日本は2022年末に作成した「防衛三文書」のより新たな安全保障へと舵を切った。それから僅か1年、米中間では、アメリカが「一つの中国」政策に回帰することで、関係改善を加速度的に進め南シナ海及び東シナ海の海底資源について話し合うまで進展した。その流れは、日本の安全保障の枠組みである「有志国」にまで及ぶことになった。その国は2022年1月6日に「円滑化協定」を締結したオーストラリアである。そのオーストラリアが、中国との関係改善に動き出したのである。
2023年11月6日、日本経済新聞は「中国・オーストラリア首脳が貿易正常化確認 双方に打算」を配信した。
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【北京=田島如生、シドニー=今橋瑠璃華】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は6日午後、北京でオーストラリアのアルバニージー首相と会談した。中国による豪州への貿易制限の緩和と正常化を確認した。関係修復の背景には対中包囲網を弱めたい中国と、支持率低下を打開したい豪州の打算がある。
豪州が中国に接近すればインド太平洋での対中抑止力が弱まりかねない。日米は警戒を強めている。
豪首相府によると、習氏は会談の冒頭で「中豪関係は現在、改善と発展の正しい道を歩んでいる」と述べた。アルバニージー氏は「両国の強固な関係は将来にわたって有益だ」と語った。会談後の記者会見で、習氏を豪州に招待したと明らかにした。
中豪貿易が主な議題になった。中国は豪州産の牛肉やロブスターに高関税などの輸入制限をかけている。アルバニージー氏はこうした貿易制裁は「全面解除が両国の利益になる」と強調した。
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中国が21年に加盟を申請した環太平洋経済連携協定(TPP)も議論した。
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アルバニージー氏は記者会見で、習氏が加盟を希望すると発言したと明らかにした。ただ、中国の交渉入りに関しては「(加盟国の)全会一致が原則だ」と話すにとどめた。
安全保障分野では台湾海峡の安定が話題になった。豪州側は現状維持の必要性を訴え、中国による武力統一をけん制した。中国が領有権を主張する南シナ海の情勢も話し合い、アルバニージー氏は会談後「前向きな協議ができた」と振り返った。
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台湾を訪問した麻生太郎副総裁は、2023年8月8日、「我々にとって今、最も大事なことは、台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことだ……今ほど日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている……(日本は有志国と共に台湾有事を)戦う覚悟です」とまで語っていた。その有志国の一つであるオーストラリアが中国と関係改善に動き出したのだ。
ところで、有志国については、これも幾度も書いてきたことであるが、昭和29年にアメリカ、カナダ、ニュー・ジーランド、イギリス、南アフリカ連邦、オーストラリア、フィリピン、フランス、イタリアの9カ国と締結した「国連軍地位協定」を見る必要がある。そのうちイギリス連邦(Commonwealth of Nations)に加盟する国はカナダ、ニュー・ジーランド、南アフリカ連邦、オーストラリアなのである。つまりオーストラリアが中国と関係改善に動き出したということは、イギリス連邦諸国も同調する可能性が生まれてきたということになる。
イギリスも、中国との関係改善に動き出す可能性も生まれてきたのだ。したがって「豪州が中国に接近すればインド太平洋での対中抑止力が弱まりかねない。」となり「有志国」は崩壊することになる。記事ではこのよう情勢の変化について「日米は警戒を強めている」としているが、既に、アメリカは中国と和解済みであることから、心配しているのは日本だけなのである。
そもそも日本政府が策定した新たな安全保障政策は、MI6元長官がトップを務めるイギリス王立統合国防安全保障問題研究所(Royal United Services Institute for Defence and Security Studies、略称RUSI)とNATOの協力のものとで策定したものである。
散々に日本を煽っておいて、旗色が悪いとすぐに逃げ出す。
それが三枚舌イギリスの本質なのだ。
これほどに世界情勢が変質する理由は、ロシアがウクライナに侵攻したことで、天然ガス価格が高騰したことで、コストのかかる海底資源もコストが見合いうことになった。それで、今度は、海底資源の領有問題が急浮上することになった。それがガザ沖天然ガスであり、南シナ海及び東シナ海の海底資源へと採掘権の争奪なのである。
日本政府が考える現在の安全保障政策としては、日本と有志国フィリピンで、中国軍と全面対決する以外になく、その勝敗は決まっている。これは日本政府の妄想以外の何物でもないのだ。
岸田政権は窮地に陥っているのだ。
日本政府は、防衛三文書を破棄しなければ「中国との関係改善」はあり得ない。その間に、日本周辺の海底資源は、日本とは無関係に、中国と旧有志国で分割されてしまうのだ。そして日本外交の愚かさを実感するのは、2023年11月15日から始まるAPEC首脳会議で認知機能に問題のあるバイデン大統領と習近平国家主席がトップ会談を行う中で、岸田首相は、唯、ニヤニヤと、眺めている以外にない。
尚、米中間に付いては下記のスレッドを参照願いたい。
・(2023.11.06)『米中は海洋問題に関する協議を開催 -「島嶼部で塹壕を掘っている暇はないぞ!」
・(2023.11.04)『バイデン大統領の贈収賄事件 -贈賄側CEFC( 中国華信能源有限公司)とはどのような会社か-』
・(2023.11.02)『RT「トランプ大統領、NATOからの米国撤退を計画」!? -再び朝鮮戦争終戦が持上る-』
・(2023.10.29)『王毅外相とブリンケン国務長官と再度会談 -アメリカは中国にイランへ働きかけ要請-』
・(2023.10.28)『王毅外相とバイデン大統領の会談 -アメリカは「一つの中国」政策に回帰した-』
・(2023.10.27)『王毅外相とブリンケン国務長官会談』
・(2023.10.25)『王毅外相訪米!日本政府の安全保障政策は破綻した -島嶼防衛などという無駄、無理、無能な戦術-』
・(2023.10.05)『台湾有事を煽った自由民主党外交政策の大失態 -日本の宗主国アメリカは中国と和解済み-』
・(2023.08.07)『王毅外相訪米で防衛三文書を根拠とした日本の外交と安全保障は窮地に陥る』
・(2023.09.21)『台湾有事にアメリカ軍は参戦しない!? -どうする自由民主党!-』
・(2023.08.14)『自由民主党外交政策が大失策となった原因』
・(2023.08.10)『麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者』
・(2023.09.23)『中国が日本産水産物を禁輸にしたのは日本が中国を敵国としたから!』
・(2023.06.22)『上海コミュニケ』
以上(寄稿:近藤雄三)
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