花*小紋日記

出張着付師kyoさんの奮闘記

背中心と衽(おくみ)線。

2018-02-26 14:02:22 | 着付け技術
オリンピックが終わり、日常が戻ってきました
刺激的な毎日が終了して、ちょっぴり寂しい思いです
今回のオリンピックは選手たちの活躍もさることながら、「相手を思いやる心」がクローズアップされた大会だったように感じます。
仲間を思いやり、ライバルを思いやり、家族やコーチ、サポートの周りの人々を思いやり・・・・
日本人選手の心温まる対応や言葉を聞いて「日本っていいな~」とジーンとしちゃいました
そして・・・どの選手も笑顔がキラキラしていてとても素敵でした 


さてさて、本日は久しぶりにお着物についてのお話(出張着付けが本業ですから・・・


お支度中にお客様とお話をしていると、予想外のお客様の「視点」を知ることができます。
意外や意外、細かい部分を見ているんですね~

以前、成人式のお支度をさせていただいたお嬢様のお母様からいただいたアンケートの内容です。(内容の一部を抜粋させていただきました)

「会場で他のお母さん達と話している時に、後ろの中心線がほとんどの人が左右どちらかに寄っていて下手な着付けが多いね~と話していました。うちの子は中心にちゃんとなっていて着崩れもせずきつくもなくとても良かったです」


とても喜んでいただけたアンケートで安心したのですが、お母様達の着眼点の鋭さに驚きです
まさか、後ろの中心線(背縫い・背中心)を見ていたとは

「後ろの中心線を真ん中にする」



これって、意外と技術が必要なんです
お着物がお誂えでジャストサイズの場合は普通に着付けて中心線が真ん中にきますが、お母様のものだったりレンタルの場合なかなか真ん中にはきません。
脇線だけを見て合わせる着付け師さんの場合は、後ろの線は左右どちらかにずれてしまう事が多いですね
一方、後ろの中心線をベースに着付けを行うと、真ん中にはきますが、あまった布を左右に入れ込む作業が発生します(これが少々技術が必要)

あと、横幅の広いお客様が細身のお着物を着る場合は、中心線は間違いなく真ん中には来ません
ですので、中心線が真ん中にないと絶対✖という訳ではなく、サイズの問題の場合もあるんです

目の肥えたお客様が多いことを考えると、できるだけ後ろの線は真ん中にもってきた方がよいと改めて考えさせられる一件でした。


また、以前働いていた会社の後輩ちゃん宅に昨年お嬢様の七五三のお支度で行った時の事。

「前回美容室で着物を着せてもらった時に、前の線(衽(おくみ)線の事ですね)が合わなくて、着付け師さんに「合わせてください」って言っちゃった。そうしたらすごく嫌な顔をされたの~

あらら・・・・
言っちゃいましたか



衽線が合うとは・・・・ おはしょりの衽線と前身頃の衽線がまっすぐにつながるという事ですね


これも、後ろの線と同じで、サイズが合わない着物の場合はなかなか合わせるのは難しいですね

実際、後輩ちゃんのお着物はサイズが全く合っていない。ちょっぴりサイズアップしたという後輩ちゃんには完全に身幅が足りません。
どうにかこうにか衽線を合わせることはできましたが、時間の問題ですぐに離れてしまいますね。

それは着付け師さんが嫌な顔をするのもわからなくはないです

でも、その時になぜ「合わないのか」の説明をしなかったのか・・・が問題ですね。
もし私だったら「ご自身のサイズで着物ができていないと合わない事があるんです」とご説明しちゃうと思います。
そうすればお客様も納得するはず


そもそも、なぜ、衽線がずれるのでしょうか????


それは・・・体が立体的だからです
平面で合うようにできている線が、人体に着せるとで胸やお腹やお尻のふくらみで生地がとられることで、外側に引っ張られてしまいます。
着物は余裕をもって作られているので、余った生地の部分で線を戻す作業ができ、衽線はつながることができます。
しかし小さい着物の場合は、線を定位置に戻すだけの生地が余っていないので、元に戻ず事ができず、線がずれてしまったり曲がったりしてしまいます
もちろん、サイズの合うお着物でも着付け師さんが技術不足の場合は線がそろわない場合があります


きっとその着付け師さんはなぜ衽線が合わないのか理由がわかっていなかった可能性があります。
お客様の要望や疑問にしっかり回答するのも、仕事の一部だと考えています
理由がわかればお客様も安心しますし、今後他で着付ける時も着付け師さんに無理な事を言って嫌な顔をされずに済むかな・・・と(笑)

「着付けをご依頼されるお客様は着物に詳しくないのでは・・・」
と思いがちですが、鋭い視点で着付けを見ている事がわかった貴重な経験でした。

お客様との何気ないおしゃべりの中にはたくさんの素晴らしいアドバイスが含まれています 
1つ1つの言葉を大事にして、仕事に活かしてきたいと思っています
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