武器はガチャ、そして(7)

2016-11-05 10:39:52 | SF小説
第六章 黒点の集結

それから、黒点の入れられた多くのガチャの容器が科学推進省に提供され、有識者による対策会議の結論を待つまで保管することにしていたが、ステンレス容器がほぼ満杯になっていった。

科学推進省の会議では、出席した科学者の総意により、黒点は太陽の活発なフレアの強力な磁力により発生した小さなブラックホールだと結論付けた。
その根拠としては、次の四項目が挙げられた。

一、レーザー光線を照射して分析しようとしてもレーザー光線が吸収されてしまい分析ができない。
二、わずかながら回転している振動がガチャの容器から伝わってくる。
三、マイナスのエネルギーが観測される。
四、ガチャの容器を通して見た背景が歪んで見えるのは、ブラックホールの重力から生じた重力レンズ効果によるものと思われる。
 
そして、今は小さくて物質を呑み込む力は小さいので危険性は少ないが、ブラックホールの中心付近に何かが触れた時はそれを呑み込み、そして呑み込んだ物質によりブラックホールの質量が増大して、巨大化することが懸念された。

科学推進省で、保管しているガチャの容器の健全性を全数確認してみると、ひび割れしているものが二個発見され、安全性確保のためにガチャの容器を取り替えることになり、頑丈な建物の一室を無風状態にして一個毎に容器の取り替えが試みられた。

一個目は容器を慎重に蓋を取り外し、黒点が浮かんでいる状態で新しい容器に捕獲が成功した。
しかし、二個目の容器は、蓋が大きくひび割れしていたので蓋を取った時に、蓋の一部が容器の中に入ってしまった。
その瞬間、蓋の破片が黒点の中心に向かって進んで行き消えてしまったように見えたが、黒点が浮かんでいる間に新しい容器に格納できたので大事には至らなかった。
そして、移し変えたあとで元の容器の中を見たが蓋の破片は見つからなかった。

「今のを見たかい? やはりブラックホールだから呑み込むんだよ。気持ちが悪いなあ。」
「小さくても人間を呑み込むかもしれないね。」
と科学推進省の若手技術者たちは口々に戦々恐々と語った。
「僕達も呑み込まれるのかもしれないんだよ。ああ、嫌だ、嫌だ。まだ死にたくないよ。」
とも続けた。

一連の作業が終わった後で、ガチャの容器を移し変える作業の一部始終を録画した画像を何度も見たが、破片が黒点に近付いた時に破片は視界から消えていった。

「危なかったな。しかし、これで不安な容器も無くなり一安心だな。それにしても多くのブラックホールが残っていたものだなあ。」
「そうですねえ、だけれど、これで一安心ですね。」
と科学推進省の若手技術者は安堵して言った。
「あとは最終保管場所の検討だな。」
「そうですねえ、ここは一時的な保管場所ですからね。」
と、続けた。
しかし、最終保管場所選定は、今までに経験したことのないリスクを含んでいるので、遅々として進まなかった。