- BRICS会議と開催都市ヨハネスバーグ
2023年6月1日、ロイターが『BRICS首脳会議は南アで開催、プーチン大統領氏巡り法的対応検討=外相』を配信している。これによればBRICS首脳会議が2023年8月22日から24日にヨハネスブルグで開催される。そして、ロシアのウクライナ侵攻に関連して国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)が逮捕状を出しているということから、同首脳会議に、ロシアのプーチン大統領が出席するかが焦点となっているというものである。ICCがプーチン大統領に逮捕状を出しているというならば、ウクライナのならず者ゼレンスキーは様々な容疑で逮捕状が出てもおかしくないはずであるが、トンとその話は聞かない。これは暫くわきに置く。
筆者が同会議に注目したのは、ウクライナ問題が収束しない中でのBRICSとヨハネスバーグという都市である。最初にBRICSであるがブラジル(Brazil), ロシア(Russia), インド(India), 中国(China)、南アフリカ(South Africa)により構成された経済的な関係であって同盟や連合ではない。その理念は、非干渉、平等、相互利益である。その経済規模は、いささか古い統計であるが2003 年にゴールドマンサックス証券の投資家向けレポートでは、BRICS の GDP 合計額は、2039 年には G6(アメリカ・日本・ドイツ・イギリス・フランス・イタリア)の GDP 合計額 を上回り、さらに 2050 年には経済規模の順位が中国・アメリカ・インド・日本・ブラジル・ロシア・イギリス・ドイツ・フランス・イタリアの順になると予測していた。
また、ブルームバーグによれば、2020年にはBRICSとG7(英国、ドイツ、カナダ、日本、イタリア、フランス、米国)の寄与率はそれぞれ31%だった。しかし、近年G7が占める割合は小さくなり始めており、2023年には29.9%に、BRICSは32.1%になるとみられている。そして5年後の2028年には、BRICS の寄与率が33.6%、G7が27.8%になるという。
どうも世界経済の潮流はBRICSに傾いているようである。
そのBRICSがヨハネスバーグに各国首脳を呼び寄せて何を打合せしようとしているのか。それは金本位制の復活なのだ。金本位制であるが、それは「いつでも固定レートで金と交換できることを保証する通貨制度」のことである。
そもそも現代の国際通貨制度は、第二次大戦中の1944年にアメリカのニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで行った会議で金と米ドルとの交換比率を1オンス=35ドルと決め、アメリカ・ドルと各国通貨の交換レートを固定するドル本位制が始まった。その後のアメリカは、1950年代に長期化したベトナム戦争でアメリカ経済が深刻な打撃を受けたことで1971年8月にニクソン大統領が米ドルと金の交換停止とドルの実質切り下げを断行し、同年末に金1オンス=38ドルで多角的に通貨調整をおこなって固定相場制の維持を図ったが失敗した。そして1973年から変動相場制に移行しG7はこの金融制度を採用している。
現代の通貨制度の違いを単純化すると、
BRICS vs.G7=兌換紙幣vs. 不換紙幣=金(gold)vs. 信用
ということになる。この関係式にロシアとウクライナの戦争の当事国と支援国の関係国を入れてみるともっと興味深い結果が生まれる。
当事国(ロシアvs.ウクライナ)≒支援国(BRICS vs.G7)
である。そうなのである。ウクライナとロシアの軍事対立は、実は国際通貨制度の対立でもあるのだ。RUICSヨハナスブルグ首脳会議がいかに重要な会議であるかを理解いただけるであろう。
2、ウクライナとロシアの対立の原因
これまで国際通貨制度が変化するのは、大体は大きな戦争の勝敗が決まったときなのだ。現在ではウクライナとロシアの戦争である。つまりウクライナとロシアの戦争は2023年8月22日開催のBRICS首脳会議と密接な関係があるのだ。
そもそもロシアがウクライナに侵攻した理由は、マイダン革命で現職のヤヌコーヴィチをロシアに追放したことに始まったことは夙に知られている。
このころのウクライナ経済は2009年の経済危機からの回復が遅れていて、欧州復興開発銀行(EBRD)によれば12年の実質国内総生産(GDP)成長率は2%と低迷し、13年にはマイナス0.5%の景気後退となっていた[i]。13年の景気後退は、干ばつによる農産物生産の不振、対外経済環境の悪化による輸出の低迷、12年の議会選挙後の国内需要の停滞、欧州サッカー選手権(12年に開催)後の投資の大幅な減少などによるものであった。されに財政難のウクライナ政府は巨額の債務返済期限が迫っていて「いずれかの形での資金援助を受けなければ、経済的な安定を維持できない状況にあった」[ii]。ウクライナ・アザロフ首相によれば200億ユーロ(270億米ドル)の融資及び援助を必要としていた。そのためウクライナは、EUとロシアの両方に経済支援を打診していた。これに対してEUは6億1000万ユーロ(8億3800万米ドル)と少額融資を表明したものの、資金提供の見返りとしてウクライナに法律の改正及び改革を要求していた。このような条件を付加したEUの真意は、ウクライナが債務不履行後に当然のこととしてIMF管理に移行させようと考えていたのである。
対するロシアは150億ドルの提供と、ガス価格を千立方メートルあたり約400ドルから同268.5ドルに値下げすることを提案した。さらにロシアは、EUと違い融資に付帯条件を付けることはなかった[iii]。ロシアが提示した金額には、ウクライナの天然ガス代金未払50億ドルが含まれていないことから実質は総額200億ドルとウクライナにとって非常に有利な提案であった。
2013年12月25日、ウクライナ・アザロフ首相は、ロシアがユーロ建ウクライナ国債を購入することにより総額150億ドルと、天然ガス輸出価格の値下げすることことに合意した。また、アザロフは同月24日に既に初回分として30億ドルを受領済みであることも公表した。これら一連の動きに付いてアザロフ首相は「ロシアからの援助は、わが国の財政と経済を安定化させる重大な要因だ」と述べた[iv]。このヤヌコーヴィチ内閣が融資をロシアから受けることにしたのは、ウクライナがEU加盟手続きを進めても加盟となるのは長期の年月を要することから当面の寒厳期をロシアの援助で乗り切ることを優先した結果であった。しかし、このヤヌコーヴィチの発表に欧州統合支持者や政権汚職に反対する市民は納得せず大規模な反政府デモが発生することになった。そして、ヤヌコーヴィチ政権は崩壊した。
その後のウクライナは、本来ならば2015年3月29日に行われる予定であったウクライナ大統領選挙を2014年5月25日に実施してポロシェンコが過半数を制し大統領に選出された。同年6月6日にポロシェンコは大統領に就任することになった[v]。ちなみに同大統領選挙で2位となったのは、あの2004年のオレンジ革命の中心人物であり、ロシアから天然ガスを輸入する際に中間利益を加えたことからウクライナのガス価格が高騰しウクライナ経済に壊滅的な被害を与えた[vi]ティモシェンコ元首相であった。どちらの候補が勝利してもEUとNATO加盟を推進する立場に変わりはなくヤヌコーヴィチ追放後におこなった大政翼賛選挙であったことは間違いない。
同年4月30日、同大統領選挙に先立ち、IMF理事会はウクライナに約171億ドルの金融支援を実施することを正式に承認した。そして同年5月7日にウクライナ政府は第1回目の融資を受けとっている[vii]。
つまりウクライナの政変とは、ウクライナがEUとG7の西側経済圏にはいるか、BRICSの経済圏に入るかの対立であった。平たく言えば、IMFはウクライナに融資し莫大な利息をうけとることができなかったことからクーデターによる政変で趣意返しをしたのだ。
IMFの融資が始まった後のウクライナ内政は、国内に残る親ロシアを抑え込んで政権を安定させることであった。そしてウクライナ政権はアゾフ大隊(注:日本の公安調査庁でも同団体をネオナチとして監視していたが、ロシアのウクライナ侵攻後削除されている)と云うギャングをつかって親ロシア勢力を排除することにした。ウクライナ各地で親ロシアの排斥が始まり血なまぐさい対立が続いた。
ところでヤヌコーヴィチ追放でロシアの融資を覆されたプーチン大統領は、アメリカ、イギリス、EU、NATO、IMFの「悪巧み」を予測して、2013年末にロシアがヤヌコビッチ政権に融資した30億ドルのユーロ債に強力な時限爆弾を組み込んでいた。ロシアの融資条件に、ウクライナの財政悪化に歯止めが掛からない場合、ロシア政府が即時返済を要求できる条項を盛り込んでいた[viii]。それは、ウクライナが発行したユーロ債はイギリスの法準拠とし、イギリスの裁判所が法的強制力を持てるような仕組みになっていた。そのため、たとえウクライナが債務不履行となっても全債務の約5分の1を保有するロシアが債権者として強い影響力を保持したままであることが判明した。その詳細は、小日向白朗学会HP準備室BLOG『
日本の安全保障に関する情報戦(プロパガンダ)(第三回 2-1) -日本政府の隠蔽と虚言-』(クリックで遷移)で紹介ずみである。その中で引用したロイター(2014年9月25日)『焦点:ウクライナに債務不履行懸念、ロシア向け債権めぐる憶測で」は西側の「悪巧み」を紹介したが、この寄稿文でも全文を載せておく。
『……
[ロンドン 24日 ロイター] - ウクライナのドル建て債が売られたことで、ロシアが旧ヤヌコビッチ政権時代のウクライナから支援の一環として引き受けた30億ドルのユーロ債に関心が集まっている。投資家の間では、プーチン大統領がこの債務を利用してウクライナ政府の発行したユーロ債の幅広い銘柄に債務不履行を引き起こすのではないかと懸念が高まっている。
このユーロ債は昨年末に発行された。ウクライナの財政悪化に歯止めが掛からない場合、ロシア政府が即時返済を要求できる条項が盛り込まれている。
つまり西側諸国の貸し手はウクライナ向け融資の拡大を余儀なくされる可能性がある。またその可能性は低いとは言え最悪のケースでは、ロシア向け返済が期日を守れず、ほとんどのユーロ債に付随する「クロスデフォルト条項」(デフォルト発生時には債務者が抱える返済期日が来ていない残りの借り入れも不履行とみなす取り決め)が発効してウクライナが他のドル建て債についても返済を迫られることもあり得る。
プーチン大統領は経済的な影響力を最大限に駆使し、西側寄りのポロシェンコ・ウクライナ大統領が欧州連合(EU)と自由貿易協定を結ぶのを阻止する構えだ。
このユーロ債の問題の核心は、ウクライナの国債と政府保証債の対国内総生産(GDP)比率が一時たりとも60%を超えてはならないという、めったにない条項が付帯している点にある。
ウクライナは経済の悪化と通貨フリブナの下落が続き、債務の対GDP比率は既にこの上限を上回っているかもしれない。そうでなくとも、国際通貨基金(IMF)が見込む今年末の債務比率は67%だ。
スタンダード・バンクのアナリストのティム・アッシュ氏は「債務比率が限度を超えるのは間違いない。ロシアはこのユーロ債を使ってウクライナを苦しめる公算が大きい」と話す。
もっともロシアとしては即時返済を求めずともウクライナに対する立場を強める手段が他にもある。
<ロシアの影響力>
抜け目ないロシア政府は問題のユーロ債を英国法準拠とし、英国の裁判所が法的強制力を持てるような仕組みにした。だから返済要求をせずとも、ウクライナが債務再編に追い込まれた場合にロシア政府は全体の約5分の1を保有する債権者として強い影響力を持つ。
他に債権者は少なく、ロシア抜きなら債務再編は比較的簡単になるだろう。つまりウクライナにとってはロシア向けのユーロ債が償還期限を迎える2015年12月まで債務再編を遅らせて、ロシアが再編交渉のテーブルに着けないようにするのが得策だ。しかし今のところウクライナがそれまで持ちこたえられるようにはみえない。
一方、プーチン大統領のウクライナへの影響力行使はロシア政府にとってもリスクを伴う。
ロシアの銀行は既に一部が西側の経済制裁の影響にさらされているが、ウクライナが債務不履行に陥れば打撃を受ける。ズベルバンク、VTB、アルファの大手3行はウクライナでも大手の立場にある。ムーディーズの昨年の推計によると、ガスプロムバンク、VEB、ズベルバンク、VTBのウクライナ向けのエクスポージャーは合計で最大300億ドルに達する。
<不愉快な債務>
ウクライナの財政悪化にともない、債券市場は債務再編を織り込み始めた。
オックスフォード・エコノミクスのグローバル・マクロ・ヘッドのガブリエル・スターン氏は、ギリシャは2012年を期限とする債務120億ユーロの返済が大き過ぎて不履行に陥ったと指摘した。ウクライナにとっては50億ドル程度の天然ガス代金を除けばロシア向けユーロ債が最大の支払い案件だ。
スターン氏は「ウクライナはある時点で返済ができないと認めざるを得ないし、私のみるところ30億ドルの返済がそのときだ」と話す。
これまでのところウクライナがこの債務返済を拒否する兆しはみえないが、そうすべきだとの見方もある。
ジョージタウン大のアン・ゲルパーン教授はこうした主張を強く展開している1人。ウクライナはこの債務は「不愉快な債務(odious debt)」だとして支払いを拒否すべきだと主張し、英国の議会と裁判所もこのユーロ債の契約履行を拒否すべきだとしている。不愉快な債務とは、前体制が借りたもので、不適切、あるいは国民の利益に適わない債務を指す言葉だ。
一方、BNPパリバの新興国市場戦略部門ヘッドのデービッド・シュピーゲル氏は、裁判所が「不愉快な債務」という主張を認めたことはほとんどないと指摘。「ヤヌコビッチ氏が借りた債務なのは事実だし、同氏は公的な利益で動いていなかったという主張は存在する。しかしヤヌコビッチ氏が民主的な選挙で選ばれたという事実は変わらず、不愉快な債務という主張は裁判では通用しないだろう」と述べた。
……』
ヤヌコーヴィチ追放の目的は、ロシア融資を反故にする為だけではなかった。アメリカ、イギリス、EU、NATOはIMFがウクライナに融資した経済利権を守るためNATOをウクライナに配備して、ロシアの下腹にNATOの核を設置しようとしていたのだ。これではプーチン大統領が怒ったとして当たり前である。プーチン大統領が正しいのだ。これを卑近な例でいうと、昔、国民的大スター高倉健が主演した東映映画と同じ筋書きだと思えばほぼ間違いない。無論、プーチン大統領が高倉健である。冗談が過ぎた。
そしてこの時ウクライナがIMFから融資を受けていることが、現在も続いているウクライナとロシアによる戦争でウクライナが無条件降伏できない理由でもある。それはNATOやEUは、ウクライナの戦後復興をIMF主導でおこなうことでウクライナに対しておこなった融資の返済を円滑に進めるだけではなく、復興資金と云う莫大な新規融資を狙っているのだ。西側諸国は、ウクライナに対する復興資金と云う新たな投資案件を失わないためには、ゼレンスキーが敗れては困るのだ。そのため西側諸国は、ウクライナがロシアに一撃を加えるだけの戦力を提供するとともに、国際世論を誘導してゼレンスキー体制を維持させて融資資金の保全を図ろうとしているのだ。もしもゼレンスキーがロシアに無条件降伏した場合に、ウクライナ復興の主導権はロシアが握ることとなる。その際、IMFがウクライナに融資した莫大な資金は、国際通貨制度が異なるため紙くずになる可能性が高い。G7及びEUそしてNATOはゼレンスキーに資金と兵器を供与し叱咤激励して戦争に駆り立てているのだ。そして本年春から西側はウクライナの大攻勢を声高に喧伝してきたが、実際にはウクライナが勝利することはあり得ないことが明らかになっている。
その原因の一つとしてウクライナの指導者ゼレンスキーがパフォーマンスはうまいが戦争の素人だということである。彼は幾度も幾度も反転攻勢を口にしてきた。対するロシアは敵が攻めてくると、攻めてくると大騒ぎしていてその際に使用する兵器も数量も後方支援の規模もわかっているのだから、迎え撃つ準備を「おさおさ怠りなく」行えばよいだけであった。このことに付いてアメリカ統合参謀本部議長のマーク・ミリーも認めていて「ロシア人には多層防御線を構築する時間があった」と述べている。その結果、現在のウクライナ軍は壊滅的な損害を被っており、今後、継続して戦争を遂行する能力も資金もない。したがって現在のウクライナに残された道はロシアに白旗をあげる以外にない。その時、ウクライナに残されたものは、コメディアンの大統領と、疲弊した経済と、焼け野原となった国土という厳しく且つ過酷な現実である。
3、ヨハネスブルグと金(gold)
ところでBRICS首脳会議が開催されるのは南アフリカ・ヨハナスブルグという町であるが、この町の歴史をたどるとBRICS首脳会議の違った意味合いが見えてくる。
この町は、1830年代ころから、イギリス領ケープ植民地に居住していたオランダ系移民(ボーア人)が、イギリス統治への反発などから、内陸への集団移動を開始した。その結果、ヴァール川の北方(トランスヴァール)にボーア人が拠点を築くことになってできた街なのである。そしてケープ植民地との武力闘争後の1852年にトランスヴァール共和国( Transvaal Republic)が成立した後も大きな変化はなかった。しかし、1886年にヨハネスブルグ金鉱ウィットウォーターズランド(Witwatersrand)で金鉱脈が発見されると、移住者が増加し様相が一変した。それと同時にイギリスは金とダイアモンドを独占することを目指しオレンジ自由国(Orange Free State)及びトランスヴァール共和国(Transvaal Republic)と第二次ボーア戦争(Second Boer War)(1899年10月11日 - 1902年5月31日)となった。その先頭に立っていたのはセシル・ローズ(Cecil John Rhodes)であった。戦争の詳細は省くが、この戦争により大きな影響を受けた国があった。それは日本である。イギリスは、金及びダイアモンドを独占するため、2億1,115万6,000ポンドに及ぶ莫大な戦費と347,000名の陸軍を投入することになった。その結果、清国で義和団事件が起きるとイギリス、アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、イタリアら欧米七列強と日本による8か国で連合軍を編成して各国大使館員を救出する作戦を実行した。しかし連合国の中で中国に最大の利権を有するイギリスは、欲望に任せて始めたボーア戦争の最中でもあり、申し訳程度の兵力しか投入することができなかった。これに対してペルシャ、アフガニスタン、チベットとインド防衛ラインを形成する地域で対立していたロシアは、義和団事件を口実に満洲に進出することが可能となってしまった。イギリスとしてはこの事態を放置することは、後々、上海、香港の防衛に重要な脅威を及ぼす可能性があった。そこで考えられた戦略は、日本をロシアに対峙させることであった。その手始めとして日英同盟の締結し、そして開始させたのが日露戦争であった。努々、日露戦争は「ロシアが日本に脅威を及ぼした」ことで戦うことになったという巧妙な作話に騙されないことである。
日本がイギリスの巧妙な戦略に気が付くのは日英同盟改定後に条約の運用を協議する時である。イギリスは、日本陸軍をアフガニスタンやペルシャに派遣させてインド防衛の一翼として利用することだったのである。何やら現代の「開かれたインド太平洋」と同じ匂いがするのは筆者だけであろうか。つまりイギリスは、金とダイアモンドの収奪に自国軍隊を使い、イギリスの最大の敵国であるロシアに日本を使うという今も昔の変わらない強欲な国なのである。
ボーア戦争当時のイギリスと、BRICS首脳会議を開催される今年のイギリスを比べると隔絶の感が否めない。
ボーア戦争当時のイギリスは強力な海軍力と金本位制度を武器に巧妙な外交を展開し覇権を謳歌していた。しかし、現在のイギリスは、海軍は勃興するBRICSをおさえるため「インド太平洋」の防衛に自衛隊を利用することでその微弱さを補おうと躍起となり、イギリスの東側防衛ラインを形成するNATOの戦力は張子の虎に過ぎず、そのうえ金融は変動相場制と云う実体のない決済システムを維持することに躍起となっている。したがってBRICSヨハネスブル首脳会議で「金本位制」が決まれば、イギリスとアメリカの衰退は確実となる。
それと共にウクライナの戦争は終局へ向かい最終的にウクライナ経済はBRICS圏に向かうことになる。それはウクライナの特産物である穀物は不換紙幣経済圏で取引するよりも、兌換紙幣経済圏で取引する方が有利である。ところがゼレンスキーは不換紙幣経済圏に入ることを求めてやまない。したがって、ウクライナ政府と国民は、大きく分裂すると考えられる。ならば今後のゼレンスキー政権は軍事の面でも、経済の面でも命脈は尽きることになる。
尚、NATOが単なる張子の虎であることは、やはり、小日向白朗学会HP準備室BLOG『
日本の安全保障に関する情報戦(プロパガンダ)(第三回 3) -日本政府の隠蔽と虚言-』(クリックで遷移)で、2018年5月22日付Spiegel誌が「ドイツ空軍主力戦闘機「ユーロ・ファイター」の内、戦闘任務に投入できる機数は全128機の内わずか4機」や「ドイツ陸軍が保有するレオパルト2戦車244輌の内、戦闘行動可能なのは95輌」であることなどを紹介ずみである。NATOは各国のなけなしの兵器をウクライナに逐次、送っていることから戦略的にも戦術的にも勝敗は明らかなのである。唯一つ西側が有利なのはプロパガンダだけである。
4、ブリンケン、イエレンそしてキッシンジャーの訪中
BRICSが金本位性に移行していくなかで、不換紙幣の法主、アメリカの動向についてみておく。
アントニー・J・ブリンケン(Antony John Blinken)国務長官は、2023年6月18日から19日にかけて、習近平国家主席、中国共産党中央外交弁公室の王毅主任、秦剛国務委員兼外相と会談するため中華人民共和国首都北京を訪問した。アメリカ国務省によれば表向きの会談内容は「双方は2国間関係や幅広い国際的・地域的な課題について、率直で建設的な議論を行った」としている。しかし、本当の理由は「中国がロシアに立ってウクライナとの戦争に参戦もしくは介入する」ことを止めるため出かけたと考えられる。このように考える理由は、会談終了後のブリンケンの記者会見にある。
『……
台湾問題は中国と合衆国のあいだの関係正常化を妨げている決定的な問題であること。中華人民共和国政府が中国の唯一、正当な政府であること。台湾はすでにずっと以前に母国に返還されている中国の一省であること。台湾の開放は中国の内政問題であって、他のいかなる国にも干渉する権利はないこと。そして、すべての米軍及び米軍事施設台湾から撤去されなければならないこと。中国政府は、「一つの台湾」「一つの中国、二つの政府」「台湾独立」などを創り出すことを目的としたり「台湾の地位は未定である」と主張したりするいかなる活動にも断固反対する。・・・・・・合衆国側は次のように宣言した。合衆国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識する。合衆国政府はその立場に異議を申し立てない。合衆国政府は、中国人自身による台湾問題の平和的解決に関心を持っていることをかさねて強調する。この展望を前提として、合衆国政府は、すべての米軍および米軍事施設を台湾から撤去するという最終目標を確認する。その間に、合衆国政府は、この地域における緊張が減少するにしたがって、台湾における米軍および米軍事施設を漸減させるであろう。
……』
ブリンケンはバイデン政権が進める反中国政策が正当性だということを発信しておくためアリバイとして訪中したのであろう。ところがここで中国首脳の反撃にあい「one china policy」が現在も有効であることを認めざるを得ない羽目に陥ってしまった。そのため言い訳がましい記者会見となったのだ。
そもそもバイデン政権が反中国政策を具体的に動き出したのは、2022年8月2日、アメリカのナンシー・ペロシ(Nancy Patricia Pelosi)下院議長が台湾を訪問したことに始まる。ペロシの台湾訪問についてBBCニュースは次のように伝えていた。
『……
ペロシ氏は台湾への到着前に声明を発表。今回の訪問は「台湾の活力ある民主主義を支援するというアメリカの揺るぎない約束」を尊重するものだとし、アメリカ政府の方針と矛盾しないと主張した。また、「世界が独裁と民主主義との間で選択を迫られているなか、台湾の2300万人とアメリカがいま連帯するのは、かつてないほど重要だ」とした。この声明が出されたのと同じタイミングで、米紙ワシントン・ポストはペロシ氏の寄稿を掲載。その中で同氏は、台湾の「強固な民主主義が(中略)脅かされている」と書いた。また、「中国共産党が攻撃を加速させる中での私たち議会代表団の訪問は、アメリカが台湾を支持していることの明確な表明と見なされるべきだ。台湾は民主的なパートナーであり、自らと、自らの自由を防衛しているとした。
……』
そうである。NATOや日本政府は、ロシアがウクライナに侵攻したことにたいして「力による一方的変更を許さない」と声高にロシアを非難していたこととおなじ文脈のものである。つまりペロシは既に半世紀前に解決済の問題を蒸し返して極東の安全保障に火をつけるために訪台したのだ。
このペロシ訪台で極東情勢を流動化させたことに相応して、日本政府はNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI:The Office of Distinguished Ambassador to Japan Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, UK)の協力で作成したのが「2022年 防衛三文書」なのである。その中で日本の敵はロシア、中国、北朝鮮と決定した。そして出てきたのが「台湾海峡の平和と安定は、国際社会の平和と安定と繁栄に不可欠」という意味不明の文言である。これは、中国が台湾に侵攻を開始した場合に、日本は国際社会の平和と安定という大義名分で自衛隊を台湾有事に参戦させたいということである。
これは危機を煽り莫大な予算を獲得しようとする日本政府の「悪巧み」を支援する輿論操作なのである。そもそも自衛隊の指揮権を持つアメリカ軍は、台湾有事に参戦して自衛隊を台湾防衛部隊として使用することを決めている。それを正当化して日本国民を納得させるために台湾有事と国民的な関心事である尖閣諸島問題をリンクさせて自衛隊が台湾防衛に参戦した場合に国民の拒絶反応を和らげるために仕組んでおいたのだ。加えて尖閣問題に関して日本政府は国民に公表できない事実がある。それは、台湾が尖閣列島を自国領だと主張していることである。この経緯は、岸信介が蒋介石に対して、尖閣諸島近海で石油の埋蔵が確認されていることから台湾が領有宣言をおこない台湾が独自に採掘することを勧めたのであり、これを受けて蒋介石が尖閣列島の領有宣言をおこなった、というものもである。この岸信介による売国行動は、その直後から国会で大きく取り上げられ大問題となった。慌てた政府は、時の内閣総理大臣であり岸信介の実弟である佐藤栄作が尖閣列島は日本領土であるという声明を発表して事態の収拾を図った。その結果、蒋介石は、開発中止を決定したものの尖閣諸島領有宣言に付いては、取消すことなく現代まで至っている。現在の台湾政府は中国が台湾進攻したばあいにアメリカ軍と自衛隊による支援を期待して日台友好を進めているが、その一方で日本人の愛国心に火をつけてしまった尖閣領有問題では依然として領有を取り下げていないのだ。つまり二重規範なのだ。そしてこの台湾が尖閣列島の領有を主張していることは、中国の「one china policy」からすると尖閣も自国領となってしまう。ここが尖閣列島問題の核心なのである。
台湾有事にアメリカ軍の指揮のもと自衛隊が死に物狂いで自国領土の防衛に当たった尖閣は、実は日本のものではなく台湾領有だったとしたら、それは、まるで詐欺のようなものである。
もしも、この事実を日本国民が知ったならば台湾防衛など誰も言い出さないであろう。そのため日本政府は台湾による尖閣諸島領有宣言の存在を公表することは控えているのである。なぜ日本政府は、詐欺まがいの防衛政策をおこなっているのかというと「尖閣列島防衛」を掲げる方が莫大な防衛予算を獲得できるからである。
ところで、台湾有事に駐留アメリカ軍が如何なる行動を取るのかが如実にわかる実例がある。1958(昭和33)年8月23日、台湾の金門島に対し中国人民解放軍が同島に侵攻するため砲撃を開始した。第2次台湾海峡危機である。これに対し日本に駐留するアメリカ海軍第七艦隊は空母7隻を台湾海峡に出動させている。この事態に国会では台湾有事と「日米全保障条約」及び「行政協定(日米地位協定)」は密接不可分であって、日本政府としては、アメリカ軍の行動に何ら対処する術がないことを明らかにしている。その会議議事録は「第29回国会 参議院 外務委員会 閉会後第3号 昭和33年8月29日」である。
『……
007 岡田宗司
○岡田宗司君
……日本が、日米安全保障条約によりましてアメリカ軍の日本に駐留することを認め、日本に軍事基地を提供しておる。で、今日、私は、アメリカ軍がこの基地を中国の紛争のために使っておるかどうか、これは私知りませんが、しかしながら、安全保障条約や行政協定の規定によりますというと、ここにおけるアメリカ軍は、完全なる行動の自由をとることを許されておるわけであります。そして、アメリカ軍はいつでも日本の飛行基地から飛び立つことができるし、アメリカの戦闘に従事する戦闘態勢を整えた艦船も、日本の軍港にいつでも入ることができ、出ていくことができるわけです……あの台湾海峡における軍事行動に、日本のアメリカ軍基地なり日本におけるアメリカ軍というものは密接なつながりを持っておりまして……その基地を提供し、アメリカ軍を駐留さしておる日本も、とにかくこの危険に巻き込まれる……法律的に言えば……安全保障条約並びに行政協定に基いてアメリカ軍が行動をすることに対して、日本は異議を差しはさむ余地はないかもしれません。しかしながら、……そういう際に、アメリカ軍が日本の基地を利用し、また、ここにおるアメリカ軍がこの戦闘に参加するということに対しまして、外務大臣は、これをやらせないようにアメリカに申し入れをする、あるいはアメリカと協議をするというおつもりがあるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
……』
質問者である岡田宗司は「台湾有事にアメリカ軍は安全保障条約及び行政協定に基いて行動をすることに対して、日本は異議を差しはさむ余地はない」が「日本政府としてアメリカ軍に戦争に参加することを協議できるか」と問いただした。これに対する外務大臣藤山愛一郎は協議することはできるとは終ぞ言わなかった。いや、外務大臣はできるとは言えないのだ。日本は自衛隊指揮権をアメリカに売渡してことから自衛隊の運用に関してアメリカは日本政府の了解を得る必要も、協議する義務も微塵もないからである。アメリカ軍の日本での法的立場は「超法規」なのだ。昭和33年当時の国会議論で注目すべき点がもう一つある。それは尖閣諸島の問題が出てこないということである。つまり、アメリカ軍は尖閣問題があってもなくとも台湾有事に自衛隊を指揮して参戦するのだ。これでお判りであろう。ペロシが台湾を訪問したのはロシアがウクライナに侵攻したことを利用して1958(昭和33)年と同様の台湾有事を作り出すことすことだったのである。
これに悪乗りするかの如く日本国内では2022年09月07日付けで「台湾を見捨てない 今こそ、国防強化で日本を守り抜く」[ix]など日本が台湾防衛に寄与することを政策にすべきだとするトンデモ論議まで出させて輿論の反応を窺っていたのだ。
その後、日本政府は、令和4年9月22日、内閣総理大臣岸田文雄が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の開催を決定した。この告示を受けて、同有識者会議は、開催決定から僅か一週間の令和4年09月30日には開催される運びとなった。第一回目の会議には、有識者として上山隆大、翁百合、喜多恒雄、園部毅、黒江哲郎、佐々江賢一郎、中西寛、橋本和仁、山口寿一が、政府側として岸田内閣総理大臣.木原内閣官房副長官〔官房長官代理〕、林外務大臣、鈴木財務大臣、浜田防衛大臣等が出席した。
そして、そもそも予算根拠に乏しいことを自覚している政府は、毎年国会で予算審議をしていては、そのうちにぼろが出ることを恐れ「防衛財源確保法」を制定して国会で防衛論議を行わないで莫大な予算を手に入れることに成功した。そして令和5年6月21日に第211回国会を閉会した。ここまでは政府の目論見通りにすすめることができた。
ところがブリンケンは、2023年6月18日に訪中し、習近平国家主席、中国共産党中央外交弁公室王毅主任、秦剛国務委員兼外相と会談をおこなったが中国の激しい抵抗にあい「one china policy」を渋々認めることになってしまった。これで、バイデン政権は台湾有事があったとしても、何ら関わらないことを中国に再確認させられてしまったのだ。すなわちブリンケンの訪中は「藪をつついて蛇を出す」という結果におわってしまった。ところがアメリカの失態はさらに続くことになった。ブリンケンが中国を去った翌日、バイデン大統領は習氏を「独裁者」と呼び、中国政府が厳重に抗議する事態となってしまった。怒れる中国政府を鎮めるため、今度はイエレン財務長官を謝罪特使として中国に派遣することにした。イエレンが北京に到着したのが2023年7月6日である。北京に到着したイエレンは何立峰副首相に会った時に3回もお辞儀をしたことと、李強首相と会ったときも「へつらう」様な笑顔を向けているが様々なメディアに報じられてしまった。イエレンが謝罪特使ならば説明がつくはなしである。
イエレンが北京を訪れた直後の2023年7月18日、こんどはキッシンジャーが中国を訪問し、李尚福国防相と会談をおこなった[x]。そしてキッシンジャーは「米中は誤解をなくし、平和的に共存し、対立を避けるべきだ。米国も中国も、相手を敵対視する余裕はないことは、歴史と実践が絶えず証明してきた」と述べた。
この意味するところは、1972年2月27日に、ニクソン大統領、キッシンジャー補佐官、周恩来首相により纏められた上海コミュニケ(Shanghai Communiqué)について、キッシンジャーはわざわざ訪中しアメリカは今後も「one china policy」を堅持すると中国に確約した。したがってバイデン政権が進めていた中国包囲政策は放棄されたのだ。
それと同時に、日本政府の安全保障政策は破城してしまったのだ。
5、防衛三文書には根拠がなく莫大な予算を獲得するための欺瞞であった
防衛三文書で日本は仮想敵国をロシア、中国、北朝鮮とし、自国防衛力強化を図るとともに日米安全保障条約によりアメリカと共同して仮想敵国と対峙することを決めている。ところが、ブリンケン国務長官は訪中した際にアメリカは「一つの中国」(one china policy)につて合意していることから中国とは戦わないことを再確認してしまった。すなわち、台湾有事もしくは尖閣有事にアメリカ軍は中国と戦争をしないと言っているのだ。日本の防衛三文書で決めた日本の安全保障政策は根拠がないどころの話ではなく、国民の目を欺くためプロパガンダを連日テレビに出演させて偽情報で輿論操作をおこなうという計画的かつ恣意的な政策だったのである。したがって次回開催する国会で、防衛三文書を根拠とする安全保障政策と防衛費に関するこれまでの審議が国民を騙し国民の税金を恣意的に使おうとした詐欺的な政策であったことから、国会が紛糾して当たり前なのである。
このような国賊的な安全保障政策を白々しくも日本の安全保障政策であると公言してきた自由民主党であるが、これを命じたのは日米安全保障条約を効率的に運用するため日米地位協定25条の規定に従い設置された日米合同委員会というGHQ(General Headquarters)なのである。この日米合同委員会が日本政府に命じたのが防衛三文書なのである。そして、何故に日米合同委員会が日本政府に取るべき政策を命じることができるのかと云うと、吉田茂と岸信介が自衛隊の指揮権(統帥権)をアメリカに売渡し、さらに日本の主権である電波権や航空管制権を国民に知られないように次々と売飛ばしていたからなのである。そのため日本国民は基本的人権すら無視され塗炭の苦しみを味わっているのだ。最近では、横田基地内で発癌性のあるPFAS(有機フッ素化合物)を含む泡消火剤の漏出あったことが確認されているが、日本政府は日米地位協定があることから横田基地を使用停止にすることができない。しかし、昭四二年に制定した公害対策基本法では「第一条 この法律は、事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。」とある。そして現在の日本政府は、国民の健康を保護することも、生活環境を保全することも行っていないのだ。
「無能ここに極まれり」という話で、日本政府は統治能力をなくしているのだ。
ならば、アメリカに日本の主権を売渡すことで政権を維持してきた自由民主党をその座から引きずり下ろして国権を回復すことこそが、野党国会議員が党派を超えて最優先で行わなければならない仕事なのだ。その後、国会でイデオロギー論争でも、憲法改正論でも、ナルシシズム(narcissism)の披歴でもなんでもやっていただいて結構である。日本国憲法で許された言論の自由により、赤でも黒でも納得のゆくまで議論の限りを尽くしていただきたい。
ところが国民民主党党首玉木雄一郎や立憲民主党健太は、自由民主党と日本労働組合総連合会(連合)が仕組んだ野党分断工作に唯々諾々と従うと云う間抜けであるだけではなく、腑抜けで、口先だけの党首というほかない。このような党首がいる限り国民の声は永遠に反映されないし救われない。
その間抜けぶりは、自由民主党が単独で政権を維持できなくなった時のために予備として準備してきた「維新の会」という「日本に首都が二ついる」や「賭博をアミューズメント」と主張するトンデモ政策を旗印にする覆面与党にまで馬鹿にされる始末なのである。最近では、覆面与党という立場をかなぐり捨てて公明党の代わりに与党入りすることを目指して、東京六区に自民党幹部の長男が「維新の会」から出馬するという。危機意識のない野党より、与党の方が、候補者調整が数段に先行している何よりの証拠なのだ。更には2023年7月23日に、日本維新の会の馬場伸幸代表は、インターネット番組「ABEMA的ニュースショー」で日本維新の会は「第1自民党と第2自民党が改革合戦をして国家・国民のために競い合うべきだ」と、売国政党自由民主党の第二列だと公言しているのだ。敵ながらあっぱれである。
ならば再度いう、いま、野党がやらなければならない最大の仕事は、売国政党自由民主党を政権の座から引きずり下ろすための「選挙」という国民運動を真剣に戦うことなのだ。そして70年の長きにわたり主権をアメリカに売渡しきた自由民主党が今後も政権に居座ることがよいかについて民意を問う必要がある。そのために野党は連携し全選挙区に候補者を立てなければ全国民の民意を聞くことにはならないのだ。
できない理由をグダグダと言い訳する政治家はリーダーであってはいけないのだ。
P.S.
この原稿を投稿する前に日本労働組合総連合会(連合)のニュースが相次いで報道された。
第一が、2023年7月21日、日本経済新聞に「芳野連合会長、次期衆院選《立民・国民は候補者調整を》」に連合会長芳野友子氏の政局に対する連合の立場を説明する記事が掲載された。芳野氏の要点は「連合として一貫して候補者調整をやってほしいと言っている」であり「共産党との関係はあり得ない。連合の考え方ははっきりしている」だとしている。国難である自民党との関係に付いて主権回復よりもイデオロギーが優先する、つまり、自民党とは対峙しないと言っているのだ。やはり連合が国民民主党と立憲民主党を支援する意味は、自民党政権を脅かす存在とならないように分断しておくことが最大の理由なのだ。
さらに2023年7月21日、朝日新聞デジタル版には「連合会長の出身労組はベアなし 「組合員は悔しい思いをした」」という記事が掲載された。芳野会長の出身母体ではベースアップすら獲得できなかったというのである。
直参組合はもとより国民は物価高騰と低い給与に困窮している。それを救うのが「連合」の役割であったはずである。しかし現在の「連合」はCIAによる野党分断工作(これは陰謀論ではない。アメリカ公文書に残る史実である)にいそしむ労働貴族であることから「ケセラセラ」なのである。連合は、物価高騰により組合員の可処分所得が減っていることを憂いているならば、何故に「消費税撤廃」を云わないのだろう。そうすれば組合員の給与は確実に10%増えたと同じ効果がある。しかし、労働貴族は「日本の財政が破綻する」などと「物知り顔」で政府と同じように説明するであろうが、政府が破綻する前に国民が破綻するのだ。
そこまでいかなくとも、少なくとも「組合費免除」を言い出さないのだろうか。組合員の窮状に耳を傾けない日本労働組合総連合会(連合)は不要であるばかりか、日本の国難を助長する存在なのだ。
以上(寄稿:近藤雄三)
[i] 「ウクライナの経済危機とビジネス環境」https://iti.or.jp/flash/223 (2023.02.05閲覧)
[ii] 産経新聞(2013/12/18)「ロシア、ウクライナに1・5兆円財政支援、ガス価格も値下げ 首脳会談」
https://www.sankei.com/article/20131218-UGJGXR5KQJLKZG6ATXAXHL6KDU/ (2023.02.08閲覧)。
[iii] 産経新聞(2013/12/18)「ロシア、ウクライナに1・5兆円財政支援、ガス価格も値下げ 首脳会談」
https://www.sankei.com/article/20131218-UGJGXR5KQJLKZG6ATXAXHL6KDU/ (2023.02.08閲覧)。
[iv] 「ロシア、ウクライナに150億ドルの緊急援助へ」『ロイター』(2013年12月25日)
https://jp.rEUters.com/article/l3n0k40wy-ukraine-russia-bailout-idJPTYE9BO05S20131225 (2023.02.08閲覧)。
[v] ロイター(2014年6月6日)「ウクライナ、さらに領土失えばデフォルトの公算=S&P」
https://www.rEUters.com/articlEUkraine-default-sp-idJPKBN0DL0WL20140505 (2023.02.08閲覧)
[vi] (2011年8月9日)「ティモシェンコの裁判がキエフで再開されると抗議者が集まる」
https://www.bbc.com/news/world-europe-14419216 2023.02.10閲覧)。
[vii] JETRO(2014年5月23)「IMFの金融支援で当面のデフォルト危機を回避」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2014/05/537c16f2088b8.html (2023.02.08閲覧)
[viii] (2014年9月25日)「焦点:ウクライナに債務不履行懸念、ロシア向け債権めぐる憶測で」
https://www.rEUters.com/article/analysis-ukraine-default-possibility-idJPKCN0HK0CN20140925 (2023.02.08閲覧)。
[ix] 「幸福実現党NEWS」https://info.hr-party.jp/2022/12942/(2023.07.25閲覧)。
[x] 2023年7月18日、ロイター「再送中国国防相、キッシンジャー氏と会談 「米は正当な戦略判断を」」
https://jp.reuters.com/article/china-usa-defence-idJPKBN2YY0OA(2023年7月26日閲覧)。