宇都宮市大谷町は、
古くから大谷石を産出してきた「石の町」として有名です。
その歴史は遠く平安時代にまでさかのぼります。
町の至る所には露天の石切り場の跡があり、
地下の採掘場跡は資料館に併設して公開されています。
「大谷資料館」の地下30mに地下採掘場の巨大な空間が広がります。
その姿はまるで古代ローマや古代エジプトなどの遺跡を連想させる威容です。
戦前まで、人力で石を切り出し、運び上げていたなんてとても信じられません。
この大谷資料館のすぐ近くに、日本最古の石仏「大谷観音」があります。
寺のお堂は岩に包み込まれるように建立され、
お堂に入ると、岩壁に刻まれた大きな千手観音が目の前に現われます。
堂内は、この石仏をご本尊として、その前面に祭壇が据えられています。
その光景は荘厳であり、訪れた者を畏怖させる威容です。
(堂内は撮影禁止なので写真はありません)
大谷観音は平安時代初期(西暦810年)、
弘法大師によって彫られたと伝えられていますが、
ガイドの説明によれば、シルクロードの石仏と同じ特徴があり、
大陸から来た彫師によって彫られたのではないかと推察されているそうです。
実はこの日、大谷資料館の採掘場跡を目当てに訪れたのですが、
何の事前知識も先入観もなくこの寺を訪れ、
いきなり目の当たりにした日本最古の石仏にすっかり圧倒されてしまいました。
寺の近くの公園には、
戦後になって岩を彫り出して造られた平和観音があります。
お堂の大谷観音とは比較にならないほど大きいのですが、
お堂の大谷観音を見た時ほどのインパクトはありませんでした。
特に信心深いわけではないのですが、
人に畏怖の念を抱かせるのは、
物理的な大きさでないことは間違いないようです。