紅旗征戎

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国連での日米協力

2004-10-01 15:12:50 | 政治・外交
前期の授業でアメリカと国連の関係について講義した折に、「国連を通じた日米協力としてはどのようなものが考えられるか」と質問された。これはなかなかユニークな問いだと思う。安全保障に関しては、日本の国連での安全保障面での貢献が限定されていることと、日米安保体制の方が重視されている理由などから、あまり国連を通じての協力という展開は期待できないが、アメリカは日本の常任理事国入りを一貫して支持しているし、またアメリカのサポートもあり、日本は何度か非常任理事国には選出されている。一方、日本からの協力として考えられるのは、アメリカを支持する投票だが、日本は国連総会では60-70年代にはアメリカと80%同じ投票をしていたが、石油危機以後、アラブ諸国へも配慮するようになり、80年代半ばにはアメリカと同じ投票は37%程度まで低下するなど「自立性」を高めている(Amy E. Searight. “International Organizations.” In Steven K. Vogel. 2002. US-Japan Relations in a Changing World. Washington, DC: Brookings Institution.)。

国連での日米協力の可能性がある分野の一つは、途上国の「民主化」支援や「ガバナンス」改革である。アメリカ主導で「民主化」支援を行なうことは、「アメリカニゼーション」であるという反発を買いやすいが、日本も関与して、アメリカ色を弱めて、より現地のニーズや非欧米世界に適合しやすい形で現地の理解を得ながら、途上国の行財政システムや司法制度の改革を支援する可能性はあるだろう。
 
実際、JICAも1994年に「参加型開発と良い統治(分野別援助研究)」、96年に「地域の発展と政府の役割(分野別援助研究)」、2001年に「民主化支援のあり方(基礎研究)」などを実施し、参加型開発や地方分権、民主化などの課題への取り組みに関連させたガバナンス強化の方策を検討し、東南アジア、中南米、中央アジアでの民主化支援事業に力を入れるようになってきている。