小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

訃報 キッシンジャー氏逝去           心からご冥福をお祈りする (合掌)

2023-11-30 | 小日向白朗学会 情報
 2023年11月30日、Bloombergは『キッシンジャー元米国務長官が100歳で死去、米中国交樹立の立役者』を配信した。
『……
ニクソン、フォード米政権で国務長官を務め、1970年代の米外交政策決定で重要な役割を果たしたキッシンジャー元米国務長官が、米コネティカット州の自宅で死去した。100歳だった。元国務長官の関係者が明らかにした。
キッシンジャー氏は大統領補佐官として、72年のニクソン大統領による電撃的な中国訪問を実現させ、79年の米中の国交樹立につながる土台を築いた。
冷戦下での旧ソ連とのデタント(緊張緩和)や戦略兵器制限条約の実現に貢献したことで歴史に名を残す一方、ベトナムとカンボジアに対する大規模な空爆を支持したことなどで批判も受けた。
……』
 キッシンジャー氏最大の功績は、上海コミュニケで「一つの中国」を纏めたことである。この「一つの中国」をアメリカが認めたことで、今日の中国があると言っても過言ではない。
 しかし、最近のアメリカ政府は、オバマ元大統領やバイデン現大統領が私的な利害関係で戦争を繰り返す危険な世界外交を繰り広げ、ついに、アメリカ軍を台湾有事に介入させることまで想定するようになった。その結果、中国をロシアに急接近させることになり、世界の核バランスを崩しかねない状況を招いてしまった。危機感を抱いたキッシンジャー氏は中国とアメリカが「一つの中国」政策に回帰することに尽力し、ついに、バイデン大統領と国務省を説得することに成功した。
 それは2023年07月のことであった。
 その後の、アメリカであるが「一つの中国」政策が完全に定着するかは、いまだ、不安が残るところである。
 そのような中でアメリカ外交の重鎮であるキッシャンジャー氏が逝去したことで、バイデン大統領の暴走を誰が止めるのかと考えると、その影響は計り知れないものがある。
(寄稿:近藤雄三)
尚、「一つの中国」政策に付いては下記のスレッドでまとめてきた。
・(2023年10月27日)『王毅外相とブリンケン国務長官会談
・(2023年06月22日)『上海コミュニケ
(岩波書店版周恩来キッシンジャー機密会談録の表紙=笑顔で握手を交わす周恩来総理とキッシンジャー補佐官、1971年7月9日北京中国政府迎賓館にて=AP/WWP提供)
(July 17 1970付け、小日向白朗訪米要請の手紙=1971年7月の周恩来キッシンジャー会談に同席しているNSC-国家安全保障会議上級スタッフのジョン・ホルドレッジ氏からの書簡=キッシンジャー補佐官の要請を含んだもの)
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NATO事務総長もウクライナの作戦が失敗であったことを認める -いよいよ「ウクライナ可哀そう」の化けの皮が剥がれる-

2023-11-30 | 小日向白朗学会 情報
 2023年11月27日、TASSは「ストルテンベルグ氏:NATO兵器によるキエフの攻撃の失敗は、ロシア連邦を過小評価できないことを示した」[i]を配信した。
『……
同盟事務総長によると、ロシアの産業は「軍事モードに移行」し、「北朝鮮から大量の弾薬を受け取った」とされる。
ブリュッセル、11月27日。/タス/。NATOの大規模な支援にもかかわらず、ウクライナが前線を動かせなかったことは、ロシアを過小評価すべきではないことを裏付けているが、同盟は依然としてキエフを支援し続けなければならない。NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグは、11月28、29日にブリュッセルで開催される同盟国の外相会議に先立つ記者会見でこの見解を表明した。
「NATO諸国からの多大な援助にもかかわらず、ウクライナ人は今年中に前線を動かすことができていないことが分かる。これはロシアを過小評価できないという事実を裏付けるだけだ」と同氏は述べた。
ストルテンベルグ氏は、ロシアの産業が「軍事モードに移行」し、「北朝鮮から大量の弾薬を受け取った」と主張した。「これにより、ウクライナは我々が期待していた領土での成功を達成することができなかった。しかし安心してください。外相会談とワシントンでの(来年の)NATO首脳会議後のNATO諸国からのシグナルは、必ず成功するだろう」とNATO事務総長は続けた。私たちがウクライナの側に立っていることに変わりはありません。」
同氏は、ウクライナ紛争でロシアが優位に立つことを「許すことは(NATOの)安全保障上の利益ではない」と信じている。
……』
 要するに、NATO事務総長は、ウクライナはロシアに勝てないと言っているのだ。西側諸国が莫大な軍事援助をおこない、華々しい戦果を報じていたウクライナが勝てないというのである。なにか、太平洋戦争末期の日本を彷彿とさせる、まるで詐欺のような話なのだ。
ところで、日本政府は、ロシアがウクライナに侵攻したことを利用して、強力な自衛隊に作り替えることと、莫大な防衛利権を手に入れるために「ウクライナは正義であり、ロシアが悪である」という一大キャンペーンを張ってきた。そのため一切のロシア擁護の声を封殺してきた。そのキャンペーンの中心にいたのが、「防衛省防衛研究所」政策研究部長兵頭慎治氏であり、「英国王立統合国防安全保障問題研究所」(Royal United Services Institute for Defence and Security Studies、略称RUSI)であった。防衛研究所の兵頭氏自身も2007年に英国王立統合国防安全保障問題研究所(RUSI)客員研究員をしていたと経歴書に記載していることからもRUSIと表裏一体の関係者なのである。また、彼は、2019年から「内閣官房領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会委員」を務めている。この委員会は、平成25(2013)年4月、国際関係・国際法・歴史研究などに造詣の深い有識者を集めて設置した懇談会である。そして兵頭の所属が内閣官房であったことから秋葉剛男国家安全保障局長を補佐する役割を担っていたと考えられる。その秋葉剛男国家安全保障局長とは、防衛三文書を取り纏めた張本人である。その補佐役が兵頭慎治氏だったのだ。
 そんな兵頭氏であるが「日本は自衛隊の指揮権」がないにもかかわらず、頻繁にテレビに出演し、恰も日本に主権があるかの如く「(ロシアによる)一方的な力による現状変更」が日本の安全保障に重大な影響を及ぼしていると虚言を弄していたのだ。その後、ものの見事に、彼の主張が防衛三文書に採用され莫大な防衛予算を獲得し着々と装備拡充をおこなうことに貢献した。

 ところが、上述の記事にあるようにNATO事務総長はロシアがウクライナに勝つと言い出しているのだ。
 これは一大事である。
 ロシアがウクライナに勝利すると、つぎは、中国が台湾侵攻を開始し、併せて日本の領土である南西諸島に侵攻を開始して「一方的な力による現状変更」が起きるはずである。
 その時、日本は、アメリカの核の傘と通常兵力及び有志国とともに島嶼防衛作戦を実施する手はずとなっている。いよいよ日本は中国と開戦となる。
日本防衛の要はアメリカの核抑止力と、通常兵力を極東有事で使用することであった。
 しかし、である。
 アメリカは、中国と「一つの中国」政策が両国関係の基盤であることを再確認したことから、台湾有事に核の傘も、通常兵器も使用しないことを確認してしまった。さらに、日本防衛の最高司令官岸田首相も、中国と「一つ中国」政策を再確認したことから、日本と中国は、双方が抱える外交問題に関して武力行使を行なわないことを確認してしまった。島嶼部で防衛にあたる自衛隊は、中国が侵攻してきても、アメリカと有志国による支援はないのだ。日本は単独で戦うしかないのだ。しかし、最高司令官は「日本は中国との紛争に武力行使はしません」と既に戦わないと約束してしまった。
 其れであるにも関わらず自衛隊には「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える。」とまるで自衛隊に玉砕することを望んでいるような訓示をしているのだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、NATOがロシアの下腹に核を配備することであり、ウクライナがロシアから受けた莫大な「融資を帳消し」するため、ウクライナ内政問題にNATO,オバマ、バイデン等の私的利害関係者が介入したことから起きたものなのだ。それを、ロシアのウクライナ侵攻に対して「ウクライナ可哀そう」と国民を扇動したが、これは自由民主党の国防利権を拡大するため利用しただけのことなのだ。その結果、自衛隊は島嶼防衛を任務にさせられてしまったのだ。本当に可哀そうのなのは、ゼレンスキーと云う間抜けな総司令官を戴くウクライナ国民と、これもまた、無能な最高司令官が岸田首相と云う自衛隊なのだ。

 最高司令官岸田首相は、日本の宝である自衛隊をもてあそぶだけではなく、利権の道具に利用するのは即刻やめよ!

以上(寄稿:近藤雄三)
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岸田首相「仮想敵国リストから中国を外さないと日本外交は成り立ちません」

2023-11-29 | 小日向白朗学会 情報
 またもや日本政府は、大恥をかいてしまった。
 2022年末以来、岸田首相内閣は「防衛三文書」で、日本の仮想敵国を中国、北朝鮮、ロシアとし莫大な国家予算を割いて反撃能力を含む武力増強を行うことにしていた。ところが、APEC首脳会談期間中の2023年11月16日に、岸田文雄首相と習近平国家が会談をおこなったさいに岸田は「台湾との関係に関する日本の立場は、昭和47年=1972年の日中共同声明にあるとおりで、一切変更はない」[i]ことを伝えている。
 これは、日本政府と中国政府と結んだ日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)、平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998年)、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008年)の4つの条約と政治文書をすべて再確認したということである。これにより日本は尖閣問題や台湾有事で中国と武力対峙しないことを確認したことになる。
 ところが日本政府は、二枚舌外交で時間稼ぎをすることになってしまった。
2023年11月27日、NHKは「日中韓外相会議 “首脳会議 適切な時期開催へ”作業加速で一致」とする記事を配信している。
『……
日中韓の外相会議が韓国で開かれ、2019年を最後に開かれていない3か国の首脳会議を、できるだけ早く適切な時期に開催するため、作業を加速させることで一致しました。
冒頭、上川大臣は「3か国は隣国であるがゆえに困難な問題に直面することもある。大局的な観点に立って3か国の協力を再スタートさせる契機としたい」と述べました。そして、3か国が未来志向で実務的な協力を進めていくことが地域と世界の平和と繁栄に重要だという認識で一致しました。
会議の冒頭で中国の王毅外相は「世界経済がいま大きな課題に直面している中、3か国は地域と世界の発展に積極的な役割を果たすべきだ。中国は一衣帯水の隣国として、引き続き、韓国と日本とともに努力し、3か国の協力を正しい軌道に戻し、健全で安定的かつ継続的な発展を推し進めていく」と述べました。
一方で、会議のなかで王毅外相は今後の3か国協力のあり方を巡り「最も重要なのは歴史を直視し、互いの発展の道筋と核心的な利益を尊重し、デリケートな問題に適切に対処することだ」と述べたということです。

さらに「3か国の協力によって東アジアの協力をリードすべきであり、地域協力が陣営の対立になることに反対すべきだ」とも強調し、台湾海峡や南シナ海などを巡ってアメリカとの連携を重視する日本と韓国をけん制したものとみられます。
……』
 APEC首脳会議期間中に岸田首相と習近平国家主席が「一つの中国」であることを再確認した後に、開催される会議が日中韓外相会談であったことを考えると極東の安全保障問題が前進する可能性はあった。
 ところが、日本政府は、APEC首脳会議後に、急遽、中国に対する反撃能力と位置づけされているトマホークを輸入するなど、決して中国敵視政策を変更しないばかりか、本年度も拡大した防衛予算を執行しようとしている。そして開催されたのが、2023年11月26日開催の日中韓外相会議なのである。
 その席で王毅外相は「3か国の協力によって東アジアの協力をリードすべきであり、地域協力が陣営の対立になることに反対すべきだ」と台湾海峡や南シナ海などを巡ってアメリカとの連携を重視する日本と韓国をけん制したのだ。
つまり、王毅外相は日本政府と韓国政府に対して、APEC首脳会議で日本は「一つの中国」を再確認したのだから、日本の安全保障を定めた「防衛三文書」から中国を敵国としたことを改めよと言っているのだ。
 ところが日本政府は、総論では「台湾海峡で武力行使はしない」ことには賛成するものの、各論では反撃能力の増強を行い、島嶼防衛用塹壕の整備を進めるだけではなく、来年度予算も防衛力強化は推し進めるとしているのだ。
 これでは、三国外相が宴会を開いて友好をアピールなど、あり得ない話なのだ。もしも、王毅外相が、この誘いに乗ったならば、政治生命を失う可能性すらあるだけではなく、しぶしぶ「一つの中国」に同意しているアメリカに、誤ったメッセージを送る事にもなるのだ。
 日本政府も韓国政府も「一杯飲ませ、食わせて始める、田舎政治」とは訳が違うことを認識すべきである。
 中国が「一つに中国」を認めた日本政府に求めているのは、具体的な政策変更、つまり、仮想敵国から中国を外すか、その道筋だけでも示さない限り、日中関係に一切の進捗はない。

・(2023年10月27日)『王毅外相とブリンケン国務長官会談
・(2023年06月22日)『上海コミュニケ
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「自由民主党は売国政党だ!!」と断定する理由

2023-11-28 | 小日向白朗学会 情報
 自由民主党は、CIA資金によって結党されて以来、アメリカと「日米地位協定(日米行政協定)」及び「国連軍地位協定」で日本の国家主権である「自衛隊指揮権」「航空管制権」「電波権」を売渡したことを墨守して現在に至っている。自衛隊に最新装備を施すとともに、憲法を改定して、海外派兵して、米軍指揮下で戦闘できる軍隊にする──ように差配することで長期政権であることを許された政党である。
 自由民主党政権が「アメリカの手配師」であることは、「日米地位協定(日米行政協定)」及び「国連軍地位協定」を締結してから現在に至るまで最高機密であったことにみることができる。そのため、日本政府は、その存在を公式に認めたことはない。
 ところが、日本政府は、一度だけ、「Yes」とは言えないまでも「No」とも言えない、つまり、「暗黙の了承」を与えたことがある国会論議がある。
その議事録の中で「日米地位協定」について次のように述べている。
『……
 琉球新報社は「日米地位協定の考え方 増補版」を刊行していると承知しており、外務省はこれに該当すると思われる文書を保有しております。
外務省が保有する当該文書の中には、日米間の協議事項に係る当省内の考え方、両国間の協議の内容等に関する記述が含まれております。これらを明らかにすることにより、米国との交渉上不利益を被るおそれ又は米国との信頼関係が損なわれるおそれがあると考えられることから、外務省として当該文書を公表することは考えておりません。
……』
 外務省は「日米地位協定」の交渉経緯を示す文書は存在しているが、アメリカとの信義上公表できないと言っているのだ。
 もったいぶった言い回しである。
 しかし、外務省がいくら詳細情報の公開を拒否したところで、当時の行政協定の交渉記録は、既に、情報公開されているのだ。
 同交渉記録は、アジア歴史資料センターに『日米行政協定締結交渉関係 第1巻』内に『交渉経緯/(1)第一次日米交渉における行政協定案 昭和26年2月』(Ref.B22010299700)として残されている。その記録のなかに「集団的防衛措置」とする章がある。
『……
第四章 集団的防衛措置
(一)日本国域内で、敵対行為又は敵対行為の緊迫した危険が生じたときは、日本国地域にある全合衆国軍隊、警察予備隊及び軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織は、日本国政府と協議の上合衆国政府によって、指名される最高司令官の統一的指揮の下に置かれる。
……』
警察予備隊(自衛隊)は及び「軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織」つまり海上保安庁は、緊急時にはアメリカ軍の指揮下に入ることになって、その戦域は極東としている。
この条項は、その後、整理されて第24条としてまとめられた。
『……
第二十四条
日本区域において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとり、かつ安全保障条約第一条の目的を遂行するため直ちに協議しなければならない。
……』
 となって、自衛隊指揮権をアメリカ軍が握ることとになった。そして、このことは行政協定(日米地位協定)には記載されずに密約となって現在にいたる。これは自由民主党が公表することも認めることもできない最高機密なのでる。なぜならば自由民主党は、自党が売国政権であることを認めることになるからである。
 したがって岸田総理大臣が第211回国会参議院予算委員会で「日本がアメリカの植民地ではない」否定したところで、それは虚言なのだ。
それは、いまだ国民を騙し続けることができると考えている思い上がりであって、国民を愚弄することなのだ。

・(2023年01月13 日)『≪協定≫にご注意!!!  
以上(寄稿:近藤雄三)
(末浪靖司著「日米指揮権密約」の研究の表紙)
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宗主国アメリカからみた現地政権「自由民主党」の衰退と荒廃 -アメリカの意向は「自衛隊海外派兵を可能にする」政権に再編すること-

2023-11-26 | 小日向白朗学会 情報
 1、はじめに
 自由民主党の衰退と荒廃が止まらない。
 自由民主党は、宗主国アメリカの指示に従い、財政規律と云う虚偽のデータで国民生活を犠牲にして軍拡を進めてきたが、それでも不足する費用を賄うためさらなる増税を進めようとしたことで国民の怒りは爆発寸前となってきた。
ところで宗主国アメリカは、このまま自由民主党が国民から愛想をつかされ下野することを黙認するのだろうかという非常に単純な疑問が浮かぶ。なぜならば宗主国アメリカは、「現地政府自由民主党」がわざわざ献上してくれた日本の国家主権である「自衛隊指揮権、電波権、航空管制権」という極上の特権を持っている。
 ところが、その「現地政府自由民主党」は、長期政権で利権まみれとなり、政権を維持するために無理に集めた国会議員は、質の劣化がすさまじく、まともな論議ができる知的レベルすら疑わしいことから、国民から政権能力が欠如していることを見抜かれてしまった。そのため、早晩、自由民主党は下野する以外に選択肢はない。これは宗主国アメリカが持っている極上の特権を、唯々諾々と献上する現地政府が消滅し、その後も引き続き権益を享受できるかどうかが不透明となることを意味しているのだ。
 かかる事態に、宗主国アメリカは、如何なる対応をするか。
 答えは、日本の国会を「極上の特権をアメリカに献上してくれる政権」に再編成してしまうことである。
 これ以外に無い。
 もしも、アメリカが、このオペレーションに失敗すると、日本の電波を利用して構築しているミサイル防衛網の機能を失い、アメリカの防衛圏は一挙に縮小してアメリカ西海岸まで後退してしまう可能性があるという非常にまずい状況が生まれることになる。

2、アメリカが日本政治に介入した事例
2─1 1955年保守合同
 吉田茂は、サンフランシスコ講和条約締結と同時に日米安保条約を締結する。その後、昭和27(1952)年2月28日に「行政協定(日米地位協定)」、昭和29(1954)年2月19日に「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定(国連軍地位協定)」を結ぶことにより、日本の主権(自衛隊指揮権、航空管制権、電波権)をアメリカに売渡してきた。アメリカは、日本を冷戦構造の極東部分として保持し続けるために、CIAが資金を提供して昭和30(1955)年11月15日、日本の保守政党であった自由党と日本民主党とを合同、自由民主党を結成することに成功している。この裏では、アメリカCIAが緒方竹虎(コードネーム:POCAPON)を通して保守合同を働きかけていたことが吉田則昭著『緒方竹虎とCIA』(平凡社, 2012.5)などで明らかにされている。
その直接の原因は、社会党左右両派が昭和30(1955)年10月13日に社会党(鈴木茂三郎委員長、浅沼稲次郎書記長)を再統一したことであった。
 昭和26(1951)年当時の社会党は、サンフランシスコ講和条約を巡って、講和条約賛成派の社会党右派と講和条約反対派の社会党左派に分裂していた。その後、保守政権による再軍備や改憲に対抗するために反対運動を推進した社会党左派が選挙毎に議席をのばしていたが、社会党右派は党内の対立があって明確な主張を出せないまま議席を伸ばせないでいた。ところが昭和30年に社会党が再統一を成し遂げたことで、いよいよ、社会党を中心とする野党が政権を奪取する可能性が生まれてきた。
 この状況変化が意味するところは、社会党が政権を取った場合に、日米安全保障条約は期限が到来するまで継続するものの、国内法である行政協定は政権移譲と同時に破棄、若しくは段階的解消することで「日本の国権を取り戻す」政策に転じることは明白であった。
 かかる事態を避けるためアメリカが採用した方法は、日本の国内政治に干渉し、分裂している保守二党を合同させてアメリカが制御可能な政権与党を早急に準備することであった。
つまり内政干渉である。
 そこまでアメリカが日本の国内政治に深く介入したのは、折角、日米安保条約で獲得した自衛隊の指揮権を最大限に利用して第二次朝鮮戦争で自衛隊を朝鮮半島に出兵させるため様々な方法を通じて自衛隊の戦力増強を図ってきたこと、その努力がすべて徒労に帰すことになるからであった。
加えてアメリカ軍の指揮下で自衛隊を海外に派兵するにあたり最大の問題点は、アメリカの占領施政下で制定した日本国憲法が、皮肉にもアメリカの極東戦略とは相いれないばかりか阻害要因となっていたからであった。この点についても、保守合同で出来た政党は、行政協定を継続的に容認し順守することは当たり前で、さらに憲法を改正して自衛隊の海外派兵を可能にする政策を実施することであった。これらのアメリカの要望に沿って出来上がった政党の党是は改憲と海外派兵なのだ。自由民主党にとってアメリカの軍事的な要求を満足させることが党の存続条件なのである。別な言い方をするならば、アメリカは、自民党が自衛隊の指揮権をアメリカに売り渡すことと、改憲の二点を政策から外した時は、自民党の利用価値は終了することになる。
 
2─2 鳩山政権成立とその後の民主党分裂
 唯一、アメリカが協定の延長に不安を抱えた政権があった。それは鳩山由紀夫の時である。鳩山はアメリカに対等な立場を要求したことから、アメリカにとって自衛隊を安定的に傭兵として利用することが困難になってしまうのではないかとの懸念が十分に予想されたのである。そこでアメリカの意をくむ外務省は、日米防衛委員会に出席した須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が「「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として「六十五海里以内」」とする偽文書を作成して時の鳩山政権を窮地におとしめた。これによって鳩山は政権を崩壊させるに至ったことは周知の事実である。
 政権を降ろされた理由は、やはり、鳩山内閣がアメリカの安全保障にとって最も好ましくない政権であったからである。その後においても、「対等な立場を要求する」政権を崩壊させるため刺客として利用したのが財務省と連携して消費税増税をすすめてきた野田佳彦元首相だったのだ。
 最近、野田元首相は、頻繁にマスコミに登場して、消費税の正当性を主張しているが、その動きはアメリカが考える「極上の特権を献上し続ける」政界に再編成することに同調するだけではなく、積極的に推し進めるアナクロニズム(anachronism)以外の何もでもない。
その後の民主党であるが劇的な政界再編劇が起こす。
 安倍晋三政権が、平成29(2017)年に森友学園問題及び加計学園問題で窮地に陥ると「国難突破解散」と称して同年9月28日に衆議院を解散した。絶対絶体絶命の危機の陥った安倍晋三を助けたのは、幸福実現党と深い関係がうわさされていた小池百合子であった。
小池は同年9月25日に「希望の党」の結党を宣言した。小池が発表した新党の政治理念として次の三つを掲げた。
(1)希望の政治
(2)希望を守る環境・エネルギー
(3)憲法改正の三つであった。
 これに同調した9名の民主党国会議員(衆議院議員木内孝胤(比例東京)、長島昭久(比例東京)、細野豪志(静岡5区)、松原仁(比例東京)、笠浩史(神奈川9区)、若狭勝(東京10区)、参院議員は行田邦子(埼玉)、中山恭子(比例)、松沢成文(神奈川))が合流することになった。これを受けて、同年9月26日夜、小池百合子、民進党代表前原誠司、連合会長の神津里季生の三者は極秘に会談し、民進党と希望の党の合流することを協議し、最終調整に入ることで合意がなされた。同年9月28日に野党第一党であった民進党は希望の党へ合流することを決定した。その時の踏み絵が、10項目の政策協定書であった。10項目の踏み絵を飲むことができない民進党議員は同年10月3日には立憲民主党を結党することになった。
 小池が三番目に掲げた憲法改正であるが、日本は国家主権がない中で憲法を改正するということであって、それは、日本を永遠にアメリカの属国とすることである。小池は、日本がアメリカの属国であることを言わず、あたかも日本が主権国であるかの如く思わせる非常に狡猾な方法を使い、民進党を分割して、弱体化した自由民主党が下野しないように野党分断を図った。これも「国家主権をアメリカに献上する」政権党が下野することを恐れたアメリカの意向であったと考えて間違いない。

3、政界再編「第二の1955年体制」の動き
その後、自由民主党は、自党が衰退していることを悟って単独での政権を維持することをあきらめて国会再編の動きを加速させていった。2021年11月12日付け、読売オンラインに「自民、憲法改正に積極的な維新に接近」が掲載された。
「……
自民党が、衆院選で躍進した日本維新の会に接近している。憲法改正や防衛力強化に積極的な維新との連携で議論の前進を図るためだ。同様に国民民主党との連携も模索する。自民の改憲案の実現や防衛力強化に消極的な公明党をけん制する思惑もある。
国民民主との連携も模索
自民党の茂木幹事長は9日夜、維新の馬場幹事長と東京都内の中国料理店で会食した。茂木氏は「国民投票法を何としても一度は国民の手に委ねたい。国民に憲法を触らせたい」と述べ、改憲の国会発議と国民投票実施に意欲を見せた。馬場氏は「(国会で)憲法審査会をしっかり動かしてほしい」と要請した。
会合は、自民側が持ちかけた。両党の国会対策委員長らも同席し、国会で連携して改憲議論を進める方針を確認した。
衆参両院の憲法審査会では、野党第1党の立憲民主党などが開催を拒み、今年1~6月の通常国会では、衆院で4回、参院で6回の開催にとどまった。状況打開のため、自民は国民にも触手を伸ばす。自民党憲法改正推進本部の衛藤征士郎本部長は8日、国民の玉木代表に電話し、改憲論議で協力を要請。玉木氏は「憲法の議論は、どんどん進めなければいけない」と応じた。
自民内には「維新、国民を巻き込めば、与党だけで議論を進めていると批判されずに済む。今が改憲のチャンスだ」(幹部)との見方が広がる。与党に維新、国民を加えると、衆参両院で改憲の国会発議に必要な3分の2以上に達する。
維新と国民は衆院で計52議席を持ち、公明の32議席を上回る。自民党幹部は、「維新、国民と話をまとめれば公明は改憲の議論に乗らざるを得ない」と皮算用をする。維新は「野党として是々非々で付き合っていく」(松井代表)としながら、改憲論議ではむしろ加速に向けて自民に圧力をかける構えだ。
……』
 この記事にあるように、自民党と国民民主党そして維新の会は、既に、「日本に国家主権が無い」中で改憲することに合意が成り立っているのだ。つまり、日本を永遠にアメリカの属国とすることで合意したという売国奴なのだ。最近ではトリガー条項で自由民主党と厳しく対立しているように振舞っているが、あれはフェークである。裏では国民民主党は「永遠に日本をアメリカに売飛ばす」ことに同意しているのだ。

4、立憲民主党首脳部と国民民主党代表代行前原誠司

2023年11月10日、共同通信『立民、消費減税を見送り 「責任政党」アピール』という記事に立憲民主党の向かおうとしている方向が明らかになる記事を配信している。
「……
立憲民主党の泉健太代表は10日の記者会見で、次期衆院選の政権公約の柱に位置付ける中長期的な経済政策を発表した。消費税の軽減税率廃止を提起。直近2回の国政選挙で掲げた消費税減税の明記は見送った。所得に応じて給付や控除を実施する「給付付き税額控除」の導入を主張した。財政規律を重視する姿勢を示し、責任政党だとアピールする狙いがある。  立民は2021年衆院選、22年参院選で新型コロナウイルス禍を理由に「税率5%への時限的な消費税減税」を唱えた。党幹部は、両選挙で議席を減らしたとして「公約はリセットされた。経済情勢を見ながら消費税減税の是非について議論を続ける」と説明している。
……』
 この記事を読んで即座に了解できることは、立憲民主党は、財務省と綿密な協議を行っていることである。特に「所得に応じて給付や控除を実施する「給付付き税額控除」」とは消費税をエンゲル係数分だけ還付しようという政策であって、税を徴収する財務省が合意していなければ持ち出せない政策なのだ。
還付するならば、徴収しなければよいはずである。
 立憲民主党の中でも消費税減税もしくは廃止を求める議員もいるが、この政策を強行しているのは泉健太代表執行部である。現行の執行部の顔ぶれをみて気が付くことがある。それは国民民主党代表代行前原誠司との関係であるとともに、「日本の主権がないままで改憲」という、ここでも小池百合子東京都知事と同様に狡猾なすり替えをおこなった改憲論を展開していることだ。そして、前原誠司国民民主党代表代行は、既に根拠を失っている「防衛三文書」を絶賛しているだけでなく、自ら作成に尽力したことを公言してはばからない人物なのである。従って、同氏は「日本の主権がないままでの改憲」論者である。つまり、国民民主党代表代前原誠司は、日本が永遠にアメリカの属国となることを喜んでいる人物なのである。

5、まとめ
 宗主国アメリカは、現地政権「自由民主党」の衰退と荒廃によって危機にひんしたことから、「極上の特権をアメリカに献上してくれる政権」を樹立するために、これまでの与野党の枠組みを超えて再編成しようとしている。その手口はアメリカが宗主国で日本は属国であることを伏せたまま「日本に主権がないなかでの改憲」を行い、強力な装備をそろえるようになった自衛隊を海外に派遣できるようにすることである。
 このアメリカによる日本政界再編の範囲を峻別する方法は「日本に主権がない」という前提条件をうやむやにしたままで「改憲」を主張する勢力すべてである。それは、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党、立憲民主党首脳、日本保守党そして連合である。(ただし、参政党の主張する改憲は意味が不明なため現在は判断を控える。)
 「日本に主権がない改憲」か「主権回復後の改憲」か、その違いは天と地ほどもあって、「永遠にアメリカの属国」か「完全な主権国家」かの選択となるのだ。
 日本は、国家主権回復後において、「右でも左でも」「赤でも白でも」「核武装でも永久中立でも」・・・心行くまで充分な論議を展開して欲しいと願うばかりである。(寄稿:近藤雄三)
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「無知は罪なり」氏の指摘する「日本の安全保障論=右とか左とか言ってないで、軍事主権を取り戻せ」というお話し

2023-11-25 | 小日向白朗学会 情報
    小日向白朗が言っていること、「吉田(茂)さんは航空権、国防権、電波権を売り渡し、その自由使用をアメリカに認める特別覚書きを密かに入れているんだ。」(1971年7月富士ジャーナル紙の25ページから)・・・これは当学会では常識となっているが、喜ぶべきことに、広く世の人にも認識されてきているらしいのだ。X(旧twitter)にきわめてわかりやすく解説していらっしゃる方がいたので、紹介させていただきたくなってしまった。

   2023年11月23日、X(旧twitter)に「無知は罪なり」[i]氏が、日本の安全保障の本質について極めて簡素にまとめてあったので紹介する。
『……
今の日本ってね、憲法より上位に日米地位協定や日米安保条約があってね、基地権、裁判権密約の他にも「戦時は自衛隊が米軍の指揮下に入るという「指揮権密約」があるんですよ。(1952年、吉田茂首相とクラーク極東軍司令官との間での合意。自衛隊は米軍と米軍基地を護る付属部隊として発足)。だから、戦後ずっと国論を二分してきた改憲論議をする前にね、右派も左派も、政府と国民が一つになって最優先で地位協定や日米安保の根本的な改定に取り組んで、アメリカと交渉し『対等な日米関係』が築けるようとっくの昔に話し終えておくべきでして、少なくとも他の敗戦国はそうしてきたんです。でも日本は、もうゲームオーバーだと思う。 何故かというと、今の政府や霞ヶ関官僚は、実質米国を儲からせる為の子会社に成り下がり、また、米国によって弱められたおこぼれを狙う周辺国も含め、右も左も、他国の代弁者のような事ばかり言う議員だらけの今の現状の、今の政府が「日本」政府ではないからなんですね。 今出来るのは、悲しいかな…属国のまま、今の政府に憲法も法律もいじらせず、平和憲法とやらをお守りにして、まな板の鯉になって「何も起こりませんように」とお祈りするくらいしかないのですよ。 これはあくまでも、根本的な解決ではなく、最悪の事態だけは逃れようという一時しのぎの対処療法に過ぎないと思うので、このままにしておけばいいという事ではないと思う。
……
上のを読めばわかるでしょうが、現在の『日米指揮権密約』がある状態で、改憲をしたら日本は米国の戦争の駒にされてしまうわけですよ。兵器を米国の言い値で買わされ、戦闘の指揮は米国、でも攻撃の責任は日本、反撃を受けるのも日本になるわけです。
……
補足するなら…日米同盟っていうのは、いわば「主権なき軍事的対米従属体制」なんですよ。だから、ありがちな日本の右派の「日米同盟さえ続けていれば日本の安全は守られる」という主張ってのは、左派でよくある「一切の軍事力を持たずに国を守るんだ」という主張と同じくらいお花畑であって、なんと、この2者は、知ってか知らずか、実は日本の軍事主権の米国への完全従属、則ち『軍事主権の放棄』という点で、お見事に、左右揃って日本の対米従属体制を補完し合って来たわけですね。 この『軍事主権の放棄』が意味するのは、 『戦争をする権利の放棄』であると同時に 『戦争をしない権利の放棄』であって、決定権を捨てて、米国の言いなりの駒になるということ。国家としてそれほど危険な状態はないのですよ。
……』
・・・・・・ということだ。私の思っていること、ずばり、言って頂いてしまっている感じがしている。
 昨年末閣議決定している防衛三文書にあるように北朝鮮と中国とロシアを仮想敵国として軍備を増強、と言っても、それは表面ずらのことでアメリカさんの型落ち装備(つまりガラクタ?)を破格の値段で買い取って‥という意味くらいのことしかないが、・・・増税含みの予算をゲット、防衛利権を適所にばらまきながら、それなりの軍備増強を果たしたとして‥それが国益なのか極めて疑問ということだ。今のまま、つまり、日米同盟、日米地位協定、国連軍地位協定を今のままで、自衛隊さんをアメリカ指揮下のもとどこへ派遣させようとしているのか。───ということである。日本が軍事主権を取り戻してからの軍備増強のお話であれば、それはそれで大変意味があることだろう。国益、つまり日本国民の利益のために国防も必要な視点のひとつであることは確かなのであるから。(文責:吉田)

(指揮権については末浪靖司氏の創元社判「日米指揮権密約の研究」に詳しく解説されている。表紙写真の真ん中に例の方、売国の張本人である吉田茂氏が偉そうに鎮座しているのが印象的だ。)
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  パレスチナ和平は「アブラハム協定」をプラットホームに、イスラエルの核90発以上を廃棄させること

2023-11-24 | 小日向白朗学会 情報
 現在、日本のパレスチナ情勢に関する情報は、NHKも民放も各メディアも極度に偏向している。読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」等の井戸端情報で、パレスチナを判断するのは間違いである。
現地情報としては、次の情報をも参照することをお勧めする。
 そしてイデオロギーや偏見を排除して、正確な情報を収集する必要がある。
最近では、2023年11月21日、Consortium Newsが配信した『南アフリカはイスラエルに圧力をかけるために核の立場を利用できる』[i]が重要である。この記事では、イスラエルが90発以上の核兵器で構成されていることと、イスラエルの核兵器庫を暴露することで、南アフリカがイスラエルに外交圧力をかけることを勧めている。
 パレスチナとイスラエル問題を複雑にしている根本に、イスラエルはパレスチナを含む周辺国に対する報復兵器として核爆弾が90発以上あることが、せっかくパレスチナ国家を樹立しても潜在的な脅威として残ることを告発しているのだ。日本においては、NHKをはじめとする各メディアは、イスラエルの核保有について片言隻語も触れていない。この問題が解決しない限りパレスチナはイスラエルの核の脅威からは解放されないのだ。
 ユダヤは「ホロコースト」を受けた民族であるということを盾にして、今度はパレスチナを「ホロコースト」してよいとするシオニズムの偏狭な考えは世界にとって有害であるだけでなく極めて危険である。現にイスラエルがパレスチナに核の使用も選択肢としてあると発言したことは、直ちに、アメリカの安全保障を危険に晒してしまった。つまり、イスラエルの核が、第三次世界大戦の扉を開きかけたのである。アメリカにとって、第二のキューバ危機と言っても過言ではない。それは、ハマスが正義で、イスラエルが悪という、単純な問題ではないのだ。そもそもイスラエルは「敵の敵は味方」ということでハマスに資金援助していたことが明らかになっている。両者は「同じ穴の貉」なのだ。
 したがってパレスチナとイスラエルの和平が実現するためには、双方が共存できる基盤の構築が必要となる。それは、トランプ大統領が仲介した「アブラハム協定」をプラットホームとしてイスラエルの核を廃絶すること、これに尽きる。
 NHKはバイデン政権の対応を報道するが、私利私欲で国際政治をもてあそんだバイデン政権にできることはなにもない。やったことはといえば、アメリカが第三世界と全面戦争に直面してしまったという位でバイデンの存在自体が疫病神なのだ。

(2023年11月23日)『共存せよ、然らずんば破滅を!!
以上(寄稿:近藤雄三)
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共存せよ、然らずんば破滅を!!

2023-11-23 | 小日向白朗学会 情報
 旧約聖書の創世記第21章にイサクとイシマエルのお話が記載されている。
『・・・・・・
 そこでサラは身ごもり、アブラハムに、その老年におよんで一人の男子を生んだ。それは神が先に告知された頃におこったのである。アブラハムは自分に生まれた子、サラが彼に生んだその子の名をイサクと名づけた。アブラハムは神の命のように八日目にその子イサクに割礼を施した。アブラハムはその子イサクが生まれた時百歳であった。・・・・・・
サラはエジプト女のハガルがアブラハムに生んだ子が、自分の子イサクと遊んでいるのを見た。そこで彼女はアブラハムに言うには、「この婢とその子を一緒に追い出して下さい。この婢の子はわが子イサクと一緒に跡継ぎになるべき者ではないのですから。」この言葉でアブラハムはその子のために大いに悩んだ。しかし、神はアブラハムに言われた。「あの少年と君の婢のことで悩まなくてもよい。サラの君に言うことは何でも彼女の言う通りに聞いておやり。イサクから生まれる者が君の裔とよばれるべきだから。しかし、婢の子もまたわたしは大いなる民とする、彼もまた君の裔だから。」アブラハムは翌朝早く起きてパンと水の皮袋をとってハガルに与えた。・・・・・・』ここでいうエジプト女ハガルの子とはイシマエルのことである。
 ところで、アブラハム合意というイスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化協定というものがあることをご存知だろうか。または、アブラハム合意和平協定ともいうらしい。ウィキペディアによれば…『アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の始祖でかつユダヤ民族(イサク)とアラブ民族(イシュマエル)の共通の父祖であるアブラハムの名に因んで「アブラハム合意」と名付けられた‥‥ということだ。つまり、ヤハウェの神は異母兄弟であるイサクの末裔もイシマエルの末裔も等しく「大いなる民」として栄えていくと言っているのである。さらに言えば、イスラエルの民もアラブの民もともに栄え、共存していくと言っているのである。

 全く別のお話であるが、今から52年以上前の昭和46年2月に小日向白朗は「アジアの平和と進歩のために」と題する提言を行っている。提言先は当時ベトナムでの泥沼戦争で悩んでいたアメリカである。キッシンジャーを通じてニクソン大統領にこの提言は受け入れられた。そのなかで白朗は、『・・・・・アメリカが真にアジアの平和と進歩のために図ろうとするならば、いっそう思い切った政策の切りかえを必要としていることは明らかである。その第一はベトナムの和平である。いまや武力によるベトナム問題の解決が不可能であることは明白である。アメリカが速やかに戦斗を終結し、南ベトナムからの撤収を実行すれば、和平後のベトナム復興とメコン開発のための国際協力の道が開かれ、それはアジアはもとより、アメリカにとっても長期的な利益を保証するものになるであろう。・・・・・』としている。歴史の事実はそれから2年後の昭和48年3月29日までにアメリカ軍のベトナム完全撤退が達成され、ベトナム戦争の終結に向けて動き出している。

 ここで単純なゲームをしてみたい。イサクの代わりにイスラエルをイシマエルの代わりにハマスを入れてみたらどうなるだろうか。また、「ベトナム戦争に悩むアメリカ」の代わりに「パレスチナとの紛争に悩むイスラエル」を、「ベトナム」の代わりに「ガザ」とでも入れてみたらどうだろうか。

 しかし、である。・・・イスラエルもハマスも非戦闘員である女子供一般市民の命を数多奪った大罪は贖われなれければならないのは厳然たる事実である。さらに、今ある問題、例えば、大陸と台湾、北朝鮮と南朝鮮の問題も同根であると思うのである。10数以上ものいろいろな癖のある民族を包含する多民族国家を13世紀から20世紀までの700年間ちかくものながきにわたりリードしてきたあのハプスブルグ家の知恵をいま一度思い出すのも一興ではないだろうか。キーワードは“異種との共存”だろうか。(文責:吉田)
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パレスチナ問題でRRICS首脳会議が最終声明 -イスラエルの核廃棄プロセスも含んだ問題解決を模索-

2023-11-22 | 小日向白朗学会 情報
 筆者は、2023年11月20 日、『米ロはパレスチナ国家創設について同意!!』で米ロがパレスチナ国家創設に同意したものの、その際、イスラエルが保有する核が問題解決の大きな障害になるだろうことを述べてきた。米ロの同意に合わせるようにBRICS諸国もパレスチナ問題解決に動き出すことになった。
 2023年11月21日、タス通信は、パレスチナ問題について非常に重要なBRICS首脳会議がオンラインで開催されたことを『BRICS首脳、中東に関する最終声明を採択』として伝えている。
『……
中東情勢、特にガザ地区の情勢に特化したBRICS諸国首脳による臨時オンラインサミットが11月21日、議長国である南アフリカ共和国の首都プレトリアで開催された。今年のグループ。サミットにはブラジル、ロシア、インド、中国だけでなく、2024年1月1日から協会の正式加盟国となるアルゼンチン、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エチオピアの代表も参加した。アントニオ・グテーレス国連事務総長も会議に参加した。
首脳会談後、共同声明が採択され、その内容は以下の通り。
・BRICS指導者らは、2023年10月7日のパレスチナ過激派ハマスのイスラエル攻撃後の激化と、特にガザとその他のパレスチナ占領地域における悲惨な人道状況といった地域情勢の深刻な悪化について東エルサレムだけでなく、イスラエル自体も含めて懸念を表明した。
・BRICS指導者らは、戦争犯罪、無差別攻撃、民間インフラへの標的を含む、パレスチナとイスラエルの民間人を標的とした暴力行為を非難した。彼らはまた、民間人を保護し、犯罪に対する責任を確立する必要性を強調した。
・BRICS指導者らは、個人としても集団としても、パレスチナ人の自国からの強制移住や国外追放に反対した。多くの指導者は、ガザ内であろうと近隣諸国であろうと、パレスチナ人の強制退去と国外追放はジュネーブ諸条約の重大な違反であり、戦争犯罪であると繰り返した。
・BRICS首脳は、パレスチナ占領地における悲惨な人道状況について懸念を表明し、国際人道法の完全遵守の必要性、並びに即時、安全かつ妨げられない人道アクセスと支援の必要性を再確認した。
・BRICS首脳は、対話と包括的協議を通じて意見の相違と紛争を平和的に解決するというコミットメントを再確認し、危機の平和的解決を促進するためのあらゆる努力を支持する。
・BRICS指導者らは、ガザ地区での敵対行為の終結につながる即時かつ持続可能な人道停戦を求めた。
・BRICS首脳は、パレスチナ飛び地における戦闘行為の即時停止を達成し、民間人の保護を確保し、人道支援を提供することを目的とした地域的および国際的な取り組みへの支持を再確認した。
・BRICS諸国の首脳は、国際レベルでの平和と安全の維持における国連安全保障理事会の主要な役割を再確認した。
・BRICS諸国の首脳は、ガザ地区の状況を解決し、中東の平和への脅威を排除する上で、イスラム協力機構(OIC)とアラブ連盟(LAS)の重要な役割を認識した。
・BRICS首脳は、中東における紛争の激化を防ぐ必要性を強調し、すべての当事者に対し最大限の自制を行使するとともに、当事者に影響力を持つすべての者がこの目標の達成に向けて取り組むよう求めた。
・BRICS諸国の首脳は、パレスチナ・イスラエル紛争は平和的手段によってのみ解決できることを確認した。彼らは締約国に対し、国際法に基づいて直接交渉を行うよう求めた。
……』
というものであった。いよいよBRICSもパレスチナ解決に動き出したのだ。
 ところで、パレスチナ問題の根本解決には、パレスチナ国家を承認することもさることながら、イスラエルが保有する核の扱いについても具体的な検討が進められなければならない。これに付いては、2023年11月21日配信のConsortium News『南アフリカはイスラエルに圧力をかけるために核の立場を利用できる』[i]が参考となる。この記事は、南アフリカ生まれの民間原子力技術者であるHügo KRÜGER により書かれたものである。
 尚、記事に出て来るペリンダバ条約(アフリカ非核兵器地帯条約:African Nuclear Weapons Free Zone Treaty)とは、アフリカ大陸の非核化を定めた非核地帯条約である。また、アブラハム和平協定(合意:アラブ首長国連邦とイスラエル国間における平和条約及び国交正常化 :Abraham Accords Peace Agreement: Treaty of Peace, Diplomatic Relations and Full Normalization Between the United Arab Emirates and the State of Israel)とは2020年8月13日にトランプ大統領の仲介でアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された外交合意である。尚、アブラハム合意」とは、アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の始祖でかつユダヤ民族(イサク)とアラブ民族(イシュマエル)の共通の父祖であるアブラハムの名に因んだものである。
 また、シミントン・グレン修正条項は、トランプ政権が2018年8月、「2019年度国防授権法」の一部として「2018年輸出管理改革法(ECRA)」を制定し、武器輸出管理に関する基本方針を明らかにするとともに、従来の輸出管理規則(EAR)の内容を一部更新したことを指している。
『……
ハマスによる10月7日のテロ攻撃に対するイスラエルの対応は不釣り合いなだけでなく、国際法、特にジュネーブ条約の基本的限界を明らかに超えている。
ガザへの攻撃では1万人以上の民間人が死亡し、その半数近くが子どもであり、戦争の武器としての食料の使用、集団懲罰、民族浄化も含まれており、ガザ人のほぼ半数がそのまま自宅を破壊された。彼らはイスラエル兵とともに飛び地の北から南まで行進した。
ハマスが国民を「人間の盾」として利用しているという言い訳(この主張は独立した情報筋によって検証されたことはない)のもと、イスラエルは大学、病院、国連難民キャンプを爆撃し、さらに違法な建造物を建設することでヨルダン川西岸(1967 年の国境の外にある入植地。)の併合を続けている。
南アフリカのナレディ・パンドール外相は、ベンヤミン・ネタニヤフ政権がガザ攻撃とアパルトヘイト政策を続ければ国際的にますます孤立するというメッセージを送ることを期待して、大使のイスラエルからの撤退を要請した。
大量虐殺条約の発動に加えて、アメリカ科学者連盟が90発以上の核兵器で構成されていると推定されているイスラエルの核兵器庫を暴露することで、南アフリカがイスラエルに外交圧力をかけるために利用できる別のアプローチがある。
1990年代初頭に南アフリカが多数派支配に移行すると、南アフリカは自発的に核兵器を廃棄した最初の国となり、核不拡散に関する国際法の多くの議定書の確立に貢献した。
南アフリカはペリンダバ条約を通じてアフリカ非核兵器地帯を設立し、その姿勢をさらに拡大した。現在、アフリカのすべての国がこの条約に署名していますが、すべての国、特にエジプトが批准しているわけではありません。
さらに、米国はディエゴ・ガルシアに核兵器を配備することでこの条約を積極的に侵害し、先住民族チャゴス人の祖国への帰還の権利を妨げることで基本的人権を侵害している。

ペリンダバ条約と不拡散に対する立場により、南アフリカにはベンヤミン・ネタニヤフ政権に対する圧力を主張するための以下の外交的選択肢が与えられる。
  • アフリカ連合を通じて、エジプトにペリンダバ条約を批准するよう外交的に圧力をかけることができ、その結果エジプトは核武装した隣国との取引を思いとどまることができる。
  • 負荷制限を軽減するために、南アフリカがそのベンダーは不拡散条約を尊重しイスラエルに核兵器を売らない国であると主張して、核の新規製造に関する情報要請(RFI)を開始することができる。このような政策は、条約を遵守しないベンダー(米国、インド、中国、ロシア、フランス)を締め出し、遵守するベンダー(韓国とカナダ)を囲い込むことになる。世界のネットゼロ気候目標の達成には民生用原子力が不可欠であるため、大国を締め出すことで民生用原子力産業は米国政府に不拡散に向けて圧力をかける動機となるだろう。この政策は中国に対し、東南アジア非核兵器地帯を拡大するよう圧力をかける可能性もあるし、グローバル・サウスの他の国が南アフリカの先例に追随すれば民間産業が消滅の危険にさらされるため、潜在的にはフランスに対し軍縮への取り組みを継続するよう圧力をかける可能性がある。
  • 南アフリカとアフリカ連合はIAEAに直接働きかけ、ネゲブ核研究炉などイスラエルの核施設の査察を要請することができる。ネゲブ核研究炉は、今もイスラエルで軟禁されている反体制派イスラエル人科学者モゴチャイ・バヌヌによって初めて明らかにされた。可能性としては、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と核密輸マフィアとのつながりや、イスラエル人がアパルトヘイト政府に核兵器入手への支援を求めていることを示すシモン・ペレス氏とPWボタ氏との間の外交文書と同様に、事件の立証に利用できる可能性がある。
  • 最後の選択肢は、BRICSフォーラムを利用して、アブラハム協定の前提条件としてパレスチナ国家の樹立と中東非核地帯の署名を含めるようサウジアラビアと他のアラブ諸国を奨励することである。イスラエルは外交上の承認が保証されるため、そのような政策を支持する動機になるだろう。
  • ペリンダバ条約と同じ原則に基づいて中東非核地帯を設立することは、イランの核兵器とイラン合意に関する議論も解決することになる。
  • イスラエルが不拡散条約に違反したことが判明した場合、シミントン・グレン修正条項などの現行の米国連邦法に基づき、米国のあらゆる援助、外交、軍事が疑問視され、イスラエル政府に圧倒的な外交圧力がかかることになる。
南アフリカの最大の外交資産は不拡散への取り組みであり、この政策を賢く利用することでイスラエルに条約の遵守を強制することができる。
外交的アプローチはパレスチナ人の解放への道を開くのに役立つ可能性がある。
……』
 此の記事の冒頭に「……ハマスによる10月7日のテロ攻撃に対するイスラエルの対応は不釣り合いなだけでなく、国際法、特にジュネーブ条約の基本的限界を明らかに超えている……」としていることから、非常に中立な立場で書かれていることが見て取れる。そのうえでBRICS議長国である南アフリカが過去に保有する核を廃棄した事例があることから、イスラエルが保有する核を廃棄させることが不可能でないことを説明している。そのパレスチナとイスラエルの紛争解決のプロセスは、ペリンダバ条約とアブラハム和平協定の枠組みを利用することでパレスチナ国家設立とイスラエルの共存そして地域の非核化を同時に実現しようというものになるはずであるという見通しを示している。そして、その時のBRICSは、アブラハム協定にパレスチナ国家の樹立と中東非核地帯をも含めるようサウジアラビアと他のアラブ諸国を奨励することであるという結論となっている。

 そのアラブ諸国の動きであるが、11月21日、タス通信『アラブ連盟とOIC諸国の外相がガザ情勢について話し合うためモスクワに到着』[ii]がその様子を伝えている。
『……
モスクワ、11月21日。/タス/。サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、インドネシア、パレスチナのファイサル・ビン・ファルハン・アル・サウド外相、アイマン・フセイン・アブドラ・アルサファディ氏、サメ・シュクリ氏、レトノ・マルスディ氏、リヤド・アルマリキ氏、およびイスラム協力機構事務総長(OIC) ヒセイン・ブラヒム・タハ氏はロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とガザ地区周辺の状況について話し合うためモスクワに到着した。外交筋がタス通信に伝えた。
「到着しました。間もなく会議が始まります」と当局の対話者は対応する質問に答えながら言った。彼は会議の参加者の構成を確認した。
これに先立ち、ロシア外務省の公式代表マリア・ザハロワ氏はタス通信に対し、ラブロフ氏が11月21日にモスクワでアラブ連盟(LAS)およびイスラム協力機構加盟国(Organisation of Islamic Cooperation)の多数の外交局長らと会談する予定であると語った。ガザ地区周辺の状況について話し合うためだ。
……』
 
 つまり、モスクワに集まったアラブ連盟(LAS)およびイスラム協力機構加盟国は、BRICSとともにアブラハム協定を基本としてパレスチナ問題とイスラエル核問題を根本的に解決することで動き出しているということになる。ところで、アブラハム協定を仲介したのはトランプ大統領であるが、2023年10月7日に事件が起こると中東に向かおうとしたとされている。その理由は、トランプ大統領がアブラハム協定を中心に紛争解決に乗り出そうとしていたのだということが理解できる話である。

 これまでアメリカはイスラエルに強い影響力を保持していたが、今次のパレスチナ問題でアメリカは、安易にイスラエル支持を表明したことから、ロシアから核攻撃を受ける可能性もある安全保障上の大問題になってしまった。その結果、アメリカは中東問題に関して何ら成す術を持たないだけではなく単なる傍観者にしかすぎないという致命的な失敗を犯してしまった。その理由は、バイデン大統領が自らのビジネスに大統領と云う地位を利用してNATOと共にウクライナ問題に介入したことから、中国をロシアに接近させたことで米ロの核バランスが崩れようとした。この事態に危機感を抱いたキッシンジャーはアメリカ政府の外交に介入して「一つの中国」政策を再度受け入れさせることにした。ところが同じ時期にハマスとイスラエルが両国民を犠牲にした紛争を開始してしまった。しかもイスラエルはパレスチナに対して核の使用をちらつかせるという愚劣な戦法をとってしまった。これによって、イスラエルが自国の安全保障を理由にパレスチナに対して核を使用すると、アメリカは、ロシア、中国、北朝鮮などから核の脅威を受けるということになってしまった。アメリカは第二のキューバ危機といってよい事態に追い込まれた。この事態を解決するためには、イスラエルが反対しているパレスチナ国家創設に同意することと、アメリカが制御不能な同盟国イスラエルの核を処分する以外の選択肢はなかった。
 その結果、アメリカやイギリスを抜きにして、BRICS、アフリカ会議、アラブ連合、イスラム協力機構はイスラエルの核廃棄プロセスを起動させることにしたのである。アメリカはこの動きに同調する以外に方法はなかった。
 ところでパレスチナ独立とイスラエルの核廃絶を進める基礎となったアブラハム協定は、トランプ大統領が仲介してできたものであることはすでに述べたとおりである。そのトランプ大統領の現状は、アメリカ民主党による苛烈な選挙妨害で「収監」される可能性も囁かれている程である。もしも、パレスチナ問題がアブラハム協定を基礎として開始されたときに、トランプ大統領が収監されていたら、アメリカは世界中の笑いものになるだけでなく、その無能ぶりを世界にさらす結果となる。アメリカ国民は、そのような国恥をなんととらえるであろうか。恐らく、アメリカの恥さらしを行ったバイデン大統領が、再選することはあり得ないと考えるのが普通であろう。
 トランプ大統領が仲介したアブラハム協定であるが、そのコンセプトは、中国と台湾、北朝鮮と韓国にも当てはまるものである。すなわち、国内紛争に他国やイデオロギーを介入させないで二国間で協議することにある。そして双方の存在を容認して共存させることである。
 従って、パレスチナ問題がアブラハム協定を基盤に解決することができれば、中国と台湾、北朝鮮と韓国も同様の方式で解決が可能であることの証明となることであろう。
 翻って、岸田政権が決定した安全保障政策は、私利私欲で国際政治をもてあそんだバイデン大統領に「金魚の糞」のごとく追随したことから完全に破綻して世界の笑いものとなっている。この屈辱的外交政策を実行してきた中心人物は、岸田文雄首相、「ツボ」議員である麻生太郎元財務大臣、秋葉国家安全保障局長、日本国際問題研究所理事長佐々江賢一郎なのだ。その結果として無理な軍事費を調達するため行った増税は、国民の強い反発を買い政権としての命脈は尽きている。
 既に、あの計算高いゼレンスキーは、ウクライナ敗北を予想し、トランプの安全保障政策が“共存”であることに着目し「……もし本当に計画があるのであれば、ドナルド・トランプ前米大統領と会談し、ウクライナ戦争終結に向けた計画をよく理解する用意がある。……」と意味深長なラブコールを送っているといわれている。虫の良い話である。

 尚、パレスチナ問題については下記スレッドでまとめてきた。
以上(寄稿:近藤雄三)

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訃報 創価学会元会長池田大作氏死去 ―憲法20条に関しては統一教会と創価学会は同じ穴の貉―

2023-11-21 | 小日向白朗学会 情報
 2023年11月19日、BBCは「池田大作氏が死去 創価学会の指導者として大きな影響力」を配信している。
『……
日本で大きな影響力をもつ仏教団体、創価学会の元会長の池田大作氏が死去した。95歳だった。
池田氏は数十年にわたり、創価学会の国際的な布教に取り組んだ。与党・自民党との関係も築いた。
創価学会のウェブサイトに掲載された声明によると、池田氏は15日夜、東京・新宿区の自宅で老衰のため死去した。
創価学会は世界で1200万人の会員がいるとされる。有名人とのつながりで知られ、ハリウッドスターの英俳優オーランド・ブルーム氏、米ジャズ音楽家のハービー・ハンコック氏、イタリアの元サッカー選手ロベルト・バッジョ氏なども会員。
岸田文雄首相は18日、池田氏について、「国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ」た。
公明党を結成
池田氏は1960年に創価学会の第3代会長に就任。1975年に創価学会インタナショナル(SGI)を設立し、創価学会を世界に広めた。
世界各地を訪れ、中国の周恩来首相(当時)やソヴィエト連邦のミハイル・ゴルバチョフ大統領(同)ら世界の指導者たちと会談した。
創価学会はウェブサイトで、池田氏の「指揮のもと、学会は革新と拡大の時代を迎え、世界を舞台とした文化・教育活動を伸展」させたとしている。
創価学会は、個人の向上と内面の変革を重視する日蓮の仏法を信奉する。ウェブサイトでは、さまざまな悩みや困難を克服していく力が自らにそなわっているという確信こそ、仏法の神髄だとしている。
池田氏は1964年に政党の公明党を結成した。同党は現在、自民党と連立与党を組んでいる。衆院(465議席)の議席は32。
……』
 BBC以外のメディアもこぞって池田大作氏の偉業をたたえる記事を配信しているが、池田氏をして最も有名にした「言論弾圧事件」すなわち憲法20条違反問題については触れていない。尚、憲法20条であるが、次のように定めている。
『……
日本国憲法第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
……』
 言論弾圧事件であるが、昭和44(1969)年に衆議院選挙が行わる可能性があるなかで事件が起きた。政治評論家の藤原弘達が、創価学会と公明党を批判する著書『創価学会を斬る』[1]を出版する計画をたて事前にポスターの配布がおこなわれた。これを創価学会と公明党は、選挙妨害と受取り、藤原の書籍を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害したことから社会的な批判が創価学会と公明党を直撃することになった。創価学会と公明党に批判が集中した背景には常軌を逸した選挙運動があった。それは公明党が結党以来、政治と宗教を一体とした政治活動をおこなっていたからである。この点について島田裕巳『創価学会』ではつぎの様に述べている[2]。
『……
1964(昭和39)年に公明政治連盟を改組して誕生した公明党の綱領では、次の項目の実現がうたわれていた。
1、王仏冥合(おうぶつみょうごう)と地球民族主義による世界の恒久平和
2、人間性社会主義による大衆福祉の実現
3、仏法民主主義による大衆政党の建設
4、議会制民主政治の確立
福祉の実現や民主主義の確立という部分は現在の綱領と共通するが、決定的な違いは、結党当初の綱領では、『王仏冥合』や『仏法民主主義』といった仏教的、宗教的なスローガンが鮮明に打ち出されていた点にある。
王仏冥合とは、政治と宗教の一体化をめざそうとするもので、当時の池田大作会長(現・名誉会長)による結党宣言でも、日蓮の『立正安国論』が引用され、『公明党は、王仏冥合・仏法民主主義を基本理念として、日本の政界を根本的に浄化し、(中略)大衆福祉の実現をはかるものである』と、王仏冥合と仏法民主主義の重要性が明確に説かれていた。
……
公明党の政治活動の目的は、王仏冥合という宗教的なもので、それは、「国立戒壇」の建立ということと深く結びついていた。……国立戒壇の建立とは、創価学会がその設立以来信奉してきた日蓮宗の一派、日蓮正宗の国教化を意味していた。国会で多数派となり、議決によって、国立戒壇の建立をはかろうとしていたのである。
……』
 創価学会と公明党が過激な選挙運動を行って国政選挙に臨んだ目的は「国立戒壇を建立」することであった。その国立戒壇とは何かといえば、国会議員の決議により国立の宗教施設を作ろうというものである。これが憲法⒛条で規定している政教分離に違反すると論争になった。
 この時、国会では、 谷口は、言論弾圧に関係している創価学会と公明党の政治家活動が憲法違反かと法制局長官に問いただした[3]。
『……
〇谷口委員
 ……創価学会が政治的進出の第一歩として、昭和三十年四月に、一斉に地方選挙に出たのでありますが、このときに、東京都議会その他各地の地方議会へ全員五十四名の候補者を立てて選挙戦を行なっております。そのときの目的を創価学会の機関紙で調べてみますと、「聖教新聞」はこういうふうに社説で説明しております。……「広宣流布の終点は国立戒壇建立である。その為には国会での議決が必要だ、すると宗教の正邪に対して確たる信念を持ち国立戒壇建立を願う人々の代表が国会議員として多数居なければならない事は論をまたないのである。故に文化部員の政界への進出は当然でなければならぬ」こう言っております。それからもう一つの社説で、「現在の政治家に国立戒壇の必要を理解する様に要望しても到底無理な相談であって、逆に国立戒壇建立の必要を理解して居る人に政治家になってその道で生長してもらう以外に方法がないからである。だからこの志を持って居る人々に地方議会に出てもらいそこでの錬磨を経て国会へ出る迄その政治上の見識と実践カを養ってもらう事が必要になるわけである。」こういう点から地方議会に進出して当選された……宗教団体創価学会が言う戒壇というのは、これは宗門の本尊を安置して拝ませる施設でありまして、これを国立にするというので、戸田前会長や池田現会長の著作によれば、国会の議決によって国の施設として設立するということになっております。
……』
 この質問からもわかるように創価学会と公明党は、窮地に陥っていた。
ここで政府から救いの手が差し伸べられた。
 昭和45年4月28日付で内閣総理大臣佐藤栄作から衆議院議長船田中に「衆議院議員谷口善太郎君提出宗教団体の政治活動に関する質問に対し、別紙答介書を送付する。」が届けられた([4])。この答弁書は、谷口が創価学会と公明党の活動が憲法違反ではないかと追及したことに対する政府の公式見解である。
『……
昭和45年年三月九日、衆議院予算委員会においてご質問のあった国立戒壇の意義については、宗教法人創価学会の所轄庁である東京都知事から同法人に照会したところ、次のとおり回答があったので、念のため申し添える。
  • 本門戒壇とは、本尊をまつり、信仰の中心とする中心のことで、これは民衆の中に仏法が広まり。一つの時代の潮流となったとき、信者の総意と供養によって建てられるべきものである。
  • 既に現在、信徒八百万人の参加によって、富士大石寺境内に、正本堂の建設が行なわれており、昭和四十七年十月十二日には完成の予定である。これか本門戒壇にあたる。
一時、本門戒壇を’国立戒壇’と呼称したことがあったが、本意は一で述べた通りである。建立の当事者は信徒であり、宗門の事業として行なりのであって、国家権力とは無関係である
……』
 日本政府は、この答弁の趣旨で、創価学会の問題となった教義「国立戒壇」を「本門戒壇」と解釈を変更していることから国立の宗教設備に当らない、すなわち、創価学会の方便である教義変更を容認して憲法判断まで進まないことを決定したのだ。
 創価学会と公明党にとって「国立戒壇」が憲法判断となって違法判決が出ると国会から放逐されるところを、日本政府が教義の解釈変更を認めたことにより命拾いをしたのである。
 教義の解釈変更を認めたのは、岸信介の実弟である総理大臣佐藤栄作であった。この佐藤による「憲法問題を正面から扱わないことを決定した」ことにより、自由民主党は「裁判所から憲法判断が出されてはこまる」公明党の生殺与奪を握ることになった。
 そのため公明党が国会で議席を確保できるのは自民党が教義の解釈変更を容認しているからだけなのである。そのため公明党は、自由民主党と連立政権を維持し与党に留まる以外に術は無くしてしまった。したがって公明党は自民党が進める重要法案に必ず賛成する以外に方法はなくなったのである。
その後、創価学会と公明党の関係について当事者からもれた本音が平成7年の国会議事録に残されている[5]。
『……
○橋本敦君
……
矢野絢也公明党前委員長も文芸春秋九三年十月号に発表した「政界仕掛人極秘メモ全公開」の中でどう言っていますか。……「やはり私たちはともかく政教一致という御批判をいただいているが、確かに状況をみてみると、そう言われても致し方ない面はある」……また、何よりも政教分離宣言をした当の池田氏自身がどう言っているか。九四年九月十四日に行われた新聞各社との記者の懇談会の席上で、「学会は、政治とかかわることはやめません。こう言うとまた、政教一致などといわれますけどね。誤解しないでくださいよ。教義を実現するためには、政治の力がどうしてもいるんです。そういう目的で、公明党をつくったわけですから、これからも政治にかかわることに変わりはありません。」……この発言は、これは報道されましたけれども、創価学会は当時何の反論もしていませんよ。……一たん公に発言をした政教分離宣言を、まさにこれを破棄する宣言とさえ受け取られる重大な問題じゃありませんか。
……』
 以上のように、創価学会と公明党の本音、つまり政治目的は「国立戒壇」であって、それが憲法違反の可能性があることを当事者は充分に認識していたのだ。

 ところで、創価学会と公明党による国会進出を充分に研究していたのが統一教会なのである。
 昭和60(1985)年頃は、統一教会は敵対する勢力には武力で対峙して自己主張を押しとおそうとしていた。ところが昭和62(1987年)暮れには、選挙で60億円を使用したと豪語していることからわかるように、合法的な選挙で政権を簒奪する手法に移行していった。この時期、統一教会が方針を変更した理由は、警察が殺傷能力の高い空気銃を厳格に規制したことと、赤報隊と名乗る集団が統一教会の名前をかたった犯行声明をだしたことから、否応なしに警察の捜査が確実に近づいていた。そのため、それまでの路線を継続することが困難になった。その際に、統一教会育ての親、自由民主党から政治手法を変更するように求める「天の声」が有ったのであろうことは想像に難くない。
 しかし、統一教会が、公明党と同じように国政選挙に候補者を立てても、組織も小さく党員数も少ないうえに各地で社会問題を起していたことから、国政選挙を通じて国会議員の議席を獲得できる可能性はほぼ皆無である。万が一、議席を獲得しても憲法20条「政教分離」の壁があってこれも超えることはできなかった。そこで編み出された手法は、自由民主党内に統一教会の目的を達成する政策集団を増殖させて時期を待つということであった。その結果、今では、上は議長から、下は元アイドルまで、すくなからず統一教会の影響下にある自民党国会議員は、121名(2022年9月8日 自民党発表)までとなった。
この数字は、文鮮明が「国会内に120名以上の統一教会を作る」と指示したこととあまりにも一致する数字なのである。
 ところが、2022年7月8日、安倍元首相銃撃事件が起きると、それまで抑え込まれていた統一教会に対する批判が一挙に噴き出してしまった。そのため、自由民主党政権は、統一教会との関係を維持したままでは国政選挙を戦えないことから、2023年10月13日に統一教会に対する解散命令の請求をおこなった。自由民主党にとって選挙運動を取り仕切っていた統一教会に対する解散命令請求は「泣いて馬謖を斬る」か、はたまた「トカゲの尻尾切り」かは、定かではないが、その影響は、たちまちに、選挙活動に支障をきたすようになった。その好例が、自由民主党国会議員が直々に買収工作を行う事件が起きてしまった。これまで自由民主党を支えてきた盤石の選挙運動であったが、その足腰を支えていたのが統一教会であって、その統一教会を排除したことで選挙運動が成り立たなくなってしまったのだ。したがって、この現象は、統一教会を頼りに水増しで当選してきた自由民主党国会議員121名(2022年9月8日 自民党発表)の今後は相当に厳しいものとなるはずである。
 その自由民主党から絶縁された統一教会であるが、当然のこととして憲法20条「信仰の自由」を盾に最高裁判所まで戦うことになる。その時、統一教会は「公明党には信仰の自由が認められているのに、何故に統一教会には認められないのか」と主張することになる。
 つまり、池田大作氏の死去は、創価学会と公明党にとっての憲法20条問題と云う「パンドラの箱」を開ける切っ掛けとなるのだ。また、統一教会被害者救済法案が成立した場合には、創価学会と公明党の資産も問題視されることとなる。その時、噂としてあった「ノリエガと池田大作氏の関係」などに関してもメスがおよぶ可能性がでてくる。

 尚、統一教会関連スレッドは下記の通りです。

以上(寄稿:近藤雄三)

[1]藤原弘達『創価学会を斬る』日新報道(1969年)。

[2]島田裕巳『創価学会』新潮社(2004年6月20日)。

[3]同上会議「248 谷口善太郎」。

[4]『第63回国会 衆議院 本会議 第23号 昭和45年4月28日 末尾』51頁。

[5] 「333 橋本敦」『第134回国会 参議院 宗教法人等に関する特別委員会 第4号 平成7年11月28日』。

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