森見登美彦さんの小説に、
灯りのついた叡山電車が愛しの彼女を一人乗せ、
夜の京都の街(それも、叡電が通るわけもない場所)を走っていく、という幻想を、
主人公が視る場面が、しばしば、登場する。
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森見登美彦さんにとって、叡山電車は、特別のものらしい。
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叡山電車の始発駅の、出町柳駅の近くには、
同志社大学(御所北)や、京都大学(百万遍)があり、また、
その沿線には、
千住博さんが学長、秋山康さんが副学長を務める京都造形芸術大学(茶山駅)や、
京都精華大学(京都精華大学駅)などがある。
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沿線に住む学生も多く、
京都一のラーメン激戦区と呼ばれ、
ユニークな書店も多い、一乗寺界隈を中心に、
京都の若者文化の発信地となっている。
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そして、叡山電車は、
いわば、そんな若者たちの、失意や夢を乗せて走る、青春電車なのだ。
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それは、昔も今も変わらない。
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だから、叡山電車に対する特別な思いは、
森見登美彦さんに限らず、
左京区や今出川の辺りで、青春時代を過ごした人間は、
多かれ少なかれ、共有しているハズだ。
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暮れなじむ京都の薄く蒼い夕闇に沈んだ、高野川と賀茂川が鴨川に合流する三角地帯や、
夕闇に浮かんだ、灯りの燈った叡山電車の出町柳の駅舎を見ると、
今でも、胸がつまる、というオジサンやオバサンも多いのではないだろうか。
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叡電ゆるり各駅めぐり (らくたび文庫 No. 21) 価格:¥ 500(税込) 発売日:2007-11 |
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「叡電ゆるり各駅めぐり」(らくたび文庫)は、
そんな、叡山電車の各駅を紹介している。
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京都の紅葉の季節も、まもなくだ。
叡山電車の沿線には、鞍馬や貴船、修学院、比叡山ケーブルの上り口の八瀬もある。
京都の洛北方面の紅葉狩りの折、
本書をポケットにしのばせ、
現代の京都の若者文化のメッカを、
少し、覗いてみては、如何だろう?
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