッ()ティー
※hotの[t]とteaの[t]と同じ音が続いている
※同じ音が続くと、前の1つが抜け落ちる

●音が抜け落ちる例―2
<例文>
 Have a good day. →Have a goo’ day.
    グッド ディ   グッ()ディ
※good の[d]とday の[d]と同じ音が続いている
※同じ音が続くと、前の1つが抜け落ちる


●音が抜け落ちる例―3
<例文>
 I could have done that. クッド ハヴ
→I could’ve done that.  クダヴ
→I coulda done that.   クダ
※could haveは haveの[h]が抜け落ちて、could’ve(クダヴ)のようにつながる
※さらに’veの[v]が抜け落ちて、coulda(クダ)のようにつながる

●よく起きる「脱落」の例
<同じ音どうし>
[m] [m]で前の音が脱落
 some more →so ’more
[l] [l]で前の[l]が脱落
 I’ll leave →I’ leave
[t] [t]で前の[t]が脱落
 hot tea →ho’ tea
[k] [k]で前の[k]が脱落
 take care →ta’ care
<似た音どうし>
[g] [d]で前の[g]が脱落
 big deal →bi’ deal
 big diamond →bi’ diamond
[d] [t]で前の[d]が脱落
 hard time →har’ time
[d] [p]で前の[d]が脱落
 good place →goo’ place
 food processor →foo’ processor

第6公式 音がとなりの音に似る「同化」


・英語には、音がとなりの音に似ることがたくさんある。
 ある音が、となりの音の影響を受けて、その音に似たり、同じ音になったりするケースがかなりある。
⇒2つの音がとなりあっているとき、一方が他方の影響を受けて、となりの音に似たり、同じ音になることを同化(どうか)という。

●音がとなりの音に似る例―1
<例文>
 I have to go now. →I hafta go now.
  ハヴ トゥ    ハフタ
※haveの[v]がtoの[t]の影響を受けて、[f] に変わる
※そして単語同士がつながって、hafta(ハフタ)かhafto(ハフトゥ)のようになる

●音がとなりの音に似る例―2
<例文>
 What’s that supposed to mean? →What’s that suppose’ta mean?
      サポウズド トゥ      サポウスタ
※supposed の[d]がtoの[t]の影響を受けて、[t] に変わる
※そして単語同士がつながって、suppose’ta(サポウスタ)のようになる

●音がとなりの音に似る例―3
<例文>
 Put them in there.  →Put them in ’ere.
     イン ゼア     インネア
※inの[n]がthereの[th]の影響を与えて、[n] のように変える
※すると[n] の音が2つ続くようになり、in ’ere(インネア)のようになる

●よく起きる「同化」の例
<前の音が、後ろの音に影響を与えて同化>
[n]が [th]に影響を与え同じ[n] の音になる
 in that →in ’at
 down there →down ’ere
 doin’ that →doin ’at
<後ろの音が、前の音に影響を与えて同化>
[k]が [v]に影響を与えて[f] に変える
 of course →off course
[t]が [v]に影響を与えて[f] に変える
 have to →hafta/hafto
[t]が [d]に影響を与えて[t] に変える
 used to →use’ta/use’to
 pleased to →please’ta/please’to
[p]が [n]に影響を与えて[m] に変える
 in person →im person
 in public →im public

第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」


・英語では、自然に話されるときに、となりあった2つの音が互いに影響を与え合って、第3の音を作り出すことが多々ある。
 となりあった2つの音を続けて発音すると、口の構えから自然に別の音になるからである。
⇒2つの隣り合った音が互いに影響しあって、別個の音(第3の音)に変化することを、融合同化(ゆうごうどうか)という。

●音が別の音に変わる例―1
<例文>
 Nice to meet you. →Nice to meetju.
  ミート ユー     ミーチュ
※[t] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[t∫チュ]という新しい音(第3の音)に変化する

●音が別の音に変わる例―2
<例文>
 Could you do me a favor? →Couldju do me a favor?
  クッド ユー      クッジュ
※[d] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[dz ジュ]という新しい音(第3の音)に変化する

●音が別の音に変わる例―3
<例文>
 I’ll miss you. →I’ll misju.
  ミス ユー   ミシュー
※[s] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[∫シュ]という新しい音(第3の音)に変化する

●よく起きる「融合同化」の例
 makes you →makesju
 hope you →hopju
 make you →makju
as you →azju
 give me →gimme
 let me →lemme
 going to →gonna
 want to →wanna

「ローマの休日」ではこう話されている



※第1公式 音が弱くなる「弱化」
<例文>
JOE:I’ve got them right here, somewhere.
  →I’ve got ’em right here, somewhere.

※第2公式 音が短くなる「短縮」
<例文>
JOE:What is your hurry? There is lots of time.
  →What’s your hurry? There’s lots of time.

※第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)
<例文>
ANN:May be another hour.
  →May be another’our.

※第4公式 音が消える「消失」
<例文>
JOE:No, how about this?
  →No, how ’bout this?

※第5公式 音が抜け落ちる「脱落」
<例文>
IRV:You must be out of your mind!
  →You must be outta your mind!

※第6公式 音がとなりの音に似る「同化」
<例文>
IRV:I got to get up early.
  →I gotta get up early.


※第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」
<例文>
HEN:Oh, I think I know the dress you mean.
  →Oh, I think I know the dresju mean.


【主なキャラクターの略称】
ANN:アン(某国の王女)
JOE:ジョー(新聞記者)
IRV:アービン(Irving:写真家)
HEN:支局長(Hennessy:ジョーの上司)

(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、10頁、208頁~223頁)


≪【参考書の紹介】『基礎英文解釈の技術100』≫

2022-06-24 18:36:22 | ある高校生の君へ~勉強法のアドバイス
≪【参考書の紹介】『基礎英文解釈の技術100』≫
(2022年6月24日投稿)

【はじめに】


 今回は、英文解釈に関する参考書を紹介してみたい。
 やはり、英語の勉強法で一番の悩みは、英文解釈の仕方がわからないということではないだろうか。
 次の参考書を参照しながら、英文解釈について考えてみたい。
〇桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』桐原書店、2008年[1994年初版]



【桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』(桐原書店)はこちらから】
桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』(桐原書店)






〇桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』(桐原書店、2008年)の目次は次のようになっている。
【もくじ】
はじめに
本書の構成と利用法
日常のおすすめ勉強法 英文解釈の勉強はこうする!
学習の基礎知識
学習の基礎知識プラス
■SとVを発見する技術
1 文の骨格SVを時制でキャッチ!
2 前置詞句は(  )に入れて意味を取れ
■文の主要素をつかむ技術
3 動詞を見たら自・他の区別をつける
4 be動詞の後の名詞・形容詞は補語
5 for/asの後ろのSVが決め手
6 OとCにあるSP関係
7 <V it C to V>のとらえ方
8 <not ~but...>を見落とすな!
9 相関表現をマークして文の骨格をつかめ
10 従属節は [ ]に入れて構造をつかめ
11 動詞の後の thatは名詞節の目印
12 他動詞の後の [S+V+X]は目的語
13 疑問詞は名詞節発見の決め手
14 補語になる名詞節のつかみ方
15 前置詞の目的語になる節をキャッチ
16 <前置詞+名詞>の修飾先を探せ!
17 代動詞 doの正体を突き止めよう
18 <否定語+as節>の訳し方
19 過去完了を見たら「基準となる時」を探せ
20 代不定詞 toに隠れた原形を突き止めよう
■関係詞節の把握
21 関係詞の支配範囲は離れたVをマーク
22 which, that は後がVなら主格と決める
23 which, that は直後がSVなら目的格
24 先行詞の直前の that, thoseは和訳不要
25 隠れた関係代名詞の見つけ方
26 関係代名詞の前の前置詞はパートナーを探せ
27 前置詞を見たらその目的語を探せ
28 隠れた関係代名詞が演じる補語の役
29 副詞の働きをする関係詞をキャッチ
30 関係副詞が隠れた<the way SV>を見落とすな
31 代入法で離れた先行詞を追え
32 what 節を [ ]に入れてSVOCを確定
33 <what S be>は「(いついつの)S」と訳す
■共通関係の把握
34 共通関係<A and B>はBからキャッチ!
35 Vを共有するSやOを探せ!
36 Vがつながる共通関係を見抜け
37 前置詞句がつながる共通関係を見抜け
38 名詞をつないだ X(A+B) Y型を見逃すな
39 前置詞が共通語となる共通関係の発見
40 副詞をつなぐ共通関係を見落とすな
41 節をつなぐand, but, or
■省略の見抜き方
42 助動詞の後の隠れた動詞をキャッチせよ
43 副詞節で省略する<S + be動詞>
44 and/butの後ろの構造が不明なら前を見て比較
45 「否定語は省略されない」の原則に注目
■埋没 SPの発見
46 <There is S + P>は<S is P>
47 <名詞+ that節>、格なしthatなら同格節
48 < It+ V ~>ときたら中身がくるぞ!
49 補語がない< It+ V + that>に注意
50 < It is + 副詞(句/節)+ that ...>か、thatの後にS/Oなしは強調構文
51 強調構文の疑問形を見抜け!
■副詞的 so thatの把握
52 < so ~ that ...>のいろいろな訳し方
53 that 節から訳すべき< so ~ that ...>
54 意味の上では< so ~ that ...>=< such ~ that ...>
55 that や助動詞のない目的の< so that節>
■準動詞のSP関係の把握
56 形容詞的<to V>は名詞に後置
57 形容詞的<to V>「~すべき」がダメなら「~という」
58 < be+ to V >=< 助動詞+ V >ととらえる
59 < too ~ to V >の構造をつかめ
60 < enough + to V >の構造をつかめ
61 < for O to V >のSP関係をつかめ
62 文頭の to V はまず「目的」と考える
63 文頭の to V は「目的」でなければ「条件」
64 現在分詞は「形容詞」役の -ing形
65 動名詞の意味上の主語をつかめ
66 名詞の後の -ed形は過去か過去分詞か
67 分詞構文は「副詞」の役割
68 beingの隠れた分詞構文
■with構文の把握
69 < with OP >にSP関係をつかめ
■名詞・名詞構文の把握
70 < of + 抽象名詞 >は形容詞に換えられる
71 同格 of は「すなわち」・後ろから訳して「という」
72 < 名詞+of + 名詞 >のPS/VO関係をつかめ
■仮定法の把握
73 仮定法は「事実」と「時」をキャッチせよ!
74 < were to >は「ありそう」から「まずない」まで
75 < as if >は「~ならば…のように」が元の意味
76 < If ~>に代わる条件は不定詞・名詞をマーク
77 条件は副詞句をマークせよ!
■比較表現の把握
78 比較級/< as + 原級>は「比べる相手」をチェック
79 名詞をゼロにする< no +比較級 >→最上級
80 関係代名詞に変身した as /thanをキャッチ
81 no bigger than =as small as
82 「鯨の公式」は「馬は魚だ」との比較
83 < the +比較級、the +比較級>の the は副詞
■複雑な修飾関係の把握
84 関係詞節に潜るSVを< >で囲んで文型キャッチ
85 先行詞が二重に修飾される構文をキャッチ
■否定構文の把握
86 no の否定の仕方をつかめ
87 < 否定語+100%>の部分否定を見逃すな
88 二重否定 (-)×(-)=(+)
■倒置構文の把握
89 否定の副詞が文頭にきたら語順をマーク
90 文頭の< Not only >は倒置の仕掛け人
91 文頭の< Only+副詞(句/節) >も倒置の目印
92 副詞(句)が強調された倒置をキャッチ
93 as/thanの後の倒置を見抜け
94 < so V S >は「~もまた…である」
■挿入構文の把握
95 挿入 SVは文頭に置いて主節に仕立てよ
96 カンマにはさまれた挿入 if~の訳し方
■そのほかの重要表現
97 主節の内容を指す関係代名詞 as 節に注目
98 名詞の後にくる as 節は名詞を制限
99 <or>の訳し方に注意!
100 <文修飾の副詞+ SV>は「~なことに」
■復習トレーニング
さくいん




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・はじめに
・日常のおすすめ勉強法 英文解釈の勉強はこうする!
・6課 OとCにあるSP関係
・32課 what 節を [ ]に入れてSVOCを確定






日常のおすすめ勉強法 英文解釈の勉強はこうする!


「日常のおすすめ勉強法 英文解釈の勉強はこうする!」において、著者は、おすすめの英文解釈の勉強法について、述べている。
まず、おすすめできない勉強の仕方について、次の点を列挙している。
・英文を見ると未知の単語に眼がいって、すぐに辞書を引く
・本文全体に眼を通さずに、授業に臨む
・わからない単語の訳を本文と無関係に辞書から書き抜いて、本文を読み出す
・テキストに日本語を書き込む

どんな英文でも、まずは自力で解読して、辞書は予習のまとめの段階で引くように努力すると力がつくという。
そして、効果的な予習・復習の手順を挙げている。
①新しい課を2回ぐらい通読し、大体の内容を把握する
 (速読力がつく。とくに、名詞・動詞・否定語をマークせよ)
②1頁ぐらいずつ、音読を2~3回する
 (CDなどの音声教材を利用すると効果的)
③段落ごとの大意を大雑把に頭の中でまとめる
④各文の構造をSV…を中心に品詞を考えながら分析する
⑤ and /but/orに着目し、頻繁に使われる「共通関係」「共通構文」を意識して語・句・節どうしの関係を立体的にとらえる
⑥節や句を単位に語順にそった理解を心がける
⑦未知の単語や熟語も、最初は自力で文の流れ(文脈)から判読する
⑧辞書を使って未知の部分を確認する
 (発音、品詞、訳語、できれば例文も)
⑨ノート左頁に英文・文構造を書き、和訳は右頁に書いて授業中に添削する
 (左頁下に単語・熟語・構文・例文・語法などを整理する)
⑩復習として、全文暗記を目指してひたすら音読する
 (また和訳を見て英語を書いてみる)

(桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』桐原書店、2008年、xi頁)

とりわけ、従来から言われているように、「⑥節や句を単位に語順にそった理解を心がける」は、日頃から意識して、英文解釈してほしいと思う。


 本書では、基礎英文解釈の技術が100にわたって解説してある。
 ここでは、そのうち、次の2課を紹介しておきたい。
〇6課 OとCにあるSP関係
〇32課 what 節を [ ]に入れてSVOCを確定

6課 OとCにあるSP関係


「6課 OとCにあるSP関係」には、次のような英文解釈を解説している。

次の英文の下線部を訳しなさい
 A temple like that of Olympia was surrounded by statues of
victorious athletes dedicated to the gods. To us this may seem a
strange custom for, however popular our champions may be, we do
not expect them to have their portraits made and presented to
a church in thanksgiving for a victory achieved in the latest match.
                  (東京都立大)

≪語句≫
・statue (名)像
・victorious (形)勝利を得た
・athlete (名)競技者
・dedicate (Vt)を捧げる
・in thanksgiving for N 「Nに感謝して」
・achieve (Vt)を達成する /achieved (過去分詞)達成された
・latest (形)最近の

≪全文訳≫
 オリンピアの(寺院の)ような寺院は神々に捧げられた勝利を得た競技
 者の像に囲まれていた。私たちにとってこのことは奇妙な慣習に思えるかもし
 れない。というのは、現代の優勝者がどんなに人気があったとしても、私たち
 は彼らがごく最近の試合で勝利を達成したことに感謝して肖像画を作ってもら
 い、教会に献じてもらうのを期待したりしないからである。

≪解法≫
〇SVCの文型を作っている補語(C)は、文の主語を説明する役割をする 
 (⇒特に「主格補語」ということがある)
〇これに対して、 
  SV+OX. O is X
のように、<SVOX>の型の文からOXを抜き出して、Oを主格に変えて、<O is X>が文として成立するとき(Xが不定詞なら時制を持たせて文が成立するとき)、Xを「Oに対するC=目的格補語」と呼ぶ。
⇒このように、OとCの間に意味上S(主語)とP(述語)の関係があることを念頭におき、解釈するのが、この課で学ぶ技術である。

〇第1文は、まずA temple was surrounded.
「1つの寺院が囲まれていた」が骨格になる。
・that はthe temple の繰り返しを避けた代名詞
・dedicatedはstatuesを修飾する過去分詞

〇第2文のfor
・カンマにはさまれた譲歩を示す however~beを[ ]でくくると、
 for we do not expectとforの後にSVが続くから、forは接続詞
・this は第1文の内容を受けていることがわかる。

(To us)this may seem a strange custom
    S Vi     C
for, [ however popular our champions may be ],
 (等)  (副)譲歩 C     S     Vi
we do not expect them (to have their portraits
S Vt(否)   O   C    (O)
made and presented to a church~)
  (C①) (C②)  M

〇ここでのポイント
・expectのOであるthemとto haveの間にSとPの関係が、
 またhave のOであるportraitsと過去分詞made とpresentedの間にも、やはりSとPの関係があることを見抜くこと。
⇒わかりやすくするために不定詞を現在時制にして説明すると、以下のようになる。
 expect them to have their portraits made and presented
    O  X  O     (X①)  (X②)
    They have/Their portraits are made and presented
    S  V    S 助 過分① 過分②

※このように、Oを中心に意味を考えたときに、
  Oと意味上のSとPの関係を持つ語・句・節(X)をOに対するCと考えてよい。
・なお、<have+O+過去分詞>は、「Oを~させる[してもらう]」という意味の重要構文。

(桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』桐原書店、2008年、12頁~13頁)


32課 what 節を [ ]に入れてSVOCを確定


「32課 what 節を [ ]に入れてSVOCを確定」には、次のような英文解釈を解説している。

次の英文の下線部を訳しなさい
 The prosecuting counsel began by telling the court what he
intended to prove by evidence. Then he called his witnesses.
These persons can say what they know only in answer to
questions, so the examination of witnesses is very important.
                    (関西大)

≪語句≫
・the prosecuting counsel (名)原告側代理人、検事
・begin by Ving 「Vすることから始める、始めにVする」
・the court (名)裁判官
・evidence (名)証拠
・witnesses (名)証人
・examination (名)尋問

≪全文訳≫
 検事は裁判官にまず証拠によって立証しようとすることを告げた。そ
 れから検察側の証人の出廷を求めた。(証人となった)この人たちは、ただ尋問
 に答えることでしか、自分たちが知っていることを証言できない。したがって、
 証人尋問はきわめて重要なのである。

≪解法≫
〇関係代名詞、関係副詞には先行詞があった。
 この課には、「先行詞を内蔵した」whatが登場する。
 ⇒内蔵された先行詞が「事物」なら、what=the thing(s) whichと言い換えられる。
  「(~な)こと」と訳す。

〇では、第1文。
・counsel「代理人」など法律用語が出てくる。
 裁判を傍聴したつもりになって、読み下していくこと。
・The prosecuting counsel began (by telling the court )
 S        Vi   M→(動名)(Vt)(O1)
[ what he intended (to prove (by evidence))].
(O2)→(関代)(O) S Vt  O→(不)(Vt) M

⇒what節を[ ]でくくると、what節は動名詞tellingのOになっている名詞節であることがわかる。

・では節内はどうか。
 [ what he intended (to prove ~)](what はproveのO)
 (O) S Vt O(Vt)
 となる。
 what はthe thing(s) which「~なこと」である。
 このように、節内の文型を考えると、文意がはっきりする。

〇第3文にも、関係代名詞whatが登場する。
 このwhat節は can sayのOになる名詞節であるが、whatの支配範囲はどこまでだろうか。
・ These persons can say
   S     Vt
[ what they know ]
O→(関代)O S Vt
only (in answer)(to questions),
(副)  (M)    (M)
 このwhatは節内でknowのOとして用いられている。
 またknowとin answer~はつながるだろうか。
 ⇒「~に答えて知る」は非論理的である。
  in answerはknowを修飾していないから、what節はknowまでである。 
  in answerが修飾するのはsayである。

・so  the examination (of witnesses)
 (等) S      (目的)M
is  very  important.
  Vi (副)  C
  examinationは「試験」であるが、法廷では「尋問」という意味であることをお忘れなく。

(桑原信淑/杉野隆『基礎英文解釈の技術100』桐原書店、2008年、64頁~65頁)


≪【参考書の紹介】『音読英単語 必修編[改訂版]』≫

2022-06-16 19:34:05 | ある高校生の君へ~勉強法のアドバイス
≪【参考書の紹介】『音読英単語 必修編[改訂版]』≫
(2022年6月16日投稿)

【はじめに】


 以前2022年2月23日に、高校1年生用に使用されている英語の単語帳を紹介した。
〇温井史朗/岡田賢三『音読英単語 入門編[改訂版]』Z会出版、2016年[2008年初版]
 今回のブログでは、高校2年生のために英語の単語帳を紹介してみたい。
 聞くところによると、高校2年生では、次の英語の単語帳を高校で指定されているそうだ。
〇温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年]
この単語帳の特長や利点などについて考えてみたい。
 あわせて、暗記すべき重要な例文などをピックアップしておきたい。



温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年]

【温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版はこちらから】
温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版






温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版
【目次】は次のようになっている。

CONTENTS
 Unit1 Section 1~3 
    Speaking Plus
 Unit2 Section 4~6 
    Speaking Plus
Unit3 Section 7~9 
    Speaking Plus
Unit4 Section 10~12 
    Speaking Plus
Unit5 Section 13~15 
    Speaking Plus
Unit6 Section 16~18 
    Speaking Plus
Unit7 Section 19~21 
    Speaking Plus
Unit8 Section 22~24 
    Speaking Plus
Unit9 Section 25~27 
    Speaking Plus
Unit10 Section 28~30 
    Speaking Plus
Unit11 Section 31~33 
    Speaking Plus
Unit12 Section 34~36 
    Speaking Plus
Unit13 Section 37~39 
    Speaking Plus
Unit14 Section 40~42 
    Speaking Plus
Unit15 Section 43~46 
    Speaking Plus
巻末付録:外来語
INDEX




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・本書の「はじめに」
・英単語の分類項目
・特に暗記すべきSpeaking Plusコーナーの発話トレーニング
・テーマ別の例文の分類







本書の「はじめに」


 本書は、大学入試を突破する実戦力を総合的に身に付けるため、【4つの徹底】といった工夫がなされているという。

その【4つの徹底】とは次のものを指す。
①「覚えやすさ」の徹底
②「記憶定着」の徹底
③「実戦力養成」の徹底
④「盲点打破」の徹底

本書は6つの特長があるという。
1【入試コーパスから頻出の単語・フレーズ・例文を厳選】
<効果>
①漏れがない、無駄がない
②センター試験から難関大入試まで完全対応

・Z会独自の大学入試コーパス(主要57大学+センター試験の過去10年分のデータ)から、全出現語の94%強をカバーする頻出の単語・フレーズを厳選したという。
・見出し語は意味グループごとにまとめて掲載しているので、似た意味を持つ語を関連させながら覚えることができる。

2【Word→Phrase→Sentenceの3ステップ方式】
<効果>
①少しずつ語数を増やすから、覚えやすい
②単語とフレーズが同時に身につく
③例文で入試頻出表現が身につく

・例文は入試頻出の単語・フレーズが盛り込まれているので、丸ごと覚えることで、大学入試に頻出の表現を合わせて覚えることができる。

3【簡潔な例文を音読しやすいように収録】
<効果>
①記憶に定着しやすい
②音読しやすい

・見出し語の例文は暗記しやすいようになるべく簡潔にしたという。
・単語を記憶に定着させるには音読が欠かせない。付属のCD-ROMには、音声データを収録されているので、目的に応じた音読練習を行うことができる。
⇒「読む→聞く→音読する」の学習で発音や英文のリズムも身につく。


4【Endless Loop】
<効果>
①何度も目にするから記憶に定着
②派生語や他の意味・用法も確認

・一度出てきた見出し語の多くは、別のSectionの他の例文中で繰り返し登場するEndless Loop(無限連鎖)方式を採用。
⇒繰り返し音読し、記憶の定着率は格段にアップする。

5【実戦力を高めるSpeaking Plusコーナー】
<効果>
①覚えた単語を実際の会話でチェック
②Input→Outputへ

・例文(単文)で確認した単語を、さらに対話文の中でも確認できる。
・覚えた単語を実際のコミュニケーションの場で使うシミュレーションが可能。
・難解な単語でも「意味がわかる」から「使える」ようになるためのトレーニング。

6【語彙力+発信力をさらに強化】
<効果>
①英英定義で理解を深める
②簡易表現で表現の幅を広げる

・難度が比較的高い語彙については、「英英定義」により単語のイメージをつかみやすくしている。
・「簡易表現」では難解な単語をよりやさしく言い換えるトレーニングができる。
※持っている知識を最大限に活用して、記憶に定着させるように工夫してある。

(温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年[、2頁~7頁)

温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』は、入門編とは違い、特に5【実戦力を高めるSpeaking Plusコーナー】と6【語彙力+発信力をさらに強化】に特長がある。
「Speaking Plusコーナー」で、単語をさらに対話文の中でも確認でき、覚えた単語を実際のコミュニケーションの場で使うシミュレーションを想定できる点が良い。
また、「英英定義」および「簡易表現」で、理解を深めて表現の幅を広げる利点がある。

英単語の分類項目


 「はじめに」において、【4つの徹底】をうたっているが、その中に①「覚えやすさ」の徹底とあった。
・従来の【3ステップ方式】(Word→Phrase→Sentence)+新たな<単語の分野別提示>を挙げている。
・例として、「時間・期間・順序」に関する語は1つの項目として分類(No.1327のmomentary,
No.1329のpermanent, No.1332のprehistoric, No.1335のpreviousなど)
 →効率的でまとまりのある覚え方が可能となったという。

・この「時間・期間・順序」に相当する分類項目を抽出して、列挙すると、次のようになる。
(なお、この「時間・期間・順序」は、No.1321~1340、No.1401~1420で扱われている)


『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版
分類項目   通し番号
行為 No.1~20
事物 No.21~40
政治 No.41~60
学術・文芸・科学・思想 No.61~80
関わり・関係性 No.81~99
程度・状態・状況 No.100~120
行為 No.121~140
事物 No.141~160
経済・産業 No.161~180
プラス評価・行為・感情 No.181~200
関わり・関係性 No.201~220
程度・状態・状況 No.221~240
行為 No.241~260
持続・忍耐・抑制・許容 No.261~280
集団・社会(活動)・法律 No.281~320
プラス評価・行為・感情 No.321~340
関わり・関係性 No.341~361
程度・状態・状況 No.362~380
行為 No.381~400
一致・統合・適合 No.401~415
授与 No.416~420
プラス評価・行為・感情 No.421~441
認識・知覚・意図 No.442~460
程度・状態・状況 No.461~480
出来事・日常生活 No.481~500
生物・人・身体(活動)・健康 No.501~520
育成・推進・達成・獲得 No.521~540
プラス評価・行為・感情 No.541~560
認識・知覚・意図 No.561~580
程度・状態・状況 No.581~600
出来事・日常生活 No.601~620
生物・人・身体(活動)・健康 No.621~640
感情 No.641~660
マイナス評価・行為・感情 No.661~680
認識・知覚・意図 No.681~700
程度・状態・状況 No.701~720
能力・性質・態度 No.721~740
生物・人・身体(活動)・健康 No.741~760
感情 No.761~780
マイナス評価・行為・感情 No.781~800
認識・知覚・意図 No.801~820
単位・状態・状況 No.821~840
推移・移動・変化 No.841~860
生物・人・身体(活動)・健康 No.861~880
位置・場所 No.881~900
マイナス評価・行為・感情 No.901~920
認識・知覚・意図 No.921~940
推移・移動・変化 No.941~960
生物・人・身体(活動)・健康 No.961~980
位置・場所 No.981~1000
マイナス評価・行為・感情 No.1001~1020
分離・分類・対比 No.1021~1040
推移・移動・変化 No.1041~1060
生物・人・身体(活動)・健康 No.1061~1080
建物・構造物 No.1081~1100
マイナス評価・行為・感情 No.1101~1120
拒絶・禁止・抑圧・妨害 No.1121~1140
推移・移動・変化 No.1141~1160
発信・伝達・表現 No.1161~1180
位置・場所 No.1181~1200
自然(現象) No.1201~1220
停止・退行・消滅 No.1221~1229
対立・攻防 No.1230~1240
学術・文芸・科学・思想 No.1241~1260
発信・伝達・表現 No.1261~1280
単位・状態・状況 No.1281~1300
事物 No.1301~1320
時間・期間・順序 No.1321~1340
単位・状態・状況 No.1341~1360
学術・文芸・科学・思想 No.1361~1380
発信・伝達・表現 No.1381~1400
時間・期間・順序 No.1401~1420
位置・場所 No.1421~1440
事物 No.1441~1460
位置・場所 No.1461~1480




例えば、「プラス評価・行為・感情」については、次のような単語が分類されている。
・No. 181 significant(形)重大な、意義深い、深刻な
・No. 183 miraculous(形)驚くべき、奇跡的な
・No. 187 rational (形)合理的な、理性的な
・No. 200 capacity(名)能力、資格、収容力
・No. 321 preference(名)好み、(~を)好むこと
・No. 323 dignity (名)威厳
・No.328  prosperity(名)繁栄
・No. 329 congratulate (他)(人)を祝う
・No. 422 glory(名)栄光、名誉
・No. 427 justice(名)正義
・No. 541 available(形)利用できる、手に入る
・No. 549 certificate(名)証明書、免許状
・No. 552 coherent(形)首尾一貫した、密着した

〇反対に、「マイナス評価・行為・感情」は次のような単語である。
・No. 661 negative(形)否定の、否認の、消極的な (名)否定的回答、拒否
・No. 663 betray (他)を裏切る
・No. 680 regrettable(形)(物事が)残念な


特に暗記すべきSpeaking Plusコーナーの発話トレーニング


「Speaking Plusコーナーの発話トレーニング」の中から、特に暗記すべき会話文を、ピックアップしておきたい。

〇現在の日常生活に関連したコンピューターおよびインターネットについても、「No. 4 net auction」、「No. 41 computer 」と題して、次のような会話文を載せている。

No.4 net auction
W:Where did you get this old navigation chart?
女性:この古い航海図をどこで手に入れたの?
M:I got it in an Internet auction. As you may know, you can buy
anything, from jewels to real estate, on the net.
男性: "ネットオークションで手に入れたんだ。知っているかもしれないけど、宝石
から不動産まで、何でもネットで買えるんだよ。
W:"I know that. Using the net to search for commodities you want is
a lot of fun.
女性:知ってるわ。欲しい商品を探すのにネットを使うのはとてもおもしろいわね。
M:It certainly is!
男性: 確かにおもしろいよ!

No.41 computer
W:I've gotten rid of the computer virus. Three corrupt programs
have been repaired. What do you say to deleting these old files
and unnecessary programs on your desktop?
女性: "コンピューターウイルスを除去したわよ。3つの壊れたプログラムが修復されたわ。デスクトップにあるこれらの古いファイルや不要なプログラムも消去しましょうか。"
M:Let me see. Please delete everything except the Excel documents.
男性:そうだな。エクセルのファイル以外はすべて消してくれるかな。
W:Done. Your computer should run fine from now.
女性:終ったわ。あなたのパソコンはこれからちゃんと作動するはずよ。
M:Thanks a lot. I myself will never open any suspicious file from
now on.
男性:ありがとう。僕自身これからは怪しいファイルは開かないようにするよ。
(温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年[、38頁~39頁、298頁~299頁)



〇日常生活にかかわる相続問題にまつわる会話もある。
No.20 way of living
M:How much money did you inherit from your late father?
男性:亡くなったお父さんからいくら相続したの?
W:Not that much, actually. My brothers and I were born in an
affluent household, but he donated most of his money to animal
welfare charities.
女性:実際はそれほど多くはないわ。私も兄弟も裕福な家に生まれたんだけど、父は財産のほとんどを動物愛護団体に寄付したの。
M:So, no more living in luxury?
男性:それなら、今はもう贅沢な生活ではないんだね?
W:No. Anyway, I respected him, including his way of living.
女性:そうね。とにかく私は、その生き方を含めて、父を尊敬していたわ。
(温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年[、142頁~143頁)

〇ここ2~3年の社会情勢に深刻な影響を及ぼした新型コロナウイルスをも思わせる、「No.30 epidemic」と題する発話トレーニングは是非とも暗記しておきたい。


No.30 epidemic
M:This epidemic has been a catastrophe. Approximately how many
people have contracted the virus?
男性:この伝染病は大惨事となっています。だいたいどのくらいの人がウイルスに感染したのですか。
W:In this country we guess about 2 million. Most of the outbreaks
are concentrated in the big cities.
女性:この国ではおよそ200万人くらいだと思います。流行のほとんどが大都市に集中しています。
M:Is there anything the international agency can do to help?
男性:国際機関ができる何か役に立つことはありますか。
W:Unfortunately, nothing can ease the suffering now. A potential
cure will take months to develop.
女性:残念ですが、今は何をしても災難を和らげることはできません。まだ発見されていない治療法の開発には何カ月もかかるでしょうね。
(温井史朗/岡田賢三『音読英単語 必修編[改訂版]』Z会出版、2016年改訂版[2018年[、220頁~221頁)


テーマ別の例文の分類



私は、テーマ別に例文を次のように分類してみた。
〇グローバル化、地球温暖化、環境問題
〇政治、経済、歴史、文化、社会、国民性、
〇英語・語学、
〇科学・学問、医学・健康、教育、人間関係、主張、文学、日常生活

科学・学問の定義・本質に関わる例文もあるので、次のような例文は暗記しておきたい。
たとえば、「歴史とは何か」「文化とは何か」「生態学とは何を研究する学問であるのか」という問いに対する答えとなるような、次のような重要な例文がある。
〇No.301 legacy (名)遺産
History is a way of creating order out of the mass of evidence
that is the past's legacy to the present.
英英 legacy : something handed down from a predecessor
歴史とは、過去から現在への遺産である数多くの証拠の中から秩序を生み出す方法である。

〇No. 1379 define(他)を定義する、を明確に示す
We define culture as the set of attitudes, beliefs, values, and
behaviors shared by a group of people.
我々は文化を、ある集団によって共有される一連の考え方、信仰、価値観、そして行動と定義する。

〇No. 1377 ecology(名)生態学、生態
The study of ecology helps us understand how living organisms
relate to each other and to their environment.
生態学の研究によって、生命体がどのようにして相互に関連し合い、また環境と関係するのかについて理解するのに役立つ。

以下、重要と思われる例文をピックアップしておきたい。

グローバル化、地球温暖化、環境問題



No.845 tend (自)…する傾向がある(to..)
We tend to believe that globalization will help develop economies and
advance technology worldwide.
我々は、グローバル化は経済の発展と科学技術の世界的進歩に役立つと考えがちである。

No.936 declare (他)を断言する、を宣言する、を申告する
In 1997, Henry Kendall declared that global warming ""is very real and action is needed immediately. 1997年、ヘンリー・ケンダルは地球温暖化は「きわめて深刻で、迅速な対応が必要である」と断言した。

No.1066 vital(形)きわめて重要な、生命の、活力に満ちた
Forests play a vital role in preventing global warming.
森林は地球温暖化を防ぐ上できわめて重要な役割を果たす。

No.1203 glacier (名)氷河
Many glaciers are now retreating due to global warming.
いまや多くの氷河が地球温暖化によって後退している。

No.1217 tornado (名)竜巻
It is thought that this year's frequent tornadoes and flooding were a
result of global climate change.
今年頻繁に起きた竜巻や洪水は、地球規模の気候変動の結果であると考えられている。

No.1300 pile(名)(~の)山、積み重ね (他)を積み上げる
There is a pile of evidence about the effect of global warming
on marine animals.
地球温暖化が海洋動物に与える影響について、数多くの証拠がある。

環境
No.452 sensitive (形)神経質な、敏感な
We cannot be too sensitive about environmental pollution.
環境汚染に関してはいくら神経質になってもなりすぎることはない。

No.495 consequence(名)結果、成り行き
As a consequence of global industrial development, we may
have altered the world's climate.
世界的な産業発展の結果として、私たちは世界の気候を変えてしまったのかもしれない。

No.527 foster (他)を促進する、(他人の子)を育てる (形)里親[子]の
We should develop new ways to work together to foster economic
progress without environmental destruction.
英英 foster : to promote the growth or development of something
私たちは、環境を破壊せずに経済的発展を促すために一致協力する新しい方策を生み出すべきである。

No.617 weave (他)(布など)を織る、を編む (自)織物を織る、縫うように進む
The recycled bottles are broken down and made into fiber, which
in turn is woven into fabric.
再利用のビンは割られ、繊維になって、次々と布地に織られる。

No.818 assess (他)を査定する、を評価する
The scientists studied vast areas of the ocean thoroughly in order to
assess how extensive the pollution was.
英英 assess : to determine what the amount, value, or rate of
something is
科学者たちは、汚染度合いがどのくらい甚大かを査定するために、海の広大な範囲を徹底的に研究した。

No.841 changeable(名)変わりやすい、気まぐれな
The climate is rather changeable in this region, and rapid falls in
temperature are not uncommon.
この地域の天候はかなり変化が激しく、温度が急に下がることも珍しいことではない。

政治、経済、歴史、文化、社会、国民性


政治
No.49 ministry (名)省、内閣
The Ministry of Foreign Affairs protested to that country regarding the nuclear weapons testing.外務省は核実験についてその国に抗議した。

No.96 uphold (他)を(変えずに)続ける、を支持する、を是認する
The Prime Minister announced that he would uphold the Constitution.
英英 uphold : to support by approval or encouragement
首相は憲法を変えないと発表した。

No 98 submit (自)服従する (他)を服従させる、を提出する
You can make people submit by the sword, but you won't win their hearts.
人々を武力によって服従させることができても、その気持ちは勝ち取れないだろう。

No. 285 discriminate (自)差別する
The scandal uncovered the fact that the politician had discriminated
against the poor and weak.
英英 discriminate : to treat a person or group of people differently
from other people or groups on the grounds of age, race, sex, etc.
スキャンダルによってその政治家は貧しい弱者に対して差別していたことが明らかになった。

No.399 sow(他)(種子)をまく (自)種をまく
Which country is responsible for sowing the seeds of conflict in the Middle East?
どの国が中東での闘いの火種をまいた責任があるのだろうか。

No.695 notify (他)に通告する、に通知する
The government notified the public that income tax would be abolished.
簡易 tell the public officially that ..
政府は所得税が撤廃されるだろうと国民に通告した。

No.1049 flourish (自)繫栄する、(草木が)繁茂する
A form of democracy flourished in ancient Athens nearly 2,500 years ago.
民主主義という形態はおよそ2,500年前、古代アテネで栄えた。

No.1131 obstacle (名)障害(物)、邪魔(者)
We have to do our best to get rid of all obstacles to genuine world peace.
私たちは、真の世界平和の障害となるものすべてを取り除くために、最善を尽くさなければならない。

No.1350 unimaginable(形)想像を絶する、想像できない
If we don't take drastic steps to put an end to the nuclear arms
race, the human race will face unimaginable tragedy.
核開発競争に終止符を打つために思い切った措置を取らなければ、人類は想像を絶する悲劇に直面するだろう。


経済
No.110 stable(形)安定した、一定の
The price of real estate has been stable for the last few years.
英英 stable : firmly fixed or not likely to move or change
不動産の価格はここ数年安定している。

No.370 fairly(副)公正に、かなり
How can we distribute the wealth of society as fairly as possible?
どうすれば社会の富をできるだけ公平に分配できるのだろうか。

No.481 means (名)手段、方法、財力
Money should be regarded as a means to an end.
英英 means : a method for doing or achieving something
お金は目的達成のための手段と考えるべきである。


歴史
〇英語の語学史に関わる歴史事項としては、次の例文は見逃せない。
No.408 fuse(自)融合する(with)
The language of the Anglo-Saxons fused with French after the Norman Conquest.
ノルマン人の征服後にアングロサクソン人の言語はフランス語と融合した。

〇竜伝説と水稲稲作の起源との関連性を指摘した仮説を英文で述べるとしたら、次の例文は参考となろう。
No.953 trace(自)さかのぼる (他)の跡をたどる (名)跡
Some historians believe dragon myths can be traced back 7,000 or 8,000 years, to the origins of wet rice agriculture.
歴史家の中には、竜伝説は7、8千年前の水稲耕作の起源にまでさかのぼることができると信じている者もいる。

また、竜に関する例文としては、次のものもある。
No.686 imaginary (形)想像上の
In medieval times people didn't regard the dragon as an imaginary animal.
中世、人々は龍を想像上の動物とはみなしていなかった。

※西洋と東洋における竜(ドラゴン)の捉え方の相違という壮大な歴史的テーマにつながる問題に発展しうる。

〇世界史における重要な歴史事項を英語で表す際の参考となる例文として、次のものがある。
No.745 pilgrim(名)巡礼者
The Pilgrim was also heading for the New World on the Mayflower in 1620.
その巡礼者もまた1620年にメイフラワー号に乗って新世界を目指していた。


No.795 evil(形)邪悪な (名)邪悪、悪
Even before the Christian era a cross was a magical symbol that could keep away evil spirits."
西暦紀元以前でさえ、十字架は悪霊を追い払うことができる不思議な象徴だった。

No.929 worship(名)崇拝、礼拝 (他)を礼拝[崇拝]する
Can you imagine that Stonehenge was a temple built for the worship of ancient gods?
英英 worship : the act of showing respect and love for a god
ストーンヘンジは、古代の神々を崇拝するために造られた寺院だったということが想像できますか。

No.638 prophet(名)予言者
People want to find some connection between what a particular
prophet had predicted and some later event in history.
英英 prophet : a person who delivers messages that are believed
to have come from God
人はある予言者が予言したこととその後の歴史的事件との間に何らかの関連性を見出そうとする。

文化

No.1403 subsequent(形)その後の、引き続いて起こる
Our ethical values as well as our cultural legacy must be passed on
to subsequent generations.
英英 subsequent : happening or coming after something else
我々の文化遺産と同様に道徳的価値観も、あとに続く世代に伝えていかなければならないものである。

No.1317 heritage(名)(文化的)遺産、伝統
One of the ways to learn about the culture and history of a country
in a short time is to visit a heritage museum in that country.
短期間である国の文化や歴史について学ぶ方法の一つは、その国の文化遺産の博物館を訪れることです。

No.1318 chopstick (名)箸
My interest in Japanese food and culture motivated me first of all to
learn how to use chopsticks.
日本の食べ物や文化に対する興味があったので、まずはお箸の使い方を学ぼうという気持ちになった。

社会
No.438 adequate (形)十分な、適した
The rapid growth of the world's population makes it critically
important to secure adequate water supplies.
簡易 secure enough water supplies
急激な世界人口の増加によって、十分な水の供給を確保することは非常に重要になっている。

No.947 shrink (自)減少する、縮む、しりごみする (他)を縮ませる (名)収縮
The populations of Europe and the rich countries of Asia will shrink and age.
英英 shrink : to become smaller in amount, size, or value
ヨーロッパ各国とアジアの豊かな国々では人口が減少し、高齢化するだろう。

No.1056 mobility (名)流動性、動きやすさ
There will be greater mobility in population composition and employment in Japan in the future.
将来、日本における人口構成と雇用はより流動的なものになるだろう。

No.830 medium (名)(通信・表現などの)手段、媒体
(複 media; the mediaで)マスコミ、中間 (形)中間の
The Internet has been widely accepted as a medium of communication.
簡易 a way of communication
インターネットはコミュニケーションの手段として広く受け入れられている。

No.886 ubiquitous(形)(同時に)至るところに存在する、どこにでも現れる
The Internet has become ubiquitous whether we like it or not.
簡易 get to be seen everywhere
好むと好まざるとにかかわらず、インターネットはあらゆるところに存在するようになった。

国民性
No.72 concept (名)概念、考え
Americans value the concept of equal opportunity.
簡易 the idea of ~
アメリカ人は機会均等の概念を重んじる。


No.198 loyalty (名)忠誠(心)、忠実
Traditionally in Japan many people have placed a high value on loyalty to the employer and job stability.日本では昔から多くの人が雇用主と職の安定に忠誠を尽くすことを重視してきた。

No.360 whereas (接)一方では、ところが
In the US, there is more diversity in religion, whereas in my home
country, most people follow the same religion.
米国では宗教においてより多くの多様性が認められるが、一方で私の母国では、大部分の人が同じ宗教を信奉している。

No.813 acknowledge (他)を認める
Many people acknowledge the fact that the Japanese are able to embrace religious diversity.
日本人は宗教的多様性を受け入れることができるという事実を、多くの人たちが認めている。

No.1344 emphasis (名)重要視、強調(複 emphases)
Compared with Westerners, in general, Japanese put more emphasis
on hierarchy.
西洋人と比べて、一般的に日本人は階級性をより重要視する。

英語・語学


No.379 somewhat (副)いくぶん、やや、少し
The English used in the United States is somewhat different from
the English used in Great Britain.
米国で使われている英語は、英国で使われている英語とはいくぶん違う。

No.187 rational (形)合理的な、理性的な
It's rational to memorize verbs together with nouns and the other
parts of speech when you are learning English.
英語を学ぶ時、動詞を名詞やその他の品詞と一緒に覚えることが合理的です。

No.247 derive (自)由来する(from) (他)を引き出す、の起源を求める
The word "art", in fact, derives from the Latin "ars", meaning "skill."
"art"という言葉は、実はラテン語で「技」という意味の"ars"に由来する。

No.62 abstract (形)抽象的な
Nouns may suggest abstract concepts, such as love or honesty.
名詞は愛や誠実のような抽象的な概念を示すだろう。

No.469 equivalent (形)相当する、同等の (名)同等物、相当語(句)
In English there is actually no single-word equivalent of ""yu"" (hot water).
英語には実際、「湯」に相当する単語がない。

No.739 characteristic(形)(~に)特徴的な(of)、特有の (名)特徴
The ability to communicate by means of language is characteristic of human beings.
英英 characteristic : a special quality or trait that makes a person,
thing, or group different from others
言語による意思疎通の能力は人類に特徴的なものである。

No.719 vague(形)あいまいな、ぼんやりした
Finding precise words to explain vague and obscure ideas forces you
to focus your thoughts.
あいまいではっきりしない考えを説明する正確な言葉を探すには、自分の思考を無理やりにでもまとめなければならない。

No.938 assert (他)と主張する、と断言する
It is commonly asserted that Japanese is an extremely difficult
language to learn.
日本語は学ぶのが非常に難しい言語であると一般的に主張されている。

法律・裁判・犯罪


No.373 fundamental(形)基本的な、本質的な (名)(通例 the ~sで)基本、原理
Fundamental human rights must be respected in all cases.
簡易 the most basic and important human rights
いかなる場合においても基本的人権は尊重されなければならない。

No.986 boundary (名)境界(線)、(~iesで)限界
The boundary dispute between Thailand and Cambodia was settled
at the International Court of Justice.
英英 boundary : something that shows where one area ends and
another area begins"
タイとカンボジアの国境紛争は、国際司法裁判所で解決された。

No.1176 sentence (他)に宣告する、に判決を下す (名)文、判決
The prisoner was sentenced to death by the military court.
その囚人は軍事裁判所に死刑を宣告された。

No.1130 object "(自)反対する (名)物体、目的、対象
※動詞と名詞とではアクセントが異なる"
Religious people object to the death penalty because killing is
considered to be a sin.
簡易 be against the death penalty
信心深い人たちは人を殺すことを罪だと考えているので、死刑に反対している。


No.1110 violate (他)に違反する、を侵害する
If you violate the law, you will surely be punished.
簡易 break the law"
法律に違反すれば、必ず罰せられるだろう。

No.1214 tide(名)潮、潮の干満
The coast guard regulations prohibit us from sailing a boat through
the coral reef during low tide."
海上保安規約により、干潮時にサンゴ礁のあるところを航行することは禁じられている。

No.1331 deadline (名)期日、(最終)期限
She completely forgot about the deadline for paying her parking fine.
彼女は、駐車違反の罰金を払う期日のことをすっかり忘れていた。

No.1227 abolish (他)を廃止する
They insisted that the school rugulation against dyed hair should be abolished.
英英 abolish : to officially end or stop something, such a law
彼らは、髪を染めることを禁止する校則を廃止すべきだと主張した。



No.1271 conclude (他)と結論づける、をしめくくる
After the evidence was deemed to be fact, the judge concluded that
he was definitely guilty.
その証拠が事実であるとみなされたあと、裁判官は彼が間違いなく有罪だという結論に至った。

No.1360 sensational(形)衝撃的な、驚くべき
The sensational murder trial attracted a lot of public attention.
その衝撃的な殺人事件の裁判は世間の大きな注目を集めた。

No.1362 investigate (他)を調査する
Thanks to an anonymous phone call, the police were able to start
investigating the murder case in that country.
英英 investigate : to officially examine the facts or the cause of
a crime or an accident
匿名の電話のおかげで、警察はその郡の殺人事件の調査を始めることができた。

No.1250 review (他)を再調査する、を復習する (名)再調査、復習、批評
The police started to review the evidence that the accident was
caused not by intention but through negligence.
警察は、その事故は意図的なものではなく、過失によって引き起こされたものだという証拠の再調査を始めた。

No.417 inherit (他)を相続する、を遺伝的に受け継ぐ
She inherited her husband's property, but spent it all in a few years.
簡易 receive her husband's property after his death
彼女は夫の財産を相続したが、数年でそれを使い果たした。

No.1069 spouse (名)配偶者
When a person dies, the remaining spouse inherits half the estate and
the other half is divided equally between the children.
英英 spouse : a husband or wife
人が亡くなると、遺族の配偶者は遺産の半分を相続し、あとの半分は子どもたちの間で均等に分割される。

No.1290 maximum (形)最大限の (名)最大限
She utilized his inheritance for the maximum benefit of her children
without interference or attack from his relatives.
彼女は、彼の遺産を彼の親戚からの干渉や攻撃を受けることなく、最大限自分の子どもたちの利益になるように使った。

科学・学問、医学・健康、教育、人間関係、主張、文学、日常生活



科学・学問
No.78 subjective (形)主観的な
What is important in science is not a subjective view but objective observance.
科学において重要なことは、主観的な見方ではなく客観的な観察である。

No. 355 relevant (形)関連した、適切な
The main purpose of the research is to gather all basic information
relevant to the patient's illness.
その研究の主目的は、患者の病気に関連するすべての基本的な情報を集めることである。

No.683 grasp (他)を理解する、をしっかりつかむ (名)理解、しっかりつかむこと
It's harder to grasp the notion of the 'subconscious' than we thought.
簡易 completely understand the notion of ~
「潜在意識」の概念を理解することは、考えていたよりも難しい。

No.696 observe (他)を観察する、を守る
It's fundamental for a biologist to observe animals in their natural surroundings.
簡易 watch animals carefully in their natural surroundings
生物学者が自然環境の中で動物を観察するのは基本的なことである。

No.1138 confine (他)を限定[制限]する、を閉じ込める
There is a general acceptance that learning is not something
confined to school and college years.
英英 confine : to keep someone or something within limits
学習とは学生時代や大学時代に限定されたものではないと一般的に考えられている。

No.827 range (自)(範囲などが)及ぶ (名)範囲
Applied mechanics ranges from the cosmic scale to the atomic and molecular scales.
応用力学は、宇宙規模のことから原子や分子の範囲にまで及ぶ。

No.1211 erupt (自)(火山が)噴火する、勃発する
The geologist predicts that the volcano will erupt and cause a
catastrophe within the next ten years.
英英 erupt : <of a volcano> to send out rocks, ash, lava, etc., in a sudden violent explosion
その地質学者は、その火山は今後10年以内に噴火し、大惨事をもたらすだろうと予測している。

医学・健康
No.181 significant(形)重大な、意義深い、深刻な
The impact of ill-health does become a significant issue for most older people.
簡易 become a very important issue for ~
健康障害の影響はほとんどの高齢者にとって本当に重大な問題になっている。

No.435 breakthrough(名)進展、躍進、重大な発見、輝かしい成果、打破
Medical scientists have made a major breakthrough in the treatment of cancer.
医学者たちはガンの治療において大きな進展を遂げた。

No.630 pupil(名)生徒、瞳
In the survey three or four out of ten elementary school pupils said
they felt they had had insufficient sleep.
調査では、小学生10人中3人から4人が睡眠不足だと感じていると述べた。

No.756 lung(名)肺
It goes without saying that lung cancer is closely related to smoking.
肺がんが喫煙と密接な関わりがあることは言うまでもない。

No.910 nasty(形)厄介な、意地の悪い、嫌な
Apparently he picked up a nasty virus on his trip last week.
英英 nasty : unpleasant and/or unkind
どうやら彼は、先週の旅行で厄介なウイルスに感染してしまったらしい。

No.1001 corrupt (形)堕落した、(データが)壊れた (他)を堕落させる、(自)堕落する
Corrupt scientists have lied about and covered up the fatal effects of
cigarettes on smokers and those around them.
腐敗した科学者は、タバコを吸う人とその周囲の人たちに及ぶタバコの致命的影響についてうそをつき、事実を隠蔽した。
No.1006 deficiency (名)不足、欠乏
Few people understand that salt deficiency can cause headaches and weakness.
塩分不足が頭痛や衰弱を引き起こすことがあると理解している人はほとんどいない。

No.1008 despair(名)絶望 (自)絶望する
The doctors were in despair as they were completely unable to stop the epidemic.
医師たちは、伝染病を食い止めることがまったくできなかったので絶望した。

No.1111 contaminate (他)を汚染する、に悪影響を及ぼす
Even the residents were not allowed to enter their land, which had
been contaminated by radioactivity.
居住者たちでさえ、放射能で汚染されてしまった自分たちの土地に入ることを許されていなかった。

No.1175 reveal(他)を明らかにする、を暴露する
It was revealed that the soil in the region was polluted by radioactivity.
簡易 It is made clear that ..
その地域の土壌が放射能によって汚染されていることが明らかにされた。

No.1149 alter (他)を変える (自)変わる
We evolved naturally over millions of years but now we can alter our
bodies by genetic manipulation.
私たちは、何百万年にもわたって自然に進化してきたが、今や遺伝子操作によって私たちの身体を変えることができる。

No.1257 gene(名)遺伝子
It took many years before we identified the genes that play a vital
role in determining human characteristics.
私たちは長い年月をかけて、人間の特徴を決定付けるきわめて重要な役割を果たす遺伝子を突き止めた。

No.1429 pharmacy (名)薬局
Pharmacies will one day offer medicines based on genetic
manipulation, for which safety standards will need to be established.
いつか薬局は遺伝子操作に基づいた薬を出すようになるだろうが、そのための安全基準が制定される必要がある。
教育
No.271 compromise(名)妥協、妥協案 (自)妥協する
A teacher should be one who never makes a compromise in his
heart and mind with what is untrue.
英英 compromise : an agreement reached through the mutual
adjustment of demands
教師とは、心と精神において、真実でないものに対して決して妥協しない者であるべきだ。

No.658 alarm (他)に危険を知らせる、をはっとさせる (名)警報、驚き
Alarmed by declining student interest in science, Japan is planning
to reform the way science is taught in its schools.
学生の科学に対する関心が低下していることに危機感を感じ、日本では学校での科学の指導方法を改善する方針を立てている。

No.972 heredity (名)遺伝
The scholar, who has a wide range of knowledge on child education,
insists that a child's musical talent depends on heredity.
英英 heredity : the transmission of genetic characteristics from
parents to offspring
幼児教育に広範な知識を持つその学者は、子どもの音楽的才能は遺伝によって決まると主張している。

人間関係
No.194 grateful (形)感謝している
We shall be grateful for any assistance you provide.
あなたのお力添えに感謝いたします。

No.279 tolerate (他)を我慢する、を許す
To be frank, I cannot tolerate his rude attitude toward me.
簡易 put up with his rude attitude toward ~
率直に言うと、彼の私に対する失礼な態度には我慢できない。

No.692 infer (他)(自)(を)推察する、(を)推論する
I inferred from what she said that he had offended her.
英英 infer : to form an opinion about something that is based on
reasoning rather than concrete information
私は彼女の言葉から、彼が彼女の感情を害したのだと察した。

主張
No.237 elaborate "(形)手の込んだ、精巧な (他)を念入りに作る
※形容詞と動詞ではアクセントが異なる"
Many students couldn't make elaborate statements of their
opinions at the meeting.
英英 elaborate : very detailed and complicated
多くの学生は、会議で自分の意見について念入りな説明をすることができなかった。

No.525 execute (他)を実行する
I think it more important to execute our plan than to waste time on abstract discussion.
抽象的な議論に時間を浪費するよりも、自分たちの計画を実行する方が大事だと思う。

No.1003 criticize (他)を批判する
The civil servant insisted that the citizens were criticizing him for no good reason.
英英 criticize : to express disapproval of someone or something
その公務員は、市民たちがこれといった理由もなく自分を批判していると主張した。

No.1480 verge(名)ふち、境界、瀬戸際
Some people claimed that we were on the verge of world-wide catastrophe at the end of the millennium.私たちは千年紀の終わりに世界的規模の大惨事のふちにあると主張する人もいた。

文学
No.204 sympathize (自)同情する、共感する(with)
Depending on how the author wants you to feel, you may sympathize with one character.
英英 sympathize : to feel that you understand someone's problems
筆者があなたにどのように感じてほしいかによるが、あなたはある登場人物に同情するかもしれない。

日常生活(旅行)
No.981 aisle (名)通路
Which seat do you prefer in a plane, a window seat or an aisle seat?
飛行機では、窓側の席か通路側の席のどちらが好きですか。