小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

高橋洋一氏『日米合同委員会出席者は端牌』論に付いて ―家産官僚制が日本を亡ぼす―

2024-01-26 | 小日向白朗学会 情報
 現代日本政治の根本的な問題は、自由民主党が国家主権をアメリカに売渡し、自分たちの保身と利権獲得のために政治を行ってきたことである。
 そして政党である自由民主党が70年の長きに渡り傍若無人に振舞えたのは、利権を利用して選挙民を纏めることができたからである。加えて自民党を支える官僚組織があったからである。しかし、その挙動はあまり知られていない。その実態を考えるうえで大いに参考になるYouTube動画がある。それが2022年07月29日 、髙橋洋一チャンネルで配信した『537回 日米合同委員会で全てが決まってる?は都市伝説!』[i]である。
 タイトルにもあるように同動画は「日米同盟」を運用するため設けられた「日米合同委員会」の実態につて述べている。高橋洋一氏は、経済学者であり、且つ財務省官僚の経歴を持っていて、現在では財務省が日本の財政は「国債発行により財政破綻」と公言していることに、日本政府の財務諸表を用いて財務省の主張は虚言であり「日本の破産確率は1%以下」であると財務省の虚言を厳しく批判している学者である。
 その「日米合同委員会」であるが、その組織は、日本側が法務省、農林水産省、防衛省、外務省、財務省、アメリカ側が在日米大使館公便、在日米軍司令部第五部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海兵隊基地司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長により構成されている。高橋洋一氏は財務官僚当時、この合同委員会に財務官僚として参加したことがあるというのである。その時の高橋氏の感想として「日米合同委員会」に出席する参加省庁の顔ぶれは「価値が低く、切り捨てても(やめても)特に影響がなく、都合が悪くなったら、真っ先に切り捨てるべきと判断される」いわゆる麻雀用語で「端牌」と揶揄される人物が出席しているとしている。そのため高橋氏は、同委員会で国策に関わる重要な議題を審議し決めることはないと断言している。そして重大な問題はもっと上部で決定すると述べているのだ。
 この証言は重大である。
 現代日本を統治する「日米合同委員会」の出席者が、単なる端牌であるならば、アメリカ側の出席者も現地司令官レベルとなることから、重要な問題を討議するための会議ではないことは明らかである。したがって「日米合同委員会」という組織は「日米同盟」の象徴的なものだということになる。
高橋氏の「日米合同委員会」論でふと頭をよぎった問題がある。それは、日本政府が行おうとしている政策に圧力を掛け、挙句のはてには、政権交代迄追い込んだ事件が鳩山由紀夫内閣で起きている。それは「六五海里」問題である。それは、平成二八年二月二九日、初鹿明博が衆議院に提出した『普天間移設問題に関して鳩山元総理への説明のため作成された文書に関する質問主意書』にその概要を知ることができる。
『……
普天間移設問題に関して鳩山元総理への説明のため作成された文書に関する質問主意書

 
 鳩山由紀夫元総理は、本年二月四日に行われた「鳩山元総理が明かす『辺野古新基地』の真相」と題した講演会で、普天間飛行場の県外移設に関して、平成二十二年四月十九日に、当時の外務省の担当者から「普天間移設問題に関する米側からの説明」との題名で、「極秘」というスタンプのついた文書で説明を受けていたことを明らかにしています。
 この文書は平成二十二年四月十九日付けで、冒頭、「在京米大で行われた標記米側説明の概要は以下のとおり」と記載され、米側がウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側が須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席者として明記されています。
 本文には、普天間飛行場を徳之島へ移設することが難しい理由が記されていますが、その中に、徳之島までの距離が遠く、「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として米軍のマニュアルに明記されている「六十五海里(約百二十キロメートル)」を大きく超えているとの記載があります。
  上記の点を踏まえて、以下、政府に質問します。
一 この文書(平成二十二年四月十九日付け、「普天間移設問題に関する米側からの説明」)は存在するのか。また、政府文書として確認したのか。
二 平成二十二年四月十九日に、米側からウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側から須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席し、協議を行ったのは事実か。
 三 「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として「六十五海里」という基準が、米国のマニュアルに明記されているのは事実か。
 右質問する。
……』
 同質問趣意書の中で名指しされた外務省と防衛省官僚は、鳩山内閣が進めるアメリカ軍を沖縄県外に移転するのは「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として「六五海里」とするマニュアルが存在するため不可能であるとアメリカ軍から言い渡されたというのだ。その後、アメリカ軍にそのようなマニュアルは存在しないことが明らかになっている。つまり、当時、鳩総理大臣に説明した官僚は、虚偽の資料で政策を転換させられたということになる。その後、「六五海里」問題に関係した官僚は「日米安全保障条約課日米地位協定室長」、「北米局日米安全保障条約課長」、「内閣官房内閣参事官〔国家安全保障局〕」、「内閣総理大臣秘書官(安倍晋三内閣総理大臣)」に就任して大出世している。中には「故安倍晋三国葬葬儀実行幹事会幹事」まで務めた人物もいる。
 当時の安全保障関係政府高官はアメリカ軍と打ち合わせた場所が「在京米大」としていることからテンプル大学JAPAN(Temple University Japan)であろうか。しかし、外務省にとって最高機密であるアメリカ軍との交渉をわざわざ在京の大学構内で行う必要があるのだろうかと考えると甚だ胡散臭いと言わざるをえない。ところでテンプル大学日本校のHPを見ていて実に興味深いニュースが掲載されている[ii]
『……
米国商務副長官、内閣広報官、TUJにて講演、学生にとって貴重な学びの機会にテンプル大学ジャパンキャンパス(東京都世田谷区/学長:マシュー・ウィルソン、以下TUJ)は、2023年9月26日・27日の両日、内閣広報官および米国商務副長官を招き、TUJの在学生・卒業生、教職員ら大学関係者を対象とした講演を開催しました。両日とも、参加者にとって、地域の安全保障や世界貿易、サイバーセキュリティ、日米外交関係など、重要な事項についての見識を深める貴重な機会となりました。
……
■四方敬之(しかた・のりゆき)内閣広報官による講演(9月26日)
四方内閣広報官は、満席の参加者を前に講演を行い、対米関係やインド太平洋地域への関与についての岸田政権の政策、日本の安全保障やグローバルヘルス(国際保健)問題、経済成長、イノベーション、テクノロジーへのアプローチなどについて見解を述べました。また、日米同盟の重要性および東アジア・インド太平洋地域の安定の重要性を説明し、今年5月に行われたG7広島サミットにおける進展についても触れました。
……
■ドン・グレイブス米国商務省副長官による講演(9月27日)
翌27日には、訪日中の米商務省副長官が来校しました。商務省ナンバー2の高官であるグレイブス氏は、日本・韓国におけるサイバーセキュリティ・ビジネス開発ミッションのため米国企業15社を率いてアジア歴訪中でした。副長官は政策についてスピーチし、サイバーセキュリティの重要性と、それが世界の繁栄と安全保障に与える影響について述べました。さらに、日米貿易関係や商務省の優先事項について、また8月にキャンプ・デービッドで行われた日米韓首脳会談後の新たな三国間協力態勢についても貴重な知見を共有しました。
……
近年の主な講演者としては、ラーム・エマニュエル駐日米国大使(2023年2月)、サンジャイ・クマール・ヴァルマ駐日インド大使(2022年11月)、アルギマンタス・ミセヴィシウス駐日リトアニア公使参事官(2022年3月)、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使(2022年2月)が挙げられます。また、2022年5月の卒業式では、基調講演者として河野太郎衆議院議員(現デジタル大臣)をお迎えしました。
……』
 つまり「六五海里」問題は、テンプル大学が行う幾多のイベントを口実に、米側がウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側が須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席者した会合でアメリカから日本に伝達されていたと考えられる。それを暗示するかのように、2023年9月27日に行われたドン・グレイブス米国商務省副長官の講演内容は、二〇二三年にキャンプ・デービットで行われた日米韓首脳会談で合意した内容を、具体的に国内政治に反映すべき内容となっている。
 やはり、高橋洋一氏がいう「日米合同委員会」に出席する端牌は、国策に関わる問題に結論を出すようなことはあり得ないと断言していたことは正しい。したがって「日米合同委員会」には上部構造が存在して、それがテンプル大で行われる講演などを利用して、日本政府にアメリカ政府の意思を伝えていたとみて間違いはないであろう。そもそも鳩山内閣を葬った「六五海里」問題は、普天間から辺野古に海兵隊用に航空母艦に着艦訓練ができる滑走路を整備したいがために持ち出されたものなのである。そのアメリカ海兵隊は近い将来には解散することも俎上に上がっているうえに、運用中の航空母艦を保持していないし、今後も、運用するも予定はない。つまり、辺野古に航空母艦着艦訓練用の滑走路を必要としているのは日本政府なのである。
 鳩山内閣を葬った「六五海里」問題とは、外務省にとって都合の悪い内閣に対して、存在しないマニュアルを根拠に作話をして、内閣総理大臣に間違った情報をつたえていたのである。つまり、外務省は、安全保障という独自の省庁利権があって、その利権を鳩山内閣が破壊しようとしていたことから、アメリカ軍の威光を利用して議会制民主主義で選ばれた総理大臣を葬り去ったである。
 これは「虎の威を借る狐」の諺通りの話なのである。
 それと同様に、財務省が森友学園へ国有地売却 をめぐって決裁文書改竄をおこなった事件や、「財務省」「防衛省」「外務省」が連携して「防衛三文書」を企画し、自前の有識者会議を開催して体裁を取り繕い、閣議決定だけで莫大な防衛予算をせしめたことなど、「財務省」「防衛省」「外務省」等々、これに類する話は枚挙にいとまない。

 嘗て、日本の碩学、小室直樹博士は、『これでも国家と呼べるのか―万死に値する大蔵・外務官僚の罪』や「日本経済長期低迷の主因は「家産官僚制」「前期的資本」にあり」(月刊ダイヤモンド2001年2月3日) で日本の官僚は家産官僚制(patrimonial bureaucracy)であって依法官僚制(legal bureaucracy)ではないと厳しく批判していた。具体的にはウイキペディアにつぎの様に書かれている。
『……
家産制における官僚は、臣民に対して何ら義務を負うものではなく、その職務は官僚側からの恩恵としてみなされていた。このため、臣民は官僚に対して職務行為に対する謝礼(役得・礼銭)を行うのが当然であって、これらが賄賂とみなされることはなかった。
……』
 これが、日本を70年長きに渡り支配してきた自由民主党が長期政権を可能としたのが家産官僚制による「国民には奉仕しない」官僚たちだったのである。
その代表が日本国権を売り飛ばした吉田茂であり、岸信介だということになる。そして日本は、官僚が経済を計画し指導する体質を引きずったままの日本経済を持続させ、このままでは壊滅すると語っていた。その原因が家産官僚制なのである。まさに小室博士による日本社会に対する警告は、まさに正鵠を射たものなのである。

 自由民主党は、内外に様々な問題を抱えていることから遅かれ早かれ解体されることであろう。ただし、そのときに、特に外務省、財務省そして経済産業省の家産官僚を排除しなければ、自由民主党が戦後70年に渡りおこなった悪政と同様の国内政治が続くことになる。
そのためには、家産官僚を解体する方法を研究しておく必要がある。強大な権力を握る家産官僚群を解体することは「蟷螂之斧」にも似た無謀なことの様にも思えるが、実は日本の近代史を研究するならば難しいことではない。
例えば、終戦直後、岸信介が椎名悦三郎に命じて軍需省の利権を僅か一日で商工省に移行した経験がある。
 そうである。自由民主党は、軍需省の省庁利権を占領軍に接収されないよう商工省に持ち逃げした当人らが結党したものである。アメリカは、その省庁利権と知見を最大限利用するために、持ち逃げした張本人を利用してできたのが自由民主党なのである。その時の官僚制度が依法官僚制であるとアメリカと日本国民が対立してしまうため、どうしても家産官僚制でなればならなかった。その代表格が財務省であり、外務省であり、防衛省であり、経済産業省なのである。
 したがって日本の将来を占うものとして、アメリカから国権を回収し、自由民主党を解体し、家産官僚制を廃止することができなければ、現状の鬱積した状況は変わらず、今後も衰退するだけなのである。
以上(寄稿:近藤雄三)

[i] https://www.youtube.com/watch?v=1_cyoxsHfCs


出所:IWJ「岩上安身によるインタビュー 第616回 ゲスト 鳩山由紀夫・元総理 2016.2.16

https://iwj.co.jp/wj/open/archives/287473#idx-1


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自民党内で派閥解消が進んでもアメリカに国家主権を売渡した事実は拭えない

2024-01-21 | 小日向白朗学会 情報
 自由民主党が大きく揺れ動いている。岸田首相が自派を解散すると言い出したのである。このことに関して2024年01月19日、時事通信が『首相、他派閥の対応注視 岸田派解散を明言』という記事を配信した。
『……
 岸田文雄首相(自民党総裁)は19日、岸田派(宏池会)の元会計責任者が政治資金規正法違反容疑で立件される見通しとなったことを受けて、「政治の信頼回復のために宏池会を解散する」と明言した。その上で「国民から派閥がカネやポストを求める場になっているとの疑念の目が注がれている」と述べ、他派閥の対応を注視する考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
……
 岸田派座長を務める林芳正官房長官は記者会見で、18日に首相から同派解散の意向を伝えられ、「首相の判断を尊重したい」と応じたと説明。「首相の宏池会への思いの強さを重々承知している。その上での判断ということで、重く受け止めた」と述べた。
……』
 これに続いて二つの派閥が相次いで解散することになった。それが、2024年01月20日、時事通信社『3派閥解散「判断を尊重」 自民・森山氏』である。
『……
 自民党の森山裕総務会長は20日、安倍派、岸田派、二階派が解散を決めたことについて、「それぞれの派閥の判断は尊重されるべきだ」と語った。また、会長を務める森山派の対応に関しては「党(政治刷新本部)で派閥の在り方を含めて議論が始まっている。議論の経過も見ながらみんなで相談して決めたい」と述べるにとどめた。鹿児島県霧島市で記者団の取材に応じた。
……』
 派閥解散の理由であるが、政治資金の問題から自由民主党の信頼が失われたことにたいして「派閥を解消することで信頼を回復する」とのことである。

 そもそも自由民主党の結党は、吉田茂がアメリカに売渡した国家主権を、安定的に継続するためCIAの資金と支援で実現したのである。その後、自由民主党による政権運営が安定すると、CIA資金の秘密が国民に知られて政治問題化することを恐れ、CIAに代わる別の支援組織を国内に作ることをきめた。その工作を行ったのが自由民主党重鎮岸信介で、手を握ったのがKCIA傘下にあった「統一教会」であった。その後の統一教会が、犯罪組織であるにも関わらず、国内で傍若無人な動きができたのは、自由民主党が庇護したからである。その理由は、長期安定政権を維持するため、統一教会の資金と組織力を使った国政選挙を行うことであった。その威力は絶大でという国会議員の過半数を握るほどの大きな成果をあげることができた。
 ところが、安倍元首相暗殺事件を機に自由民主党は否応なく「統一教会」との関係を見直さざるを得なくなった。その影響は、選挙運動だけに止まらず資金面にも及ぶことになった。それが、昨今問題の「パーティー券還流問題」で、統一教会とその関連組織が自由民主党議員のパーティー券を大量に購入していたという報道が出てきていることに表れている。
 自由民主党の歴史を俯瞰すると、自由民主党はアメリカに国家主権を売渡すことで手に入れた「国家運営する利権」つまり政権の座を維持するため、常に、工作資金と民意を釣り上げるために必要な政策と云う個別利権を利用してきた歴史なのである。
 そして、今回の「国民の信頼回復」の為と称して始まった派閥解消であるが、岸田首相は、国民に知れたら更に国民の信頼を失う「アメリカに国家主権を売渡した」ことで許されてきた「国家運営する利権」という不都合な事実を解消するとは言っていっていない。よって岸田首相が言う派閥解消は、政権の座を降りたくない、ただそれだけのパフォーマンスであったのであろう。ところで、岸田首相のパフォーマンスは思わぬ副作用を生むことになった。それは、常日頃、川底に沈んで姿を現さない「自由民主党の不都合な事実」という岩礁がその姿を覗かせるという思わぬ副産物を生じさせることになった。

 岸田首相の派閥解散宣言を受けて、岸田派、二階派、安倍派は派閥解消を決めた。ところが麻生派と茂木派は派閥を温存させることにした。この二派を実質的に取り仕切るのは麻生副総裁である。その麻生副総裁は、過日、訪米して「日米同盟の重要性」と「台湾有事は許さない」等、既に日本の安全保障政策として使い物のならないことが明らかになっているにも拘らず「防衛三文書」で定めた中国敵視政策を堅持することを求めていた当人なのである。したがって麻生派と茂木派は「防衛三文書」を結集軸とする外務省、防衛省、財務省、経団連の利権を擁護し拡大するための派閥、もしくは、利権集団であることが明らかになってしまった。したがって「防衛三文書」の根本原則である「日米同盟」が機能しないことが明らかとなると外務省、防衛省、財務省、経団連の利権は消滅する可能性がある。
 ただし、既に、国民は自由民主党の本質について覚醒しつつあることから、どのみち「日米同盟」が機能しないことが国民のまえに明らかになるのは時間の問題なのである。
 この危機を回避するため、麻生副総理は独自の構想で動き出すことにした。それは「日本の国家主権を売渡すことで手にした政権」が獲得してきた莫大な利権を死守するため与野党を問わず「日米同盟」を容認する勢力を結集するという考えである。麻生副総裁のこのような構想が生まれる背景には、宗主国と属国の関係を熟知しているからなのである。つまり日本の宗主国アメリカにとって、属国の現地政権が抱える裏金問題などは、どちらでもよい話で、それよりは国家主権を売渡し続ける政治勢力であれば、自由民主党である必要はないからである。
 岸田首相のパフォーマンスで、麻生派と茂木派は今後も国家主権を売渡す政策で政権を維持する集団だということが明らかになった。(寄稿:近藤雄三)
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麻生副総理の訪米は「安全保障政策」が破綻したという不都合な事実を隠蔽するため -いよいよ「第二次保守合同」が動き出した。騙されてはいけない。-

2024-01-19 | 小日向白朗学会 情報
-、はじめに
二ヽ「米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)とは何か
三、日本の安全保障が激変したことを押し黙る日本政府
四、講演者が麻生太郎である理由
五、現在の政局と政界再編
六、まとめ

一、はじめに
 2024年1月11日、産経新聞が『自民・麻生太郎副総裁「台湾の軍事統一は許されず」 中国との対話呼びかけ 米講演』を配信した。この記事は、これまで自由民主党が行ってきた安全保障政策の現状と今後を考えるうえで指標となるものと考えられる。よって順を追って詳細に検討する。
『……
【ワシントン=坂本一之】自民党の麻生太郎副総裁は10日、米ワシントンで講演し、中国の習近平政権が武力行使による台湾統一を選択肢としていることを指摘して「軍事的統一は許されない」と述べた。「中国との対話継続を諦めてはいけない」と米国などと協力して自制を促す考えを示した。米国に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰を求めた。 麻生氏は講演で、「現実主義」に基づき中国の台湾侵攻を抑止する国際的な取り組みを米国などと進める一方で、「中国と台湾のハイレベルな政治対話」を通して地域の安定の維持を図ることも訴えた。 「中国が大国として国際秩序の安定に責任を持つよう説得しなければならない」とし、日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)の枠組み活用も提案した。 国際秩序の安定に向けて「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との連携を強化し、民主主義陣営への取り込みを図っていくべきだとした。 TPPはトランプ前政権が離脱したが、麻生氏は英国が新たに参加したことに触れ、米国が復帰すれば「その規模は世界経済の約4割に達する」と指摘。さらに韓国も参加すれば、参加国や地域を巡る「安全保障と経済が表裏一体となる」と述べた。 また、中朝露など「日米両国が直面する脅威は増大しており、日米同盟に基づく幅広い連携や協力がますます重要になっている」と主張。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」への日本の参加を改めて提案した。インド太平洋地域における「安全保障協力体制の構築」も視野に入れるべきだと語った。日米が「相互に信頼し合った関係」を強化し、国際秩序の安定に貢献していくことを呼び掛けた。 講演は米シンクタンク「米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)」が主催し、米議会内の施設で行われた。
……』

二、「米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)とは何か
 最初に麻生副総理が講演を行った「米国大統領制兼議会制研究所」(Center for the Study of the Presidency and Congress)とは如何なる研究所であるから始める。
 同研究所の概要は、笹川財団が主催したセミナーで講演者の一人が同研究所上級フェローであると紹介している。その中に、同研究所は「……日米同盟及び経済安全保障に関する研究及び日米立法府との調整……」を行うとある[i]。しかし、同研究所は「日米立法府との調整」を云いながら日米同盟が抱える多くの問題に付いて立法府を通じて解決してきたという話は聞いたことがない。したがって同研究所は、日米同盟を基盤とした利得者の側にある広報担当という位置づけであろう。この推察を裏付けるように「米国大統領制兼議会制研究所」の理事にはジョージ&バーバラ・ブッシュ財団があるなど、アメリカが戦争経済を押しすすめる政策を支援したシンクタンクが名を連ねていることが指摘される。

三、日本の安全保障が激変したことを押し黙る日本政府
 さて、本題の麻生太郎副総裁が、わざわざ渡米して、いわくつきの研究所で講演した内容を検証してみる。麻生副総理は、講演で中国の武力による「台湾有事」、そして日本の安全保障の基軸である「日米同盟の重要性」の二点に付いて私見を述べている。私見としたことには理由がある。それは、麻生副総理の講演内容がアメリカ政府と日本政府の公式な安全保障の立場と異なるからである。そのため、講演の内容を日本国内、それも自民党副総理の立場で発言したならば直ちに国際問題になることは明らかであることから、あえて渡米し、自由民主党の重鎮である麻生副総裁が私見を講演することで、日本のマスコミが大々的に報道することを狙ったものなのである。したがった麻生副総理の講演は、アメリカと安全保障問題に関する意見調整というよりも、要は国内向け宣伝なのである。
 端的に言うと、最近の日本とアメリカとに共通した安全保障の中心的な問題は「台湾有事」と「尖閣列島を含む島嶼防衛」であった。ところが、同盟国アメリカは、昨年、中国と「一つの中国」政策を再確認したことで、日本には一言の断りもなく「台湾有事」と「尖閣領有問題」から敵前逃亡してしまったのである。さらに、こともあろうにアメリカは、現在では講和の条件を打ち合わせている最中なのである。
 ことの発端は、2022年ロシアがウクライナに侵攻しいたことをとらえて、アメリカ大統領とアメリカ民主党そしてペロシ元下院議長は、戦争経済にとって好機と考え台湾有事に介入することを決め、そして行動した。このアメリカによる中国敵視政策に、狂喜したのが、政権与党自由民主党と外務省、防衛省であった。長い間、自国の主権をアメリカに売渡しただけではなく、憲法迄改正まで行おうとしてきた自由民主党は、これまでの外交利権と防衛利権を一挙に拡大する好機が訪れたと思ってしまった。
 直ちに日本政府、中でも外務省が中心となって、反中国を中心として安全保障政策を策定することにした。そして出来上がったのが2022年末に閣議決定した「防衛三文書」であった。その中で日本の仮想敵国を「中国」「北朝鮮」「ロシア」とし、その戦術は「島嶼防衛」と「台湾有事」に日米同盟を基軸に日本とアメリカが連携して対応することにした。アメリカにとって、現在の戦争では存在意義が薄く解体が俎上に上っていた「アメリカ海兵隊」を「島嶼防衛」に転用できるうえことから好都合な話であった。さらに「防衛三文書」では「反撃能力の整備」と「武器輸出」も盛り込んだことから、日米の兵器産業は、千載一遇の機会が到来したと大歓迎することになった。そして日本国内では「台湾有事」が、恰も、すぐにでも到来するかの如く極端な世論が形成されていった。
 ところが、である。
 あまりにも、アメリカと日本政府が台湾有事を喧伝したことから、中国は、ロシアと軍事的繋がりを強化する動きにでた。核大国アメリカが中国に軍事圧力を加えたことから、中国はもう一方の核大国ロシアに接近させるという、アメリカの国家戦略にとって最悪の結果を招いてしまった。これまでの世界の核バランスは、米vs ロで釣り合いを取っていた。ところが、アメリカ政府が先導した中国敵視政策は、米vs中ロとなって、世界の核バランスが崩れる可能性を生じさせたのだ。
 つまり、アメリカ政府が行う対中国敵視政策により、極東地域で莫大な軍需需要を呼び起こすことにはなったものの、その代わりに、アメリカとイギリスにが長らく採用してきた戦略で、中国を「究極的な敵国としてきたロシア」に追いやる結果となってしまった。係る事態を敏感にキャッチして動き出したのがキッシンジャーであった。バイデン政権としては不満がのこるものの、世界戦略の崩壊には同意し中国敵視政策を放棄して、キッシンジャー自身が1972年に取り纏めた「一つの中国」政策に回帰することになった。この決定は、直ちにアメリカ政府内で実行に移され、米中の軍事関係者間で核の不使用を含む軍事衝突回避について協議を始め現在に至っている。
 アメリカが「一つの中国」政策により中国敵視政策を放棄したことは、直ちに日本の安全保障に影響が出ることになった。それは日本政府が日本の安全保障上の大問題であると位置づけていた「台湾有事」や「島嶼部、特に尖閣列島防衛」で、中国が武力行使に及んでも、同盟国アメリカは介入しないことを決めてしまったことである。
 これは日本にとって、頼りにしていたアメリカ軍が有事を前に敵前逃亡したのと同様のことなのだ。その結果、日本が安全保障政策の基軸としてきたアメリカの核の傘と駐留アメリカ軍が、実際何ら役に立たないことが明らかになってしまったのだ。日本国民は、素朴にも日本の安全保障の為と信じ莫大な国費を投入することを認めてきたにもかかわらず、アメリカの軍事力が日本の安全保障にとって何ら役に立たないことが明らかになってしまったのだ。
つまり、アメリカに食い逃げされてしまったのだ。
 それもこれも、日本政府が自己の保身のため、自衛隊の指揮権をアメリカに献上して属国となってきたことが根本原因なのである。そもそも、日本という属国には、自主防衛などは絵空事以外の何物でもない。
 ここで問題なのは日本政府である。
 日本政府は、アメリカが始めた中国敵視政策に便乗して、さらなる外務・防衛利権を拡大するため「防衛三文書」という根拠もあいまいな安全保障政策をでっち上げた。そのうえに、莫大な予算獲得までしてしまった。ところが、悲しいかな、日本政府は自衛隊の指揮権がないことから、アメリカの極東戦略が変更になっても事前に知らされることはなく放置されてしまった。その結果、日本政府は真実を糊塗して、あたかも、中国敵視政策を継続しているとするため、トマホークミサイルを大量に購入するとともに、島嶼部に基地を設営し、弾薬の保管場所を確保し、精力的に陣地設営をいまだに行っているのだ。
 「防衛三文書」の大前提である日米同盟を基軸とする安全保障は、突然、消失してしまったのである。その結果、同文書により日本の安全保障を高めるどころか、対中国戦では同盟国アメリカは参戦せず日本単独で戦うという、無謀且つ危険な代物になってしまった。
 まるで日本は「つんぼ桟敷」に置かれた状態になった。

 しかし、アメリカは、中国問題には軍事介入しないことを決定した直後に日本政府に伝達したはずでる。なぜならば、もしも、日本が単独で中国と軍事衝突を起した場合に、アメリカは戦闘に引きずり込まれる可能性があることから、司令部としては現地日本軍に総司令部の命令を厳守させ万が一の事態を生じさせない必要があるからである。そのため、アメリカは、日本と中国との首脳会議を設けることにした。それが岸田総理と習近平国家主席会談による首脳会議ということになる。その会談で、岸田首相は、習近平国家主席に、日本も「一つの中国」政策を順守することを再確認させられた。これによって、日本は「台湾有事」も「島嶼防衛」も中国と関係する問題は武力ではなく話し合いで解決することを約束したということなのだ。つまり、アメリカが主導した中国敵視政策に便乗した日本政府は、中国に「二度と軍事的な解決方法はとりません」と膝を屈したのだ。日本政府が採用した中国敵視政策は外交戦争で中国に負けたのである。
 日本もアメリカも、中国との関係は「一つの中国」だということを認めたということは事実なのである。最近ではバイデン大統領ですら「一つの中国」を口にするほどである。それにも拘らず日本政府は、この事実を公表しようとはしていない。そればかりか「防衛三文書」を根拠に獲得した莫大な防衛予算を執行している最中なのでる。
 しかし、日本もアメリカも「一つの中国」を認めたことで、アメリカ軍の抑止力は中国を敵とするかぎり使えない。つまり日本の安全保障は、根本原則が無効なのである。これに国家予算を使うことは間違いであるばかりか、国民を騙しているということであある。したがって、即刻、「防衛三文書」で増額となった防衛予算は執行を停止する必要があるだけでなく、予定されている増税は認められなし、認める必要もない。

 日本政府が、中国政策に関して「外交とは、いかに国民を騙すか」を地でいっているような話なのである。そして今回のその語り部が、麻生太郎副総裁であった。そして麻生副総裁は、愚策「防衛三文書」が使い物にならない安全保障政策であることを隠して、恰も、価値があるかの如く熱弁をふるったのが「米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)」でおこなった講演なのである。その狙いは、何か。ずばり「国民が覚醒する前に、防衛予算を獲得する」である。

 戦略は「夢」であり「希望」もしくは「理想」であるが、「はったり」もしくは「嘘」でもあることも認識しておくことは、この手の話に騙されないためには重要である。
【参考】
・(2023年06月22日)『上海コミュニケ』
 
四、講演者が麻生太郎である理由
 そもそも、自由民主党は、アメリカに国家主権を売渡したことを維持することを条件にアメリカに長期政権を許されてきた党である。アメリカの後光を笠に着て外交・防衛利権を独占してきた。その好例が建設中の辺野古基地である。既に解体が取りざたされている海兵隊であるが、普天間の移転先には航空母艦仕様のV字滑走路が必要という理由で建設が進められている。しかし、空母を持たない海兵隊にはV字滑走路は不要である。普天間基地は、自衛隊が必要としている基地であって海兵隊の要望ではない。日本政府は、アメリカの後光を利用して、防衛利権を拡大してきたということが辺野古移転の実態なのである。そして日本政府は、都合が悪くなると「アメリカとの同盟が崩れると日本の安全保障は危機に瀕する」と、国民を脅かすことを決して忘れることはなかった。

 ところが最近になって、国民は自由民主党の不都合な事実に覚醒するようになった。その結果、自由民主党は、役目を終えようとしている。そのことを自覚しているのは麻生太郎副総裁であろう。
 麻生太郎副総理は、外務省、防衛省、財務省と組んで2022年末に閣議決定した「防衛三文書」で、日中対立を助長して危機を演出し「島嶼防衛」と「台湾有事」が現実に起こりうると錯覚させ日本の防衛費を増大させ防衛利権を貪った張本人なのである。この防衛利権の源泉が「日米安保条約」であり「日米地位協定」なのである。そのため70年に渡り貪ってきた莫大な防衛利権を失わないため「日米安保条約」の重要性を強調しているのだ。なぜならば「日米安保条約」が消滅すると、自由民主党の利権も、自由民主党の存在意義も消滅する。消滅する前に、ありとあらゆる利権を持ち逃げする心算でいるのだ。当面は、「防衛三文書」で決めた来年度予算で防衛予算に関係する増税を行い10年にわたり安定して防衛予算を執行できる枠組みを作ることにした。それには「防衛三文書」の基本である日米同盟が、役にも立たないものであることを伏せて、重要であることを強調する必要があった。しかし、日本国内で中国敵視政策を叫ぶと、政府が分裂していることになるため、わざわざ訪米して講演という形で、プロパガンダを行ったのだ。これが冒頭で紹介した新聞記事の真相である。
【参考】
五、現在の政局と政界再編
 ところが2022年に安倍元首相が暗殺されたことを機に自由民主党の選挙運動を取り仕切ってきた統一教会との関係を見直すことになると、自由民主党がこれまで「議会制政治では議員数が優先する」ことを悪用してきたことが逆に作用して、つぎの国政選挙では、統一教会という神輿に担がれただけの水増し議員は当然のこととして落選することになる。その好例が、安倍派で統一教会が取り仕切った選挙で当選した生稲晃子議員であろう。安倍元総理が自民党総裁の時に当選した議員は多かれ少なかれ、議員であり続けることは難しい。つまり、自由民主党が政権維持のために行った選挙運動方法は瓦解したことで、単独で政権を維持することは難しくなってしまった。
 そこで、麻生太郎副総裁が進めているのが、野党の中で自由民主党が行ってきた「日米同盟を基軸とした」安全保障政策に賛成する政党、もしくは、会派と連携することにした。
 その時に鍵となる人物は前原誠司である。
 前原は「防衛三文書」作成に積極的にかかわった人物で、しばしば、野党を分断し、与党に統合しようとさえしてきた筋金入りの「日米同盟」賛同者で「台湾有事」に中国と戦争を辞さないという人物なのである。そのため「防衛三文書」が閣議決定されると、この新安全保障を絶賛し、自らの関与を自慢していたくらいである。ところが「好事魔多し」、アメリカが再び「一つの中国」政策に回帰し「台湾有事」にアメリカは介入しないことを決めたことから、前原の安全保障政策は砂上の楼閣の様に崩れてしまった。
 前原は、日本が「日米地位協定」で自衛隊の指揮権もないことを知りながら、自主防衛を主張し、さらには、憲法を改正して指揮権のない自衛隊を海外派兵することが、日本の安全保障には必要だと主張してきた危険な野党党首なのである。前原が主張していた安全保障政策は、アメリカが「一つの中国政策」を再確認したことで破綻してしまった。日本国民をだました前原の政治的な責任は重大で、政治生命を失ってもしかるべきところである。
 それにも拘らず、前原は、安全保障政策の失敗に謝罪することもなく、今後も政治活動を続けるために教育無償化を旗印に新党党首となった人物である。案の定、新党と「日本維新の会」は、国会内統一会派に付いて協議を開始している。統一会派の相手である日本維新の会は、単なる利権政党であることから安全保障政策には疎い。このことを利用して最終的には前原が党首となって、第二自民党となることを狙っていると思われる。これに、国民民主党と立憲民主党首脳と「消費税増税を業績」と考えるトンデモ代議士で財務省のポチ野田佳彦らが加わることで、外務省、防衛省、財務省、そして経団連、連合を含む大政翼賛体制を目指すことになるはずである。実は、これが、麻生副総理がねらう政界再編と考えて間違いないであろう。つまり「第二次保守合同」なのである。その時、第二次保守合同の結集軸は「指揮権のないまま自衛隊を海外派兵できる」ようにする「憲法改正」となるはずである。この第二次保守合同が実現すると「防衛三文書」で決めた保障予算は継続されることになる。麻生副総裁として賞味期限がすぎた自由民主党を続けるよりは「日米同盟」を存続させて外交安全保障利権を継続させるための枠組みであるならば、いささかの問題もないのだ。

六、まとめ
 日本はこれまで「日米同盟」により日本の安全保障が保証されていると信じてきた。ところが「日米同盟」の本質が、日本国民を抑圧し犠牲を強いる危険な存在であることが次第に明らかになってきた。それと相まって「日米同盟」を堅持することで存続してきた自由民主党は、内部に様々な問題が噴出し間もなく自壊することになるが、その時、「日米同盟」により生まれた莫大な利権を手にしてきた外務省、防衛省、財務省、経団連、連合はその利権を消滅させないため「安全保障政策」を中心に政界再編をはじめることになる。そのときに「日米同盟」で生じた莫大な利権、その利権を手放さないために「日米同盟」を堅持することが最低条件となってくる。そのうえアメリカが「日米同盟」締結当初から自衛隊を海外に派兵することを求めてきたことを実現する勢力でなければ、日本統治を任せる党派としては不適格である。その結果として憲法改正論議が重要問題として浮上してきたのだ。日本国内の問題として憲法改正論議は最も重要な問題であるが、アメリカが考える安全保障の観点からは「アメリカが握っている自衛隊の指揮権」を実際に運用できるように「憲法を改正して自衛隊を海外派兵できるように手配してくれる」党派がアメリカにとって最も頼りになる勢力で日本統治を任すことができる党派ということになる。このアメリカからの視点で、憲法改正論を考えなければ、昭和27年に日本が国家主権を失ったと同様に、今後、さらに70年は属国のままとなることを覚悟すべきである。
 したがって、憲論改正論議は、これまで自由民主党がアメリカに売渡した国家主権を回収したのちの議論にしなければ、永遠に国家主権のない、アメリカの属国のままであることになってしまう。つまり、国権の回収を言わずに憲法改正をいう国会議員は、アメリカの手先か、防衛利権の享受者以外にない。そして、ほくそ笑むのは、国家主権を売渡したことで莫大な利権を温存した外務省、防衛省、財務省、経団連、連合なのである。
 彼らを巷では売国奴という。
 国民は、よくよく、改憲論議の本質を見極める必要がある。(寄稿:近藤雄三)

[i] 笹川財団「第1回 サイバーセキュリティセミナー2022」https://www.spf.org/seminar/list/20220425.html

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暗殺の季節~~テロ再来はごめん被るものの~~

2024-01-11 | 小日向白朗学会 情報
 昨年11月、たまたま温泉の帰り道に車窓から周囲の建物よりもやや高くちょっと目立った屋根が目に留まった。「ちょっと寄ってみよう」ということで高い塔のような屋根(山門だった)に向かって車を向けていったら、「青龍山吉祥寺」という名刹であった。臨済宗建長寺派の古刹であり、季節色とりどりの花や小さな滝などが楽しめた。そうそう抹茶に和菓子のサービスもあった。さらにちょっと得した気分であったが、そこが群馬県の川場村であり、大変人気のある道の駅で有名なところらしいのだ。
 ひょんなことから、今日のことだけれど、この川場村が血盟団の井上日召(明治19年生)の生誕の地であることを知った。おそらく同古刹の近くの小学校に通い成長してきたらしいのだが、その後沼田中学に入っている。実は、この沼田中学(現・群馬県立沼田高校)というのが、当時前橋に本校のある分校であった。つまり、私が通っていた前橋高校の大先輩にあたるのである。当時沼田中学では3年級までだったらしくその後前橋の本校に移っている。名実ともに先輩であるということで、ただそれだけだが、私は個人的にシンパシーを感じてしまうのである。単純なのだ。

(写真は前橋高校同窓会誌の表紙と井上日召と同期の高畠素之の紹介文)
 その後、日蓮宗僧侶となり、一人一殺というわけのわからない(あくまで私にはわからないという意)ロジックを編み出し、5.15から2.26へと続く暗黒の昭和史をスタートさせているわけだ。
 一昨年には安倍晋三氏が暗殺された。すでにそれ以前からだが、“政治”の欠落甚だしい昨今、政界だけでなく新自由主義に毒された経済人も含めてテロのターゲットには事欠かないと思われる季節ともなってきていると感じてしまうのは筆者だけだろうか。まさか内戦レベルにまでとは言わないまでも、わが国も格差の肥大化著しく、テロという病理を惹起しかねない温床は膨満しているのかもしれない。くわばら、くわばら~テロはごめん被りたいものである。

 参考までであるが、血盟団事件の裁判判決文がなかなかの名文であると感じる。読み込んでしまうと、被告人近くに移動してしまう自分を意識することもあるようだ。それは危険なことだ、と自戒する。
 判決
無職、日召事井上昭(当四十九年)
無職     古内栄司 (当三十四年)
無職     小沼正  (当二十四年)
無職     菱沼五郎 (当二十三年)
無職     黒沢大二 (当二十五年)
東京帝国大学法学部学生四元義隆(当二十七年)
無職池袋正釟郎(当三十年)
東京帝国大学文学部学生久木田祐弘 (当二十五年)
東京帝国大学法学部学生田中邦雄(当二十六年)
国学院大学神道部学生須田太郎(当二十七年)
京都帝国大学文学部学生田倉利之(当二十七年)
京都帝国大学法学部学生森憲二(当二十四年)
京都帝国大学法学部学生星子毅(当二十七年)
建築設計監督、 彰道事伊藤広(当四十七年)
右被告人井上昭、同古内栄司、同小沼正、同菱沼五郎、同黒沢大二、同四元義隆、同池袋正釟郎、同久木田祐弘、同田中邦雄、同須田太郎、同田倉利之、同森憲二、同星子毅に対する殺人及被告人伊藤広に対する同幇助被告事件に付当裁判所は検事木内曽益、同岸本義広関与審理を遂げ判決すること左の如し
主文
被告人井上昭を無期懲役に処す
被告人古内栄司を懲役十五年に処す
被告人小沼正を無期懲役に処す
被告人菱沼五郎を無期懲役に処す
被告人黒沢大二を懲役四年に処す
被告人四元義隆を懲役十五年に処す
被告人池袋正釟郎を懲役八年に処す
被告人久木田祐弘を懲役六年に処す
被告人田中邦雄を懲役六年に処す
被告人須田太郎を懲役六年に処す
被告人田倉利之を懲役六年に処す
被告人森憲二を懲役四年に処す
被告人星子毅を懲役四年に処す
被告人伊藤広を懲役三年に処す
但被告人古内栄司、同黒沢大ニ、同四元義隆、同池袋正釟郎、同久木田祐弘、同田中邦雄、同須田太郎、同田倉利之、同森憲二、同星子毅、同伊藤広に対し孰れも未決勾留日数中五百日を各右本刑に算入す
押収物件中ブローニング小型三号拳銃四挺(昭和七年押第ニ〇四号の七同年押第四六九号の一三八及四〇)並白鞘刀一ロ (同年押第四六九号の四三)は孰れも之を没収す
訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とす
理由
第一、被告人井上昭は
群馬県利根郡川場村に於て医師好人の四男に生れ同県立前橋中学校を経て明治四十二年東洋協会専門学校に入学したるも のにして幼少の頃より父の薫陶郷土の気風等により報国仁俠の精神を涵養せられたるが生来懐疑的性格にして長ずるに及 び漸次自己の本体善悪忠孝の標準等に付疑問を懐き之が解決を求めて師長の教を仰ぎたるも結局自己を満足せしむるに足 るものなく煩悶の末現在の教育道徳等は総て支配階級が無自覚なる一般民衆を制縛し搾取するの欺瞞的絡繰に他ならずと 為し自暴自棄に陥り明治四十三年八月同校第二学年を中途退学し死を決して満洲に渡り南満洲鉄道株式会社社員たる傍ら 陸軍参謀本部の牒報勤務に従事中偶々南満公主嶺に於て曹洞宗布教師東祖心に接し其の鉗鎚を受け初て一道の光明を認め たるも間もなく同人と別離するに及び再び懐疑の人と為り大正二年北京に到り大総統袁世凱の軍事顧問陸軍砲兵大佐坂西 利八郎の許に同様牒報勤務に従事し日独戦争に際しては天津駐屯軍附軍事探偵と為り功に依り勲八等に叙せられ其の後山 東革命奉直戦争等に関与し大正七年暮頃以降天津等に於て貿易商を営み尚傍ら牒報勤務に従事し居りたるところ宇宙人生 等に付深刻なる疑雲に閉されたるを以て之が解決を為し自己一身の安心を確立し更正を図らんとして大正九年暮頃帰国し たり而して当時の我国情を見て社会主義者の増加支配階級の横暴無自覚等頗る憂慮すべきものあり此の儘放任し置くべき に非ずと思惟し加ふるに其の頃在満当時の盟友木島完之に邂逅し同人より我労働運動は悉く社会主義者の指導下に在りて 寒心に堪へざるを以て蹶起して之を排撃し労働運動を指導せよと慫慂せられたるも前記の如き心境に在りたる被告人は自 己の安心確立を第一義と為し大正十一年春頃より郷里なる川場村の三徳庵に籠り独坐して日夜法華題目を唱し自己修養に 専念したる結果宇宙全一の真理を体得し自覚安心を得たりとして大正十三年九月初旬上京したり其の頃偶々日蓮の教義に 関する著書を繙読し該教義は自己の体得したる境涯を理論的に説明したるものなることを識り驚喜して之が研究を志し身 延山其の他に於て法華経日蓮の遺文集及日蓮に関する講演著書等により同教義の研究を為したる結果前記境涯の誤なき ことを証悟し小我の生活は自己の本体即宇宙の真理に反するものと為し日蓮の教義と自覚安心を得たる自己の肉体とを武 器として自ら国家革新運動に参加せんと決意し予て知合なる高井徳次郎と共に護国聖社を結成し又在満当時の盟友前田 虎雄等を援けて建国会の創立に関与する等国民精神作興運動に奔走し居りたるが当時国家革新を唱導せる人々と交るに及 び其の多くは非現実的なる口舌の士に非ざれば単なる不平家煽動家にして身命を惜まず其の衝に当るべき人物なきを知り 被告人自ら人物を養成し夫等の者を率ひて之が実行運動を起さんと決意し之が為には他人をして信頼を置かしむるに足る徳性を涵養せざるべからずと為し 大正十五年夏頃より静岡県駿東郡原町なる松蔭寺に赴き山本玄峰に参禅し昭和二年五月頃 高井徳次郎の依頼に依り同所を辞し茨城県東茨城郡磯浜町岩船山通称ドンドン山に於て自己独自の加持祈禱に従事し 同年十一月前記川場村に引揚げ爾来農村の疲弊状態を視察したる結果之が救済は単なる物質的給与のみを以て其の目的を達成することの困難なるを覚り 益々時弊の根本的刷新の必要なることを痛感するに至りしが昭和三年暮頃高井徳次郎に再び懇請せられて 茨城県東茨城郡磯浜町字大洗東光台に建立せられたる立正護国堂に籠り昭和五年十月頃迄同所に起居するに至れり
当時被告人は、宇宙人生観として宇宙震万象は同根一体絶対平等即宇宙全一にして差別相其の儘全一絶対なり 故に人間は差別相に於ては分離対立したる存在なりと雖其の本体に於ては其の儘宇宙と一如合体したる存在なることを悟り 差別相に於ける自己のみに執着したる小我の生活を為さず自己は比の身此の儘大衆なることを自覚し大衆と苦楽を共にする 大我の生活即菩薩道に立脚する報恩感謝の生活を為さざるべからずと観し
国家観として我国体は国祖神に在します天照大神の御精神にして大神が 天孫に授け給へる三種の神器は大神の御精神たる 人類最高の智徳武を表象し而も 大神御一方の御精神の具現なれば大乗仏教に所謂体相用三位一体の関係に在り 即是宇宙の真理を表現したるものなり故に大神の御精神たる我国体は宇宙の真理其のものにして天壌と共に窮り無し 而して歴代天皇は三種の神器を天壌無窮の御神勅と共に受継ぎ給ひ 天照大神の御精神を御承継在らせられ唯一絶対の元首として国家の中心を為し国民と不二一体に在しますと共に 国民の大御親に在せらるゝが故に一身に主師親の三徳を具する現人神に在しまし国民は神人一如の 天皇の赤子にして大御宝なるが故に天皇の御精神を以て各自の本質と為し依て以て君民一体一国一家の万邦無比なる理想国体を成す左れば我国体は 君民の間に何ものゝ存在をも許さず国民は天皇の下に一人として其の処を得ざるものなく国家全体の幸福を目的として各自其の地位を守り 分を尽し何等矛盾撞着なく自己の未完成を畏れず憚らず未完成を未完成として愈々精進し日に新に日に日に新に創造的発展を遂げ国家と共に完成せんことを 念願せざるべからず即国民は孰れも日本人として日本天皇国を生活して国体に帰一し以て理想国家の光輝を発揚し 延ては之を全世界に及ぼし四海同胞万邦一家の理想社会を建設し世界人類永遠の平和を招来せざるべからず即是日本精神なりと観し
我国状の批判として支配階級たる政党財閥特権階級は腐敗堕落し国家観念に乏しく相結託して私利私慾に没頭し 君民の間を阻隔し目前の権勢維持に努め事毎に国策を誤り為に内治外交に失敗し就中農村の疲弊都市小中商工業者 及労働者の困窮を捨てゝ顧ず幾多の疑獄事件は踵を接して起り国民教育は其の根本を個人主義に置き国体の絶対性に付何等教ふるところなく 智育偏重に流れ徳育を忘れ延ては国民思想の悪化を馴致する等政治経済思想教育外交等所有方面に極端なる行詰を生じ 此の儘放置するに於ては国家は滅亡の他なく此の深刻なる行詰は明治維新以来の支配階級が建国の本義を忘れを徒に西洋文明に陶酔し 其の模做に終始し彼の個人主義を基調とする資本主義の如き宇宙の真理に反する差別相対の原理を以て国民生活並国家組織制度の指導原理と為したるが為にして 資本主義に内在する矛盾欠陥は余す所なく我国の本質を覆ひ去り人文愈々開けて道義日に衰へ内外共に混乱紛糾の極に達し遂に昭和維新を要望する国民的血の叫と為りたり 然るに世に所謂学者宗教家の類は概ね気概なく此の現状を目前にしながら支配階級に阿諛迎合して自己の利害打算に汲々たるに非ざれば 拱手傍観して何等為すところなく又近時資本主義の修正原理として勃興したる社会民主主義国家社会主義乃至共産主義の如きも 畢竟する所差別相対の原理より離脱せず徒に支配階級と対立抗争を事とし却て混乱紛糾を助長する滅亡道にして到底此の行詰を打開すること能はずと為し 革命観として斯る行詰を根本的に打開し国運の進展を計らんには宜しく我国の本質に適合せざる差別相対の原理を排斥し 宇宙の真理其の儘なる日本精神を指導原理として此の行詰の淵源たる無自覚なる支配階級を日本精神に覚醒せしめ以て国家組織制度を改革し 一方国民教育を改善して国体教育を徹底せしめ制度及教育の両方面より国民を指導し本質形式俱に世界の模範国家と為し以て 日本天皇国を生活せざるべからず斯の如く国家革新即所謂革命は天壌と共に窮り無き我国家の発展過程に於て其の本来の発展力を阻害し 民衆の幸福を毀損する組織制度を廃棄し我国体に適合したる組織制度を樹立して国家本来の発展力を展開せしめ 民衆の幸福を招来せしめんとする必然的行為にして真に国家民衆の幸福の為にする仏行なり 而して旧組織制度を廃棄することは破壊即否定新組織制度を樹立することは建設即肯定にして而も破壊なくして建設は在り得ず 究極の否定は即真の肯定なるが故に破壊即建設不二一体なり故に革命を行はんとする者は深く自己を内省し先づ日本精神に覚醒し国家民衆の幸福を幸福とし 其の苦悩を苦悩と為す大慈悲心を有すると共に革命は 天皇の赤子として日本天皇国を生活する唯一絶対の道なりと自覚し革命を生くるの境涯を体し 苟も革命を事業視し之に依る権勢地位名誉等の報酬を期待すべきものに非ずと確信し居りたり
而して被告人は我国家は既に単なる論説に依て救済せられず実践あるのみと為し其の手段として当初先づ宗教的に育成せられたる四人の同志を獲得し 之等の者と共に農村に入り農事の手伝を為す傍ら農民を日本精神に覚醒せしめて国家革新の必然を説き一箇月に一人が一人の同志を獲得する 所謂倍加運動に依り三箇年の後に巨万の同志を獲得し之を糾合して上京し政府議会等に対し革新の実行を迫らんと計画し 同志は 一、成るべく従来社会運動に関与せざりし真面目なる人物 二、成るべく宗教的信仰を有する者若は宗教的鍛錬を経たる者少くとも革新運動に対して宗教的熱誠を有する人物 三、以上の条件に合せざるも人間として素質の純真なる人物 四、革新運動に身命を惜まざる確固たる信念に安住せる人物 五、大衆的喝采を受くることを快とする弁論者に非ざる人物 六、他人の保護によると否とを問はず成るべく自活し得る人物 匕、現在他の思想団体政治団体と関係を有せざる人物 八、成るべく係累少く一 家の責任軽き者なるか或は夫等を超越せる人物なること 等の各条件に適合せる者の把持する理論には重を置かず選定獲得することゝ為し爾来同志の獲得に努め 昭和三年暮頃より昭和五年九月頃迄の間に被告人古内栄司同小沼正同菱沼五郎同黒沢大二を始め 照沼操、堀川秀雄、黒沢金吉、川崎長光等所謂茨城組同志を獲得すると共に昭和四年十二月頃夙に国家革新の志を抱懐し海軍部内に於て熱心に之が啓蒙運動を為し居りたる 当時霞ヶ浦海軍飛行学校学生たりし海軍中尉藤井斉と相識り爾後肝胆相照して同志と為り次で昭和五年初頃より同年九月頃迄の間に 藤井斉より啓蒙せられたる当時海軍少尉古賀清志海軍少尉候補生伊東亀城同大庭春雄同村山格之等所謂海軍側同志を獲得したるが 其の間藤井斉より数次ロンドン海軍条約締結の結果対外関係の危機切迫し西暦千九百三十六年の交に於て我国は未曾有の難局に逢着すべく 挙国一致此の難局に当らんが為国家革新の急務なることを力説せられ茲に於て社会情勢再認識の必要を感じ昭和五年八月頃群馬栃木東京等を巡歴して 国民大衆の生活状態を視察し識者の意見を聴きたる結果国家の危機急迫し民衆の生活苦悩深刻にして革新を要望する声都鄙に充満し既に論議の秋に非ず 速に革新を断行せざるべからずと為し従来の倍加運動の方法を以てしては此の焦眉の急に応ずる能はざるのみならず之が実現の暁には大衆運動たる当然の結果として 官憲と大衆との衝突を惹起し流血の禍福大なるものあるに想到し斯る結果を招来するは自己の革新精神に反するものとして該計画を抛棄したり 而して事態は斯の如くなるに拘らず真に一身を賭して困難危険なる現状打破の任に当る者なく而も被告人等同志は自ら権力及金力を有せず 且言論機関は総て支配階級の掌握するところなるのみならず言論等の合法手段によりては彼等に何等の痛痒を感ぜしめ得ざるを以て 被告人等同志に於て自ら支配階級覚醒の為非合法手段に訴へ現状打破に従事し以て革命の捨石たらんと決意し且藤井斉より現状打破の具体的方法 及之が決行の時期の決定同志間の連絡並国家革新運動に関する情報の蒐集等の各事項を一任せられて昭和五年十月頃立正護国堂を去て上京したり
爾来被告人は昭和六年十月頃迄の間に被告人四元義隆同池袋正釟同久木田祐弘同田中邦雄同田倉利之等所謂学生組同志及藤井斉より啓蒙せられたる 当時海軍中尉三上卓海軍少尉山岸宏等所謂海軍側同志を夫々獲得し且被告人古内栄司等と連絡を執り昭和五年十一月頃より昭和六年二月頃迄の間に 被告人小沼正同菱沼五郎同黒沢大二及川崎長光を同年十月初旬被告人古内栄司を孰れも上京待機せしめ其の傍ら 後記其の一の(一)の如く同年四月頃海軍側同志に対し非合法運動に使用すべき拳銃の調達を命じたる他同年六、七月頃被告人古内栄司の斡旋により 愛郷塾長橘孝三郎と東京市内某所に於て会見して深く同人の人格識見に傾倒し其の後同人は昭和維新成就の暁に於ける新組織制度の建設に 有用欠くべからざる人物にして非合法的現状破壊運動は其の任に非ずと思惟し同人に対し破壊完成後に於ける建設に当るべきことを勧告し 又上京以来国家革新運動の一般情勢に注視すると共に一方従来藤井斉と親交あり革新運動に従事し居りたる西田税及其の背後に在りて志を同うせりと目され居りたる 陸軍部内の青年将校と提携し同人等を自己の革命精神を以て誘導せんことを企図し昭和六年八月下旬明治神宮外苑日本青年館に於て被告人等民間及海軍側同志と 西田税一派との会合を開き他方藤井斉をして当時革新運動を為し居りたる大川周明一派の動静を探索せしむる等諸般の活動を為し居りたるものなり
   ・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・
法律に照すに被告人井上昭、同古内栄司、同小沼正、同菱沼五郎、同黒沢大二、 同四元義隆、同池袋正釟郎、同久木田祐弘、同田中邦雄、同須田太郎、同田倉利之、同森憲二、同星子毅の判示第一の所為は 刑法第百九十九条第六十条第五十五条に該当するを以て其の所定刑中被告人井上昭、同小沼正、同菱沼五郎に対しては無期懲役刑を選択処断すべく 其の余の被告人等に対しては各有期懲役刑を選択し其の所定刑期範囲内に於て被告人古内栄司同四元義隆を各懲役十五年に 被告人池袋正釟郎を懲役八年に被告人久木田祐弘、同田中邦雄、同須田太郎、同田倉利之を各懲役六年に 被告人黒沢大二、同森憲二、同星子毅を各懲役四年に夫々処すべく 被告人伊藤広の判示第二の所為は刑法第百九十九条第六十条第五十五条第六十二条第一項に該当するを以て其の所定刑中有期懲役刑を選択し 同法第六十三条第六十八条第三号に則り法律上の減軽を為し其の刑期範囲内に於て同被告人を懲役三年に処すべく 被告人古内栄司、同黒沢大二、同四元義隆、同池袋正釟郎、同久木田祐弘、同田中邦雄、同須田太郎、同田倉利之、同森憲二、同星子毅、同伊藤広に対し 同法第二十一条に依り各未決勾留日数中五百日を夫々右本刑に算入すべく 主文掲記の押収物件は本件犯罪の用に供し又は供せんとしたるものにして被告人等以外の者に属せざるを以て同法第十九条第一項第二号第二項に依り 之を没収すべく訴訟費用は刑事訴訟法第二百三十七条第一項第二百三十八条を適用して全部被告人等の連帯負担とす 依て主文の如く判決す
昭和九年十一月二十二日
東京地方裁判所第一刑事部
裁判長判事藤 井 五一郎
判事 居 森 義 知
判事 伊 能 幹 一
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 日召は無期懲役であったが、昭和15年には出獄している。“茶番”としかいうほかない。もともと、田中光顕や頭山満らの当局への計らいで数年の予定であったというばかばかしいお話も伝わっている。これでは226への発展などは必至としか言いようがないだろう。そうなると藤井五一郎名裁判官の“名文”も色褪せて見えてくる。
 昭和初期における軍部、民間を問わず愛国の頽廃には著しいものが認められる。張作霖暗殺犯の河本、東宮(筆者の高校の先輩)も死刑にはならなかった。これがそもそも愛国腐敗の表れだったと思うが如何。3年後大罪を冒した石原、板垣も何らとがめられることもなく、上記に見るように血盟団、515と死刑に服したものはない。これらすべてに昭和天皇は遺憾の意を持っていたと思う。昭和3年の河本処断の失敗が大きかったのではないかと、のちの天皇は後悔していたように思う。さすが、226では死刑が出たが、この226の構造こそが愛国頽廃の極致であると思うのは筆者だけではないだろう。結果は昭和20年8月15日に天下に晒されたのである。
(文責:吉田)
(血盟団事件を取り上げた西村健氏の小説「光陰の刃」の表紙)
 
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