愛する友

昼間は、あまり家にいないけれど、居るときは色んな人が訪ねてきます。
宗教の布教や勧誘もその一つ。
場所柄、天理教の信者さんや、あとキリスト教や、道徳運動、新興宗教・・・

Ｔさんは、私の母くらいの年齢で、この地区を回られているキリスト教の信者さん。
自転車事故で不自由になった足をかばいながら、ゆっくり歩いて訪問されます。

10年ほど前、たまたま門の掃除をしていた時に、いらしたことがあって、
優しい笑顔にひかれて、長い立ち話をしました。
彼女の身の上は、それは興味深いもので、それらすべてを乗り越えての笑顔でした。
それ以来、道ですれ違うと、お互い声をかけあい、立ち話をする大の仲よしに。

でも普段の布教活動では、いつもインターフォン越しの会話。
出かける用意をバタバタしている時や、汗だくで拭き掃除をしている最中などで、
家に居るときの私は、なぜか自分のことでいっぱい、いっぱい・・・だから。

昨夕、家に帰ると、郵便受けに絵葉書が入っていました。
プロの写真家である息子さんの名前入りポストカード。

　『愛する友　藤田様』ではじまる長い文章。そこには、いつも訪問するたびに
私の声に癒されて、暑い日も爽やかさを感じている・・・とお礼が書かれていました。

なんだか切なくなりました。
忙しいし、外は暑いし、蚊もいっぱいいるし（笑）・・・そんな理由でＴさんが来ても
最近は、インターフォン越しの会話しかしていない私。それなのに・・・

せめて顔だけ出して
　「足の調子はいかがですか？」ぐらい、言えるのに。『愛する友』なんだから。

勧誘は決してせずに、
　「足のリハビリを兼ねて、こうして回っているのですから
何も、気にしないでくださいね」と、柔和な笑顔で話しながらも
いつも私のことを気にかけてくれる女性。
数年前には、自慢の手作りケーキを１ホール丸ごと頂いたことも、思い出しました。

葉脈の美しい葉っぱのポストカードを見ながら、
これからは、声だけですませず、ちゃんと顔を出して誠意を見せたいと思いました。