小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『閻魔堂沙羅の推理奇譚』木元哉多

2018年05月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
死者の生前の行いをポイント化し、天国と地獄へ振り分ける閻魔大王……の娘の沙羅。
現世に未練を残した死者に、彼らの記憶だけで謎は解けるとつい口を滑らせてはゲームを持ちかける。
10分以内に解ければ生き返り、解けなければ地獄行き?

2018年メフィスト賞


~感想~
公式のあらすじがだいぶ実際の内容と違うのだが直前に書き直したのだろうか?
それはともかく設定だけ見れば、ラノベの皮を被ったガチガチの本格ミステリを期待する向きもあるかも知れないが、フェアプレイは重んじられているものの、ミステリとしては初歩的、というか超普通の出来。
後半になるにつれ作者の筆に慣れてくると伏線が次々と目に止まり、出題と同時に答えがわかってしまうが、実は主眼はそこには無く、解決後のちょっといい話が本番。
大半が殺人事件なのに、ものの数ページでちょっといい話へと強制変換し、心温まらせてしまう豪腕ぶりは「銀魂」を思い出させる。
ただ気になったのが前半はまだしも後半の何作かは生き返らせる理由がほぼ無く、話の都合上そうしているだけにしか思えない。器用そうな作者なのにそのあたりはちょっといいかげん過ぎはしまいか。
ともあれ新人離れしている、とまでは言わないが、非常に読みやすく過不足ない描写で会話も軽快と、気軽に読める佳作ではある。

早くも今月中に第二作も発売予定で、テンプレにはまった作風だけに、それを利用し意外なトリックを仕掛けることも容易で、評判が良ければまた読んでみたいと思う。


18.5.17
評価:★★☆ 5
コメント