【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

ついに藤井裕久さんが「外為特会元本の取り崩し」に言及

2011年06月21日 09時24分03秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]藤井裕久さん(筆者撮影)

 ついに藤井裕久さん(昭和30年大蔵省入省)が、ナント外国為替特別会計(外為特会)の元本部分(外貨準備高)の取り崩しについて言及しました。まさに、日本が変革期、正念場を迎えていることを感じさせました。

 発言は、2011年6月20日夜放送のBS11番組の「インサイドアウト」の中で飛び出しました。

 藤井さんは、税と社会保障の一体改革に関して説明した後に、いわゆる霞が関埋蔵金について話しました。

 「埋蔵金といっても、たいていスッカラカンなんですが、(およそ円換算で100兆円前後になる)外為会計(は大きな埋蔵金)ですねえ。(外為特会からの繰り出し分を)一般会計に入れると、技術的には、ドルを売って、円を買うので、ますます(1ドル=80円よりも)円高になっちゃうんですよねえ。(現状では、埋蔵金は)外為(特会)は残してあります。他はスッカラカンです」と述べました。

 司会の二木啓孝さんが「米国債を売るということですか?」と合いの手を入れると、藤井さんは「それですよ」と述べ、外為特会の元本部分である、米国財務省証券の売却という長年のタブーに驚くほど、あっさりと言及しました。そして、「(米国債を売ると、)円が高くなりますから。(外為特会の所管官庁である財務省は)通貨当局の責任者なんですから」として、財務省内で外為特会を担当する理財局と通貨当局を担当する財務官・国際局がおなじ省内である以上、現状では外為特会の元本は取り崩しにくいとしました。しかし、念押しをするように、「でも、議論しないといけない」と明言しました。大蔵・財務官僚出身者が、テレビで公然と外為特会の取り崩しに言及したのは、私が知る限りは、明治維新とそれに続く太政官布告から143年目にして初めてなのではないでしょうか。

 これについては、2011年4月29日の民主党幹事長の岡田克也さんが定例記者会見で言及しており、当ブログでも岡田幹事長、「外為特会の元本に手をつけられるか検討」、タブーに1歩踏み出すというエントリーにまとめてあります。また、野党時代の2008年10月2日に、大塚耕平さん、大久保勉さん、そして菅直人さんの3人が財務省理財局を視察したことで大きな話題を呼びました。

 「3・11」後の不安定さは、未来が生まれてくるビッグバンなのか。この議論、藤井さんや岡田さんがやるなら、ぜひ背中を押したいと考えます。


「枝野幸男さんは私が育てた」法案提出者としての答弁「チャンスどんどんいかして」岡田幹事長

2011年06月21日 06時33分56秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]左上から時計回りに、民主党の岡田克也さん、枝野幸男さん、岸本周平さん、後藤祐一さん。

 2011年6月20日(月)の参院本会議でやっと、「東日本大震災復興基本法」が成立しました。提出者は、民主党の黄川田徹さん、後藤祐一さん、公明党の石田祝稔(いしだ・のりとし)さん、自民党の加藤勝信さんでした。ポイントは「復興庁」「復興債」「復興特区」の3点セットで、もともと公明党が使い出した言葉が3つとも盛り込まれた格好です。この後は、内閣府復興庁の設置法案が延長国会に出てくると思います。日本はセクショナリズムの縦割りですから、「細く長くよろしくお願いします」(衆院審議での岩手1区選出の階猛さんの質問)という東北復興のためには、スーパ官庁「復興庁」をつくって、各省から権限を剥がしてきて、集めるというのは官僚機構の風土にあっています。人事では、なるべく「片道切符」で行ってもらう、東北出身者などから「志願兵」を募るかも良いかもしれませんね。かつて総理府(現在の内閣府)にあった沖縄開発庁は1972年~2000年橋本行革までありました。復興庁は、2011年(2012年?)~2030年ぐらいまでのスパンになるのでしょうか。むしろそのくらいに考えた方が、被災者の方にとっても気が楽なような感じもします。

 さて、以前のエントリーにも書きましたとおり、民主党1年生議員の神奈川16区の後藤祐一さん東日本大震災復興基本法(第177国会衆法13号) 、和歌山1区の岸本周平さん が改正NPO促進法(第177国会衆法12号)を提出者として成立させました。両法案は、ともに、与野党の修正協議のうえ、委員長が起草した議員立法です。

 
[画像]参院本会議で答弁する後藤祐一さん(参議院インターネット審議中継)と参院内閣委員会で答弁する岸本周平さん(本人ブログ)

 これについて、1年生議員の校長先生、岡田克也幹事長に、20日の定例記者会見で聞いてみました。

 岡田さんは、「提案者になるのは、あまり期(当選回数)は関係ないんですね。与野党で(法案の修正)協議して、中心的な役割を果たしたからこそ、提案者、答弁者になっている」という傾向があることを明かしました。そして、「1期生であれ、国会の場で答弁するということは、蓄積も必要ですし、経験も必要ですし、良い勉強になります」「まあ、そういう活躍をしていただくことは大歓迎ですし、チャンスはどんどんいかしてほしい」としたうえで、質問者は「少し鍛えるという意味で、与党であれ、野党であれ、厳しい質問もしてほしいと思います」という「岡田流やさしさ」を見せました。

 そして、伝説の第143臨時国会(金融国会)の政策新人類として一躍スター政治家に躍り出た当時34歳の枝野幸男さんを例に挙げて、「提案者に対して、質問する機会があったんですが、まあかなり突っ込んだ質問を枝野提案者にいたしました」と語りました。

 で、この枝野VS岡田の議事録を調べてみました。

 1998年9月8日(火)の衆院・金融安定化に関する特別委員会で、提案者には、民主党から現経産副大臣の池田元久さん、元内閣官房副長官の古川元久さん、官房長官の枝野幸男さん、そして公明党からは現在は政調会長の石井啓一さんらが名を連ねています。政府側の答弁者は宮澤喜一・大蔵大臣でした。

 岡田さんは「民主党の岡田克也です。きょうは、野党三会派の法案について質問をさせていただきたいと思います。質問をする以上、同じ党とはいえ、聞くべきことはきちんと聞く、そういう姿勢で聞かせていただきたいと思いますので、よろしく御答弁をいただきますようお願いします」と切り出しました。そしてまずは「金融再生委員会」(現在の金融庁)がなぜ、国家行政組織法(行組法)3条に定めた「3条機関」と位置づけたのか、という実にオーソドックスで大事な質問からスタートしました。

 そして、この議員立法の条文を精査していて、法の28条について、「ですから、客観的な条件が28条の適用のためには必要ですが、そういうものを満たしておれば、(金融機関が)みずからが払い戻しの停止のおそれがあると認めてそういう申し出をしてくる」「原則的には、金融再生委員会は28条でそれを受けとめて、そして一定の要件がそろえば手続に入っていく、その導入のための規定になるということですね」「これは、おそれですから、(中略)銀行自身がみずからおそれがあると思ってこの申し出をすれば、おそれがあると自分が言っているわけですから、28条でそれを受けとめて、その手続に要件がそろえば入っていく、こういうふうに理解していいですね」と畳みかけます。

 そうすると、枝野提案者は「まさに今御指摘のとおりでありまして・・・」と、34歳にしてすでに閣僚かと見間違うような語り口で、「そういったことから公的管理等に入っていくというケースが、むしろ場合によっては、特に初期の段階は、金融再生委員会が立ち上がっても、そのしっかりとしたルールに基づいての検査というのが終わるまでの間というのは、もしかするとそういったケースの方が多いのかもしれないというふうに思っています」と、今の枝野答弁と比べると、ずいぶんしどろもどろのようにも感じますが、よく考えながらしゃべっているのが議事録からうかがえます。

 当時の岡田さんと枝野さんは、民主党の初代執行部で、政調会長代理と筆頭副会長という、政調の「ナンバー2」と「3」のコンビでした。その前から、民主党結党準備会で、政策すりあわせチームに各々の所属政党の代表者として侃々諤々やっていましたから、その岡田さんから、厳しい”ノック”が飛んでくるとは枝野さんもゆめ思わなかったでしょう。

 岡田さんは「枝野さんからは『なんかずいぶん厳しかった、自民党の質問者よりも厳しかった』と後で文句を言われましたが、そういうこともあってもいい」として、民主党を13年間かけて、政権政党に作り上げてきた自負を感じさせました。



[国会議事録から引用はじめ]

第143臨時国会(小渕恵三首相、いわゆる「金融国会」)

衆議院 金融安定化に関する特別委員会 11号

平成十年(1998年)九月八日(火曜日)
    午前十時一分開議
出席委員
  委員長 相沢 英之君
   理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君
   理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君
   理事 山本 有二君 理事 池田 元久君
   理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君
   理事 谷口 隆義君
      愛知 和男君    伊藤 達也君
      伊吹 文明君    岩永 峯一君
      江渡 聡徳君    大野 松茂君
      大野 功統君    金田 英行君
      河村 建夫君    熊谷 市雄君
      倉成 正和君    佐田玄一郎君
      滝   実君    津島 雄二君
      中谷  元君    西川 公也君
      蓮実  進君    宮本 一三君
      目片  信君    望月 義夫君
      山本 公一君    山本 幸三君
     吉田六左エ門君    渡辺 喜美君
      上田 清司君    枝野 幸男君
      岡田 克也君    海江田万里君
      北村 哲男君    佐々木秀典君
      仙谷 由人君    古川 元久君
      細川 律夫君    石井 啓一君
      上田  勇君    大口 善徳君
      並木 正芳君    西川 知雄君
      鈴木 淑夫君    西川太一郎君
      西田  猛君    佐々木憲昭君
      佐々木陸海君    春名 直章君
      濱田 健一君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員

(中略)

 委員外の出席者
        議     員 池田 元久君
        議     員 枝野 幸男君
        議     員 古川 元久君
        議     員 石井 啓一君
        議     員 西川 知雄君
        議     員 鈴木 淑夫君
        議     員 谷口 隆義君
        衆議院法制局第
        二部長     窪田 勝弘君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  石垣 君雄君
        参  考  人
        (金融危機管理
        審査委員会委員
        長)      佐々波楊子君
        衆議院調査局金
        融安定化に関す
        る特別調査室長 藤井 保憲君
    ―――――――――――――
委員の異動
(略)
   ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措
 置法案(内閣提出第一号)
 金融機能の安定化のための緊急措置に関する法
 律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第二号)
 債権管理回収業に関する特別措置法案(保岡興
 治君外三名提出、衆法第一号)
 金融機関等が有する根抵当権により担保される
 債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する
 法律案(保岡興治君外三名提出、衆法第二号)
 競売手続の円滑化等を図るための関係法律の整
 備に関する法律案(保岡興治君外四名提出、衆
 法第三号)
 特定競売手続における現況調査及び評価等の特
 例に関する臨時措置法案(保岡興治君外四名提
 出、衆法第四号)
 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律
 案(菅直人君外十二名提出、衆法第五号)
 金融再生委員会設置法案(菅直人君外十二名提
 出、衆法第六号)
 預金保険法の一部を改正する法律案(菅直人君
 外十二名提出、衆法第七号)
 金融再生委員会設置法の施行に伴う関係法律の
 整備に関する法律案(菅直人君外十二名提出、
 衆法第八号)
     ――――◇―――――

(前略)

○相沢英之委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。岡田克也君。

○岡田委員 民主党の岡田克也です。
 きょうは、野党三会派の法案について質問をさせていただきたいと思います。質問をする以上、同じ党とはいえ、聞くべきことはきちんと聞く、そういう姿勢で聞かせていただきたいと思いますので、よろしく御答弁をいただきますようお願いします。
 まず、この委員会でもたびたび議論になりました金融再生委員会の性格詮について、少しやりとりをしながら整理をしておきたい、こういうふうに思っております。
 基本的に、この金融再生委員会は国家行政粗織法三条の機関というふうに位置づけられているわけでありますが、なぜわざわざ三条機関ということにしたのか、その基本的考え方についてまず確認をしておきたいと思います。

○池田(元)議員 岡田委員にお答えをいたします。
 国家行政組織法第三条の委員会、いうところの独立行政委員会として金融再生委員会を設置すべしというのは、我々の提案の中心の一つでございます。
 この三条委員会といいますのは、いわゆる国家行政組織の中で、政治的中立性、それから相反する利益の調整等、そういった事務に適するものとして考えられておりますが、この再生委員会は、まさにそれに適合するものとして三条機関としたわけでございます。

○岡田委員 確かに、この金融再生委員会のいろいろな機能の中で、所管事項及び権限ということになるわけですけれども、この中で、例えば検査に係ることあるいは監督に係ること、そういうものは中立性ということが非常に要求されることではないかというふうに思うわけですが、四条の第一項第一号の「金融制度の調査、企画及び立案をすること。」ということも、つまり、今大蔵省にある金融の企画立案機能というものもこの再生委員会に持ってきているわけでございます。
 こういう金融制度の調査、企画、立案をすることということは、ある意味では行政そのものでありまして、そういう意味で、三条機関、独立性を持った三条機関の行う所掌としてはなじまないのではないか、こういう議論が当然出てくるわけでございますが、それに対してどのように御説明されますか。

(中略)

○岡田委員 それは別に裁判所をかませないとできない話ではないように私は思うのですが、ここはなお検討課題だというふうに申し上げておきたいと思います。
 それから、金融整理管財人のもとでいろいろ、最長二年間やっていくわけですが、ここで言われている最終的な処理というのは、合併とか営業譲渡ということをまず念頭に置いて組み立てられておられるのか、原則清算ということを考えておられるのか、いずれなんでしょうか。

○石井啓一議員 清算という言葉に若干いろいろな意味が、意味がといいますか誤解が含まれるような要素があると思いますけれども、ここで私どもが言っておりますのは、単に会社を単純に清算をして全部なくしてしまうということではなく、原則営業譲渡あるいは資産の売却等を行うということを考えておりまして、残った法人を清算する、こういうことでございますので、先生おっしゃるとおりでございます。

○岡田委員 そこで、二十六条の「管理の終了」というのがそこに当たるわけでありますが、原則一年以内、場合によっては一年に限りこの期間を延長する、こういうことになっているわけです。ここが政府・与党のお出しの法案と長さの点において違いがあるわけですが、基本的に原則一年、例外二年ということでそういう合併相手あるいは営業譲渡先というものが見つかるのかどうか、あるいは、これを長くしたときにどういう弊害があるのかということについて御答弁いただきたいと思います。

(中略)

○岡田委員 今の御答弁を整理しますと、だれでも早く合併の相手とか営業譲渡先を見つけたい、一刻も早くそうしたいというのはこれは当然のことでありますから、ポイントはむしろ今の御答弁の後半にあったのであって、最長二年を超えてしまうと結局非常に劣化したものしか残らずに、かえって公的負担がふえてしまう、だから原則一年、例外二年ということで切った、そこが政府と考え方の違うところだ、こういう答弁と理解してよろしいですね。
 それでは最後に、時間が参りましたのでもう一問だけ。
 公的管理のところに関係するわけですが、第五十三条に「金融機関の申出」という規定がございます。金融機関は、「その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあるときは、その旨及びその理由を、文書をもって、金融再生委員会に申し出なければならない。」ーーこういうふうになっておりますが、このことと、それから二十八条の「特別公的管理の開始の決定」というものはどういうふうにリンクしているんでしょうか。

○古川元久議員 今委員の御指摘の「金融機関の申出」は、御承知のようにこれは雑則のところに入っておりまして、これはそもそも、金融再生委員会が、いわゆる特別な公的な管理に入るか、あるいは金融整理管財人をつけるか、その判断をする前のところのアクションを起こすときの両方にこれはかかっているんですね。
 別に、この申し出があったら必ずこれは特別公的管理に入るというわけではなくて、そういう申し出があれば、これは事実上、つまりあしたの資金繰りもつかないというような状況に金融機関が立ち入って、そこで、今そういう状況ですということを再生委員会に申し出てくるということになりますから、そこでは、これは前の方で言っておりますように、その場合にはこの再生委員会でいわゆる破綻した金融機関というふうに認定をして、それによって、ある場合には金融整理管財人、そしてある場合には特別公的管理、そういった従来のスキームの中でこれを判断していくということになると思います。

○岡田委員 ですから、客観的な条件が二十八条の適用のためには必要ですが、そういうものを満たしておれば、みずからが払い戻しの停止のおそれがあると認めてそういう申し出をしてくるわけですから、原則的には、金融再生委員会は二十八条でそれを受けとめて、そして一定の要件がそろえば手続に入っていく、その導入のための規定になるということですね。
 これは、おそれですから、実際に債務超過であるとか実際に停止であるということは必要ありませんので、銀行自身がみずからおそれがあると思ってこの申し出をすれば、おそれがあると自分が言っているわけですから、二十八条でそれを受けとめて、その手続に要件がそろえば入っていく、こういうふうに理解していいですね。

○枝野議員 まさに今御指摘のとおりでありまして、そういったことから公的管理等に入っていくというケースが、むしろ場合によっては、特に初期の段階は、金融再生委員会が立ち上がっても、そのしっかりとしたルールに基づいての検査というのが終わるまでの間というのは、もしかするとそういったケースの方が多いのかもしれないというふうに思っています。

○岡田委員 これで終わります。

(後略)

[国会議事録から引用おわり]