くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「ジョン万次郎~幕末日本を通訳した男」

2012-12-22 23:14:59 | 書籍の紹介
ジョン・マン(ジョン万次郎)こと、中濱万次郎は、
歴史上の人物の中で、私が好きな人物のひとりです。

海で遭難してアメリカの捕鯨船に助けられた彼は、
10年間の海外生活と捕鯨船での航海をへて帰国。
彼の西洋に関する知識や体験談は、
幕末の人々に多大な影響を与えました。

以前のブログでも書きましたが、
多くの日本人が彼のことを知っているにもかかわらず、
彼を主人公にしたドラマや映画は一度も作られていません。
大黒屋光太夫(江戸後期の漂流者)の漂流記譚が映画化されているのに、
彼よりもっと有名なジョン万次郎が映像化されないのはどうしてだろうかと、
以前から不思議に思っていました。

その理由が、この本を読んで少しだけわかったような気がします。

 永国淳哉 著 / 新人物往来社 刊

ジョン万次郎と言えば、
アメリカでの生活や帰国後の活躍がクローズアップされますが、
海外生活のうちの約7年間は、捕鯨船に乗って世界中を航海しています。
その距離たるや、地球を七周するほどだといいます。

その間、彼はアフリカやソロモン諸島、キリバスなど、
当時の日本人がおよそ訪れたことのない地域を巡り歩いています。
アフリカでは船員仲間から、「黒人を連れて帰ると高く売れる」と言われ、
南太平洋の島々では捕鯨船員は女性と交換するため、
島の有力者にタバコやアヘンを提供したと彼は記録しています。
そこで彼は、欧米列強の植民地支配を目の当たりにしているのです。

また、万次郎は帰国資金を稼ぐために北アメリカ大陸を横断し、
ゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸へも渡っています。
そこで人を変えてしまう「ゴールド」の恐ろしさを目の当たりにし、
常時、ピストルを携えていたといいます。

とかく「遭難・米国留学・帰国」と
「明治維新への功績」でまとめられてしまう万次郎の生涯ですが、
実際の万次郎の生涯は、単なる偉人伝では終わりません。
彼が海外で過ごした10年間は、スケールの大きな冒険譚でもあるのです。

そんな万次郎の冒険譚を映像化するのは、
費用の面でも技術の面でもかなり難しいことは容易に想像できます。
しかしながら、彼の残したオセアニアの人々に関する記述を読むと、
地球を七周もしたという冒険への想像がかきたてられてわくわくします。

やっぱり映画にしてみたい。
あらためてそう思ったのでした。


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