お父さんの底力。

寅さんとか長島監督とかによく例えられるお父さん。ついに脳梗塞で倒れました。しかしマイペースさに変わりなし!

死んだ人見たことある?

2015-10-23 00:38:02 | Weblog

看護婦さんは動じないねえ、

死人にもびくともしないねえ、

病院で亡くなる人も多いから慣れてるんだねえ、という話をしていて

「そういえばお父さん、死んだ人をみたことがある?戦争中とか」

と言う話になった。

「そりゃあるさ。焼け跡に何か使える物はないか探しにいった時とか、焼けこげて真っ黒になった死体」

なんてよくみたなあ。」

と言ってから少し考えて

「でも一番びっくりしたのは青白い水死体のカオを見た時だなあ」

と思い出したように言った。

 

それは東芝の工場が空襲で焼けた時のことだった。

コンデンサーには絶縁体として蝋を使っていたため、材料が工場に

山になって積まれていた。なので工場が焼けたとき

大量の蝋が川に流れ出し、それをすくいに友達とでかけたそうだ。

集めて溶かし、芯を通して筒に流し入れてろうそくをつくるために。

停電も多かったので重宝したそうだ。

(しかしたくましいな

そのとき、友達は長い網を持っていったのだが、

川の真ん中に髪の毛のような物が浮いていたので

なんだあれ?と網でたくりよせたところ、すーっと

青白い顔が浮いてきたそうだ。

「うわっと言ってオレは吐いちゃったけど、

食べてないからなんにも出なかった。

いやーあれには驚いた

 

いつも同じような昔話ばかりきくけど、この話は初めて聞いた。

お父さんのように戦争中を生き抜いてきた人は、きっと

私が思いもよらないような体験をしているんだろう。

特にしゃべることもなく、聞くこともなく、

その記憶が埋もれていくのが

もったいないような、もどかしいような気がする。

聞き出す力がもっとあれば、

じっくり聞く時間がもっとあれば、

もっといろいろなことを聞けるのになあ

とか思う。

 

あのとき倒れたままだったら、

この話は永久に聞けなかっただろう。