【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

公明党代表「ごくごく短期で、復旧・復興に特化した連立はある」

2011年06月08日 21時15分10秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]公明党代表で参院議員の山口那津男さん

 どういうわけか、記事にはなっていませんが、公明党代表の山口那津男さんが2011年6月7日放送の「BSフジLIVE PRIME NEWS」におよそ出演しおよそ1時間たっぷり出演しました。この中で、「ごくごく短期で、復旧・復興に特化すれば」民主党と連立する考えがあることを示唆しました。

 ちなみに、「示唆」とは、政治記事見出しの定番です。ところが、この「示唆」という言葉を誤解して、政治を論じている方が、掲示板などでよく見受けます。

 「示唆」とは、「それとなく気付かせること。また、暗にそそのかすこと。」(広辞苑)です。

 政治記事の見出しとしては、私の感覚としては強い順に

 「断言」>「明言」>「発言」>「言及」>「示唆」の順になるかなあと思います。要するに党人である以上、党首としても一人で決められることではないので、「示唆」ということになります。

 のっけから、話がそれましたが、山口さんは大要、次のように述べています。

 まず「大連立」について、「政権を持っている民主党がメッセージを発することの意味」が重要だ、としながら大連立になると、官僚の思惑が入りやすくなるのではないか、と指摘します。ただ、山口さんも東大法学部卒業生ですので、「官僚の思惑が入りやすい」というのが、行きすぎた政治主導による民主党政権が迷走している現況では、必ずしも悪い意味ではないのではないか、と私はTVの前で感じました。

 そして、「やむにやまれず出した」菅内閣不信任案の理由は菅内閣が「遅い」「現場を見ない」の2点だとしました。これは公明党という政党のシステム、あるいは立党の精神、DNAからしたら、最も許せないことです。

 そして、民自公の修正協議により、復興基本法が成立しそうだとの見通しを示し、そのときに退陣すべきだとしました。

 ここで、スタジオの早稲田大学政治経済学部教授の河野勝さんが「(不信任案否決で衆議院で)信任された首相が辞めるのは、憲政の常道からしておかしい」「せめて、特例公債法案(平成23年度の赤字国債の発行法案)は通してあげるべきではないか」とツッコミを入れました。

 山口さんは、「参院での問責(決議案カード)を使うまでもなく、民主党の参院側の幹部が『辞める』と言っているので、大勢は決した」として、復興基本法成立(6月17日との観測)で総辞職すべきだ、としました。また、ここで、山口さんが問責決議案に慎重になっているかもしれない、ということも感じ取れました。

 さて、復旧・復興のスピードにこだわる公明党ですが、大連立に関して重ねて問われると、「建設的な与野党協議の場を国会につくるべきだ」というあいまいな発言をします。その上で、今後の政治日程として、すでに自民党・公明党幹事長が合意した復興基本法成立で菅総理が辞任し、民主党が次のリーダーを選ぶ。そして次の枠組みをつくる。で、その日程のためには、まずは菅首相が早く辞めるべきなんだ、という主張をします。

 ここで、河野教授は「ガバメント(政府、government)には(内閣や大統領だけでなく)国会も含まれる。衆院議長・参院議長らが主導して、国会としても復旧・復興の議論の場を積極的につくるべきだったのではないか」と指摘しました。すなわち、与党・民主党だけでなく、野党・公明党も一定の責任を負っている、ということを意味していると思いますが、山口さん、困った表情でした。

 この河野教授の指摘をきっかけに、スタジオは「民公連立」の話題がしやすい雰囲気に。

 山口さんは、公明党としては、(公明党地方議員らの要望を国政府が一元的に受け付ける)復興庁の必要性を説きました。公明党の復興基本法独自案にあった「復興庁」については、民主党の藤村修・衆院復興特別委員会・筆頭理事が真摯に公明党、自民党の声をきいて修正協議していて、基本法に盛り込まれる見通し。そして、復興庁設置法案が、いつかは別にして提出され、来年1月とか、いつかは分かりませんが、内閣府復興庁ができる見通し。復興庁は10年以上の長期的な組織におそらくなるでしょう。

 そして、時限については「ごくごく短期」、テーマについては「復旧・復興に特化」し、テーマからは「子ども手当、TPP、選挙制度はダメだ」として外すように主張しました。

 そして、民主党が「一つの方向性を出せば」、「(民主党の)新代表がつくられれば、2次補正をつくる。どう(公明党が)協力する姿勢をつくりだすかとしました。そして、第3次まで来ている、公明党の復旧・復興ビジョンについて、2次補正予算(案)に「全部丸飲みしてくれとは、言わないですよ。いいところは取り入れてほしい。我々の提言はもう3回目です」としました。

 これについては、6月6日(月)、私が岡田幹事長に質問していますので、引用します。ポイントは赤字で染めてみます(一部ケータイでは赤字が出ませんので、ご容赦ください)。

[民主党の岡田幹事長の定例記者会見(2011年6月6日)の要旨から引用はじめ]
 
【フリーランス・宮崎記者】5月末に公明党から「大震災復旧復興ビジョン」の第3弾が出されている。第2次補正は10兆円から20兆円規模ではないかと言われているので、公明党のこのビジョンを丸のみしても、おそらく予算規模には全く届かないぐらいの細かい要望だと思うが、こういったものにどう対応していくお考えか。

【幹事長】ちょっと具体的にはお答えしにくいのですが、さまざまな必要性というか要望というか、それは被災地にはあります。先週土曜日にも、私は松島の桂島と野々島、あとは仙南地区といいますか、福島との県境の白石市とか角田市などの市長さんや周辺町長さんからお話を聞いてまいりました。
 
(中略)

 今まで各党・政府連絡会議(震災対策合同会議・実務者会合)などをやって、いろいろな議論をしてきましたが、特に自民党公明党の実務者の皆さんは、今までも非常にいい前向きの提言をしていただきましたので、一緒に被災地の要望も聞いて、そして、2次補正に向けての協議を、早い段階からできればいいのではないかと思っております。もちろん相手のある話ですから、これはまだわかりませんが、被災地あるいは被災民の皆さんを第一に考える観点から、そういうことも含めて、これは与党・野党を超えてやっていったらいいのではないかと思っています。

[引用終わり]

 さて、フジテレビの山口さんの番組に戻ります。山口さんは、民主党の次期代表について、「いろいろと野党と話し合える人がいいのではないか」とし、「菅内閣のときのボールを投げて、受け止めた方にやってほしい」と述べました。そして、「民主党の中には決断力のある人がいる」とし、「民主党は若い人たちの力がフラットだ」という表現のしかたで、現在の中堅以上の幹部がチームとして力を出せる体制の構築が望ましいことを示唆しました。山口さんは念押しとして、「小沢一郎さんと鳩山由紀夫さんの『政治とカネ』の問題があれば、(国民は民主党政権を)信頼しないというのが当然のことであり、(小鳩切りを完全にできなかったことが)菅さんのリーダーシップを低下させた」と述べました。クリーンな公明党として脱小鳩を求めました。

 ところで、公明党最大の闘いだった第17回統一地方選が終わり、現在の公明党は2013年7月ごろの衆議院・参議院・都議会のトリプル選挙を想定して、そこに目標を定めているような気配です。やはり選挙疲れをいやしながらも、次の目標に向かって地方議会活動・日常活動をじっくりやりたい、という雰囲気が感じられます。そのためにも、公明党本部職員だけでは対応しきれない部分で、「復興庁」が必要、ということになるのだと考えます。

 この2013年7月(?)のトリプル選挙を念頭に置いていると思われますが、山口さんは最後に、「最高裁が衆院にも参院にも違憲判決を出している」ことを強調して、衆院の1人別枠制度(いちにんべつわくせいど)の撤廃、参院での選挙制度改革など、衆参「両方にふさわしい選挙制度」をつくったうえで、2013年7月のダブル選挙にのぞみたい、という方向性を示して、番組は終わりました。この選挙制度の改革については内閣の枠外で、国会や各党間の協議でやる、ということだと思います。

 ところで、昨日の30年物国債の入札が不調でした。大手生保会社が「政局の見通しがつかない」として買い控えたという情報があります。なんとか、6月22日の会期末までに、お願いですから、特例公債法案(平成23年度の赤字国債発行法案)は、頼むから、成立させてください。うんざりするような大政局になっていますが、道は開けると思います。僕は最近、次の言葉が好きです、勇気がわいてきます。そして次の言葉を確信しています。

 それでも政治は変えられる。


石破茂さんと岡田克也さんはそろそろ仲直りして欲しい 救国のために、期限付きでいいから・・・

2011年06月08日 10時54分32秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意


 自民党政調会長の石破茂さんが、2011年6月7日、テレビ朝日番組に出演して、「岡田克也民主党幹事長は菅さんと共同責任がある」と述べ、岡田克也さんが次期首相に就くことに否定的な見方を示したーーと時事通信が報じました。

 石破茂さんは1986年の衆参ダブルの第38回総選挙で初当選、そして、冷戦が崩壊した1990年の第39回衆院選で岡田さんが初当選しました。石破さんは二世議員ですから29歳で初当選、岡田さんは非二世議員ですから36歳で初当選なので、年齢は岡田さんの方が上になります。とはいえ、石破さんは田中角栄さんのススメで選挙に出ましたが、「中選挙区内で1派閥1議員」という自民党の習わしから、中曽根・渡辺派「政科研」に所属しました。一方、岡田さんは田中派の流れをくむ最大派閥の泣く子も黙る竹下・金丸派の「経世会」に属しました。

 岡田さんと石破さんは政治改革の必要性で一致し、「政治改革を実現する若手議員の会」(石破茂・渡瀬憲明共同代表)をつくりました。岡田さんはこのころのことを、「燃えていた」、「同志的な結合でひたすら政治改革実現に向けて力を合わせた仲間たちだ」というように、『政権交代ーーこの国をかえる』の38ページに記しています。岡田さんとしては、それに先立つ、仙谷由人さんらとの「CP研(比較政治制度研究会)」の方が思い入れが強いようです。

 1993年1月8日(金)召集の第126通常国会では、政治改革関連3法案をなかなか提出しない宮澤喜一内閣に対して、石破さん、岡田さんらの憤りは最高潮。そして、6月14日に自民党の梶山静六幹事長が「今国会での政治改革関連3法案の提出を断念する」と発表すると、石破さん、岡田さんら20人は勢い余って、渋谷区の宮澤総理・総裁宅に押しかけて直談判するという「宮澤邸夜討ち事件」を引き起こしました。玄関先に出てきた宮澤さんの「おやおや、これはどうしました?」「何ならここでやろうか」というナゾの言葉の後、石破さんが「総裁、政治改革関連法案の件ですが・・・」と話かけると、「遅いけど、君ら上がるかい?」と問うと、一瞬きょとんとした石破さんの後ろにいた岡田さんらが「お願いします!」と行って自宅に上がります(映像資料がなく、記憶なので、少し事実関係が違うかもしれません)。しかしこのときは、車座になって話したものの宮澤総理を説得できず、一夜明けた党の臨時総務会で「法案不提出」を正式決定することになったことを知り、党本部6階で開催を実力封鎖しようと試みます。それが有名な下のシーンです。


[画像]自民党臨時総務会の開催を封鎖しようとする岡田克也さん、岩屋毅さん(岡田の右肩後ろ)ら1回生議員と、封鎖を解こうとする亀井静香総務ら、1993年6月15日、自民党本部6階、岡田かつや後援会報2010年秋特別号「岡田かつや20年の歩み」から(http://www.katsuya.net/2010winter4.PDF

 さて、この写真から1年後。時代が大きく変わり当選3回生の石破さん、2回生の岡田さんは与党・新生党の衆院議員でしたが、あっと言ういう間に、羽田内閣が不信任案を突き付けられ、非自民連立内閣は崖っぷちに追い込まれます。羽田首相が解散しようとしているという情報を聞いた2人は、官邸に乗り込みました。このときのことについて、岡田幹事長は「石破さんは、『若い議員のために、ここは解散すべきでない』という話でした」「私(=岡田さん)は『せっかく小選挙区制度の法律が通った』『相当努力した結果できた小選挙区比例代表並立制を確実なものにするために、解散すべきではない』と申し上げました。ですから、論理は2人全く異なりました」(5月30日の幹事長定例記者会見)として、石破さんとの考え方が“全く”違ったことを強調しました。そして、今度は石破・岡田コンビは1年前とは逆に総理を説得することに成功しました。岡田さんは「羽田先生には申しわけないという気持ちは常に持っておりますし、それがその後、新進党において私が党首選挙で海部さんではなくて羽田さんを応援した。逆に言うと、小沢さんの考え方とそこからずれが出てきた」と語りました。

 ところで、石破さんも昨日のテレビ朝日では、「小沢一郎元代表とだけはやれない」と語ったそうです。石破さんは昨年12月のラジオで小沢一郎氏について、、「あの頃(1993年)は、この人こそ真の改革者だと信じましたよ。我々若い議員は感動しました。あのときは光り輝いていた」として、今の小沢氏は、「トータルに必要なことがなにかといえば、水沢に帰る・・・今は奥州市っていうのかな・・・水沢に帰ることだ」と引退勧告しました。

 このように、小沢一郎氏を切らなければ、日本が前に進まないということでは、石破さんと岡田さんは一致する。

 岡田さんは政権交代の118ページに、「自分の政治生命だけを考えて行動する。言行不一致の議員の姿も目の当たりにした。昨日まで自民党を厳しく批判しながら、突然自民党に戻る政治家もめずらしくなかった」「だれがどういう行動をとったかは忘れまいと思う。こうした、ある意味での極限状態に直面したとき、一人の人間がとる行動は繰り返されるものだ」「一度裏切った者は、二度裏切る」と書いています。

 まあ、僕も岡田さんの言うとおり、「一度裏切った者は、二度裏切る」と思いますが、政治とは「程度問題」というものがあります。小沢一郎さんは「裏切り」のホームラン王、名球会入りです。

 石破元防衛相・農相、岡田元外相が力のある政治家だということは党派を問わず認めるところでしょう。ときは移ろい二大政党を代表する政治家となった2人は逆に討ち入られる立場になりました。でも、かつての「若手議員の会」や「CP研」のメンバーも簗瀬進さんや渡海紀三郎、堀込征雄さん、平田米男さんらは今、国会にいません。渡瀬憲明さん、住博司さんらはなくなりました。あるいは、後藤田正晴先生、伊東正義先生も、政権交代をその目で見ることはありませんでした。

 石破さん、岡田さんが力を合わせれば、日本は前に進めます。仙谷さんも、河村建夫さんも、岩屋毅さんもいます。まだまだ大丈夫です。国難です。救国のために、期限付きでいいですので、石破・岡田コンビの復活を見てみたい気がします。