~あらすじ~
鬱蒼とした森に囲まれた城山を中心に擁する四国のある町。
母と同じ情念にとらわれる少女。未来を予知していたような奇妙な絵画に怯える女。孫娘に一目会うために帰ってきた男……。
まるで城山に引き付けられるように暮らす人々の10話の物語。
~感想~
ジャンル分けすれば純然たるホラーながら、連作短編集の形式や、とあるトリックなどミステリの技巧を取り入れた傑作。
作者が居住する愛媛県松山市をモデルにした町の存在感も抜群で、町そのものが主役と言え、10作の短編は、それぞれ独立した一個の話だが他の短編と、物語と登場人物が複雑に絡み合い一つの長編を形作り、その背景を重層的に描き出す。
一読しただけでは気づきにくい関連もいくつかあり、できれば人物名だけでもメモしておくのを勧める。
時系列が入り乱れるので、群像劇と呼ぶのは厳密には間違いかもしれないが、各人の行動が他者の物語に影響を与えていく手法は完全に群像劇のそれで、そのうえ後の話で明かされる事実が、前の話の様相を塗り替えてしまう手法は完全にミステリのそれであり、各編を読者の脳内で繋ぎ合わさせ、一つの大きな流れを想像させる手法は完全にホラーのそれと、いくつものジャンルの長所を組み合わせた、とてつもなく良く出来た構成には唸らされるばかり。
抑えのきいた安定感ある筆力で、多彩なジャンルを縦横無尽に横断して見せた、ホラー・ミステリ問わずあらゆる本好きに勧められるだろう傑作である。
18.11.13
評価:★★★★☆ 9
鬱蒼とした森に囲まれた城山を中心に擁する四国のある町。
母と同じ情念にとらわれる少女。未来を予知していたような奇妙な絵画に怯える女。孫娘に一目会うために帰ってきた男……。
まるで城山に引き付けられるように暮らす人々の10話の物語。
~感想~
ジャンル分けすれば純然たるホラーながら、連作短編集の形式や、とあるトリックなどミステリの技巧を取り入れた傑作。
作者が居住する愛媛県松山市をモデルにした町の存在感も抜群で、町そのものが主役と言え、10作の短編は、それぞれ独立した一個の話だが他の短編と、物語と登場人物が複雑に絡み合い一つの長編を形作り、その背景を重層的に描き出す。
一読しただけでは気づきにくい関連もいくつかあり、できれば人物名だけでもメモしておくのを勧める。
時系列が入り乱れるので、群像劇と呼ぶのは厳密には間違いかもしれないが、各人の行動が他者の物語に影響を与えていく手法は完全に群像劇のそれで、そのうえ後の話で明かされる事実が、前の話の様相を塗り替えてしまう手法は完全にミステリのそれであり、各編を読者の脳内で繋ぎ合わさせ、一つの大きな流れを想像させる手法は完全にホラーのそれと、いくつものジャンルの長所を組み合わせた、とてつもなく良く出来た構成には唸らされるばかり。
抑えのきいた安定感ある筆力で、多彩なジャンルを縦横無尽に横断して見せた、ホラー・ミステリ問わずあらゆる本好きに勧められるだろう傑作である。
18.11.13
評価:★★★★☆ 9