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自衛隊の指揮権をアメリカに移譲し続けた自民党 -改憲に動きだすと宣言した萩生田政調会長-

2022-12-30 | 小日向白朗学会 情報

 筆者は、これまで「小日向白朗学会ブログHP準備室BLOG」に二度(2022-10-03、2022-11-18)渡り、萩生田政調会長の動きから政権与党自民党の国会議論の方向に付いて見通しを寄稿してきた。今回も年末ではあるが萩生田政調会長の動向から、今後(令和5年以降)の国会論議の行方を緊急に寄稿することにした。まず、最近の萩生田の言動から確認しておく。
2022年12月25日朝日新聞デジタル版に「自民・萩生田政調会長 防衛増税、「国民に判断をいただく必要ある」とする記事が掲載された。
『自民党の萩生田光一政調会長は25日のフジテレビの報道番組で、防衛費増額のための増税について、「明確な方向性が出たときには、いずれ国民の皆さんにご判断いただく必要も当然ある」と述べた。具体的な実施時期などが決まった場合は、衆院解散・総選挙で信を問うべきだとの考えを示したものだ。
 政府は2027年度には増税で1兆円強を捻出することを決めたが、実施時期は「24年以降の適切な時期」と先送りした。
 萩生田氏は番組で「いきなりの増税には反対だ」と強調。自民党が今年7月の参院選などで防衛費の増額については公約に掲げた一方で、増税については言及していなかったことを指摘し、「財源は増税によって賄います、ということは約束していない」と述べた。
 増税による財源確保については、「防衛費を維持するためのスキームができたが、必ずしも1兆円でなくてもいい」と述べ、歳出改革などで増税幅を圧縮できるとの考えを示し、「深掘りを来年させていただく」と述べ、党内で議論する方針を示した。』
 この記事だけ読むと、国防も重要ではあるが、その資金は増税で賄うためには国民の同意を得るため総選挙をおこなって民意を聞くのが政治の本筋であるとしている。萩生田のこの説明は、一見すると正論に見える。しかし日本国民は、日本の安全保障について論議したことはない。あるのは外務省による大々的なプロパガンダで「ロシアによる一方的な状況変更を許さない」というメッセージだけである。それがいつの間にか日本の安全保障を脅かすものとして尖閣諸島に止まらず「台湾有事」まで含まれてしまっている。現在の日本の安全保障を国会の場で国民に分かり分かりやすく説明したことはない。そのため日本有事に関する国民の同意は一切ない。つまり萩生田政調会長の説明は、飽くまでも自分の都合だけであって国民を考えてのことではない。
 ところで、萩生田は、本年11月13日に地方組織の政策責任者を集めた会議を党本部で開き「憲法改正に向けて都道府県連でも地方議員と連携しながら細かく議論を進めてほしいと要請している。僅か一箇月の間に、萩生田は憲法改正と日本の安全保障の両方を同時に進めていることから、この二つが自民党のかじ取りである政調会長の重要課題であることが浮かび上がってくる。萩生田が言わんとすることは「日本の安全保障のために自衛隊を遠くはインド洋や中東にまで派遣して共通の価値を持つ同盟国を支援しないと日本の尖閣諸島や台湾有事に同盟国は真剣に日本を守ることはしないだろう。そのためには、日本国憲法改正に必要な三分の二の国会議員数が衆参で確保できている間に改正発議をして改憲を行って日本の安全保障の基盤である日米安保条約を強固にしておきたい。」である。自民党の主張としては、日本の場合、安全保障と憲法が一体であることから日米安全保障条約を基軸としてより積極的な活動に踏み込むには憲法改正が必須であるとしてきた。そのため安倍晋三が自民党総裁に就任以降は、衆参両院で改憲発議ができる議員数を確保するため統一教会という犯罪組織を積極的に選挙活動に利用してきた。それもこれも日本の安全保障を強固にして我国の発展を願うという建前である。
 これらを総合すると、萩生田の思い描く今後の政治日程が見えてくる。自民党は、膨れ上がる防衛費の来年度分につては「日本周辺で安全保障が危険に晒されている」という理屈で国会の承認を取り付けておいて、その直後に「日本の安全保障が危険にさらされているのは同盟国との信頼を阻害している憲法が存在するためで早期の改正が必要だ」という理屈で民意を問うため衆議院を解散し総選挙に打ってでる。その場合、一般的な予測では、統一教会問題があるため自民党が大敗すると見るであろう。しかし、然に非ず。統一教会の支援で当選してきた自民党候補にたいして、憲法改正で一致している維新の会と国民民主党の候補を立てさせて自民党候補を落選させても憲法改正に賛成する維新の会と国民民主党の候補を当選させるような選挙協力を実施することになる。加えて、改憲反対勢力を分断する方法につても「連合」の協力で手配済みである。それは比例代表で使う党の略称について、立憲民主党も国民民主党と同じ「民主党」を使うという詐欺行為を行うことである。その結果、例え有権者が憲法改正反対で立憲民主党に投票しても比例代表の政党名が「民主党」では立憲民主党か国民民主党かは判別がつかない。そのため自動的に按分され、反対に投票したにも関わらず賛成票も増えてしまう仕組みを準備済みなのだ。その結果、憲法改正反対と唱える議員数をさらに減らすことができるのだ。つまり次の総選挙では、自民党の議員数は大幅に減るものの、憲法改正に賛成する議員数は増えるというシナリオを描いている。さらには、立憲民主党内部にかくれ改憲がいることも考えると、現在の日本にはまともな野党が存在しないのだ。したがって令和5年度の国会では早期に予算を成立させて2月末か3月初旬に解散総選挙を実施すれば、自民党結党以来の宿願である改憲は成就して、めでたし、めでたしとなるはずである。
 ところがである。この自民党結党以来の宿願が根本的に出鱈目であったとしたらどうなるであろう。独立国として日本は、独自で安全保障を考えることはできない国であったらどうなるであろう。折角に予算を成立させても日本の安全保障に使われることはないということが判明したらどうなるであろう。「まさか」と思うのは当然である。しかし、自民党は結党以来、現在まで安全保障について国民をだまし続けてきたことは事実なのだ。

 話を昭和35(1960)年1月19日締結の「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」に戻す。まず前文は次の通りである。
『  日本国及びアメリカ合衆国は、
 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、
 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的な安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、
 両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有しているを確認し、
 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、
 よって、次のとおり協定する。……』
つまり、昭和35年に締結した日米安保は、日本の国を守るために日本に駐留するとはどこにも書かれていないだけではなく、条約の適用範囲が日本国内ではなく極東とあることから東アジア全域に及ぶものである。つまり日米安保は日本を守るためのものではなかったのだ。そのうえ駐留米軍は、昭和34(1959)年3月に砂川事件の審理を進めていた東京地方裁判所は「駐留米軍を認めた日本政府の行為は「日本は軍隊を保持しない」と定めた憲法9条に違反する」と判断したが、最高裁判所長官田中耕太郎はマッカーサー駐日大使(マッカーサー元帥の甥)が合憲判断を望んでいることを受けて「駐留米軍は憲法が保持しないと定めた軍隊ではない」と地裁の判断を覆すという曰く付きの存在であった。その存在自体が憲法違反であったが、次いで条文内に不思議な条項を見つけることができる。
『……
第三条(自衛力の維持発展)
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、持続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
……
第六条(基地の許与)
1 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合州国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
2 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合州国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。……』
この条約の最も核心部分である自衛力については記載がなく、行政協定で取り決めるとなっている。つまり批准を必要とする条約内には安全保障を遂行する軍隊に関係する事項を記入せず、批准を必要としない協定に入れて軍事のこを伏せている。ならば行政協定を探ってみる。『日米行政協定締結交渉関係 第1巻』内に『交渉経緯/(1)第一次日米交渉における行政協定案 昭和26年2月』(Ref.B22010299700)とする資料がアジア歴史資料センターに存在する。その中に「集団的防衛措置」とする章がある。
  『1……
第四章 集団的防衛措置
(一)日本国域内で、敵対行為又は敵対行為の緊迫した危険が生じたときは、日本国地域にある全合衆国軍隊、警察予備隊及び軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織は、日本国政府と協議の上合衆国政府によって、指名される最高司令官の統一的指揮の下に置かれる。
……』
ここでいう警察予備隊は自衛隊の前身であるが、アメリカ軍の指揮下に入ることになって、その戦域は極東なのである。この条項は、その後、整理されて第24条としてまとめられた。
『……
第二十四条
日本区域において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとり、かつ安全保障条約第一条の目的を遂行するため直ちに協議しなければならない。
……』
と、指揮権はアメリカ軍が握ることは記載されずに密約となった。その理由は、総合司令部を公に認めた場合に政権が持たないということと、発足したばかりの警察予備隊隊員の士気の問題をあげていた。そして、サンフランシスコ講和が発効してから3か月たった昭和27(1952)年7月23日に吉田茂が極東アメリカ軍司令官と有事の際の指揮権に付いてアメリカ軍が握ることを最終的に確認した。同条約を締結後、現在まで「日米地位協定」と名称を変えながら継続している。この辺の事情は、末次靖司『日米指揮権密約の研究』に詳しい。ぜひ参考にすることを薦める。

 昭和35年に新日米安保を締結以降の日本政府、特に自民党は「自衛隊の指揮権」をアメリカに委譲したことを日本国民に隠蔽しだまし続けてきた。新安保を締結した岸信介の本音は、日本国憲法を改正して自衛隊をアメリカ軍の傭兵とし海外の戦場を送り出すことだった。このことは1958年10月15日夕刊、朝日新聞に掲載されている[1]。
『日本国憲法は、現在海外派兵を禁じているので、改正されなければならない。日本が憲法9条を廃止すべきときは到来した』
 この記事からもわかる通り、くどいようだが、日米安保条約は、日本を守るのではなく自衛隊をアメリカ軍の指揮下で海外に派遣することを目的として結ばれたものである。
 ところでこの自衛隊の指揮権を譲渡した密約を、条約ではなく行政協定としたことは日本の国政に大きな影響を及ぼすことになった。行政の長は内閣総理大臣である。つまり内閣総理大臣が署名すれば、行政協定は実施できるのだ。この協定をアメリカの立場で考えた場合、国権の中心である安全保障を左右する行政協定に署名する内閣総理大臣を選定し、長期かつ安定的に運用することが最も重要なこととなる。もしも、日本の政情が不安定となり政権が頻繁に交代する場合、アメリカはその都度、新しい内閣総理大臣に行政協定を継続するように求めなければならない。当然のこととして、アメリカは、行政協定に署名することを確約した政党の党首に長期にわたり政権を維持させることを考える。それがアメリカの思い描く世界戦略の中で、日本の自衛隊を安定的に利用する最大の利点だからである。
 つまり、自民党総裁に長期政権者が多いのは、アメリカ軍が自衛隊を安定的に利用するためだった。アメリカが求める政治家は、政治家としての資質や人間性ではない。要は、行政協定に署名するかどうかだけなのだ。そのためアメリカは「自衛隊の指揮権をアメリカが握ることを容認する」で「憲法を改正し海外派兵を可能にすることを目指す」政党である自民党を陰に日向に支援してきたのだ。つまり、自民党は国権である国防をアメリカに売り渡した売国政党と云って過言ではないのだ。別な言い方をするならば、アメリカは、自民党が自衛隊の指揮権をアメリカに売り渡すことと、改憲の二点を政策から外した時は、自民党の利用価値は終了することになる。
 佐藤栄作、中曽根康弘、安倍晋三が長期にわたり政権を維持できたのは、自衛隊をアメリカに傭兵していることに対するご褒美なのだ。その極端な例が、安倍晋三のように疑惑の総合デパートであるばかりか人間的に首をかしげたくなるような行動を取っても、自衛隊をアメリカに売り渡たすことに何のためらいもなく、さらに自衛隊の軍事力を強大にしたうえに憲法を改正して海外派兵することを約束していたから長期政権となったのだ。そのため安倍晋三は、犯罪者集団である統一教会を利用して、憲法改正に必要な三分の二を確保するために奔走した。
 唯一、アメリカが協定の延長に不安を抱えた政権があった。それは鳩山由紀夫の時である。鳩山はアメリカに対等な立場を要求したことから、アメリカは自衛隊を安定的に傭兵として利用することが難しくなることが十分に予想された。その後、鳩山は政権を降りることとなったことは周知の事実である。政権を降ろされた理由は、アメリカの安全保障にとって最も好ましくない政治家であったからである。そして「対等な立場を要求する政党」を政権から引きずり降ろすため刺客として利用したのが野田佳彦だったのだ。
 日本の安全保障を考えるなら自衛隊の指揮権を主権国である日本に取り戻すことから始める必要がある。

P.S.
小日向白朗が『富士ジャーナル』1971年7月号で、日本政府はアメリカに「自衛隊の指揮権」(国防権)、「航空管制権」、「電波権」を売り渡したと述べていたことは全て事実だった。小日向白朗研究を進めることは日本の戦後史を研究することだということを再認識した次第である。
(寄稿:近藤雄三)

[1] 末次靖司『日米指揮権密約の研究』創元社(101頁)。

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