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パレスチナ紛争のもう一つの側面(三) -イスラエルとエジプトの密約-

2023-11-15 | 小日向白朗学会 情報
 これまで2023年10月7日に始まるハマスとイスラエルの紛争についてこれまでに2回にわたって現地のニュースソースからその問題点について検討を行ってきた。
 第一回目、(2023年10月27日)『パレスチナ紛争のもう一つの側面 ―ガザ沖天然ガスとパレスチナ、イスラエル、エジプト-』では、紛争の根本にはガザ沖に眠る天然ガスの存在がある。
 第二回目、(2023年11月1日)「パレスチナ紛争のもう一つの側面(二) -ハマスとイスラエルの関係と偽旗作戦-」では、紛争はイスラエル政府(シオニスト)とモサドによる「偽旗作戦」と考えるようになった。
 そして、今回第三回では、「イスラエルとエジプトの密約」について、その詳細を纏めることにした。これまで2回のスレッドでニュースソースとして「Global Research」を利用してきたが、今回も同メディア2023年11月4日に『ビッグマネーアジェンダ。パレスチナの海洋天然ガス埋蔵量を没収』[i]から始める。(写真もGRより引用)
『……
イスラエルはガザ地区への侵攻を開始した(2023年10月7日)。
 10年前の2013年12月30日の記事で、フェリシティ・アーバスノットが先見の明を持って概説したように「すべてが計画通りに進めば、イスラエルはガスと一部の石油の主要輸出国になるだろう。」
現在の状況において、イスラエルの「計画通りに進める」オプションは、パレスチナを迂回し、「ガザを地図から一掃する」ことに加えて、数十億ドル相当のガザのすべての海洋沖合ガス埋蔵量を没収することにある。
究極の目的はパレスチナ人を祖国から排除することだけではなく、数十億ドル規模のガザ沖合の天然ガス埋蔵量、すなわち 1999年のBG関連のものや、2013年のレバント発見に関連するものを没収することにある。
……』
としている。
 ところで、上記記事に出て来るBG(BG Group p.l.c.)であるが、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構「石油・ガス天然資源情報」[ii]に次のような説明がある。
『……
1986 年に民営化された英国ガス公社 British Gas(ブリティッシュガス)をその前身とする天然ガス事業を主体とするエネルギー企業。
 ブリティッシュガスの経営の悪化に伴う一連の事業再編で、同社の事業はいくつかの企業に分割された。現在の BG グループは、1999 年に、主に英国以外の事業、資産を引き継ぎ、英国以外のガス田の開発、生産、LNG 事業、パイプライン事業、発電事業を行う会社として設立された。BG グループは、2004 年末の時点において、東南アジア、カザフスタンを含む世界 20 カ国で事業活動を行なっているが、その中心エリアは、大西洋に面した欧州、北米、南米である。LNG 事業の推進に積極的であり、トリニダード トバコ、エジプト等で LNG 事業を展開しており、米国への最大の LNG 供給業者となっている。
……』
 ガザ沖天然ガス問題には、イギリスも関与していたことを知ることができる。そのためか、イギリス政府は2023年10月30日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦争における停戦を求めたとして、イギリス保守党の議員を政府役職から解任している[iii]。これはイギリス政府が、イスラエルが数十億ドル規模のガザ沖合天然ガスを完全に掌握することに賛成しているからなのだ。つまり、今次のイスラエル側の関係国の一つとしてイギリスの動向も検討する必要があるということを示している。

 2023年11月4日、『ビッグマネーアジェンダ。パレスチナの海洋天然ガス埋蔵量を没収』[iv]をさらに続ける。
『……
2021年から2022年にかけて、エジプトとイスラエルは「ガザ地区沖での天然ガス採掘」に関する「秘密二国間協議」に参加した。
数か月にわたる秘密の二国間協議の後、エジプトはガザ地区沖で天然ガスの採掘を開始するようイスラエルを説得することに成功した。
この開発は…安全保障上の理由から、ガザ沖で天然ガスを採掘することにイスラエルが長年反対してきた後に起こった。ブリティッシュ・ガス(BGグループ)もテルアビブ政府と取引を行っている。重要なことは、ハマス・ガザ政府の民間部門がガス田の探査および開発権に関して回避されていることである。
……
エジプトとイスラエルの間で覚書が署名され、パレスチナ国家自治政府(PA)のゴム印が押印されました。
エジプト当局者は、イスラエルは自国の安全を確保するために、2024年初めにガザ地区からガスを抽出するための実際的な措置を開始する必要があると説明した
……』
 この記事にある「秘密二国間協議」について聞き捨てならないのは、エジプトとイスラエルがハマス・ガザ政府は排除してガザ沖天然ガスを2024年初めにガスの抽出を開始するという密約が存在するというところである。このことをスクープしたのは、2022 年 10 月 6 日、Al-Monitor(アル・モニター)「エジプト、イスラエルにガザの天然ガス採掘を説得」[v]である。
『……
アル・モニターはパレスチナとエジプトの当局者から、イスラエルにガザ地区沖での天然ガス採掘開始の許可を促すエジプトの調停の成功に関する情報を入手した。
2022 年 10 月 6 日
ガザ市、ガザ地区 — エジプト諜報機関の関係者とある政府関係者がアル・モニターに提供した情報によると、数か月にわたる秘密の二国間協議の後、エジプトはイスラエルにガザ地区沖で天然ガスの採掘を開始するよう説得することに成功した。 
……
この動きは、ロシアの対ウクライナ戦争によって引き起こされた世界的なエネルギー価格の上昇と一致しており、欧州諸国は冬季を前にロシア産ガスの代替を模索している。
これはまた、安全保障上の理由からガザ沖合での天然ガス採掘にイスラエルが長年反対し、パレスチナ人が自国の天然資源、すなわちガザの海洋地帯から恩恵を受けることを妨げていたことを受けての措置でもあった[vi]。
このガス田はガザ海岸の西約30キロメートル(19マイル)にあり、ブリティッシュ・ガス(現BGグループ)によって2000年に発見され、1兆立方フィート以上の天然ガスが含まれていると推定されている。この分野の開発費用は約 12 億ドルと推定されています。しかし、この油田の開発を担当するパレスチナの団体であるパレスチナ投資基金がイスラエルの拒否により長年ガスを採掘できていないため、この油田は未開発のままである。
エジプト諜報機関の関係者は匿名を条件にアル・モニターに対し、「エジプトの経済・安全保障代表団は、ガザ沖合での天然ガス採掘許可の問題についてイスラエル側と数カ月間協議した。代表団は最終的に、すべての関係者に利益をもたらす妥協点に達することに成功したが、その中で最も重要なのはイスラエルとパレスチナ自治政府(PA、Palestinian Authority)である。
2021年2月21日、PAとエジプトはガザ海洋ガス田の開発に関する覚書に署名した[vii]。この合意に基づき、エジプト天然ガス保有会社とPAはガス田の開発、パレスチナ地域へのガス輸送、そして場合によってはエジプトへの販売に協力することになる[viii]。(筆者追記:ただし、イスラエルは、ガザ海域開発への反対は、天然ガスの販売収入がガザ地区を支配することになることを懸念していた。ハマス運動はガス収入から利益を得て、ファタハ、ガス施設、そしてイスラエルに対して攻撃を開始するだろうと考えていた[ix]。それまで政治的解決に達し、ガス協定が締結されるまで、イスラエルはハマスによるガザ地区の支配を阻止し続ける。それと合わせて、イスラエルの国内ガス供給の枯渇が加速しており、エジプトからガス輸入が差し迫った増加がなければ、イスラエルは電力危機に直面する可能性があった)。
エジプト当局者は、イスラエルは自国の安全を確保するために、2024年初めにガザ地区からガスを採掘するための実際的な措置を開始する必要があると説明した。
PLO執行委員会のメンバーは匿名を条件にアル・モニターに対し、エジプトがガザ沖でパレスチナガス[x](筆者注:カタール政府は本日、ガザ唯一の発電所でのエネルギー生産の費用を支払うと発表していた)の採掘を開始するイスラエルの承認をPAに伝えたと語った。同氏は、これはロシア産ガスに代わるガスの需要を満たすよう欧州諸国がイスラエルに及ぼす政治的圧力の後に起こったと指摘した。
PLO当局者は、協定に基づきエジプトとイスラエルが採掘プロセスを監督し、ガスの一部はエジプトに輸出され、大部分はイスラエルからギリシャとキプロスを経由して欧州に輸出されると述べた。パレスチナガスの輸出プロセスから得られる財政収入はパレスチナ国庫に返還され、その一部はガザ経済支援に充てられることになっていた。
一方、ガザ地区を支配するハマスは、世界がエネルギー源に殺到するのを注視しており、ガザ沖のガス採掘によって生み出される収入を手ぶらで去りたくないと考えているようだ。
2022年9月13日にガザ港で開催された公開イベントで、パレスチナ各派はガザ地区と外界を結ぶ海回廊の礎石を設置し、「私たちのガスは私たちの権利である」と刻まれた壁画を完成させた[xi]。イベント中の演説で、派閥指導者らはパレスチナ人が自国のガス資源から利益を得ることができるよう要求し、イスラエルによるガス資源の盗用は許さないと強調した。
パレスチナのガス採掘に関するイスラエルの合意は、ガザ地区の経済支援がハマスによるイスラエルへのロケット発射を阻止する最も効果的な手段の一つであることを考慮すると、ガザ地区との長期にわたる平穏を保証する可能性がある。
……』
 以上のことを纏めると次のようになる。
2021年2月21日、PAとエジプトはガザ海洋ガス田の開発に関する覚書に署名したが、イスラエルは、ガザ沖天然ガスの開発に関し、天然ガス販売収入がガザ地区を支配するハマスに渡るとファタハとイスラエルに対する攻撃を強めることになってしまうことを懸念していた。
 そこでエジプトはイスラエルとの数か月にわたる秘密の二国間協議で、イスラエルにガザ地区沖で天然ガス採掘を開始するよう説得して、成功した。
 その内容としては、イスラエルとパレスチナ自治政府(PA)がガザ沖天然ガスを扱うに際し、エジプトとイスラエルが採掘プロセスを監督し、ガスの一部はエジプトに輸出され、大部分はイスラエルからギリシャとキプロスを経由して欧州に輸出する──ということに合意したというものであった。また、パレスチナガスの輸出プロセスから得られる財政収入はパレスチナ国庫に返還され、その一部はガザ経済支援に充てられることになっていた。
 イスラエルが、パレスチナ人による自国の石油と天然ガス埋蔵量の開発を妨げる時間が長ければ長いほど、機械費用が増大し、パレスチナ人が負担する占領の総費用も増大することになっていた。
 するとエジプトとイスラエルで合意していたガザ沖天然ガス開発の次の問題は2024年初頭までにネタニヤフが行うべき行動はなんであったのか、である。
そして2023年10月7日に、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが突如、イスラエルへの攻撃を開始した。
 
 ところで、今次紛争の当事者であるハマスとイスラエル、それもネタニヤフと深い関係があったことが上述『ビッグマネーアジェンダ。パレスチナの海洋天然ガス埋蔵』で明らかにされている。
『……
ハマス内の派閥への支援と資金提供で  記録に残っている
ネタニヤフ首相の言葉はこうだ。
「パレスチナ国家の樹立を阻止したい者は、ハマスの強化とハマスへの送金を支持しなければならない。これはガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から隔離するという我々の戦略の一部だ。[xii]」(ベンヤミン・ネタニヤフ首相、 2019年3月のリクード党クネセト議員会議での声明、ハアレツ、2023年10月9日)
「ハマスは、アッバス氏がパレスチナ国家樹立に向けて動くのを阻止するために、パレスチナ自治政府に不利益をもたらすパートナーとして扱われた。ハマスはテロ集団からイスラエルがエジプトを通じて交渉を行い、カタールからガザ越えで数百万ドルが入ったスーツケースを受け取ることを許可された組織に昇格した。」[xiii]( Times of Israel、2023 年 10 月 8 日)
ネタニヤフ政権によるパレスチナ人民に対する筆舌に尽くしがたい人道に対する罪、モサドとイスラエル国防軍が注意深く画策したハマスの「偽旗攻撃」の犠牲者であるイスラエル国民に対しても犯罪が行われている。
ハマス内には根深い分裂が存在する。私たちの「偽旗」分析は、イスラエルと米国の諜報機関と協力するハマス内の軍事情報派閥に関するものである。
……』
 つまり、ネタニヤフは、2019年以前から「敵の敵は味方であるハマス」に資金を提供していて、イスラエルとエジプトで合意しているガザ沖天然ガス抽出開始時期(2024年初頭)の関係からガザ地区を完全に掌握する方法をモサドとイスラエル国防軍が注意深く画策していた。準備が整ったところでイスラエル側はネタニヤフの秘密資金ルートに情報をリークしたことで2023年10月7日「アルアクサの洪水」作戦が開始された。その結果は、双方とも自国の無関係の市民が甚大な被害を受けることになった。ハマスとイスラエルの関係は、戦闘中は問題にならないものの、停戦となった場合は、「イスラエルと米国の諜報機関と協力するハマス内の軍事情報派閥」双方が世界から非難されることになるのは必定である。

 ところでガザ沖天然ガスが注目を浴びることになったのは、2010年、米地質調査所(U.S. Geological Survey)はトルコ、キプロス、シリア、レバノン、イスラエル、エジプトを含む東地中海地域に、3兆4500億m³の天然ガスと170億バレルの原油が埋蔵されているとしたことに始まったものである[xiv]。
 「アルアクサの洪水」についてトルコが強硬な姿勢を示すのは、キプロス問題を抱えているからなのである。そもそも、キプロスは、クリミア戦争の影響からオスマントルコからイギリスが租借したことを期限とし、その後、第一次世界大戦でイギリスの植民地となり、第二次世界大戦後は、キプロス共和国と北部のトルコ系が事実上支配する地域である「北キプロス・トルコ共和国」に二分されている。そのキプロスは、トルコにとって、イギリスに植民地とされた苦い歴史と、東地中海海底資源が確認される地域にあることから、根本解決のチャンスと考えていると思われる。
 その後、東地中海エネルギーについては「パレスチナ紛争のもう一つの側面(四)」として寄稿する心算である。
 (寄稿:近藤雄三)

[i] https://www.globalresearch.ca/israel-gas-oil-and-trouble-in-the-levant/5362955

[ii] https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001917/1001932.html

[iii] https://www.bbc.com/japanese/67269988

[iv] https://www.globalresearch.ca/israel-gas-oil-and-trouble-in-the-levant/5362955

[v]https://www.al-monitor.com/originals/2022/10/egypt-persuades-israel-extract-gazas-natural-gas#ixzz8ICfys5Lv 

[vi] 「東地中海最古のガス田について」https://theminers.ps/GazaMarineNaturalGasField

[vii]  2021/02/21 、「大統領の後援の下:パレスチナとエジプト、ガザ・ガス田開開発の覚書に署名」https://www.wafa.ps/Pages/Details/18178

[viii] 2022 年 7 月 3 日、Al-Monitor「エジプト、ガザ海洋天然ガス田支援の準備完了」
 https://www.al-monitor.com/originals/2022/06/egypt-ready-help-gaza-marine-natural-gas-field#ixzz8Iv03GiKz

[ix] 2014 年 7 月 9 日、THE  GUARDIAN「IDFのガザ攻撃はパレスチナのガスを抑制し、イスラエルのエネルギー危機を回避するためである」

https://www.theguardian.com/environment/earth-insight/2014/jul/09/israel-war-gaza-palestine-natural-gas-energy-crisis

[x] 2022 年 1 月 21 日、Al-Monitor「カタール、ガザ発電所へのガスと電気に資金提供へ」
 https://www.al-monitor.com/originals/2022/01/qatar-fund-gas-and-electricity-gaza-power-plant#ixzz8IvAB73CE

[xi] 2022 年 9 月 19 日、Al-Monitor「ハマス、地中海沖合のガスに対するパレスチナの権利を主張
 https://www.al-monitor.com/originals/2022/09/hamas-claims-palestinian-right-offshore-mediterranean-gas#ixzz8IvEYvhca

[xii] Israel News「」

[xiii] https://www.timesofisrael.com/for-years-netanyahu-propped-up-hamas-now-its-blown-up-in-our-faces/

[xiv]  U.S. Geological Survey, “Assessment of undiscovered oil and gas resources of the Levant Basin Province, Eastern Mediterranean,” March 12, 2010.


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