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自由民主党外交政策が大失策となった原因

2023-08-14 | 小日向白朗学会 情報
  1. 初めに
 日本の政権与党自由民主党は、昭和30(1955)年11月15日、日本の保守政党であった自由党と日本民主党に対して、アメリカCIAの工作員であった緒方竹虎が保守合同を働きかけたことにより結党された政党である。
 自由民主党の結党目的は、朝鮮戦争が終結するまでアメリカ軍が日本に安定して駐留できるようにすること、自衛隊をアメリカ軍の指揮権で第二次朝鮮戦争及び台湾海峡危機の際に海外派兵が可能となるように憲法を改正することであった。これは様々な研究で明らかにされている紛れもない事実である。また、自由民主党がアメリカ軍に指揮権を売渡したことについては、筆者も「行政協定からみた1955年の保守合同 ―自民党結党とは行政協定を順守して秘密を守ることー」(クリックで遷移)で報告してきた。
 そのような日本政府であるが、これまでとは一線を画す重要な決定をした。それは、2022年12月16日、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有などを盛り込んだ新たな防衛三文書(外交・安全保障の最上位の指針である「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定めた「防衛力整備計画」)を決定したことである。これにより防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に増やすことになった。そして「国家安全保障戦略」のなかで、日本の仮想敵国がロシア、中国、北朝鮮の三国であることを宣言してしまった。
 それまでのロシアとは2019年6月にプーチン大統領が訪日するなどして平和条約締結交渉をおこなっていた関係である。また、2021年10月、岸田総理とプーチン大統領は2018年のシンガポール合意を含め、これまでの両国間の諸合意を踏まえて平和条約交渉に取り組んでいくことを確認もしている。
また中国とは、昭和47(1972)年9月に日中共同声明で「中華人民共和国政府(共産党政権)が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と発表して、平和友好条約を締結した関係である。ところが「国家安全保障戦略」では、この2国を敵にしてしまうという大失策をおこしてしまった。さらに悪いことに自由民主党は、防衛三文書を根拠に巨額の防衛利権をせしめてしまったのだ。

 
2、トランプ大統領と金正恩による米朝合意で自由民主党消滅の危機
 では、何故に日本政府が2022年11月に日本の国家安全保障を急遽変更したのかに付いて説明する。その原因は第45代アメリカ合衆国大統領にドナルド・ジョン・トランプ( Donald John Trump)が就任したからである。トランプが大統領に就任したこと世界中の安全保障の枠組みが綻びを見せ始めたのである。
2016(平成28)年7月21日、米共和党大統領候補となったドナルド・トランプは、アメリカを「法と秩序の国」にして「安全を取り戻す」と強調した。演説の中の「法と秩序」は、1968(昭和43)年にニクソンが大統領候補受諾演説から引用したものであった。つまり、トランプ外交の中心は世界各地に派兵しているアメリカ軍撤収が中心政策となることは大統領選挙前から十分に予想されていることであった。そして、大方の予想を裏切りトランプは大統領選挙を制した。2017年1月20日に第45代アメリカ大統領としてドナルド・ジョン・トランプ‘(Donald John Trump)が就任した。就任後のトランプは、ドイツ、アフガニスタン、ソマリアそして朝鮮戦争終結に向けて動き出した。
アフガニスタン撤退
2001年10月、米中枢同時テロの報復として米英軍がアフガンを空爆し、米軍が駐留を開始した。同年12月にタリバン政権を崩壊させたが内戦は収まらず治安維持のため継続的な派兵を余儀なくされて「米史上最も長い戦争」となっていた。2020年2月にトランプがタリバンと和平合意し撤収することになった。その結果、20年間の対テロ戦の戦費は8兆ドル(約1100兆円)、米兵の犠牲者は約7000人に上った戦争は終了することになった。
ドイツ撤退
2020年7月29日、アメリカはドイツに駐留している米軍を約1万2000人削減する計画を発表した。ヨーロッパにおける「戦略的な」再配置としていた。削減する米兵のうち、約6400人はアメリカに帰国し、その他は、イタリアやベルギーなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国に移すことになった。トランプ米大統領はこの動きについて、NATOの防衛支出目標をドイツが達成していないことを受けたものだと述べている。しかし米議会では、ロシアを大胆化させるとして、反対が広がっていた。そして出てきたのがロシアゲート事件であった。
朝鮮撤退
2018(平成30年)年6月12日にシンガポールでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長及び国務委員会委員長による史上初の首脳会談が行われた。会談後出された共同声明は次のとおりである。
『……
共同声明
アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプと朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、史上初の首脳会談を2018年6月12日、シンガポールで開催した。
トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係や朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制を構築するため、包括的かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した。
新たな米朝関係の構築は朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると信じると共に、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進すると認識し、トランプ大統領と金正恩委員長は次のように宣言する。
  1. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、平和と繁栄を求める両国国民の希望に基づき、新たな米朝関係の構築に取り組む。
  2. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、協力する。
  3. 2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。
  4. アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮戦争の捕虜・行方不明兵の遺骨回収、既に身元が判明している遺体の帰還に取り組む。
トランプ大統領と金正恩委員長は「史上初の米朝首脳会談が、両国の数十年にわたる緊張と敵対を乗り越える新たな未来を築く重要な出来事であった」と認識し、この共同声明の内容を「完全かつ迅速に履行すること」を約束した。
アメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国は米朝首脳会談の成果を履行するため、「マイク・ポンペオ国務長官と朝鮮民主主義人民共和国の高官の交渉を続けて可能な限り迅速に履行する」と約束した。
トランプ大統領と金正恩委員長は「新たな米朝関係の発展と、朝鮮半島と世界の平和、繁栄、安全のために協力すること」を約束した。
……』
 アメリカと北朝鮮による共同声明で「朝鮮戦争を終結させる」ことで合意したのだ。
 朝鮮戦争は、昭和28(1953)年7月27日に、38度線近辺の板門店で北朝鮮、中国軍両軍と国連軍の間で休戦協定が結ばれたものの、70年を経過した現在も朝鮮戦争は終結しておらず休戦のままなのである。(此の詳細は「令和4年日本国国防方針」批判(第五回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)でも報告している)。

3、「朝鮮戦争終結」に慌てた自由民主党
 このトランプの動きに焦ったのが自由民主党である。自由民主党は、朝鮮戦争が続くことを理由に、アメリカ軍に自衛隊指揮権を移譲しアメリカ軍駐留を認めることで多くの利権(原子力も含む)を得るとともに長期政権を約束されてきた。
 それを可能にしてきた協定がある。それは、昭和29(1954)年2月19日に朝鮮国連軍が我が国に滞在する間の権利と義務その他の地位及び待遇を規定する「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)である。同協定の中にアメリカ軍が駐留する期限については定めがないものの、撤収条件が決められていた。
『……
第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊か朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。
……』
つまり、「朝鮮戦争」が終戦となるとアメリカ軍は、駐留する根拠が失われるのである。(此の詳細は「麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者」(クリックで遷移)で報告している)。

 繰り返しになるが、朝鮮戦争が終戦となると、「アメリカが駐留すること」を保証することが自由民主党政権の役割であるため、自由民主党の存続意義がなくなるのである。アメリカ軍が撤退すると同時に、自由民主党がこれまでに築きあげた防衛利権は消滅することになる。例えば辺野古基地も横田空軍基地も不要になるのだ。日本としてはアメリカに日本の国権を差し出すことで成り立っていた安全保障政策であるのにもかかわらず、突然、「もう不要であると」と云われたことに等しい。これで自由民主党は「アノミー」(規則あるいは規則を課す者が正統性を失った不安定な状態)に陥ってしまったのだ。
降ってわいたようなトランプと金正恩による終戦に向けた協議が進む中で、自由民主党は新たな安全保障政策を策定する必要が生まれることになった。そのため自民党政権は、「トランプのデタント」という悩みを抱える同じNATOに接近するととともに、イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI:Royal United Services Institute for Defence and Security Studies)から安全保障に関する助言を受けるようになった。
 これに付いては「令和4年日本国国防方針」批判(第四回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)で紹介した。
そこで問題になったのは2020年のアメリカ大統領選挙であった。トランプが勝利して再選されればNATO解体、朝鮮戦争終戦が現実のものとなる。大方の予想は「トランプ圧勝」であった。ところが大番狂わせが生じた。民主党候補バイデンが、大統領に当選してしまった。大統領選挙後のアメリカは、バイデンの当選を巡り大混乱となった。その際に「ドミニオン」(dominion:支配権)という投票集計機が問題になったりもした。
 しかし、日本の場合、バイデンが大統領になったことで自由民主党は、消えかけた蝋燭の炎が再び勢いを取り戻した。蝋燭が消えないだけでも幸運なところに、更に、幸運な出来事が起きることになった。それが、2022年2月24日、ロシアはウクライナへ軍事侵攻を開始であった。そしてロシアがウクライナに侵攻したことを理由として作成されたのが防衛三文書であった。その際に、日本政府は日本の安全保障について十分に検討することもなく「トランプ・デタント」に苦しんできたNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)の主張をそのまま受けいれたものになってしまった。その際、中国を仮想敵国するために利用したのが「国共内戦による台湾侵攻」と、台湾が尖閣列島領有を主張していることを国民には伏せておきながら、同島を防衛する自衛隊を台湾有事に参戦させる筋道をつけてしまった。(尚、RUSIと日本の関係は「令和4年日本国国防方針」批判(第四回) -国防権のない日本の危険な外交と国防-」(クリックで遷移)を参照願いたい)。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に連動するかの様にペロシが台湾を訪問したことで、台湾有事がいよいよ真実味をおびてきた。ところが2023年2月16日に、ブリンケン国務長官が訪中して「One China Policy」を追認することになった。
 これにより防衛三文書で決で決めた仮想敵国が消滅してしまうという大失態を仕出かすこととなったのだ。そのため次の国会では、根拠のない防衛三文書で莫大な予算を獲得したことの処理を求められることになったしまった。(この件「王毅外相訪米で防衛三文書を根拠とした日本の外交と安全保障は窮地に陥る」(クリックで遷移)で報告済みである)。

4、韓国が日本に友好的になった理由
 2022年03月9日に行われた韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦が当選した。就任以降、尹錫悦大統領は、それまでの文在寅が行ってきた反日政策を改め日本に融和する姿勢を見せている。しかし前述「麻生太郎自由民主党副総裁という大馬鹿者」でも触れた麻生太郎という人物を通して日韓関係を見た場合に違った側面が見えてくる。
 麻生太郎であるが、1990年の衆議院選挙に福岡2区から立候補して初当選した。そのときに麻生太郎は文鮮明に「誓約書」を提出し選挙協力を受けていたことが勝共新聞『勝共推進議員名簿』に暴露されている。麻生太郎は統一教会系の国会議員なのである。それに麻生太郎は、公共水道を民間に売り渡すことを宣言した人物でもある。また麻生太郎は日韓協力委員会」の会長でもある。
怪しい経歴をもつ麻生が、防衛三文書を閣議決定する直前、2022年11月2日に韓国を訪問している。麻生太郎が訪韓した目的は、防衛三文書でロシア、中国、北朝鮮を仮想敵国とする政策に尹錫悦政権を従わせるためであった。その際に、打ち合わせが行われたであろう重要案件がある。それは1978年6月22日に発効し50年間効力をもつ「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(南部協定)に関係したものと考えられる。同協定は、2028年6月21日までは有効があるが、満了する3年前の2025年に日本が終了の意思を通告することができるという規定が付いたものである。
 この南部協定であるが日本の国益にとって大きな問題がある。一つは南部協定の共同開発区域が完全に日韓中間線以南の日本側大陸棚に設定されていること、もう一つは中国が自国大陸棚に対する侵犯であると抗議をしているものである。そのため日本が協定を破棄した場合に直ちに大陸棚境界を巡って日中韓3国の激しい了解問題が展開されると予想されている事案なのである。
この南部協定を締結した経緯であるが、同協定は、岸信介が後ろで糸を引く民間の「日韓協力委員会」が取りまとめた案を、外務省に提言して実現させたものである。つまり、岸信介は、ニクソンのデタント政策によって、冷戦で築き上げた共産主義封じ込めラインが崩壊してしまうようなことがおきないため、台湾と韓国の指導者にたいして、つまり蒋介石に尖閣列島領有を薦め、韓国政府には南部大陸棚を進呈したものなのである。
 このころの韓国の巷では「……(共同開発地域での)石油のもうけの三%は政治献金されるのだ、日韓両国の有力政財界人、そういった者を含めて三%の権益というか利益というものが配分される……」[1]という噂が飛びかうほど日韓の悪質な利権関係とみられていた。
 それにも拘らず岸と矢次が共同開発地域にこだわった理由は、領海内の開発で業者から3%の裏金を受取ったら贈収賄事件になるが、共同開発地域には日本の主権が及ばないことを利用して資金浄化をしてしまおうとしたことにある。国家主権を売って黒い資金を手に入れた、その金を選挙につぎ込んで政権維持および拡大を狙う、この手法を編み出したのが岸信介と矢次一夫で、その後継者が、安倍晋三であり、麻生太郎なのだ。
この「共同開発区域」の原型となったのが、岸信介と矢次一夫のコンビによる「蒋介石に尖閣列島領有を薦めた尖閣列島問題」だったのである。岸と矢次が東シナ海の領海問題を複雑化させて利権確保したことが尾を引き、現代では国家安全保障の問題となってしまったのだ。
以上のことから麻生太郎による2022年03月9日の訪韓は、2025年6月20日まで、南部協定の取り扱いに関して両国の利害を調整しておく必要があったということで、出かけたのだ。この時に麻生太郎と尹錫悦大統領との間で了解が得られたことから、2023年3月6日に輸出管理に関する日韓間の懸案事項について二国間の協議を再開することになった。
 韓国の対日政策が融和的となったわけではなく、日本領にある大陸棚利権をもう50年延長して韓国の特権とするためなのだ。(尚、南部協定付いては「統一教会に誓約書を提出した麻生太郎と「日韓協力委員会」」(クリックで遷移)に詳しく紹介しておいた)。

 自由民主党は、アメリカに国権を売渡すことを党是として戦後70年間の長きにわたり政権の座を維持してきた。ところが、トランプ大統領が就任すると、それまでアメリカが日本に強く求めていた国権を売渡したこととは相反する朝鮮戦争終戦を言い出した。これに慌てた自由民主党は、急遽、新な仮想敵国もしくは紛争地を求めることにした。そこで策定した紛争地が尖閣列島であった。そもそも、尖閣列島領有問題は、岸信介の売国行為から始まったもので「自由民主党の恥部」であったことから、過去の歴史を隠蔽する絶好の機会と映った。そして纏めたものが防衛三文書であった。しかし、ブリンケンの訪中で「One China Policy」に回帰することになって防衛三文書の根拠は失われた。
自由民主党の解党する時期が間近に迫つてきた。
以上(寄稿:近藤雄三)

[1] 「040 松浦利尚」『第71回国会 衆議院 決算委員会 第27号 昭和48年10月9日』。


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