歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

村上春樹, 吉本由美, 都築響一(共著) 「東京するめクラブ 地球のはぐれ方」(文藝春秋)

2010-07-19 01:02:57 | 読書
 5年ほど前、友人と一緒に谷川岳に登って下山した後、「どこかで飯を食べようや」ということで車で水上の温泉街を訪れたことがあります。スナックやショーパブなどの店舗が随所に見られたのですが、とにかく温泉街全体に寂れた雰囲気が漂っており、扇情的な店の看板がかえって我々をやるせない気持ちにさせたのでした。ここに限らず、男性中心の団体旅行客を当て込んだ歓楽型の温泉街はもはや時代のニーズにそぐわず、全国どこも同じような状況ではないかと想像します。正直言って水上の温泉街は面白いとは思いませんでしたが、同時に地元の人々に対して「もうちょっとなんとか頑張ってくれよ」と思わざるを得ませんでした。
 
 さて、先日、「東京するめクラブ 地球のはぐれ方」(文藝春秋)という本を読みました。本書は、名古屋、熱海、ハワイ(ワイキキ)、江ノ島、サハリン、清里という、上記の水上温泉のようにあまり面白くない場所を、作家の村上春樹氏をリーダーとする「東京するめクラブ」が訪問してなんとか面白がろうと努力する、というルポルタージュです。確かに本書では知られざる面白いスポットの紹介もあれば、トホホな状況にある観光地の再建に向けた提言もあるのですが、どうも「東京するめクラブ」の面白がり方は都会の文化人の方々の「上から目線」が基本であり、観光客の誘致に一生懸命な地元の観光協会の方々が聞いたら憤慨しそうな内容が随所に見られます。

(以下引用)
村上 うん、たとえば女の子を誘って箱根にでも行こうか、という感じはあるけど、熱海へ行こうか、と言っても逃げるよね。スマートボールいいのがあるよ、とか言って所詮限界があるし(笑)。
都築 まあ、よほど練れたカップルじゃないとね(笑)。でも、僕たちが熱海で見かけた若いカップルって、決して練れちゃいないよね。むしろアイデアなくてここに来ちゃった、みたいなさ。
村上 箱根と熱海の違いもわからないまま、来てるんじゃないかっていう感じのカップル多いよね(笑)。それからさ、熱海の街を歩いているおばさんの団体って、関西弁の人がやたら多かった。関西の人は今の熱海がどれくらいさびれているかよくわかってないから、旅行代理店に騙されて連れてこられるんだよ、きっと。
(引用終わり)


 ノーベル文学賞に最も近い作家からここまで言われてしまう熱海は気の毒ですね。熱海はかなり頑張っており、最近ではAR(拡張現実)という時代の最先端を行く技術を使ったこんな誘客キャンペーンも展開していますし・・・先を行き過ぎて逆効果にならないか、ちょっと心配ではあるのですが。

この夏、熱海をラブ色に染める「熱海 ラブプラス+現象(まつり)」がいよいよスタート!(IT media, 2010.07.12 20:13)



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2 コメント

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コメントありがとうございます (kunihiko_ouchi)
2010-07-21 00:43:25
こんばんは。
>行けば行ったで、どこも面白いと思いますが……。
まあそれはそうなんですが。。。少しでも良いところを見つけたいものです。
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Unknown (ぐるぐる)
2010-07-20 14:17:16
たしかに、上から目線ですね。
行けば行ったで、どこも面白いと思いますが……。
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