~あらすじ~
1944年、19歳のティムはアメリカ軍に身を投じ、祖母譲りの料理の腕で特技兵となる。
銃を取りドイツ軍と戦うかたわら、コックとして働き、そして周囲で起こる謎に挑む。
不要なパラシュートを集める兵士、一晩で忽然と消えた数百箱の食材、雪原をさまよう幽霊……。
2015年このミス2位、文春3位、日本推理作家協会賞(短編)候補、直木賞候補、本屋大賞候補
~感想~
あらすじだけ見れば、大戦末期だし時々は銃も撃つけど基本的にはコックで、現地調達の食材を駆使して戦場グルメを堪能し、戦地ならではの日常の謎を個性豊かな仲間と解き明かす――みたいなゆるいミステリを想像するだろうが、全くの真逆。
まずノルマンディー上陸作戦から始まる戦場が劣勢に次ぐ劣勢で、補給はたびたび滞り、ゆえにグルメどころか不味い食事をどうにか形にしているだけで、食べたくなるような料理はほとんど無い。
コックと日常の謎は脇に置かれ、主眼は過酷な戦場を描くことにあり、戦友はじめ老若男女の無残な死体が全編に渡って転がり、終盤にはドイツ戦ならば当然あれが登場しと、胸が悪くなるような描写が続く。子供がこれだけ死ぬミステリはかつて無いのでは。
しかしこれがもう、とにかく面白いのだ。
豊富な参考文献から感じられる取材量に見合った、コック兵というこれまでほとんど顧みられなかった視点から描かれる物語が新鮮で、期待される戦地ならではの日常の謎もどれも魅力的かつ納得の行く解決を迎える。
ティムという一兵士の成長譚、ヨーロッパ戦線の一記録としても読ませ、時間の流れを感じさせるエピローグは、この物語の結末にはこれしかないような素晴らしいもので、エンタメ作品として極上の出来に仕上がっている。
戦争物ながらコックとミステリを組み合わせたことでとっつきやすく、ジャンルを問わず広く読まれるべき、大袈裟に言えばミステリ史に残りうる一作で、もし漫画化すれば死ぬほど売れると思うのだが、企画は進んでいないのだろうか。
18.5.1
評価:★★★★☆ 9
1944年、19歳のティムはアメリカ軍に身を投じ、祖母譲りの料理の腕で特技兵となる。
銃を取りドイツ軍と戦うかたわら、コックとして働き、そして周囲で起こる謎に挑む。
不要なパラシュートを集める兵士、一晩で忽然と消えた数百箱の食材、雪原をさまよう幽霊……。
2015年このミス2位、文春3位、日本推理作家協会賞(短編)候補、直木賞候補、本屋大賞候補
~感想~
あらすじだけ見れば、大戦末期だし時々は銃も撃つけど基本的にはコックで、現地調達の食材を駆使して戦場グルメを堪能し、戦地ならではの日常の謎を個性豊かな仲間と解き明かす――みたいなゆるいミステリを想像するだろうが、全くの真逆。
まずノルマンディー上陸作戦から始まる戦場が劣勢に次ぐ劣勢で、補給はたびたび滞り、ゆえにグルメどころか不味い食事をどうにか形にしているだけで、食べたくなるような料理はほとんど無い。
コックと日常の謎は脇に置かれ、主眼は過酷な戦場を描くことにあり、戦友はじめ老若男女の無残な死体が全編に渡って転がり、終盤にはドイツ戦ならば当然あれが登場しと、胸が悪くなるような描写が続く。子供がこれだけ死ぬミステリはかつて無いのでは。
しかしこれがもう、とにかく面白いのだ。
豊富な参考文献から感じられる取材量に見合った、コック兵というこれまでほとんど顧みられなかった視点から描かれる物語が新鮮で、期待される戦地ならではの日常の謎もどれも魅力的かつ納得の行く解決を迎える。
ティムという一兵士の成長譚、ヨーロッパ戦線の一記録としても読ませ、時間の流れを感じさせるエピローグは、この物語の結末にはこれしかないような素晴らしいもので、エンタメ作品として極上の出来に仕上がっている。
戦争物ながらコックとミステリを組み合わせたことでとっつきやすく、ジャンルを問わず広く読まれるべき、大袈裟に言えばミステリ史に残りうる一作で、もし漫画化すれば死ぬほど売れると思うのだが、企画は進んでいないのだろうか。
18.5.1
評価:★★★★☆ 9