小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

大英博物館が空っぽになる!?(第三回) -世界最大のダイヤモンド「偉大なるアフリカの星」はどうなる?-

2023-08-31 | 小日向白朗学会 情報
 本年8月24日のヨハネスブルグ首脳会議の最終宣言を受けて、BRICS諸国は、今後、旧宗主国に対して略奪した文化遺産を返還するよう求める活動が活発になっていくことが予想されると過去二回渡り寄稿してきた。
 これまで寄稿しているうちに、ふと気になることが思い浮かんだ。それは、今回のBRICS会議議長国南アフリカは旧宗主国に如何なる文化遺産を返還するように求めるのだろうか・・・ということである。
 19世紀後半、イギリスは南アフリカで、金とダイヤモンドが発見されたことから、その欲望を満たすためボーア戦争を開始し、苦戦の結果、漸くその地を支配した。そのボーア戦争を象徴する文化遺産と云えば、1905年にトランスバール共和国ヨハナスブルグ近郊にあるカリナン(Cullinan)鉱山で発見された106カラット(621.2 g)という史上最大のダイヤモンド原石「偉大なるアフリカの星(The Great Star of Africa)」以外に無いであろう。まさにヨハネスブルグ首脳会議の主要議題である「BRICSとアフリカ」を彷彿とさせる文化遺産なのである。その後の「偉大なるアフリカの星」であるが、トランスバール共和国の自治権を認める賠償金と共にイギリスのエドワード7世(Edward VII)に献上された。つまり、第二次ボーア戦争に負けたトランスバール共和国が戦後賠償として差し出したのだ。尚、カリナン(Cullinan)鉱山の名称であるが、最初はプレミア( Premier)鉱山であったが、後に、鉱山の所有者でありボーア人でもったトーマス・カリナン(Thomas Cullinan)にちなんでカリナン鉱山となった。カリナンがボーア人であったことを考えると、献上とは名ばかりで、敗戦後のボーア人が自ら持つ地位と権利を守るため差し出す以外に方法はなかったものと考えられる。しかし、これだけではイギリスに搾り取られたボーア人の話となってしまうが、実は、ボーア人は、現地アフリカ人を強制的に排除して彼らの入植地を築いたのであった。つまり、現地で暮らしていたアフリカ人は、ボーア人にむしり取られ、ボーア人はイギリス人にむしり取られるという実に悲惨な構造になっていたのだ。イギリスがアフリカ人を如何に駆逐していったのかは1964年公開の映画『ズール戦争(Zulu)』が詳しい。「まさかそこまでは」と思われるほどにイギリスの大虐殺(massacre)は醜いものであった。
 そして今回開催されたBRICSヨハネスブルグ首脳会議において旧宗主国に対して文化遺産の返還を求めることにしたことは、南アフリカの場合、ボーア人がイギリスに対して返還請求をたしのではなく、アフリカ人がボーア及びイギリスに対して求めるものなのだ。そして、この文化遺産返還運動の行き着く先は、歴史や自由主義経済体制を再検討する動きとなることは確実である。中でもアフリカ人の最大の悲劇である黒人奴隷制度に付いては、避けては通ることのできない課題となる。それは、奴隷貿易で得た利益がバークレー銀行の設立資金やジェームズ・ワットの蒸気機関の発明に融資されるなどして、イギリス産業革命の基盤を作ることになったからである。
 これに関連して、最近では、イギリス人奴隷商人エドワード・コルストン(Edward Colston)が莫大な資金を学校、病院、救貧院、教会に寄付したことで篤志家として有名であったが、その資金こそ黒人奴隷貿易で得た資金であったことから、その二面性が批判の対象となっているのである。

 次回は、BRICSによる文化遺産返還運動は、近いうちに日本にも及び、その結果、近代日本史の見直しを求められるであろうことを報告する。

以上(寄稿:近藤雄三)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大英博物館が空っぽになる!?(2回目) -文化遺産の返還を求めるBRICS諸国の旧宗主はイギリスが多い-

2023-08-30 | 小日向白朗学会 情報
 2023年8月28日に「大英博物館が空っぽになる!?」(クリックで遷移)を報告したばかりであるが、さらに、旧宗主国が旧植民地から略奪した文化遺産を返還する動きが加速しているようである。
 2023年8月29、時事通信「スリランカに財宝返還 植民地時代に持ち去る―オランダ」という記事が配信された。
『……
【コロンボAFP時事】オランダ政府は、植民地だったスリランカから18世紀に獲得した、金銀などで装飾された大砲を含む財宝6点の返還を決めた。オランダ高官が28日、スリランカ最大都市コロンボの文化省で返還式に出席した。実際の返還は12月の予定で、スリランカの国立博物館はそれまでアムステルダムの博物館が管理することを認めた。
……』
 そうである。スリランカは、1658年から1796年まではオランダの植民地であった。その後、1802年に、今度はイギリスに割譲されている。そして、1948年、前年に独立したインド及びパキスタンに続き、イギリス連邦自治領セイロンとなった。
 今回の文化遺産返却問題は、本年8月24日に閉会したBRICSヨハナスブルグ首脳会議で採択された最終宣言が大きく後押ししたものと思われる。
ところで先般の首脳会議で、新たに6か国が加盟国となることが確認されている。それはアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦である。
 これらBRICS加盟国で気が付くことは、インドをはじめとして中国、アルゼンチン、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦は旧宗主国イギリスであるか、イギリスの非公式帝国(自由貿易帝国主義論を核となる概念で、政治的、且つ。経済的な従属下にあるものの公的な支配を伴わない地域を指す。その対象国はアルゼンチン、南アフリカ、清国、日本等)なのである。これらBRICS加盟国が、中国と同様に旧宗主国であるイギリスに文化遺産返却の返却を求めたら、やはり、大英博物館はガランとした歴史的建造物となるであろうことは想像に難くない。
 そして、今回の文化遺産返却という動きからイギリスの本音を伺い知ることができる。現在のイギリスは、イギリス連邦の中核国であるアンザック(ANZAC;Australia and New Zealand Army Corps)と本国イギリスを繋ぐ海廊は、旧宗主国に離反した国々が各所にちりばめられていることから、非常に危険である。その対処として、イギリスとしては、日本の安全保障とは何ら関係のないにも拘らず日本国民には日本の国益であると騙してでもインド洋に優秀な自衛隊を配置したくなるのは、ある意味、当然のことなのかもしれない。


 安倍総理大臣のころから積極的に押し進め現在は岸田内閣が継続している「自由で開かれたインド太平洋(FOIP、Free and Open Indo-Pacific)」という政策は、傾きかけた「ぼろ船イギリス」が沈没しないよう懸命に忠節を尽くす日本という「間抜け」を絵にかいたような愚政策なのである。
 もしもジョルジュ・ビゴー( Georges Ferdinand Bigot)が存命ならば、さぞかし、吹き出したくなるようなポンチ絵を描いたに違いない。その時に登場人物、安○、岸○、馬○、玉○、伊豆○そして芳○という人物は、どのように描かれるのであろうか。もしかしたら、全員がドストエフスキーの小説「白△」を小脇に抱えているのかもしれない。
 絵の構図として興味は尽きないが、一日本人としては情けない話である
以上(寄稿 :近藤雄三)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大英博物館が空っぽになる!?

2023-08-28 | 小日向白朗学会 情報
 2023年8月24日に閉幕したBRICSヨハナスブルグ首脳会議であるが、いよいよ始動し始めた。すなわち、同首脳会議最終宣言で採択された94項目の中に次のような一項が含まれていたのである[i]。
『……
BRICSは、加盟国の文化財の不正取引と闘うための断固とした措置を講じることを約束する。「我々は、有形・無形の遺産を含む文化遺産の保護、保存、修復、促進を支援することに合意する。
……』
これは、2023年7月28日、ヨハネスブルグ首脳会議の前哨戦となったロシア・アフリカ首脳会議で採択された最終宣言を引き継いだものである[ii]。
『……
[28日 ロイター] - ロシアとアフリカ諸国は、植民地主義で被った損害の補償を求め、文化財の返還を追求するために協力することに合意した。ロシア北西部サンクトペテルブルクで開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」で宣言を採択した。
 ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された宣言によると、ロシアとアフリカ諸国は「アフリカの脱植民地化プロセスを完成させ、植民地化の過程で持ち去られた文化財の返還を含め、植民地政策の結果としてアフリカ諸国が被った経済的、人道的な損害の補償を求める」ことで合意した。
また「攻撃的ナショナリズム、ネオ・ナチズム、ネオ・ファシズム、アフロフォビア(アフリカ嫌悪症)、ルソフォビア(ロシア嫌悪症)」を含むあらゆる差別と不寛容に対抗することでも合意した。
……』
 つまり、二つの首脳会議で採択された宣言の中には、BRISCは加盟国から持ち出した美術品を返還させるというメッセージがあった。これを受けて動き出したのが中国である。
2023 年 8 月 28 日、環球時報に『大英博物館は中国の文化財を無償で返還すべき』[iii]とする記事が掲載された。
『……
中国メディアとして、我々は大英博物館に対し、不正なルートで入手した全ての中国文化財を中国に無償で返還し、抵抗的で長引いておざなりな態度をとらないよう正式に要請する。まず第一に、遺物の返還を世界に公約し、長年懸案となっていたこの作業をできるだけ早く開始すべきである。私たちはまた、インド、ナイジェリア、南アフリカなど英国によって略奪された他の国々による文化財の返還請求を支持します。我々は英国政府に対し、植民地時代の汚点を清算し歴史的罪を償う英国の誠実さを試す、検証となるこのプロセスを促進するための法的手続きやその他の手続きに協力するよう求める。
……』
 この記事では、中国は自国の文化財だけではなく「インド、ナイジェリア、南アフリカ」のBRICS加盟国も同様に返還要求をすると述べている。
ナイジェリアについては2022年7月にイギリス・ロンドンにある「ホーニマン博物館」が所蔵していた「ベニン王国」から略奪した工芸品72点を返還すると約束している[iv]。今回の中国の発表は「ホーニマン博物館」のような中小の博物館ではなく、イギリス帝国史の象徴である大英博物館であることから、返還対象となる美術品は膨大な量となることが予想される。
 イギリスが中国で行った略奪事件で思い浮かぶのは1856年10月8日に起きた第二阿片事件(アロー号事件)のことである。そしてイギリス、フランス連合軍が行ったのは「円明園の略奪と破壊」であったことは夙に有名である。また、この事件に関わっていたのは、ギリシャ・パルテノン神殿の彫刻を削り取って本国に送ったエルギン伯爵(Earl of Elgin)であった。また、この事件を担当したのは広州領事ハリー・パークスであった。その後パークスは駐日公使となり長く日本を統治していた。

 今回の中国が大英博物館に起こした行動に伴い、他のBRICS諸国からも同様の返還要求が続々と寄せられることになるのだろう。となると、ヨハネスバーグ首脳会議でBRICS加盟国となるエジプトも遠からず「ロゼッタ・ストーン」を返還請求することになるのだろう。
 となると、近い将来、略奪品の収納庫であった大英博物館は空になってもおかしくないであろう。
以上(寄稿:近藤雄三)

[i] https://tass.ru/ekonomika/18575467

[ii] https://jp.reuters.com/article/russia-africa-forum-compensation-idJPKBN2Z81SR

[iii] https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/18598443?s=03

[iv] https://www.bbc.com/japanese/62460902

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カルト(Cult)とかした野党

2023-08-25 | 小日向白朗学会 情報
  1. はじめに
 日本の政権与党である自由民主党は、朝鮮戦争が終結するまでアメリカ軍が日本に安定して駐留できるようにすることと、自衛隊をアメリカ軍の指揮権下で第二次朝鮮戦争及び台湾海峡危機の際に海外派兵が可能となるように憲法を改正することを目的としてCIA資金で結党した政党である。CIAが自由民主党結党を進めたのは、当時の社会党が第一党となった場合に、日本政府と「行政協定」や「国連軍地位協定」を締結して朝鮮戦争を継続できるように法整備を進めてきたものの、政権交代ですべてが見直しとなってしまう懸念があったからである。そのためアメリカはCIAを窓口として、強力な与党を整備するとともに、野党を分裂させて政権与党を目指すことのないようにさせることにした。
そして出来上がった自由民主党は、昭和30(1955)年 11月15日に立党宣言とそれに付随する「党の使命」で、つぎの様に述べている。
『……
国内の現状を見るに、祖国愛と自主独立の精神は失われ、政治は昏迷を続け、経済は自立になお遠く、民生は不安の域を脱せず、独立体制は未だ十分整わず、加えて独裁を目ざす階級闘争は益々熾烈となりつつある。
……』
とある。
 サンフランシスコ講和条約締結のその日に、アメリカに日本の主権を売渡していたにもかかわらず、日本国民については「自主独立の精神は失われた」と国民の精神を問題にしているのだ。それは、自由民主党が国家主権をアメリカに献上してしまったことが国民の知るところとなると時の政権が持たなかったからである。
それから70年の歳月が経過した。
現代では自由民主党の悪行が次々と明らかになっている。
さぞや野党は、ここぞとばかりに政権与党である自由民主党を政権の座から引きずり下ろす国民運動を展開して政権交代への準備ができている、はずである。
ところが、あに図らんや。野党である日本維新の会、国民民主党は第二与党になりたいと言い始めている。

2、日本維新の会について
2023年07月2日、時事通信社が「維新の馬場代表、二大政党制に意欲=「異次元の歳出削減」訴え」とする記事を配信している。
『……
日本維新の会の馬場伸幸代表は26日、東京都内で開かれた内外情勢調査会の会合で講演した。次期衆院選の目標として「野党第1党」の座獲得を改めて挙げた。その上で「自民党と維新の二大政党制にして、政権奪取の争いをやっていきたい」と表明した。
 馬場氏は「自民党1強と多弱の野党という状況の中で、政治がなかなか前に進まない現状がある」と指摘。自民との違いについて「保守という原点は同じだが、大きく改革をするかどうかだ」と強調し、自民を「現状を維持する保守政党」、維新を「改革をする保守政党」として対比した。
 現在、維新の衆院議員は41人で、野党第1党の立憲民主党は95人。
 岸田政権の姿勢について、馬場氏は「防衛費(増額)であれば増税、子どもに対する投資には社会保険料増額と言っている」と批判。「今すべきは『異次元の少子化対策』ではなく『異次元の歳出削減』だ」と述べ、「身を切る改革」の重要性を訴えた。 
  維新の創業者で大阪府知事や大阪市長を務めた橋下徹、松井一郎両氏の政界復帰については、「怒ればあの2人は想像できない行動力を発揮するが、今のところそういう怒りを秘めているようには見えない」と説明。現時点で否定的な見方を示した。
 ◇馬場代表講演のポイント
 一、自民、維新の二大政党制に意欲
 一、次期衆院選の目標は野党第1党
 一、自・維の違いは改革姿勢
 一、異次元の少子化対策より異次元の歳出削減
  一、橋下、松井両氏の政界復帰に否定的
……』
 「日本維新の会」馬場伸幸代表は、堂々と、野党という立場をかなぐり捨てて、第二与党となって二大与党間で政権奪取を行うことを目指すというのである。これは日本国民にとって非常に危険な話であって、単に大政翼賛体制という程度の甘いものではなく、実は、日本の安全保障を永遠にアメリカの手に委ねようとする話なのだ。
それは、アメリカに日本の統帥権を献上した自由民主党がCIAの要請に従い改憲を行って自衛隊の海外派兵を可能とすることを党是としてきたことと深い関係がある。
 最近の例では、自由民主党が統一教会を利用して、憲法改正に必要な国会議員数を纏めるために統一教会の資金と要員を利用していたことが明らかになった。
 残るは、国会内の反対意見を抑えることであった。そして2021年10月31日に行われて第49回衆議院議員選挙で統一教会の力を全力活用したことが功を奏して与党と改憲を目指す野党が躍進することになってしまった。
そこで自由民主党は、予てから野党内に作り上げてきた関係を利用することにした。この自由民主党の思惑に、政権与党になり防衛利権をむさぼりたい「日本維新の会」の利害が一致した。その様子は、2021年11月12日付け、読売オンラインに「自民、憲法改正に積極的な維新に接近」に掲載されている。
『……
自民党が、衆院選で躍進した日本維新の会に接近している。憲法改正や防衛力強化に積極的な維新との連携で議論の前進を図るためだ。同様に国民民主党との連携も模索する。自民の改憲案の実現や防衛力強化に消極的な公明党をけん制する思惑もある。
国民民主との連携も模索
 自民党の茂木幹事長は9日夜、維新の馬場幹事長と東京都内の中国料理店で会食した。茂木氏は「国民投票法を何としても一度は国民の手に委ねたい。国民に憲法を触らせたい」と述べ、改憲の国会発議と国民投票実施に意欲を見せた。馬場氏は「(国会で)憲法審査会をしっかり動かしてほしい」と要請した。 会合は、自民側が持ちかけた。両党の国会対策委員長らも同席し、国会で連携して改憲議論を進める方針を確認した。 衆参両院の憲法審査会では、野党第1党の立憲民主党などが開催を拒み、今年1~6月の通常国会では、衆院で4回、参院で6回の開催にとどまった。状況打開のため、自民は国民にも触手を伸ばす。自民党憲法改正推進本部の衛藤征士郎本部長は8日、国民の玉木代表に電話し、改憲論議で協力を要請。玉木氏は「憲法の議論は、どんどん進めなければいけない」と応じた。
 自民内には「維新、国民を巻き込めば、与党だけで議論を進めていると批判されずに済む。今が改憲のチャンスだ」(幹部)との見方が広がる。与党に維新、国民を加えると、衆参両院で改憲の国会発議に必要な3分の2以上に達する。
 維新と国民は衆院で計52議席を持ち、公明の32議席を上回る。自民党幹部は、「維新、国民と話をまとめれば公明は改憲の議論に乗らざるを得ない」と皮算用をする。維新は「野党として是々非々で付き合っていく」(松井代表)としながら、改憲論議ではむしろ加速に向けて自民に圧力をかける構えだ。
……』
自由民主党は2021年11月総選挙直後から動き出していたのだ。自由民主党は、日本維新の会が与党となりたいという権力志向を改憲に利用することにしたのだ。それと併せて、そもそもの目的である自衛隊を海外で運用が可能となる能力向上を図ることにした。そして2022年3月にロシアがウクライナに侵攻したことを絶好の機会ととらえ、兵備力整備に必要な仮想敵国をロシア、中国、北朝鮮とすることに成功して莫大な予算を獲得した。
 日本維新の会は、自由民主党がアメリカのために日本を治外法権の国としてきたことに賛成し、今後も継続させてことを望んでいるのだ。そのご褒美が、政権与党となることなのである。

3、国民民主党について
2023年8月2日、朝日新聞デジタルに「前原氏、代表選出馬を正式表明 「非自民・非共産」で政権交代目指す」という記事が配信されている。
『……
国民民主党の前原誠司代表代行は2日、国会内で記者会見を開き、党代表選(21日告示、9月2日投開票)に立候補すると正式に表明した。玉木雄一郎代表との一騎打ちになる可能性が高く、自民党との距離感や、日本維新の会などとの野党協力のあり方が争点となる見通しだ。
 前原氏は会見で「自民にしっかり対峙(たいじ)する強い野党が必要だ。非自民、非共産の枠組みで野党結集を進め、政権交代への道筋をつけたい」と強調。自民との対決姿勢を鮮明にした。
 玉木氏は、同じく旧民主党を源流とする立憲民主党とは距離を置きつつ、政府予算案に賛成するなど与党寄りの姿勢が目立つ。前原氏は、内閣支持率が低調でも政権が維持されるのは、野党が割れているからだと指摘。「自民の補完勢力にならない。自民を利することはしない」とし、維新や憲法・原発などの考えが近い立憲の一部議員らと連携して政権交代を目指す考えを示した。
 前原氏は、党所属議員や国民民主を支援する連合傘下の産業別労働組合幹部らと意見交換を重ね、立候補に必要な推薦人(国会議員4人・地方議員4人)をすでに確保したとしている。
……』
この前原であるが、2022年12月16 日に『談話 防衛3文書の閣議決定にあたって』を発表している。
『……
本日、外交・防衛の基本方針である「国会安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定めた「防衛力整備計画」の3つの文書が閣議決定されました。
 政府が防衛3文書を改定するに先立ち、国民民主党は安全保障調査会において『国民民主党の安全保障政策2022~我が国の自立的な安全保障体制の構築に向けて~』を取りまとめました。
……
 今回の政府防衛3文書には反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有やミサイル防衛の強化、防衛費増額などが明記されており、国民民主党が提案した考え方が概ね反映されたものと受け止め、公党としての一定の役割を果たせたものと考えます。
……
 我が国を取り巻く安全保障環境は、様々な安全保障上の課題や不安定要因により一層厳しさを増しています。国の安全保障に関しては、与野党の垣根を越えた取り組みが必要であり、国民民主党も積極的に議論に参加していく決意です。
 今後も国民民主党は「自分の国は自分で守る」という基本理念に基づき、自立的な安全保障体制の構築を訴えて参ります。
……』
 前原は、防衛三文書で最も重要な「国家安全保障戦略」の中で仮想敵国をロシア、中国、北朝鮮とした理由が、「我が国を取り巻く安全保障環境は、様々な安全保障上の課題や不安定要因により一層厳しさを増しています。」と日本政府が壊れたラジオのごとく繰り返した「ロシアがウクライナに侵攻したこと」を原因として台湾有事と同時に日本の領土である尖閣諸島に中国が攻めてくることにあると考えているのだ。
前原が連想をたくましくするのは構わないが、尖閣列島を台湾が領有を宣言していることも云わず、アメリカ軍の意向を斟酌し中国の動向が問題だと「したり顔」で談話を発表しているのだ。
ところが、前原が大きな期待をよせるアメリカであるが、その後、ブリンケンは簡単に訪中し「one china policy」に回帰してしまった。その結果、前原自慢の「防衛三文書」から仮想敵国としての中国が消滅してしまったのだ。さらに、もう一つの仮想敵国であるロシアは、ウクライナ軍を圧倒し、アメリカ国防省まで政権崩壊を心配するまでに至っている。したがって「防衛三文書」で仮想敵国としたロシアと中国は、既に存在しない。残るは北朝鮮のみとなってしまった。したがって三国の仮想敵国のために割り当てた防衛予算には根拠がないのだ。根拠のない国家予算を推進し賞賛してきた前原の政治責任は重い。前原は、極端な外交音痴と言わざるを得ない。
 また、前原の戯言は、これだけに止まらない。日本は主権の無い国家で有るにも関わらず「自立的な安全保障体制の構築」などと、恰も日本に国権が有るかような幻想をまき散らしている。日本の国家主権は「行政協定」読めばわかる通りで、無いのだ。
 前原は、この責任をどのように取る心算なのか。前原は代表戦に出馬していることから、党首になったら、自由民主党と会派を組んで与党に逃込もうとしている以外に考えられない。

4、まとめ
現代日本の政治状況は「与党vs.野党」という対立構造で説明することはできない。これは自由民主党が長年取り組んできた野党対策が功を奏して大政翼賛体制が整いつつあるからである。そして、大政翼賛体制が完成に近づきつつある中で、それに反比例するように「五公五民」と揶揄されるほど重い税負担を強いたことで国民の不満が増大している。本来ならば「国民の健康と幸せを追求する」ためにあるべき国政論議が「日本をロシア、中国、北朝鮮による侵略から国民を守るため」と称して敵愾心をあおり、愛国心を鼓舞したうえで、莫大な防衛予算を増税で賄うことまで始めている。
何故に自由民主党がここまでできたのかといえば、アメリカに自衛隊の指揮権を売渡すことで国政を担当することを許されたという秘密を70年の長きにわたり国民に知られることのないように厳格に管理してきたからである。
そのため国民は、自由民主党が実施する安全保障政策を信じてしまい騙され続けてきた。しかし、昨年末に政府が公表した「防衛三文書」を皮切りに、長引く不況に疲弊している国民に更なる増税を求めたことから、自由民主党が推し進める政策に疑問の声が広がることになった。自由民主党が売り渡した国権を取り戻す絶好のチャンスが到来してきた。
 それにも拘らず、日本の野党である日本維新の会、国民民主党、立憲民主党の一部は、政権党である自由民主党と同じように日本の国権を売渡すことが日本の安全保障だと言っているのだ。そもそも日本に主権がない中で、憲法を改正してアメリカ軍の指揮のもとで海外派兵を行うことが日本の安全保障政策として実施されるべきであると言っているのだ。
彼らは、アメリカ軍の行動が正義であると信じているのだ。
アメリカ軍が正義であるいう根拠が「反共産主義(正義)vs.共産主義(悪)」であるからという程度の恐ろしい話である。
 前原、玉木、馬場は「戦争の実態は、金もうけを兵士の犠牲により行う」ことだということを知らないのである。もはや、カルトのレベルの守旧派なのだ。やはり、日本維新の会、国民民主党は自由民主党と同様に選挙という国民運動で政界から去ってもらう以外にないのだ。
 つまり、本当に日本が今後とも平和であるためには、自由民主党が大政奉還して下野すること以外にない。日本の碩学蜷川新ならば令和の大政奉還という政変を「令和維新」と名付けたであろう。日本の与党及び野党は、日本の国権を回復してから憲法改正論争でもイデオロギー論争でもなんでも心行くまで論議を重ねていただきたい。国権を回復前に憲法を改正することで喜ぶのはアメリカであり、苦しむのは日本国民なのだ。

p.s.
むかし、レマルク作「西部戦線異状なし」という映画があった。そこに描かれているのは担任教師が若者に愛国心を鼓舞して扇動し戦争に送り込むものの、ついには戦死する。しかし、西部戦線で一兵卒が戦死することなどは「西部戦線異状なし」なのである。
日本政府は、声高に島嶼防衛などと言っているが、愚かで、間抜けな作戦である。昔の戦史を紐解くならば島嶼防衛を実施した島々マキン、タラオ、ペリユウ、グアム、サイパンが玉砕の島々であることを知るはずである。
以上(寄稿:近藤雄三)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「国連軍地位協定」と「BRICSヨハネスブルグ首脳会議」

2023-08-21 | 小日向白朗学会 情報

 2023年8月18日、キャンプデービットで行われた日米韓首脳会談が開かれた。終了後、日米韓首脳により共同記者会見が行われた。その様子は、2023年8月19日、NHK「日米韓首脳 共同記者会見」[i]で詳細を伝えている。特に岸田総理大臣の発言を注視してみると、会議の前評判とは違い、日米韓は「朝鮮戦争を終戦にさせない」と宣言した以外に目新しいものは見当たらない。それよりは、岸田政権が安全保障問題で苦悩しているのではないかと思わせる発言がある。
『……
岸田総理大臣は、……「今、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が危機にひんしている。ロシアによるウクライナ侵略により、国際社会は根幹が揺るがされている。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みは続き、北朝鮮による核・ミサイルの脅威はますます増大している」と指摘しました。
 その上で、「こうした状況において、日米韓3か国の戦略的連携の潜在性を開花させることは必然で、時代の要請でもある。われわれ3人は『日米韓パートナーシップの新時代』をひらいていく決意を示す。日米同盟と米韓同盟の連携を強化し、日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、今後とも日米韓3か国の戦略的連携の一層の強化に取り組んでいく」と述べました。
今後の日韓関係については、「日韓両国は国際社会の課題の対処に協力していくべき重要な隣国どうしで、ユン大統領との友情と信頼関係のもと、パートナーとして力を合わせて新しい時代を切り開いていきたい。安保や経済を含むさまざまな分野で前向きで具体的な取り組みが、すでにダイナミックに動いている。こうした取り組みをひとつひとつ積み上げることで、さらに関係を強化していきたい」と述べました。
日中関係については、「去年11月の首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら主張すべきことは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題では協力する建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築していくことが、私の政権の一貫した方針だ。こうした考えに基づいて、地域の安定に向け努力を続けていく」と述べました。
……』
 岸田は「日米同盟と米韓同盟の連携を強化し、日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる。」と日米韓の関係を強調している。しかし、この軍事体勢は「朝鮮戦争」を原因としてアメリカが日韓の指揮権を掌握したうえで締結した日米同盟と米韓同盟により成立している関係である。そのうえで岸田は「日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる」としているが、日韓には軍事同盟は存在しない。したがって日本は韓国の安全保障とは無関係で、新たに日韓が軍事同盟を結ばない限り、岸田総理が言う「あらたな高みに引き上げること」は不可能なのである。日本が朝鮮戦争に関係しているのは昭和29(1954)年2月19日に締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)」が存続しているからだけなのである。それも同協定「第二十四条」では、朝鮮戦争終戦ともに朝鮮と韓国からアメリカ軍が撤退することが決められている。したがって、韓国政府の事情とは無関係に「朝鮮戦争終結」が実現すると、韓国政府は北朝鮮と戦争状態を継続することは不可能なのである。
 韓国政府と日本政府は「朝鮮戦争終結による政権崩壊」という深淵を覗いてしまったことがある。それが2019年6月12日、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで「朝鮮戦争終結」を促進する合意文書に署名したときであった。
 しかし、韓国国民は、韓国政府が朝鮮戦争を継続できるのは日本と朝鮮派遣国連軍との間で締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」が存在しているためだということを知らない。そのため、わざわざ、尹錫悦大統領は、2023年8月15日、日本の植民地からの解放記念日「光復節」で「日本に置かれる国連軍の後方基地が北朝鮮の侵攻を遮断する最大の抑止要因だ」と述べたのである。韓国政府は日本の植民地から解放されたことを祝うのに、朝鮮戦争を継続するには欠くことのできない日本の後方支援があったことを認めたのだ。
 ところで、8月15日に尹錫悦大統領が69年も前に締結した国連軍地位協定の存在を認め、続いて、8月18日に日米韓首脳会議で朝鮮戦争継続を確認した理由はなんであるのか。
 それは国連軍地位協定が条約ではないことである。国連軍地位協定は時の政権与党自由党が取り決めたことである。その後、自由党は保守合同で自由民主党となって、自由党が締結した協定を引き継いでいる。したがって、政権与党である自由民主党が下野すれば、協定を締結した国々と協定の見直し、もしくは廃棄を協議することが可能となる。そして自由民主党が下野して国連軍地位協定が破棄される危険性があることを最も熟知しているのがアメリカである。そのため自由民主党が政権の座から降りることのないように、野党の分断工作を徹底的に続けてきた。その結果として、現在の日本政治は既に与党に入っている公明党に続いて国民民主党、日本維新の会が第二与党となること公言するに至っている。
 そのような自由民主党であるが、次期国政選挙で敗北して下野するのではないかと極度に心配を始めている。その原因の一つが、国連軍地位協定を見れば理解できる通り、日本の安全保障政策が「朝鮮戦争」を基準の設計されたものであることから時代の変化に対応できなくなっていることにある。さらには統一教会問題、311東日本大震災で明らかになった原子力政策の失敗、五公五民の高い税金、治山治水の失敗、防衛三文書で「仮想敵国をロシア、中国、北朝鮮」として莫大な防衛予算をむしり取ったものの、アメリカは「One China Policy」に回帰したことで仮想敵国リストから外れ、ロシアはウクライナを完膚なきまでに叩きのめしたことから、早晩、休戦となることでロシアを仮想敵国としおくことは日本も裁かれる立場となることから仮想敵国リストから削除する以外に方法はない等、難問が山積している。加えて、自民党所属議員は長期政権の驕りからくる慢心のため政策能力は限りなく低下していて、山積する矛盾を解決するための政策能力がない。したがって今後も自由民主党が政権を維持する可能性は極度に低下している。
 それに加えて、重大な外部要因が生まれてきた。それは国連軍地位協定を締結した国の中に、G7の枠組みと対立するBRICSの中心国となった国が出現していることである。それは南アフリカである。
その南アフリカで2023年8月22日にBRICSヨハネスブル首脳会議が開催される。
 同会議の議題につて開催主催国である南アフリカは会議のテーマが「BRICSとアフリカ」であると発表している[ii]。となると、そのBRICSヨハナスブルグ首脳会議の議題は、凡その予測がつく。それは2023年7月に開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」最終日に公表された宣言である。同会議宣言は、2023年7月29日、ロイター「ロシアとアフリカ、植民地主義による損害補償追求で合意 首脳宣言」」とする記事から確認することができる。
『……
[28日 ロイター] - ロシアとアフリカ諸国は、植民地主義で被った損害の補償を求め、文化財の返還を追求するために協力することに合意した。ロシア北西部サンクトペテルブルクで開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」で宣言を採択した。
ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された宣言によると、ロシアとアフリカ諸国は「アフリカの脱植民地化プロセスを完成させ、植民地化の過程で持ち去られた文化財の返還を含め、植民地政策の結果としてアフリカ諸国が被った経済的、人道的な損害の補償を求める」ことで合意した。
また「攻撃的ナショナリズム、ネオ・ナチズム、ネオ・ファシズム、アフロフォビア(アフリカ嫌悪症)、ルソフォビア(ロシア嫌悪症)」を含むあらゆる差別と不寛容に対抗することでも合意した
……』
 つまり、シリアやイラク問題だけでなく、BRICSヨハナスブルグ首脳会議においては、2022年3月に始まったウクライナ問題、そして、これらの問題を引き起こしてきたアメリカ、イギリス、フランスとNATOによる悪事が尽く暴露され弾劾される可能性がある。
 その一つとして、ニジェールのクーデターがある。2023年7月26日にクーデターが発生し、フランスが管理するウラン鉱山はフランス人が撤収したことから生産が停止した。これによりフランスやEUが使用する原子力燃料に深刻な影響を及ぼし始めている。これに反発したフランスは、軍事介入をちらつかせている。そもそも、ニジェールとフランスの関係であるが、18世紀にニジェールに黒人奴隷貿易のフランス商館が存在したころからである。もしも、ロシア・アフリカ首脳会議宣言の流れに乗ってBRICSヨハナスブルグ首脳会議でニジェール問題が取り上げられるとなると、その矛先はフランスだけに止まらずアメリカ、イギリス、フランスが世界各地でおこなってきた資源戦争すべてが問題となるであろう。その期間であるが18世紀から現代の新植民地主義にまで及ぶと云うことになる。
 ところで、今年の首脳会議はこれまでの首脳会議と異なる。それはBRICSが金本位制に移行するのではという観測もあることから、軍事力を背景とした口先介入とか経済制裁とは大いに様相が異なる。最近ではBRICSが金本位制に移行した場合のドルとの交換レートは1対55$ではないかという予測もあるくらいである。
 したがって、同首脳会議は、コペルニクス的な価値転換が起こる可能性があるのだ。そして、その議長国が、国連軍地位協定を締結し「朝鮮戦争の本質」を熟知する南アフリカなのである。
 幾ら感度の鈍い岸田政権であっても「有志国」の一つが、アメリカ、イギリス、NATOと対峙するBRICS議長国であることから心中穏やかであるはずはない。そのため日米韓は「朝鮮戦争という利権」を守るため安全保障上の関係を強化するといい、何ら意味のない、口先介入をキャンプデービットでおこなったものと考えられる。

 いよいよ明日からBRICSヨハナスブルグ首脳会議が開催される。筆者は固唾を飲んで会議の行方を注視する心算である。
以上(寄稿:近藤雄三)

[i] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230819/k10014167511000.html

[ii]日本経済新聞「BRICS首脳会議、テーマは「アフリカ」」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB081EO0Y3A800C2000000/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャンプデービッドで2023年8月18日に開催される日米韓首脳会議

2023-08-18 | 小日向白朗学会 情報
 2023年08月17日、読売新聞オンラインに「日米韓、ホットライン開設で合意の見通し」とする記事が掲載された。
『……
【ワシントン=田島大志】米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官のカート・キャンベル氏は16日、米国で18日に開かれる日米韓首脳会談で、3か国間のホットライン(専用電話)の開設に向けた取り組みについて合意する見通しだと明らかにした。
……
キャンベル氏は、日米韓が首脳や外相、安全保障高官レベルでの会談を定期化することでも一致する見通しを明らかにし、「将来にわたり3か国が連携を続ける野心的な取り組みだ」と強調した。台湾海峡やウクライナ情勢を巡っても意見交換するとしている。
……
「キャンプデービッドで重要な会談を開くという伝統に沿って、3か国協力の新時代を示す会談となる」と語った。
……』
 この読売新聞記事からは、2023年8月18日に日米間国首脳がキャンプ・デービットで「ホットライン(専用電話)の開設」について合意する見通しだとしている。三国でホットラインを共有することになったのは「台湾海峡やウクライナ情勢を巡っても意見交換する」とあることから「防衛三文書」で仮想敵国としたロシア、中国、北朝鮮情勢について話し合う必要がでてきたためのようだ。
日米韓国首脳会議に付いては、8月17日付け韓国中央日報で「韓日米、画期的な協力…「キャンプデービッド精神」採択検討」とする記事も配信されている。
『……
18日に米国キャンプデービッドで開催される韓日米首脳会談で各分野の3カ国協力を画期的に深める内容の「キャンプデービッド精神(Sprit of Camp David)」文書の採択を検討している。 関連事情に詳しい複数の情報筋によると、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とバイデン米大統領、岸田文雄首相は3カ国が共有する価値と協力目標などを盛り込む首脳会談の結果文書の一つとして「キャンプデービッド精神」を採択することを議論している。 韓国与党関係者は「今回の3カ国首脳会談では北核対応など伝統安全保障分野はもちろん、経済同盟と呼べるほど経済安全保障分野での協力もより一層強化されるはず」とし「太平洋とインド洋を行き来しながら幅広い分野で域内協力の画期的な深化があるだろう」と話した。「こうした脈絡で協力の精神と原則、未来の目指すところなどを明示したいくつかの文書の採択を検討中」としながらだ。 「キャンプデービッド精神」には韓半島(朝鮮半島)のほか、インド太平洋とグローバルイシューで3カ国間の協力基調が反映される可能性が高い。これは「キャンプデービッド原則(principle)」とは別の文書という。 金泰孝(キム・テヒョ)国家安全保障室第1次長も13日、「今回の首脳会談で、今後の韓日米3カ国の安全保障協力の核心骨格をつくり、これを制度化できるだろう」とし「今回の会議で3カ国首脳は韓日米協力の共同ビジョンと基本原則を話し合い、幅広い分野と各国で包括的かつ多層的な協力体系を構築する」と説明した。 政府筋は「首脳会談ではうまくいけば共同声明と共に幅広い分野、多様な性格の文書が発表されたりするが、今回も同じ脈絡で理解すればよい」と伝えた。 3カ国首脳は韓日米首脳会談の定例化をはじめ、北朝鮮の核の脅威に対応するために連合軍事訓練を定例化し、回数と規模を増やすことについて議論している。域内危機発生時の共同対応のための協議の義務化など3カ国協力の範囲と程度も拡張する計画だ。 キャンプデービッドは中東平和協定など歴史的な合意が生まれたところだ。文書名にキャンプデービッドを明示するのも、今回の3カ国首脳会談がインド太平洋域内安全保障の側面で大きな影響力を発揮できる「歴史的事件」という点を浮き彫りにするためとみられる。1959年にアイゼンハワー米大統領がソ連のニキータ・フルシチョフ共産党書記長をキャンプデービッドに招待して米ソ関係の改善を議論したが、当時、フルシチョフ書記長が友好的で格式に縛られない国家間の合意という意味で「キャンプデービッド精神」に言及したりした。
……』
 この記事から日米韓国首脳会議で如何なる内容が話し合われるかであるが「共有する価値と協力目標などを盛り込む」とある。その共有する価値であるが国家安全保障室第1次長は「今回の首脳会談で、今後の韓日米3カ国の安全保障協力の核心骨格をつくり、これを制度化できるだろう」という、つまり、北朝鮮を相手国とする朝鮮戦争体勢を維持するだけではなく、更に進んで「インド太平洋域内安全保障」まで拡大するという見通しを述べている。
 ここで日米間がつながる安全保障上の共通項は、当然ながら「朝鮮戦争」である。それと共により重要なことがある。それは自衛隊の指揮権はアメリカが握っているという事実と同様に、実は韓国軍の指揮権もアメリカが握っているのだ。つまり、アメリカは自衛隊と韓国軍をアメリカ軍と一体で運用することができる枠組みだということである。
尚、三国の首脳会議を考える際に(2023.08.16)『韓国尹錫悦政権が最も恐れる「朝鮮戦争終戦」』(クリックで遷移)も参照して頂きたい。

 ならば、キャンプデービッドで日米韓国首脳による会議とはアメリカ軍の最高司令官バイデン大統領が招集し、今後の「朝鮮戦争」と「インド太平洋域内安全保障」における共同運用方針を下令する会議ではなかろうか。また、いよいよ自衛隊を朝鮮半島で実戦に投入することになるのだろうか。それは自民党政権が、今後、益々、危険な橋を渡ることになるのではないか。等々、心配の種は尽きない。
 やはり、自民党政権を早期に大政奉還させる以外に日本の平和を守る道はない。
以上(近藤雄三)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

韓国尹錫悦政権が最も恐れる「朝鮮戦争終戦」

2023-08-16 | 小日向白朗学会 情報
 2023年8月15日、日本経済新聞から「韓国大統領、北朝鮮抑止に「日本の後方基地重要」」とする日本の安全保障を考えるうえで非常に重要な記事が配信された。
「……
【ソウル=甲原潤之介】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は15日の演説で、北朝鮮の韓国への侵攻を抑止するための日本の役割に言及した。日本に置かれる国連軍の後方基地が「北朝鮮の侵攻を遮断する最大の抑止要因だ」と強調し、日本との安全保障協力の重要性を訴えた。
韓国は15日を日本の植民地からの解放記念日と位置づけ「光復節」と呼ぶ。尹氏は独立運動を「自由民主主義国家をつくるための建国運動」と定義した。
……』
 そうである。この記事にあるように韓国政府は同国の安全保障の根本は「日本に置かれる国連軍の後方基地が北朝鮮の侵攻を遮断する最大の抑止要因」としたのは、昭和29(1954)年2月19日に日本と朝鮮派遣軍のうちオーストラリア,カナダ,フランス,イタリア,ニュージーランド,フィリピン,南アフリカ,タイ,トルコ,イギリス,アメリカと締結した「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)のことである。そして国連軍後方司令部は、平成19(2007)年11月2日にキャンプ座間から日本の国権である航空管制権が及ばない横田飛行場へ移転している。
 韓国政府は、日本がこの協定を朝鮮派遣国と締結しているころからこそ、1951年9月に日本がサンフランシスコ平和条約を締結後においても朝鮮国連軍が日本国に駐留できたことで、北朝鮮軍と対峙することが可能となっていることを公式に認めたのだ。その国連軍地位協定には「第二十四条で「すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない」という規定がある。したがって「朝鮮戦争終戦」になると、麻生太郎がいう「有志国」は解体し、朝鮮半島と日本からアメリカを主体とした国連派遣軍は完全に撤退することになる。その時、韓国政府は朝鮮半島に取り残されたうえ後方支援基地も解体することから北朝鮮軍と内戦を続けることは事実上不可能なのだ。したがって現在の韓国政府が存続できるのは、一重に「朝鮮戦争を休戦」のままとし日本が有志国と締結した国連軍地位協定を継続させる以外に方法はないのだ。
 2018(平成30年)年6月12日にシンガポールでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長及び国務委員会委員長による史上初の首脳会談が行われ「朝鮮戦争終戦に向けた協議を開始すると宣言した」ということが、いかに衝撃的な出来事であったのか察しが付くと云うものである。
 ところで、アメリカ軍撤退が朝鮮半島から撤退することに関して、韓国政府が慌てふためいた事例が他にもある。
 1972(昭和47)年2月27日、リチャード・ニクソン大統領(当時)は訪中の際にアメリカ合衆国と中華人民共和国との間に上海コミュニケを発表し「one china policy」を確認した。ニクソンは、この方針に従いアメリカ軍を削減することを韓国政府に通達した。この通告に、朴正煕大統領は、国家存続にかかわる重大事であったことから強い危機感を抱いた。そこで韓国政府は、朝鮮半島に駐留する残存勢力を維持することと、米軍撤退の代償とされた韓国軍近代化援助を確実なものとするためアメリカ国内で議会工作に乗り出すことにした。この時、アメリカ政界工作の一翼を担ったのが統一教会教祖「文鮮明」であった。 
 1976(昭和51)年に韓国政府によるアメリカ政界工作が発覚して政治スキャンダルとなってしまった。アメリカ合衆国下院は、事件の真相を調査するためにフレーザー委員会を設置し調査をおこない、纏めたものが「フレーザー委員会報告書」なのである。この報告書の中で、統一教会の犯罪性が暴露されることになった。

 この回の終わりに、第二次世界大戦後において「極東のデタント」を俯瞰してみる。すると、実に興味深い共通点があることが見えてくる。
51年前の1972(昭和47)年2月27日、ニクソン大統領は「上海コミュニケ」という形で「極東のデタント」を」実現し、それから48年後の2018(平成30年)年6月12日にトランプ大統領は金正恩と「朝鮮戦争終結」で合意した。
共に、シンボルマークが象のアメリカ共和党である。そして、二人の大統領のその後であるが、ニクソン大統領は「ウォーターゲート事件」で辞任に追い込まれ、トランプ大統領は、民主主義を覆そうとしたとして「2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件」で訴追されている。
 また両事件ともに、CIAと司法が一体となって有無を云わさずに弾劾裁判にかけられているのである。その訴追場所が「コロンビア特別区連邦地方裁判所」(United States District Court for the District of Columbia)である。
どうもアメリカ政治では、デタント政策を実施する共和党大統領は、その政治生命を奪われるという運命にあるようだ。
(尚、朝鮮派遣軍については、
また、航空管制権については、
そしてアメリカ軍の削減に付いては、
で報告済みである。是非、併せて参照願いたい。)(クリックで遷移)。
P.S.
小日向白朗の遺品として残されている写真の雑感を述べておく。
筆者が以前に小日向白朗の写真を眺めていたときのことである。ふと目に留めた小日向白郎が晩年に撮影した写真には、襟に「象」のバッチが付いていたことを思いだしてしまった。やはり小日向白朗がキッシンジャーの要請で渡米したのはアメリカ共和党が推し進める「極東のデタント」に協力することだったのだと感心したものである。
 さらに、他の写真を見ているうちに「アレ」と思う不思議な写真があった。
それは、小日向白朗が若かりし頃「中国阿片」を一手に取り仕切っている時の記念写真であった。小日向は自信満々で写っていた。
 一瞬、小首をかしげてしまった。
 たしか、小日向白朗は、終戦後、着の身着のままで中国から帰国したはずである。
 筆者は、何の疑いもなく念のためと、写真の裏側を確認した。そこには小日向白朗の文字で「F氏からの寄贈」と書き込まれていた。そして思ったことは、小日向白朗に対してもニクソン同様「極東のデタント」に協力する者としてCIAの監視の眼が光っていたのだなと、これも亦得心した次第であった。
以上(寄稿:近藤雄三)




 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由民主党外交政策が大失策となった原因

2023-08-14 | 小日向白朗学会 情報
  1. 初めに
 日本の政権与党自由民主党は、昭和30(1955)年11月15日、日本の保守政党であった自由党と日本民主党に対して、アメリカCIAの工作員であった緒方竹虎が保守合同を働きかけたことにより結党された政党である。
 自由民主党の結党目的は、朝鮮戦争が終結するまでアメリカ軍が日本に安定して駐留できるようにすること、自衛隊をアメリカ軍の指揮権で第二次朝鮮戦争及び台湾海峡危機の際に海外派兵が可能となるように憲法を改正することであった。これは様々な研究で明らかにされている紛れもない事実である。また、自由民主党がアメリカ軍に指揮権を売渡したことについては、筆者も「行政協定からみた1955年の保守合同 ―自民党結党とは行政協定を順守して秘密を守ることー」(クリックで遷移)で報告してきた。
 そのような日本政府であるが、これまでとは一線を画す重要な決定をした。それは、2022年12月16日、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有などを盛り込んだ新たな防衛三文書(外交・安全保障の最上位の指針である「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定めた「防衛力整備計画」)を決定したことである。これにより防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に増やすことになった。そして「国家安全保障戦略」のなかで、日本の仮想敵国がロシア、中国、北朝鮮の三国であることを宣言してしまった。
 それまでのロシアとは2019年6月にプーチン大統領が訪日するなどして平和条約締結交渉をおこなっていた関係である。また、2021年10月、岸田総理とプーチン大統領は2018年のシンガポール合意を含め、これまでの両国間の諸合意を踏まえて平和条約交渉に取り組んでいくことを確認もしている。
また中国とは、昭和47(1972)年9月に日中共同声明で「中華人民共和国政府(共産党政権)が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と発表して、平和友好条約を締結した関係である。ところが「国家安全保障戦略」では、この2国を敵にしてしまうという大失策をおこしてしまった。さらに悪いことに自由民主党は、防衛三文書を根拠に巨額の防衛利権をせしめてしまったのだ。

 
2、トランプ大統領と金正恩による米朝合意で自由民主党消滅の危機
 では、何故に日本政府が2022年11月に日本の国家安全保障を急遽変更したのかに付いて説明する。その原因は第45代アメリカ合衆国大統領にドナルド・ジョン・トランプ( Donald John Trump)が就任したからである。トランプが大統領に就任したこと世界中の安全保障の枠組みが綻びを見せ始めたのである。
2016(平成28)年7月21日、米共和党大統領候補となったドナルド・トランプは、アメリカを「法と秩序の国」にして「安全を取り戻す」と強調した。演説の中の「法と秩序」は、1968(昭和43)年にニクソンが大統領候補受諾演説から引用したものであった。つまり、トランプ外交の中心は世界各地に派兵しているアメリカ軍撤収が中心政策となることは大統領選挙前から十分に予想されていることであった。そして、大方の予想を裏切りトランプは大統領選挙を制した。2017年1月20日に第45代アメリカ大統領としてドナルド・ジョン・トランプ‘(Donald John Trump)が就任した。就任後のトランプは、ドイツ、アフガニスタン、ソマリアそして朝鮮戦争終結に向けて動き出した。
アフガニスタン撤退
2001年10月、米中枢同時テロの報復として米英軍がアフガンを空爆し、米軍が駐留を開始した。同年12月にタリバン政権を崩壊させたが内戦は収まらず治安維持のため継続的な派兵を余儀なくされて「米史上最も長い戦争」となっていた。2020年2月にトランプがタリバンと和平合意し撤収することになった。その結果、20年間の対テロ戦の戦費は8兆ドル(約1100兆円)、米兵の犠牲者は約7000人に上った戦争は終了することになった。
ドイツ撤退
2020年7月29日、アメリカはドイツに駐留している米軍を約1万2000人削減する計画を発表した。ヨーロッパにおける「戦略的な」再配置としていた。削減する米兵のうち、約6400人はアメリカに帰国し、その他は、イタリアやベルギーなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国に移すことになった。トランプ米大統領はこの動きについて、NATOの防衛支出目標をドイツが達成していないことを受けたものだと述べている。しかし米議会では、ロシアを大胆化させるとして、反対が広がっていた。そして出てきたのがロシアゲート事件であった。
朝鮮撤退
2018(平成30年)年6月12日にシンガポールでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長及び国務委員会委員長による史上初の首脳会談が行われた。会談後出された共同声明は次のとおりである。
『……
共同声明
アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプと朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、史上初の首脳会談を2018年6月12日、シンガポールで開催した。
トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係や朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制を構築するため、包括的かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した。
新たな米朝関係の構築は朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると信じると共に、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進すると認識し、トランプ大統領と金正恩委員長は次のように宣言する。
  1. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。
  2. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。
  3. 2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
  4. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮戦争の捕虜・行方不明兵の遺骨回収、既に身元が判明している遺体の帰還に取り組む。
トランプ大統領と金正恩委員長は「史上初の米朝首脳会談が、両国の数十年にわたる緊張と敵対を乗り越える新たな未来を築く重要な出来事であった」と認識し、この共同声明の内容を「完全かつ迅速に履行すること」を約束した。
アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は米朝首脳会談の成果を履行するため、「マイク・ポンペオ国務長官と朝鮮民主主義人民共和国の高官の交渉を続けて可能な限り迅速に履行する」と約束した。
トランプ大統領と金正恩委員長は「新たな米朝関係の発展と、朝鮮半島と世界の平和、繁栄、安全のために協力すること」を約束した。
……』
 アメリカと北朝鮮による共同声明で「朝鮮戦争を終結させる」ことで合意したのだ。
 朝鮮戦争は、昭和28(1953)年7月27日に、38度線近辺の板門店で北朝鮮、中国軍両軍と国連軍の間で休戦協定が結ばれたものの、70年を経過した現在も朝鮮戦争は終結しておらず休戦のままなのである。(此の詳細は「令和4年日本国国防方針」批判(第五回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)でも報告している)。

3、「朝鮮戦争終結」に慌てた自由民主党
 このトランプの動きに焦ったのが自由民主党である。自由民主党は、朝鮮戦争が続くことを理由に、アメリカ軍に自衛隊指揮権を移譲しアメリカ軍駐留を認めることで多くの利権(原子力も含む)を得るとともに長期政権を約束されてきた。
 それを可能にしてきた協定がある。それは、昭和29(1954)年2月19日に朝鮮国連軍が我が国に滞在する間の権利と義務その他の地位及び待遇を規定する「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)である。同協定の中にアメリカ軍が駐留する期限については定めがないものの、撤収条件が決められていた。
『……
第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊か朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。
……』
つまり、「朝鮮戦争」が終戦となるとアメリカ軍は、駐留する根拠が失われるのである。(此の詳細は「麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者」(クリックで遷移)で報告している)。

 繰り返しになるが、朝鮮戦争が終戦となると、「アメリカが駐留すること」を保証することが自由民主党政権の役割であるため、自由民主党の存続意義がなくなるのである。アメリカ軍が撤退すると同時に、自由民主党がこれまでに築きあげた防衛利権は消滅することになる。例えば辺野古基地も横田空軍基地も不要になるのだ。日本としてはアメリカに日本の国権を差し出すことで成り立っていた安全保障政策であるのにもかかわらず、突然、「もう不要であると」と云われたことに等しい。これで自由民主党は「アノミー」(規則あるいは規則を課す者が正統性を失った不安定な状態)に陥ってしまったのだ。
降ってわいたようなトランプと金正恩による終戦に向けた協議が進む中で、自由民主党は新たな安全保障政策を策定する必要が生まれることになった。そのため自民党政権は、「トランプのデタント」という悩みを抱える同じNATOに接近するととともに、イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI:Royal United Services Institute for Defence and Security Studies)から安全保障に関する助言を受けるようになった。
 これに付いては「令和4年日本国国防方針」批判(第四回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)で紹介した。
そこで問題になったのは2020年のアメリカ大統領選挙であった。トランプが勝利して再選されればNATO解体、朝鮮戦争終戦が現実のものとなる。大方の予想は「トランプ圧勝」であった。ところが大番狂わせが生じた。民主党候補バイデンが、大統領に当選してしまった。大統領選挙後のアメリカは、バイデンの当選を巡り大混乱となった。その際に「ドミニオン」(dominion:支配権)という投票集計機が問題になったりもした。
 しかし、日本の場合、バイデンが大統領になったことで自由民主党は、消えかけた蝋燭の炎が再び勢いを取り戻した。蝋燭が消えないだけでも幸運なところに、更に、幸運な出来事が起きることになった。それが、2022年2月24日、ロシアはウクライナへ軍事侵攻を開始であった。そしてロシアがウクライナに侵攻したことを理由として作成されたのが防衛三文書であった。その際に、日本政府は日本の安全保障について十分に検討することもなく「トランプ・デタント」に苦しんできたNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)の主張をそのまま受けいれたものになってしまった。その際、中国を仮想敵国するために利用したのが「国共内戦による台湾侵攻」と、台湾が尖閣列島領有を主張していることを国民には伏せておきながら、同島を防衛する自衛隊を台湾有事に参戦させる筋道をつけてしまった。(尚、RUSIと日本の関係は「令和4年日本国国防方針」批判(第四回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)を参照願いたい)。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に連動するかの様にペロシが台湾を訪問したことで、台湾有事がいよいよ真実味をおびてきた。ところが2023年2月16日に、ブリンケン国務長官が訪中して「One China Policy」を追認することになった。
 これにより防衛三文書で決で決めた仮想敵国が消滅してしまうという大失態を仕出かすこととなったのだ。そのため次の国会では、根拠のない防衛三文書で莫大な予算を獲得したことの処理を求められることになったしまった。(この件「王毅外相訪米で防衛三文書を根拠とした日本の外交と安全保障は窮地に陥る」(クリックで遷移)で報告済みである)。

4、韓国が日本に友好的になった理由
 2022年03月9日に行われた韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦が当選した。就任以降、尹錫悦大統領は、それまでの文在寅が行ってきた反日政策を改め日本に融和する姿勢を見せている。しかし前述「麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者」でも触れた麻生太郎という人物を通して日韓関係を見た場合に違った側面が見えてくる。
 麻生太郎であるが、1990年の衆議院選挙に福岡2区から立候補して初当選した。そのときに麻生太郎は文鮮明に「誓約書」を提出し選挙協力を受けていたことが勝共新聞『勝共推進議員名簿』に暴露されている。麻生太郎は統一教会系の国会議員なのである。それに麻生太郎は、公共水道を民間に売り渡すことを宣言した人物でもある。また麻生太郎は日韓協力委員会」の会長でもある。
怪しい経歴をもつ麻生が、防衛三文書を閣議決定する直前、2022年11月2日に韓国を訪問している。麻生太郎が訪韓した目的は、防衛三文書でロシア、中国、北朝鮮を仮想敵国とする政策に尹錫悦政権を従わせるためであった。その際に、打ち合わせが行われたであろう重要案件がある。それは1978年6月22日に発効し50年間効力をもつ「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(南部協定)に関係したものと考えられる。同協定は、2028年6月21日までは有効があるが、満了する3年前の2025年に日本が終了の意思を通告することができるという規定が付いたものである。
 この南部協定であるが日本の国益にとって大きな問題がある。一つは南部協定の共同開発区域が完全に日韓中間線以南の日本側大陸棚に設定されていること、もう一つは中国が自国大陸棚に対する侵犯であると抗議をしているものである。そのため日本が協定を破棄した場合に直ちに大陸棚境界を巡って日中韓3国の激しい了解問題が展開されると予想されている事案なのである。
この南部協定を締結した経緯であるが、同協定は、岸信介が後ろで糸を引く民間の「日韓協力委員会」が取りまとめた案を、外務省に提言して実現させたものである。つまり、岸信介は、ニクソンのデタント政策によって、冷戦で築き上げた共産主義封じ込めラインが崩壊してしまうようなことがおきないため、台湾と韓国の指導者にたいして、つまり蒋介石に尖閣列島領有を薦め、韓国政府には南部大陸棚を進呈したものなのである。
 このころの韓国の巷では「……(共同開発地域での)石油のもうけの三%は政治献金されるのだ、日韓両国の有力政財界人、そういった者を含めて三%の権益というか利益というものが配分される……」[1]という噂が飛びかうほど日韓の悪質な利権関係とみられていた。
 それにも拘らず岸と矢次が共同開発地域にこだわった理由は、領海内の開発で業者から3%の裏金を受取ったら贈収賄事件になるが、共同開発地域には日本の主権が及ばないことを利用して資金浄化をしてしまおうとしたことにある。国家主権を売って黒い資金を手に入れた、その金を選挙につぎ込んで政権維持および拡大を狙う、この手法を編み出したのが岸信介と矢次一夫で、その後継者が、安倍晋三であり、麻生太郎なのだ。
この「共同開発区域」の原型となったのが、岸信介と矢次一夫のコンビによる「蒋介石に尖閣列島領有を薦めた尖閣列島問題」だったのである。岸と矢次が東シナ海の領海問題を複雑化させて利権確保したことが尾を引き、現代では国家安全保障の問題となってしまったのだ。
以上のことから麻生太郎による2022年03月9日の訪韓は、2025年6月20日まで、南部協定の取り扱いに関して両国の利害を調整しておく必要があったということで、出かけたのだ。この時に麻生太郎と尹錫悦大統領との間で了解が得られたことから、2023年3月6日に輸出管理に関する日韓間の懸案事項について二国間の協議を再開することになった。
 韓国の対日政策が融和的となったわけではなく、日本領にある大陸棚利権をもう50年延長して韓国の特権とするためなのだ。(尚、南部協定付いては「統一教会に誓約書を提出した麻生太郎と「日韓協力委員会」」(クリックで遷移)に詳しく紹介しておいた)。

 自由民主党は、アメリカに国権を売渡すことを党是として戦後70年間の長きにわたり政権の座を維持してきた。ところが、トランプ大統領が就任すると、それまでアメリカが日本に強く求めていた国権を売渡したこととは相反する朝鮮戦争終戦を言い出した。これに慌てた自由民主党は、急遽、新な仮想敵国もしくは紛争地を求めることにした。そこで策定した紛争地が尖閣列島であった。そもそも、尖閣列島領有問題は、岸信介の売国行為から始まったもので「自由民主党の恥部」であったことから、過去の歴史を隠蔽する絶好の機会と映った。そして纏めたものが防衛三文書であった。しかし、ブリンケンの訪中で「One China Policy」に回帰することになって防衛三文書の根拠は失われた。
自由民主党の解党する時期が間近に迫つてきた。
以上(寄稿:近藤雄三)

[1] 「040 松浦利尚」『第71回国会 衆議院 決算委員会 第27号 昭和48年10月9日』。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者

2023-08-10 | 小日向白朗学会 情報
1.ペロシが演じた台湾危機の後始末
 2023年8月8日付け毎日新聞で「麻生太郎副総裁、台湾で講演 中国念頭に「戦う覚悟」を強調」とする記事が配信された。
『……
台湾を訪問中の自民党の麻生太郎副総裁は8日、台北で開かれた「ケタガラン・フォーラム」で講演し、台湾海峡の平和と安定を維持するためには強い抑止力を機能させる必要があり、そのためには「戦う覚悟」が必要だとの認識を示した。
 麻生氏は軍事的圧力を強める中国を念頭に、台湾情勢について「平時から非常時に変わりつつある」と言及。「我々にとって今、最も大事なことは、台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことだ」「今ほど日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか」とし、「戦う覚悟です」と語った。
……』
 自由民主党副総裁が、台湾有事に日本は「米国をはじめとした有志国」と戦う覚悟だと言っているのだ。日本国憲法前文には「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民と協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあるにも拘らず政権与党の副総裁が堂々と台湾有事に日本は中国と戦争をすると云い放っているのだ。
 麻生副総理が訪台した理由であるが、アメリカが米中間には「one china policy」が存在し、この方針にバイデン政権も従うことを認めたことから、台湾有事にアメリカは介入しないことになったからである。つまり、ロシアによるウクライナ侵攻を口実に「台湾有事と尖閣列島防衛」を組み合わせて日本と台湾を対中国戦に投入しようとしたアメリカの戦略が頓挫したからである。
これに付いては「王毅外相訪米で防衛三文書を根拠とした日本の外交と安全保障は窮地に陥る」(クリックで遷移)で報告済みである。
 そして、その目的であるが、麻生は「金をかけて防衛力を持っているだけではだめ。いざとなったら使う。台湾海峡の安定のために使う明確な意思を相手に伝えて、それが抑止力になる」と述べていることが物語っている。この強気な発言のなかに「抑止」とのべていることが重要だ。つまり、日本と台湾が「台湾有事と尖閣列島防衛」という虚言で莫大な防衛予算を確保した根拠がなくなったことで、今後、湧き起る国民の批判をかわしながら、手に入れた防衛予算を手放さないため継続して軍拡を進めることが抑止になるということなのである。それで麻生は、蔡英文が任期満了後の次期大統領も民進党候補が就任して軍事費拡大の政策を継続させてくれることを望んだのだ。
 麻生は、アメリカが「one china policy」に回帰したことで台湾有事はないとしているからこそ「戦う覚悟です」と大口をたたいたのだ。それと、次の国会では自由民主党が虚偽の世界情勢で国民を騙して莫大な予算を獲得したことに対する追及が始まるが、日本の政局に付いては公明、維新の会、国民民主を第二与党とすることに成功していることから楽観視しているためなのである。
 流石、日本の主権をアメリカに売渡した政党の副総理である。台湾が「尖閣列島を自国領土だと現在も主張している」ことには口を拭い「自衛隊は尖閣列島防衛を口実に台湾有事に介入する」と断言しているのだ。ひどい政治家である。
 ここで一つ注意が必要なのは、台湾による尖閣列島領有については台湾内部でも意見が割れているという点である。その代表が李登輝なのである。このことは2015年8月3日、日経産業新聞『馬総統「尖閣は台湾領」 投書で李登輝氏を強く批判』で確認できる。
『……
【台北=共同】台湾の馬英九総統は、3日付の台湾紙、中国時報に掲載された投書で、沖縄県・尖閣諸島(台湾名・釣魚台)の領有権をあらためて主張した。李登輝元総統が先月、訪日中に都内で行った記者会見で尖閣を日本領だと述べたとして、台湾の憲法に違反していると強く批判した。
馬総統は、尖閣は歴史的にも台湾固有の領土だと強調し、李氏の発言は史実に反しており台湾の人々の感情を大きく傷つけたと指摘。李氏に対して発言の撤回と謝罪を要求した。
……』
 馬英九総統の出身母体は国民党である、その馬英九がこれもまた国民党を基盤に総統となった李登輝の発言を批判しているという複雑な話である。この記事を読み解くには、岸信介が「尖閣列島を領有するように蒋介石に勧めた」という事実から考えると理解ができる。つまり、岸信介は尖閣列島の領有権を国民党の蒋介石に進呈した。そのため蒋介石が領有を宣言し、石油開発契約をメジャーと締結してしたが、日本で批判が広まり、慌てた蔣介石は石油開発を断念したものの領有は取り下げなかった。それで李登輝が「尖閣列島は日本のものである」と発言したのだ。国民党は、日本が台湾統治を終了すると同時に日本の資産を引き継いでいだ。その資産リストに尖閣列島も含まれているということなのである。馬英九が李登輝を非難したのは、国民党の資産リストから「尖閣列島」を放棄することはないというのが真意なのである。
 台湾の二重規範はあきらかである。このような口車に乗せられて自衛隊を死地に向かわせるのは愚かなことである。日本は中国と国交正常化をおこなって「one china policy」を認めたのであるから、国民党と中国共産党の国内問題は勝手にやってもらえば良いことである。日本国民は、国民党と自由民主党の悪巧みに乗せられることはない。
 可哀そうなのは国際政治に翻弄される台湾国民であり、ウクライナ国民である。


2.台湾有事の有志国
 麻生太郎という人物は、日本を切り売りすることに生涯を捧げた政治家と考えられる。ところで、ここは、いきり立つのをしばらく我慢して、麻生副総裁の喋ったことをもう少し詳細に吟味してみると実に奥深い意味が隠されていることに気が付く。
 麻生が、台湾有事にアメリカと日本、そして「有志国」が戦うと言っていっていることである。しかし、日本が軍事同盟を締結した国はアメリカ以外に同盟を約した国はない。であるにも拘らず有志国と戦うと断言している。その有志国とはどの国を指すのかといえば、その詳細を明らかにする協定がある。それは昭和29(1954)年2月19日に朝鮮国連軍が我が国に滞在する間の権利と義務その他の地位及び待遇を規定する「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を締結している。その一部を抜粋すると次のようになる。
『……
日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定
昭和二九年二月一九日東京で署名
昭和二九年五月二一日受諾について内閣決定
昭和二九年六月一日受諾書寄託
昭和二九年六月一日公布(条約第一二号)
昭和二九年六月一一日効力発生
……
 千九百五十一年九月八日に日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・アチソンとの間に交換された公文において,同日サン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の効力発生と同時に,日本国は,国際連合が国際連合憲章に従つてとるいかなる行動についてもあらゆる援助を国際連合に与えることを要求する同憲章第二条に掲げる義務を引き受けることになると述べられているので,
 前記の公文において,日本国政府は,平和条約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には,当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容赦することを確認したので,
 国際連合の軍隊は,すべての国及び当局に対して国際連合の行動にあらゆる援助を与えるよう要請した,千九百五十年六月二十五日,六月二十七日及び七月七日の安全保障理事会決議並びに千九百五十一年二月一日の総会決議に従う行動に今なお引き続き従事しているので,また,
 日本国は,朝鮮における国際連合の行動に参加している軍隊に対し施設及び役務の形で重要な援助を従来与えてきており,且つ,現に与えているので,
 よつて,これらの軍隊が日本国の領域から撤退するまでの間日本国におけるこれらの軍隊の地位及び日本国においてこれらの軍隊に与えられるべき待遇を定めるため,この協定の当事者は,次のとおり協定した。
   第一条
この協定に別段の定がある場合を除く外、この協定の適用上次の定義を採択する。
(a)「国際連合の諸決議」とは、で九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決礒並びに千九百五十一年二月一日の国際連合総会決議をいう。
(b)「この協定の当事者」とは、日本国政府.統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府及び、「国際連合の諸決議に従って朝鮮に軍隊を派遣している国の政府」として、この協定に受諾を条件としないで署名し、「受諾を条件として」署名の上これを受諾し、又はこれに加入するすべての政府をいう。
(c)「派遺国」とは、国際連合の諧決議に従って朝鮮に軍隊を派遣しており又は将来派遣する国で、その政府が、「国際連合の路決議に従って朝鮮に軍隊を派遣している国の政府」としてこの協定の当事者であるものをいう。
(d)「国際連合の軍隊」とは。派遣国の陸軍、海軍又は空軍で国際連合の渚決議に従う行動に従事するために派遣されているものをいう。
……
    第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊か朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は、すべての国際連合の軍隊の日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれかの日を合意することができる。
……
統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府のために
 J・グレイアム・パースンズ(署名)
 国際連合の諸決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣している国の諸政府
カナダ政府のために
 R・W・メイヒュー(署名)
   受諾を条件として
ニュー・ジーランド政府のために
 R・M・ミラー(署名)
   受諾を条件として
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府のために
 エスラー・デニング(署名)
南アフリカ連邦政府のために
 エスラー・デニング(署名)
   受諾を条件として
オーストラリア連邦政府のために
 E・ロナルド・ウォーカー(署名)
フィリピン共和国政府のために
 ホセ・F・イムペリアル(署名)
フランス共和国政府のために
 ダニエル・レヴィ(署名)
   千九百五十四年四月十二日
イタリア政府のために
 B・L・ダイェータ(署名)
   千九百五十四年五月十九日
……』
 同協定を締結国したのはアメリカ合衆国(米国)、カナダ、ニュー・ジーランド、イギリス、南アフリカ連邦、オーストラリア、フィリピン、フランス、イタリアの9カ国であった。この締結国の中心は、イギリスとイギリス連邦(Commonwealth of Nations)に加盟するカナダ、ニュー・ジーランド、南アフリカ連邦、オーストラリアである。ちなみにイギリス連邦には、イギリスの旧植民地であった56国が加盟していて国際連合(United Nations)内で最大の派閥を形成している。尚、同連邦の中には「北極の氷が解けると、国が沈没する」と騒いでいたツバル(Tuvalu)があることは象徴的である。
 また、イギリス連邦と日本の関係を考えるならば注目すべき事案が最近おきている。
 令和4(2022)年10月25日に、防衛省は、警察予備隊創設70年を記念し、同年11月6日に相模湾で国際観艦式を開催することを決めた。参加国はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、インドネシア(オーストラリアと安全保障に関する協定を締結)、マレーシア、ニュー・ジーランド、シンガポール、タイ(朝鮮戦争参戦国)、インド、パキスタン、ブルネイ、韓国(当事国)の13か国であった。この参加国をみて直ちに思いつくことは、太字の参加国がイギリス連邦諸国であることと、そして朝鮮戦争参戦国なのである。
これが麻生のいう有志国なのである。
 日本はアメリカ以外に安全保障条約を締結した国はない。しかし、朝鮮戦争に参戦した国、若しくは将来参戦する国の地位を定めた「国連軍地位協定」では、朝鮮国連軍統一司令部、つまりアメリカ軍の下で、『……平和条約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には,当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容赦する……』という定めがあることからイギリス連邦諸国が観艦式に参加することができるのだ。そればかりかイギリス連邦諸国はアメリカ軍の指揮のものと自衛隊と日常的に戦闘訓練を行うことも可能となっている。
国際観艦式の参加国、いわゆる「麻生の言う有志国」から「国連軍地位協定」が現在も効力を有する協定であることが確認できた。
ところで「国連軍地位協定」と「日米安保条約」の関係については、昭和35(1960)年1月19日にワシントンで「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」から確認することができる。
『……
アメリカ合衆国国務長官
クリスチャン・A・ハーター
日本国総理大臣 岸信介閣下


書簡をもつて啓上いたします。本長官は、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約、同日日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・アチソンとの間に行なわれた交換公文、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定及び本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約に言及する光栄を有します。次のことが、本国政府の了解であります。
1 前記の交換公文は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。
……
本長官は、閣下が、前各号に述べられた本国政府の了解が貴国政府の了解でもあること及びこの了解が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された相互協力及び安全保障条約の効力の発生の日から実施されるものであることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百六十年一月十九日
アメリカ合衆国国務長官
クリスチャン・A・ハーター
……』
これは日米安全保障条約がサン・フランシスコ講和会議に締結の安全保障条約、吉田茂アチソン交換公文及び「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)が引続き効力を有することの確認を求めたものである。
 此の確認文書からもわかる通り、「国連軍地位協定」は「日米安保条約」の基礎となっている重要な協定なのである。
ならば同協定の終了期限は何時であろうか。
 それは朝鮮戦争の終戦までなのである。
 同協定24条に「……すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。……」と朝鮮戦争が終戦となって朝鮮国連軍が朝鮮から撤退完了したのち90日以内にアメリカ軍は日本から撤退を完了させなければならないのだ。朝鮮戦争が終結すると在日アメリカ軍が日本国内に駐留する根拠がなくなるのだ。在米アメリカ軍が日本国内から撤退すれば「行政協定(日米地位協定)」も不要になるのだ。
昭和27年に時の総理大臣吉田茂は、アメリカに自衛隊(当時は保安隊)の指揮権を秘密裏に売渡してしまった。それから70有余年、自由民主党が政権の座にあったのは自衛隊指揮権をアメリカ軍に売渡しと事の代償であった。当時から、アメリカの戦略は朝鮮有事、台湾有事で自衛隊をアメリカ軍の一部として自由に利用することであったが、その際に障害となるのが昭和22年に施行した「日本国憲法」であった。そのため自由民主党は憲法を改正することを究極の課題としてきた。つまり自由民主党が行っていることは、日本の国体である憲法を改正して、国防と云う美名のものとで自衛隊の装備を充実させ使い勝手の良い自衛隊に仕上げてアメリカ軍に提供しようとしていることであり、まさにこのことを目的とする政党なのだ。
 そして日本の国防権をアメリカに移譲したことを国民に隠蔽したうえに、法律を捻じ曲げ自ら進んで治外法権となった見返りの褒美として防衛利権を貪って延命を続けてきたのが自由民主党なのである。そのような自由民主党のレゾンデートル(raison d'etre)が消滅するとき、それが「朝鮮戦争終戦」ということになる。




 自由民主党が進めてきた日本の安全保障に関する法体系は、朝鮮戦争が終戦となると法の根拠がすべて消滅するという大きな弱点を抱えている。この点を留意したうえで自由民主党を政権の座から引きずり下ろす選挙という国民運動を進めることが大切だと考える。


 尚、「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)に付いては「令和4年日本国国防方針」批判(第五回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)で詳しく述べておいた。また、参考までに「アジアのためにアメリカに直言・・・富士ジャーナル7.'71の22Pから」「再録・・・富士ジャーナル1971年7月号から小日向白朗関連記事~ユダヤ資本・台湾解決・アメリカへの提言」も合わせ読んでいただければ幸いである。
以上(寄稿:近藤雄三)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

王毅外相訪米で防衛三文書を根拠とした日本の外交と安全保障は窮地に陥る

2023-08-07 | 小日向白朗学会 情報
 2023年8月2日、NHKニュースで『米国務省 中国王毅外相を正式に招待と明らかに 対話継続を強調』とする記事が配信された。
『……
アメリカ国務省のミラー報道官は1日の記者会見で、前日に首都ワシントンで行われた米中両政府の外交当局の高官の会談の中で、中国の王毅外相を正式にアメリカに招待したと明らかにしました。
  中国の外相のアメリカ訪問については、ことし6月、ブリンケン国務長官が北京を訪れた際、前の外相の秦剛氏がワシントンを訪問することで一致していました。しかし先月、秦氏が外相を解任され、王毅氏が外相に任命されたことからアメリカ側は、後任の王外相を改めて正式に招待した形です。
ミラー報道官は訪問の時期については調整中だとしたうえで「中国政府が招待を受け入れることを期待している」と述べました。また、ミラー報道官は「中国と協力しなければならない課題は、懸案と同じくらい重要だと考えているため、引き続きともに取り組んでいくことにしている」と述べ、中国側との対話を継続する考えを強調しました。
バイデン大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談の実現に意欲を示していて、アメリカ政府としては王外相のアメリカ訪問で首脳会談に向けた調整も進めたい考えです。
……』
王毅外相が訪米する時期に付いては未確定であるがアメリカが招待した理由は中国政府に「バイデン政権の火遊び」を詫びることである。昨年来の米中の動きについては『第15回BRICSヨハネスバーグ首脳会議の意味』(クリックで遷移)で詳しく述べておいたが、ここでの経緯を整理すると次のようになる。
  1. 2022年8月2日、アメリカのナンシー・ペロシ(Nancy Patricia Pelosi)下院議長がロシアによるウクライナ侵攻を口実に台湾を訪問し台湾有事を演出して極東問題に介入した。
ペロシ訪台で極東情勢を流動化したことに相応して日本政府はNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI:The Office of Distinguished Ambassador to Japan Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, UK)の協力で「2022年 防衛三文書」を作成した。これに相応して大規模な自衛隊の兵備拡充を行うことになり、その中で日本の敵はロシア、中国、北朝鮮と決定した。そして出てきたのが「台湾海峡の平和と安定は、国際社会の平和と安定と繁栄に不可欠」である。これは、中国が台湾に侵攻を開始した場合に、日本は国際社会の平和と安定という大義名分で自衛隊を台湾有事に参戦させることにした。

 2、2023年6月18日から19日にかけて、アントニー・J・ブリンケン(Antony John Blinken)国務長官は訪中して習近平国家主席、中国共産党中央外交弁公室の王毅主任、秦剛国務委員兼外相と会談した。その結果、ブリンケンは、しぶしぶ、米中間には「one china policy」が存在し、この方針にバイデン政権も従うことを認めた。これで、バイデン政権は台湾有事があったとしても何ら関わらないことを中国に再確認させられてしまった。
 3、ブリンケンが中国を去った翌日、2023年6月20日、バイデン大統領は習氏を「独裁者」と呼び、中国政府が厳重に抗議する事態となってしまった[i]。
 4、2023年7月6日、怒れる中国政府を鎮めるため、今度はイエレン財務長官を謝罪特使として中国に派遣することにした。北京に到着したイエレンは、何立峰副首相と面会時に3度もお辞儀をしただけではなく、李強首相のときも「へつらう」様な笑顔を向けていることが様々なメディアに報じられてしまった。イエレン訪中の目的は、中国がBRICSの主要国であるとともに、アメリカ国債を大量に保持していることから、米中関係が破城してアメリカ国債を売却するという事態を避けるためであった。そのためイエレンも米中関係が「one china policy」を継続することを約束する以外になかった。
 5、イエレンが北京を訪れた直後の2023年7月18日、こんどはキッシンジャーが中国を訪問し、李尚福国防相と会談をおこなった[ii]。そしてキッシンジャーは「米中は誤解をなくし、平和的に共存し、対立を避けるべきだ。米国も中国も、相手を敵対視する余裕はないことは、歴史と実践が絶えず証明してきた」と述べた。
この意味するところは、1972年2月27日に、ニクソン大統領、キッシンジャー補佐官、周恩来首相により纏めた上海コミュニケ(Shanghai Communiqué)について、アメリカは今後も堅持すると取り纏めたキッシンジャーがわざわざ訪中して確約したというところにある。したがってバイデン政権が進めていた台湾問題を利用した中国包囲政策は完全に放棄されたのだ。
 6、2023年8月1日、アメリカは、期日は未定ではあるが王毅外相をアメリカに招待することにした。本来ならばバイデン大統領が北京に出かけるべきであろうがが、ウクライナで危険な火遊びをする当事者であり、且つ、大統領の息子がウクライナや中国で汚れたビジネスに手を染めていることが議会で明らかになり窮地に追い込まれていることから窮余の一策として中国外相を招待することになった。
以上の経緯から明なことは、現在のアメリカと中国の外交関係において中国がアドバンテージを握ったということだ。この点を踏まえて中国外交が今後如何なる対応をするのかを考えてみる。
 中国政府は、バイデン政権による王毅外相招待に応ずるであろう。なぜならば、王毅外相はアメリカ国内でアメリカと中国の外交関係の大原則が「one china policy」であることを大々的に内外に宣言することができるからである。それと共に、王毅外相は、中国が仲介しているロシアとウクライナ問題に関して、バイデン政権がウクライナに莫大な戦費を投入したことで長期化してしまった対ロシア戦を直ちに停止するよう要求することになる。
この理由は、中国がBRICSの中心国であるとともに2023年8月22日に開催するヨハナスブルグ首脳会議に出席する主要国である。そのヨハナスブルグ首脳会議の前哨戦として2023年7月27日におこなわれたロシア・アフリカ首脳会議にアフリカから49カ国(エジプト、リビア、エリトリア、エチオピア、ウガンダ、ブルンジ、コモロ、モザンビーク、南アフリカ、ジンバブエ、コンゴ共和国、カメルーン、ブルキナファソ、マリ、ニジェール等)が参加し、そのうち17カ国は首脳が出席して以下のような宣言を採択している[iii]。
『……
[28日 ロイター] - ロシアとアフリカ諸国は、植民地主義で被った損害の補償を求め、文化財の返還を追求するために協力することに合意した。ロシア北西部サンクトペテルブルクで開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」で宣言を採択した。
ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された宣言によると、ロシアとアフリカ諸国は「アフリカの脱植民地化プロセスを完成させ、植民地化の過程で持ち去られた文化財の返還を含め、植民地政策の結果としてアフリカ諸国が被った経済的、人道的な損害の補償を求める」ことで合意した。
また「攻撃的ナショナリズム、ネオ・ナチズム、ネオ・ファシズム、アフロフォビア(アフリカ嫌悪症)、ルソフォビア(ロシア嫌悪症)」を含むあらゆる差別と不寛容に対抗することでも合意した。
……』
つまりロシア・アフリカ会議で宣言した内容は、ヨハナスブルク首脳会議に引き継がれることは確実となる。同宣言に加わったリビアであるが、過去に自国通貨で石油取引をおこなおうとしたがアメリカ、イギリス、NATOにより国家体制を破壊されられた経緯がある。そのためBRICS会議でアメリカ、イギリス、NATOはリビア同様の陣容でウクライナ戦争を継続していることから、この点に批判が集中することは目に見えている。これに会議の議題として金本位制があるならば、これは現在のG7による世界体制の問題を超越し、アフリカの豊富な資源だけでなく人間まで資源として売買した資本主義の恥部「奴隷制度」まで及ぶことになる。既にロシア・アフリカ会議の共同宣言ではアフロフォビアに対抗し損害倍書を求めることを確認している。したがって、BRICS会議ではG7の存在、引いてはその経済体制までその本質を問われることになる。リビアが体制転覆させられるころ石油の決済方法はドル建て原油取引、ペトロダラー(Petrodollar)であったが、その中心国サウジアラビアが2023年6月1日にケープタウンで開催されたBRICS会議に参加しており決済方法の変更を見据え動き出している。サウジアラビアにしてみれば、信用に裏打ちされたドルよりも、BRICSの金(gold)と等価の通貨に興味を抱くのは当たり前である。
 BRICS会議に世界情勢が大きく変化を予測させる兆候は、2023年7月26日、ニジェールでクーデターが発生し、欧米の支持を受け、且つイスラム教スンナ派を基盤とするバズム(Mohamed Bazoum)大統領を追放したことに見ることができる。ニジェールは、世界第7位のウラン産出国で、産出量の4分の1が欧州に、とりわけ旧宗主国フランスに輸出されていた。また、EUは2021年にウラン供給の24%をニジェールが占めていたとされている[iv]。この影響はCO2を削減しクリーンなエネルギーとして原子力発電に移行することを目指す環境ビジネスを次の経済の主役にすることを目論んでいた西側経済を足元から揺るがす大問題となる。
 そのため西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は2023年7月30日、ニジェールのバズム大統領を復帰させるために「力の行使」も辞さないと反発を強めた。この西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の声明に対して、隣国マリとブルキナファソは2023年7月31日、共同声明を発表し「ニジェールに対する軍事介入は、ブルキナファソとマリへの宣戦布告に等しい」と徹底的に対抗することを宣言している。これまでならばアメリカ、イギリス、NATOはスンナ派とシーア派との対立を利用してバズム大統領の復帰を求めるという理由で政治介入を行ってきたが、今回の事案に関して、2023年3月10日に中国の仲介によりサウジアラビアとイランが国交正常化していることから宗教対立を利用して政治介入の糸口をつかむことはできないし、できたとしてもウクライナ戦争で手詰まりのNATOはフランスからの要請があってもニジェールに派遣する軍隊を持ち合わせていない。従って西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のニジェールに対する恫喝は、単なる犬の遠吠えなのだ。

 さて、王毅外相の訪米に話を戻す。アメリカから訪米を求められた王毅外相であるが、しばらくはBRICSヨハナスブルグ首脳会議に尽力し、ヨハナスブルク首脳会議の共同宣言の結果をまって訪米を検討することになる。BRICS会議の結果を踏まえて訪米する王毅外相がアメリカに提示する停戦案はどのようなものになるかと云えば、それは「one china policy」を策定した当事者キッシンジャーが2022年5月23日に開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で述べたものとなるはずである[v]。
『……
【ロンドン=工藤彩香】ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の発言が、ロシアに対するウクライナの領土割譲を容認したと受け止められ、波紋を呼んでいる。ウクライナは猛反発し、ロシアは発言を利用してウクライナに要求を受け入れるよう迫っている。
キッシンジャー元米国務長官(ロイター)
 キッシンジャー氏は23日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン演説し、「理想的には、(ロシアとウクライナの)境界線を戦争前の状態に戻す必要がある」と述べた。今後2か月以内に和平交渉を進め、停戦を実現するべきだとも主張した。この発言が、2月のロシア軍侵攻前を指し、2014年にロシアが併合したクリミア半島や親露派が支配する東部ドンバス地方の領土割譲をウクライナに提案したと受け止められた。
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日のビデオ演説で、「ロシアへの領土割譲を助言するような人は、そこに住むウクライナ人のことを考えていない」と反論。ロイター通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は26日、キッシンジャー氏の発言を受け、「ウクライナがロシアの要求を満たすことを期待する」と述べた。ロシアはウクライナに対し、併合したクリミア半島の主権承認や、親露派支配地域の独立国家としての承認を要求している。
……』
 つまり王毅外相は、ウクライナとアメリカ政府に「2014年にロシアが併合したクリミア半島や親露派が支配する東部ドンバス地方の領土割譲」を求めることになる。バイデン政権は「one china policy」を再確認したのであるから応じる以外にないであろうが、ここで問題はバイデン政権である。
 バイデン政権は「one china policy」については認めたものの、全面的に膝を屈することはしていない。その表れが、主要な技術分野で中国に対する投資で、アメリカの資本や専門知識が中国の軍事的近代化や米国家安全保障を脅かすような技術開発の加速につながることを阻止するためとして大統領報を発令する見通しであることが報じられている[vi]。
 またバイデン政権はウクライナにF16戦闘機を供与するための準備としてパイロット養成を開始している。バイデン政権がウクライナ軍にF16戦闘機を供与したい本当の理由は、NATOの核のプラットホーム、いわゆる、搬送手段が航空機なためである。F16は、決して防空用ではない攻撃用なのだ。
これらから見てバイデン政権は、単純に中国の意向を受け入れるつもりはないことは明らかである。もしも、受け入れるとなるとバイデンは次期大統領選挙で再選する可能性はなくなる。
その行方を占うことができるのはBRICSヨハナスブルグ首脳会議の後ということになるが、本質的な解決はアメリカ大統領選挙後ということになる。

 BRICSヨハナスブルグ首脳会議を境としてアメリカ、イギリス、NATOが進めてきた安全保障政策と通貨体制が大きく動き出すなかで、日本政府は安全保障政策で決定的な失敗を起した。それは、防衛三文書で、日本の仮想敵国を中国、北朝鮮、ロシアとしたことである。
ところで日本と中国の関係は1972年9月25日に時の内閣総理大臣田中角栄が中国を訪問し同年9月29日に「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(日中共同声明)に調印したことで国交を正常化した。この共同声明の本質は「one china policy」である。そのため日本は台湾と国交を断絶することになった。それから50年、現在の岸田内閣は「one china policy」を放棄して仮想敵国中国が「台湾進攻」と共に「尖閣諸島に上陸」する場合を想定した安全保障政策を決めてしまった。ゼレンスキーがミンスク合意を破棄するとしたことで国民的な人気者となり政権の座に付いたことと同じことをやっているのが岸田内閣である。日本政府は、中国政府と「one china policy」を中心に据えて日中国交正常化をおこなっていることから例え中国が台湾に進攻しようと中国の内政問題であることから基本的には無関係である。ところが日本と中国の間には尖閣列島領有問題で大きな意見の隔たりがあるように思えるが、その原因は全て自由民主党政権にある。その根本は、岸信介が、蒋介石に尖閣諸島近海で石油の埋蔵が確認されていることから台湾が領有宣言をおこない台湾が独自に採掘することを勧めたことを受けて蒋介石が尖閣列島の領有宣言をおこなったことにある。
 この事実に関しては「第63回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第14号 昭和45年9月7日」に詳細な議事録が残されている。
『……
008 石川次夫
○石川委員 ……尖閣列島は無人島でありますだけにいろいろ国際法上の解釈のむずかしい面があろうかと思うのでありますけれども、最近新聞の報ずるところによりますと、国府の外交部長が立法院の秘密会で、尖閣列島の五つの島を国府に帰属するとはっきり言っておるという報道がなされておるわけであります。それから台湾の水産試験所所属の船が尖閣列島に青天白日旗を立てた。これは公の船であります、民間の船でないわけであります。これはたいへん重要な問題ではないかと思うのであります。それから台湾の有力紙記者四人と国府の水兵の一行が同島を訪れて探検記を新聞に掲載をしたというような相次いだニュースというのは、尖閣列島があたかも台湾政府に所属しておるかのごとき印象を強く与える
……』
この岸信介による売国行動は、その直後から国会で大きく取り上げられ大問題となった。
台湾による問題行動の詳細は「第63回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第3号 昭和45年8月10日」で明らかになっている。
『……
033 川村清一
○川村清一君 ……尖閣列島周辺の海域を含む東シナ海の大陸だなについて、国民政府はアメリカのガルフ・オイルの子会社であるパシフィック・ガルフ社に対し石油鉱区権を与えたと八月一日付の某新聞は報道しております。このことは、尖閣列島は当然日本の領土であるとするわが国の立場とまっこうから対立し、外務省としても、非公式ながら、国民政府の一方的な行為は国際法違反であるとの見解を明らかにしている
……』
 慌てた政府は、時の内閣総理大臣であり岸信介の実弟である佐藤栄作が尖閣列島は日本領土であるという声明を発表して事態の収拾を図った。その結果、蒋介石は、開発中止を決定したものの尖閣諸島領有宣言に付いては取消すことなく現代まで至っている。
 そして、日本政府は台湾が行った尖閣諸島領有宣言について、このような事実があることを公表しないまま「台湾有事」と「尖閣列島問題」を組み合わせて危機を煽り莫大な予算を獲得してしまったのである。台湾政府は、台湾有事に日本の武力支援を希望しているが「盗人猛々しい」とはこのことである。
それとともに日本国内では、2022年09月07日付けで幸福実現党が「台湾を見捨てない 今こそ、国防強化で日本を守り抜く」[vii]など日本が台湾防衛に寄与する政策にすべきだとする論議まで出てくる始末である。
 つまり自衛隊の指揮権はアメリカ軍にあって、そのアメリカ軍は台湾有事に参戦することになるが、その際に自衛隊を台湾防衛部隊として使用することを決めている。それを正当化して日本国民を納得させるために台湾有事と国民的な関心事である尖閣諸島問題をリンクさせて自衛隊が台湾防衛に参戦した場合に国民の目を欺くための仕掛けを仕組んでおいたのだ。
その結果、台湾有事にアメリカ軍の指揮のもと自衛隊が死に物狂いで自国領土尖閣列島の防衛をしたとしても、実は日本のものではなく台湾領土だったということになる。

 日本政府は、偽の安全保障情報で国民を騙して憲法を改正させ自衛隊の海外派兵を可能とさせたうえで国民を戦争に駆り立て、そのうえ莫大な予算を欲しい儘にしようとしている。このような日本政府つまり自由民主党は、ただで済むわけはない。それとともに国民は、政府自由民主党に擦り寄り防衛利権のおこぼれに与ろうとする公明党、国民民主党、日本維新の会そして連合(日本労働組合総連合会)の悪巧みを決して許さないであろう。
 野党の中に「政策の一致」が政治活動の原点だとしている声があるが、これはつまり、公明党、国民民主党、日本維新の会、連合(連合は「自民党政権の売国政策に一致している」と自ら白状している)は一蓮托生ということであり、自由民主党同様に選挙により打倒する対象であるということだ。
以上(寄稿:近藤雄三)


[i] 2023年6月21日、ロイター「米大統領、習主席を「独裁者」と表現 中国反発

」https://jp.reuters.com/article/biden-xi-idJPKBN2Y701S

[ii] 2023年7月18日、ロイター「再送中国国防相、キッシンジャー氏と会談 「米は正当な戦略判断を」

https://jp.reuters.com/article/china-usa-defence-idJPKBN2YY0OA(2023年7月26日閲覧)。

[iii] 2023年7月29日、ロイター「ロシアとアフリカ、植民地主義による損害補償追求で合意 首脳宣言」https://jp.reuters.com/article/russia-africa-forum-compensation-idJPKBN2Z81SR

[iv] 2023年7月31日、産経新聞「ニジェール EU最大の原発ウラン供給元 フランス採掘にクーデターが暗雲」(2023年8月06日閲覧)

[v] 2022/05/28 、読売新聞『キッシンジャー氏の発言、ロシアへの領土割譲「容認」と受け止められ波紋…ウクライナは猛反発』。

[vi] 2023年8月5日、ロイター『バイデン氏、対中投資制限へ大統領令 来週初めにも=関係筋』

[vii] 「幸福実現党NEWS」https://info.hr-party.jp/2022/12942/(2023.07.25閲覧)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする