【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

菅首相、第2次補正予算(案)編成を指示 第177「正念場」通常国会は9月下旬頃まで延長へ

2011年06月15日 21時56分44秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

 菅直人首相は、2011年6月14日(火)の閣議に続いて、財務省の野田佳彦大臣、事務次官の勝栄二郎さん(昭和50年大蔵省)、主計局長の真砂靖さん(昭和53年大蔵省)を官邸に呼び、平成23年度第2次補正予算(案)を編成するよう命じました。2次補正は7月上旬にも国会に提出する見通し。

 これを受けて、民主党幹事長の岡田克也さん、国対委員長の安住淳さん、枝野幸男官房長官らは、第177回国会を6月22日(水)から3ヶ月程度延長する方針を決めました。通常国会の延長幅は1回しか決められず、また途中で会期を打ち切りことはできない(ただし、衆議院解散の場合はその時点で会期切れとなるのが唯一の例外である)ため、来週の22日(水)までギリギリの高度に政治的な判断を迫られます。会期の延長は国会法12条に続く、13条の規定により、衆院の議決が優先します。

 なお、補正とはいっても予算は予算なので、第2次補正予算案(復旧テコ入れ予算)、第3次補正予算案(本格復興着手予算)ともに、日本国憲法60条の「30日ルール」を使えます。仮に野党・自民党が抵抗した場合は、30日ルールを使えますが、世論が許さないのは間違いありません。そして、特例公債法案(平成23年度当初予算の赤字国債発行法案、今国会閣法1号)についても、参議院に送った後に、自民党らが吊しても、衆議院で3分の2で再可決が可能なように、日本国憲法59条にもとづく「60日ルール」が使えるように、およそ90日間程度の延長幅になる可能性が高くなってきました。

 1月24日(月)に召集された今国会は、最重要法案(特例公債法案、税制改革法案)が通っていないので、錯覚しがちですが、多くの法案が成立しています。すでに衆院の常任委員会の一部には一服感があるので、各府省は、閣法をこれから出したり、民主党政府外議員や、野党議員は議員立法のチャンスが到来することになります。

 なお、みんなの党の江田憲司幹事長は記者会見で、「参院での菅直人君問責決議案の共同提出者にならない」と明言したようです。日本共産党も、衆院での内閣不信任案を棄権しました。これにより、6月にしろ、9月にしろ、参院自民党が問責決議案を出しても、欠席者や反対者を考えると、可決しない可能性が出てきました。とくに、今、参院で問責決議案を出すと、「参議院なんて要らない」という参議院不要論が世論の趨勢となりそうな気配となっています。

 付け加えると、今国会を「走りながら考えて」きた岡田幹事長は、子ども手当延長法案で、参院で、日本共産党などの賛成を受けたり、内閣不信任決議(案)では衆院で日本共産党や社民党の棄権などいろいろと不思議に道が拓けています。しかし、ここは大胆に、民主党規約の改定にとどまらず、国会法・衆議院規則・参議院規則・内閣法・国家行政組織法の改正に大胆に取り組んでいかないといけないと思います。

 菅さんも中国国民党元主席で、元台湾(中華民国)総統の李登輝さんに自宅に招かれご指導を受けたことを、14日の参院特別委員会で明らかにしましたが、世はまさに正念場(性根場)であるとともに訓政期。国民党初代主席の孫文が唱えた「訓政期」において、私たちが学ぶべきことは「権力とは何か?」ということです。菅さんは見苦しいまでに権力に執着して、その教材になってほしいと感じております。政治家は自らの性根をさらけ出すのが仕事です。

首相「1・5次補正」編成指示も… - goo ニュース

 菅首相は14日午前の閣僚懇談会で、東日本大震災からの復旧を柱とした2011年度第2次補正予算案の編成を指示した。
  7月上旬にも国会提出を目指す。22日に会期末となる今国会の1~2か月程度の大幅延長が念頭にあるとみられるが、自民、公明両党は菅首相による2次補正の編成に反対を表明した。
 首相は14日午前の参院東日本大震災復興特別委員会で、2次補正について、「1次補正に盛り込み切れなかった急ぐべき対策を盛り込んだ『1・5次補正』とも言えるもの」と述べた。内容は、被災企業や個人が既存の借金に加えて新たな債務を抱える二重ローン問題対策などを挙げた。枝野官房長官は同日の記者会見で、「復興国債などの財源措置を想定しない」と述べ、2次補正が小規模になるとの見通しを示した。

菅政権、国会3カ月延長の方針 首相交代と「矛盾せず」(朝日新聞) - goo ニュース

 菅政権は15日、22日に会期末を迎える今国会の会期を3カ月延長する方針を固めた。菅直人首相が編成を指示した第2次補正予算案に加え、震災の本格的な復旧・復興予算を盛り込んだ3次補正の成立もめざす。一方、複数の政権幹部は15日、会期の大幅延長とは別に、首相は早期に辞任すべきだとの考えを相次いで表明した。
 民主、自民、公明3党の幹事長、国会対策委員長は15日昼、国会内で会談。民主党の岡田克也幹事長が「大幅延長したい」と要請した。


「鳩山由紀夫さんは民間企業なら即刻クビですよ」 みんなの党の松田公太さん

2011年06月15日 19時30分28秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[画像]みんなの党の松田公太・参院議員、2011年6月14日、参議院インターネット審議中継からキャプチャ

【2011年6月14日(火) 参院東日本大震災復興特別委員会】

 7月24日正午の地上波アナログテレビ終了を前に、力のある新人議員が、各党とも続々テレビデビューしました。

 みんなの党の松田公太さん。国会内の3つの議員会館すべてにある「タリーズコーヒー」の創業者ですが、ちなみに議員会館プロジェクトは松田さんが社長を退任してからということで、関係ないとのこと。

 公太さんは、復興基本法案の審議に先立ち、今なお、国政にさざ波を立て続けている、異例に早い時期の衆院での内閣不信任(案)について、「(衆院での)内閣不信任案のドタバタ劇。私が政治家になって、もっともがっかりした出来事でした。今もなお、怒りが収まりません。元総理大臣の鳩山由紀夫さんでさえ、失礼ながら、民間企業にお勤めだったら、仕事ができない奴だと言われてもしかたがないことをされていました」と述べました。

 ちなみに、私は現時点でも6月2日に、菅直人総理が退陣を表明したとは認識していません。これは、正午からの代議士会だったので、シメキリギリギリで、各新聞社とも夕刊に「退陣表明」と横見出しを付けてしまったので、引っ込みがつかなくなっているのですが、虚心坦懐に、「お詫びと訂正」とまではいかなくても、「読者の皆様へ」ということで、軌道修正すべきではないでしょうか。

 さて、公太さんは「何なんですか、あの総理と交わされた確認書というのは。民間企業で、もしあれほどあやふやな契約書や確認書を喜んで会社に持ってきたら、即刻クビですよ。一般社員じゃなくて、代表者だったら、それこそ株主代表訴訟(を起こされる)ということになります。菅総理の肩を持つつもりはありませんが、あれで(鳩山さんが菅さんのことを)『ペテン師』呼ばわりするのはおかしい」と述べました。

 
[画像]鳩山由紀夫さん、2009年5月の民主党代表選、この4ヶ月後に天皇陛下が第93代首相に任命。

 そのうえ、総理の「一定のめど」について、公太さんは「会社で出世したければ、仕事の納期をしっかりしなさい」と言っていたとの思い出を振り返り、菅さんに質問します。菅総理は「私は特許事務所(弁理士事務所)にいましたから、時間によって儲けが変わる仕事をしていましたので、納期はしっかり守るようにしています」と述べました。

【民主党内の「菅降ろし」は、非世襲グループvs世襲グループの争い】

 ちなみに民主党内では、15年ぶりに非世襲・非二世議員の菅直人さんが首相になったことで、「世襲グループ」と「非世襲グループ」の争いが顕在化しています。つまり、世襲議員グループの鳩山由紀夫さん、小沢一郎さん、田中眞紀子さん、松野頼久さんといったグループです。この中で、サラリーマン経験というと、鳩山さんが専修大学助教授、松野さんが日本新党職員ぐらいで、民間企業の経験はありません。小沢さんは大学院生から衆院議員にになっていますし、田中さんは越後交通といっても、親から受け継いだ家業の社長ですから、サラリーマンではありません。

 一方、菅直人さんは弁理士で、弁理士事務所もやっています。総理となった今でも、こちらの方の収入があるようです。弁理士として、組織人のきつさはあまり知らないかもしれないですが、一応サラリーマンです。岡田克也さんは通産省に12年勤めており、官僚ながら「不眠不休」はオイルショックのときぐらいだったようですが、マッチー町村(町村信孝元外相)を直属の上司とする組織人の辛さを知っています。また、政治家になったきっかけは、組織人として自民党の大臣・政務次官のひどさを知り、当初人生計画に入っていなかった「選挙に出る」という道を選んだようです。北澤俊美さんは、1962年に最初に就職した会社が倒産(会社更生法申請)してしまい、「高度成長の真っ最中、希望は失わなかった」ということです。そして、今では一流企業の前田道路株式会社に入社。東海銀行から同社再建のために送り込まれた荻野英利さん(後に代表取締役)と2人で「30億円の完成工事高と株主への配当復活(復配)は何年間で可能か?」という当時の前田道路にとってタイヘン厳しいシミュレーションを夜遅くまで2人で必死に計算したそうです。日経新聞交遊抄(1998年)では、俊美さんは「私はいつも上司に反抗していた」「私にとって前田道路での8年間は『社会を見る窓』を開けてくれた、私の青春のすべてだ」と記しています。枝野幸男さんは「高山法律事務所」の高山征治郎所長(弁護士)の「イソ弁(いそうろう弁護士)」をしていたから、サラリーマンです。平野博文さんも松下電器産業の社員や議員秘書をしていたから、サラリーマンです。野田佳彦さんや前原誠司さんも非世襲ですが、残念ながらサラリーマン経験はありません。例えば、研修をしたことがあっても、サラリーマン、いわば奴隷になる見返りに、給料をもらうという、組織人の辛さは、筆舌に尽くしがたいものがあります。

 そう言う意味では、15年ぶりの「成金・菅政権」に対して、「政治が家業」の小鳩グループが政権奪還に必死になり、田中さんが総理を「市民運動家上がり!」とののしったり、同じく世襲政治家の鹿野道彦農相を代表選に立てようとする、いわば反動が出てきていますが、ここは踏ん張りどころ。ここはがんばって非世襲議員を盛り上げないといけません。このときに、トップはだれであれ、私たち国民が上手く使いたいのは、「東大法学部卒業生」です。東大法卒も18年間首相の座から遠ざかっていますが、首相でなくても、東大法学部を上手く脇を固めるように使えば、官僚機構の力を引き出すことができます。そういう意味では、仙谷由人さんが官僚を使うのが上手いのは、事務次官よりも先輩の東大法学部出身者だからという面もあります。非世襲+東大法学部グループを使って、政治を前に進めましょう。歴史上は、チャーチルをはじめ2世議員からも優秀な人材が出ていますが、今の日本では、民主党にしろ、自民党にしろ、世襲議員を遠ざける動きが向こう10年間前後、必要だと考えます。

【菅さん「政治に嫌気を持たないでください」】

 菅さんは松田公太さんへ「初当選から1年、どうか政治に嫌気を持たないでください」と答弁すると、松田さんは「嫌気を持つどころか、ますますナントカしないといけないな、と思いました」と応じました。東京選出議員、がんばってください!!田舎の世襲議員に負けるな!