【衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会(衆TPP特)平成28年2016年10月31日(月)】
●午前中は参考人質疑「知的財産とISDS条項」
いきなり先週の話で恐縮ですが、金曜日辺りからようやく中身の話になってきましたが、共産党の畠山和也さんの「第11章金融サービス賞の保険には共済が入るのか」、民進党の緒方林太郎さんの「大豆などで、遺伝子組み換え【である】という表示はあるのか」との問いに対して、答弁に立った、石原TPP相や消費者相らが「ご懸念はあたらない」「消費者庁がしっかりやっているから大丈夫」というような答弁をし、質疑者から「そうではなくて、情報を教えてほしいんだ」という趣旨のやりとりがありました。担当大臣の交代もありますが、やはり、自民党には国会内での、民主政治のインフラである、野党に対する情報の開示・公開のマインドが弱いんだ、と感じました。
きょうの話に戻ります。
「TPP条約の承認を求めるの件」(190条約8号)と「TPPによる国内法の11法律一括改正法案」(190閣法47号)。著作権とISDSのうち、著作権法改正案については、一括法案に先取りして入っています(施行日はTPP発効日)。
4名の参考人の意見陳述。
参考人に対する質疑の中で、民進党の篠原孝さんは「アメリカのディズニーや映画協会がロビー活動をやっているのは事実だろう」と感想を述べました。
冒頭の公述では、前日大教授の土肥さんが著作権法改正について、(1)著作権保護期間の延長(2)著作権侵害の一部の非親告罪化(3)アクセスコントロール(4)配信音源の2次使用料の発生ーーなど5項目のTPP項目を示しました。土肥さんはビジネス以外にも、文化庁長官裁定による公共的な著作物の公開も、「権利者との相当な努力がいる」としました。
福井健策弁護士・日大芸術学部客員教授は、ビジネス展開とからめて説明。世界の企業の事業規模のうち、トヨタ自動車が31位で、トップ1位から5位までは、アメリカ西海岸発祥のIT企業だとの現状を紹介。そのうえで、TPPによる、保護期間の延長で、著作権が相続され、複数の人に長期に分かれていくため、事務コストが増え、権利者不明の「孤児著作物」も増える、という趣旨の説明をし、「TPP交渉の保護期間の延長は間違った判断だった」と意見を語りました。非親告罪化については「今は軽微な利用は、おめこぼしがあり、それで世の中は回っている。今後は、ネット炎上から刑事告発につながることもあるのではないか」とし「注視が必要だ」。
また、日本のみならず、福井さんは「条約で縛ることは、3年後には状況が変化する。アメリカも含めて先進企業にデメリットになるのではないか」としました。「国内法はこれまでの数倍のスピードで、著作権の国内外の、オープン、クローズをしていかないといけない」と国会議員を前に語ったうえで、議題について「慎重審議を求めたい」と語りました。
参考人質疑は4人同時。うち2人がISDSの参考人。「昨日NHK日曜討論で、自民党の田村元厚生労働大臣が、ISDNと言っていたが、それは電話だ。ISDSは国会議員にも浸透していない」と笑いを誘いました。官僚時代に担当した、自民党2期生の山下貴司さんが「ISDS条項はこれまでの自由貿易協定にも入っているので、TPPからの話ではない。ここにいる国会議員も含めて承認しているんですよ」と語ると、参考人から「これまでの条約でも、私は潜在的違法だと思っている」と言われ、苦笑いもありました。
まあ私の感想としては、日米とも、メリットがある人・社も、デメリットがある人・社もあるということを、さらに強く感じました。
●午後は、テレビ入り総理入り集中審議。
野党筆頭理事の篠原孝さんはテレビ入り総理入り質疑の冒頭、「現時点で、総理入り質疑の時間の方が長くなっている」とし、一般的な質疑の時間も充実させるよう強調しました。
これに先立ち、与党・自民党から赤沢亮正さんが質問。赤沢さんは2011年の野党時代に、前年に提出した「津波防災の日を設ける推進基本法」を、与党・民主党が審議しなかったから、3・11で多くの方が亡くなったという趣旨の発信をし、インターネット上で自民党支持者の反応がありました。今週の土曜日が11月5日、津波防災の日。なので、赤沢さんはそれに言及するかと思いきや、「過去10日間に起きたことを振り返る」として、最も若い派閥である石破派の幹部、小坂憲次さんの話をし、地元の話をしました。地元の話は、鳥取県中部の震度6強の地震ですので、これはまあ、これ以上、私も赤沢さんを揶揄するわけにもいかないです。
民進党の福島伸享さんは、SBS米問題の調査を理事会に要求。民進党の今井雅人さんはSBS米に先立つ、MA米(ミニマム・アクセス・まい)で、毎年半分はアメリカから輸入する口約束があったと、当時のUSTR、農務長官が雑誌のインタビューで答えており、実際に実績で裏付けられていると指摘。安倍首相は「口約束は口約束だ」とかわしました。
福島伸享さんは、議題の条約案と国内実施法案のうち、すべての国内法律の成立が批准の要件なのかと質問しました。石原TPP相は「すべての法律の成立を寄託国に報告する」としましたが、山本農相は豚牛マルキンの法案部分については、「法律施行日は条約発効日だ」としながらも、「政令や予算で、補てん率9割への嵩上げはできる」。福島さんは、次の予算で実施するよう求めました。
共産党の畠山和也さんは、薬価について、これも日米並行協議を中心に質疑。「次回は第27章のTPP委員会を取り上げる」と継続を促しました。
日本維新の会の松浪健太さんは、最初に取り上げた「遺伝子組み換えでない食品(遺伝子組み換えである食品)」の表示問題。厚労省は立ち入り検査をしておらず、コーンフレークなどの対応は法律を改正しないでも対応できると説明。ルール分野では、食品表示についても反響が議員に寄せられているであろうと世論の関心を感じました。
報道などによると、自民党の竹下亘国会対策委員長は、あす1日ではなく、今週末4日の採決も視野に入れ始めたようです。
ところで、民進党などの議員・支持者らに、私が日和ったと勘違いされないために言っておきますが、私は前々からの自由貿易論者であり、TPPに関しては「なんか話が違うな」と思いつつも、それでも賛成です。
【参議院 平成28年2016年10月31日(月)】
審議はありませんでした。
【衆議院議院運営委員会 平成28年2016年10月31日(月)】
理事会が開かれました。あすの本会議について協議したものと思われます。理事会は、後々の議事要旨も非公開です。今週はTPP、税制など重要法案の「上がり法案」処理が予想され、衆院側は中盤戦のヤマ場となりました。
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