らびおがゆく Vol.3

山形県を中心とした演奏活動等

佐藤敏直 弦楽四重奏曲第1番(1964)その2

2008年11月21日 23時42分29秒 | 山形弦楽四重奏団
 J-POPを聴く人などは、新曲が出たら真っ先に聴きたいと思う傾向があります。贔屓のアーティストが歌うならば、その新曲に興味があるのです。もちろん昔の曲を思い出や懐かしさから聴く人もいますが、そのアーティストが好きだから聴くのであって、例えば松田聖子さんの曲を安室奈美恵さんのバージョンで聴くという習慣は長らくあまり見かけませんでした。

 ここ数年、やっと徳永英明さんに代表されるように以前のヒット曲をカバーするという事が、とてもポピュラーになってきました。名曲を歌に自信があるアーティストが再びとりあげ始めたのです。ただの商業音楽~消費音楽から一つの作詞作曲された曲として残る動きとも言えるかもしれません。

 一方、クラシック音楽ファンのほとんどは、古の名曲を色んなアーティストで聴き比べていく人が多いように思います。クラシックファン歴が長くなればなるほどに、その傾向は強くなる気がします。

 例えば、バッハの無伴奏チェロ組曲だけで何種類の盤が世界中に出回っているのでしょうか?以前の友人に世界中のハッハの無伴奏チェロ組曲のCDやレコードを集めるという趣味の人がいました。20年位前の時点で、80種類くらい所有していたように記憶しています。

 そしてクラシック音楽ファンは新しい音楽~特に現代音楽(新曲)には強いアレルギーを持っている人が、(一部のマニアは除いて)多くいます。毎年サントリーホールでやっている芥川作曲賞の演奏会には人が集まりませんし。笑。

 
 もの凄く前置きが長くなっていますが、これからある意味私の中ではタブ~な事に挑戦してみたいと思います。私はクラシック音楽の演奏会は予備知識や解釈の押し付けになるような事は、演奏を聴く前はなるべくしないようにしています。演奏を聴いているときの感じ方がぶれるような気がするからです。演奏会後にその興味を持った曲に付いて色々と調べるのが一つの楽しみとなっています。自分の感じた事の答え合わせみたいなみのでしょうか?

 当記事は、あえて現代音楽である佐藤敏直氏作曲の弦楽四重奏曲第1番(1964)の私が勝手に感じている作曲者の意図を書いてしまおうと思っています。変な解釈の押しつけは止めてくれぇぇええ~という方は、ここから下は読まないで下さい。

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 まずは以前書いた記事のリンク
佐藤敏直 弦楽四重奏曲第1番(1964)

 この記事を書いたときから演奏したり、CD-Rを聴いたりしているうちにだいぶ印象が変わってきました。

 第1楽章は、昨日の記事で書いたように佐藤氏は日本固有の民謡調の曲を書いています。「ほらっこんなに心の落ち着く日本の調べがあるんですよ!みんなでまずは鑑賞してみましょうか?」てな具合です。少し寂しげな感じ(不安な感じ)がする事の答えは第3楽章にあります。

 第2楽章は、もう少し誰にでも身近なわらべ唄調の曲です。「かぁ~ご~めぇかぁ~ごめぇ~」みたいな感じでしょうか?日本の里山などに代表されるような原風景が思い起こされます。しかし更に不安な空気はすぐそこに近づいているのでした。

 第3楽章(終楽章)にくると、とうとうその不安な空気の正体が姿を現します。ロックに代表される洋楽の登場です。マクドナルドのハンバーガーみたいに若者の心をどんどん虜にしてゆきます。「俺たちかっこいいだろ~~??まだ民謡なんて聴いているの?駄目駄目!俺たちのビートに乗り遅れるなよ!」と日本古来の音楽を駆逐してゆこうとします。

 中間部では、また再び民謡が抵抗します。しかし力のあるロックの勢いには勝てそうもありません。日本の唄の力(日本の音楽文化?)はどんどん奪われていますが、最後の抵抗をします。日本の唄とロックの「最後の戦い」でしょうか?

 パワーで勝利をもぎ取ったロックの嵐が吹き荒れます。(Codaの部分)~終わりまでロックが勝利宣言をします。

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 佐藤敏直氏は、日本の響きを追求して作曲した事は昨日書きました。以上の事からこの曲は、日本の音楽(民謡、わらべ歌、雅楽など)を洋楽(ロックなど)が駆逐してゆく時代の流れへの批判と共に、その流れに抗う事が出来ない悔しさ(空しさ)みたいなものを表現しようとしたのではないかと推測しています。

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 以上は全くの私の想像の世界です。上記の文章を読んだ方は、今度の山形弦楽四重奏団第29回定期演奏会に来て佐藤敏直氏の曲を聴いた時に(わかりにくいかもしれない)現代音楽を嫌う事無く、曲の面白さに出会えるかもしれません。現代音楽(新曲)を聴くときの助けになれば良いなと思って、今回だけこのような記事を書きました。

 どうでしょうか?邪魔ですかねこんな解説は・・・・・・。

 もちろん自分だけの感想を持っていただけたら、それに越した事はありません。
 
コメント (2)
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