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ミステリ感想-『焦茶色のパステル』岡嶋二人

2015年02月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
競馬評論家の夫が二頭の馬、そして牧場長とともに射殺された。
妻の大友香苗は離婚寸前だった夫の足跡を友人の綾部芙美子とともに追う。
夫は射殺された焦茶色の毛並みを持つ仔馬・パステルの売買に疑問を抱き「これ本当にパステルか?」という謎めいた言葉を残していた。

82年江戸川乱歩賞、文春1位、東西ベスト(85年版)61位


~感想~
後に数々の競馬ミステリをものすことになる岡嶋二人のデビュー作。
競馬に疎い主人公を通し、競馬初心者の読者にも無理なく知識を与えていく設定や、射殺事件・仔馬の売買・大学講師殺害と数々の謎を一本にまとめていく展開は実にそつなく、凡百のデビュー作の域を超えている。
特筆すべきは、競馬ミステリを書くにあたって無くてはならない「競馬を題材にした理由」に素晴らしい「動機」を用意してみせたこと。なるほどこの動機ならばこれだけの事件が起こってもおかしくなく、競馬を題材にしたことも納得至極である。
それだけではなく正体の見えない黒幕に挑む鋭い推理、終盤の活劇的な展開にどんでん返し、シリーズ作品の主役を張ってもおかしくない魅力あふれる探偵役と、何拍子も揃った良作だった。

また2時間ドラマ化された際のタイトルが、いかにも2時間ドラマらしくストレートかつネタバレも甚だしい代物なので、読了後に調べることをおすすめする。


15.2.10
評価:★★★☆ 7

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