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ミステリ感想-『Iの悲劇』米澤穂信

2024年04月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
住民全員が去った限界集落に移住者を迎え入れるプロジェクトを任された通称「甦り課」。
出世志向の公務員だが職務に忠実な万願寺は、移住者に寄り添い生活を支える。しかし住民たちの間にはトラブルが相次ぎ…。

2019年このミス11位、文春4位

~感想~
作者お得意のほろ苦連作短編集。と一口で言ってしまうのは乱暴だが、そう評するのが一番早い。
描写も筆致もいつもながら丁寧で過不足なく最低限の質は保っているが、しかしそれ以上のものはない。真相は隠す気もなさそうなほど見破りやすく、個々の短編はかなり弱い。特に2話目は読者を、というか人間を舐めてるのかというほどアホらしすぎる真相で、東川篤哉のユーモアミステリならともかく大真面目な作品でこれはいただけない。気づけよ。
途中で短編ミステリですらない閑話休題がしれっと混ざってるのも好みではないし森博嗣で見たトリックもある始末だが、ラストシーンの寂寥感は素晴らしかったので6点とした。
しかし最近読み始めた宮部みゆき「ぼんくら」が今のところほぼ同じプロットで19年先行しており、それを読み終わり次第、改めて評価を下したい所存である。


24.4.29
評価:★★★ 6
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