べちゃっ。べちゃっ。
まるで、大柄の哺乳類が高いところから地面に落とされたような、そんな音が一晩中続き、安眠を妨げられた。
布団から起き上がって、カーテンの隙間から外を眺め、安眠を妨げる狂気的な音は、融けかけの雪であることが判明した。
プラスの気温の中、降り積もったシャーベット状の雪は、融けながら50kg程のひと塊りになって、地面に落ち続けていた。
雪だとは解ってなお、地面にたたきつけられる重く柔らかな音は、神経を逆なで続けた。
雪が際限なくふる続く恐怖、雪に道を阻まれ孤立する恐怖…。
そんな恐怖感と、同等の恐怖感が、昨夜はあった。
しかし、人間はその恐怖感があって初めて生きていることを実感し、生の喜びが感じられるということも、自然災害に遭遇するたびに感じられる。
生を実感することができることこそ、今日を感謝し、明日への生きる希望になると、シャーベットの雪に恐怖を感じながら一夜を過ごした、小心者が仰々しく考えている。