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細川昌彦「メガ・リージョンの攻防」 (東洋経済新報社)

2008-09-08 23:27:26 | 読書
 細川 昌彦 (著) 「メガ・リージョンの攻防 ─人材と企業の争奪戦にどう勝利するか─」 (東洋経済新報社)を読みました。

 著者は経済産業省のOBで、サービス産業関連部署で「東京国際映画祭」を立ち上げ、中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ・イニシアチブ」を提唱し、JETROニューヨーク・センター長としてNY「日本食文化フェスティバル」を仕掛けた経歴の持ち主です。これらの経験から、市町村や都道府県単位で競争するのではなく、アジアなどを視野に入れながらもっと広い範囲で地域を捉え、地域の競争力をつけていく方策を目指そう、21世紀は「メガ・リージョン」が国境を越えて競争する時代になる、というのが著者の主張です。

 著者は日本の「メガ・リージョン」となりうる地域として、東京、名古屋を中心とする「グレーター・ナゴヤ」、京阪神、そして北部九州圏の4地域を挙げています。北海道、東北、北陸、中国、四国についてはあまり言及していませんが、これらの地域もちょっとしたOECD加盟国並の人口規模、経済規模を有していますから、努力しだいで「メガ・リージョン」となりうる潜在力は十分にあると私は思います。ただし、東京を始めとする「メガ・リージョン」が機能していくためには、著者は明言していませんが前提として大幅な地方への権限委譲、道州制の施行が不可欠でしょう。

 なお、地域間競争に勝つには創造的な人材を引き付けることが重要であるわけですが、ここで著者はそのためには「夜の猥雑さ」も重要だと言います。元官僚にしてはなかなか面白いことを指摘する方だと思います。

(以下引用)
 また創造的な人材にとって、「都市の猥雑さ」は空気や水のような存在である。なくては生きていけない。あえていえば「夜を中心とした猥雑さ」である。クリエイティブな人間は夜遊んでいる。あるハーバード大学の教授は「街の活力は夜を楽しむ人の数に比例する」という。歴史的にも芸術・文化は夜生まれる。
(引用終わり)


 なぜバンコクに日系企業が多く進出しているかというと、それは夜のインフラが充実しているからだ、と大真面目に主張している知人がいます(笑)。バンコクのように猥雑すぎるのもちょっとどうかと思いますが、夜になると街がすぐにシャッター通りになってしまう地方都市には魅力を感じない人が多いでしょう。「是非、行政も「夜の賑わいの重要性」を再認識してほしいものだ。」と著者は述べていますが、確かにその通りです。

 本書は、これからの日本の様々な地域が歩むべき道について、事例を交えながらわかりやすい文章でコンパクトに論じた良書だと思います。経済産業省は優秀で面白い人材を輩出する役所ですね。

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