お父さんの底力。

寅さんとか長島監督とかによく例えられるお父さん。ついに脳梗塞で倒れました。しかしマイペースさに変わりなし!

初めての便つきパンツ!

2016-11-19 23:18:55 | Weblog

最近お父さんはときどき大便が間に合わないことがある。

今日は病室に行くといちだんと臭ったので

「トイレは大丈夫?」

と聞いたら

「ああ大丈夫だ」

と、仰向けになったまま答えた。

そうか、同室の患者さんの臭いなのかな?

うーんけっこうにおうなーお父さんも大変だなー

と思ってしばらく話していると、

「どうもズボンにちょっと便がついてしまったようだ」

と言い出した。

ズボンについたって事は、ステテコにもパンツにもついてるよね。

全部換えた方がいいじゃない?

「いや大丈夫だ!ズボンだけ換えれば大丈夫だから!」

と言い張る。ジャージのズボンを脱がしてもそれほどついていない。

「一応ステテコもぬがしてみるね」

嫌そうなお父さんのステテコを脱がすとそこには大便の固まりがべったりついていた。

さらにパンツのすきまから、お尻に便がついたままなのが見えた

「トイレでもう一度ウォシュレットで流してきた方がいいよ」

起き上がった拍子にシーツにも便がつく。

看護師さんを呼んできて、シーツを換えてもらった。

 

家に下着を持って帰って考えた。

今まで、少しは便がついていたことがあったけれど、こんなにがっつりついているのは初めてだ。

 

洗濯のとき、どこで便を流せばいいのだ?

お風呂場で流すのもなんだかなー。

結局手袋をはめてトイレの水でブラシでこすってだいたいの便を洗い流し、

お風呂の残り湯があったので、バケツの中に洗剤をいれてこすり洗い、

水を換えてしばらく洗剤(驚きの抗菌力!と書いてあるやつ)につけて

それから洗濯機に洗剤と柔軟剤(本格消臭!て書いてあるやつ)を入れて洗った。

慣れてないせいもあって、下着とジャージのパンツ、三枚洗うだけでずいぶん時間がかかった

そして精神的に疲れた。臭いってけっこうダメージくるね〜。

便を洗った場所にはしつこく臭いが残るのだ!

こういうことを毎日やっている介護者は本当に偉いと思う。

私も淡々とできるようにがんばろう。慣れれば大丈夫!

たぶん!きっと!

がんばれオレ

 

 

お父さんは私に、便を漏らしたってことを見られたくなかったんだろう。

なんといっても強くて自信満々のお父さんだったから。

また情けない思いをしたと思う。

 

家に帰ってきても、便が間に合わなくても、

お父さんは絶対オムツをしたがらないと思う。

プライドが高いのって介護する側が苦労するなー。

けれど、お父さんがもし、

自分でできるんだ〜!バカにするな!オレは大丈夫!

という気持ちを失ったら、一気にがっくりきそうだし、

まあそれよりましなのかな

 

 

 

 

 

 


いい人っぽいお父さんはかなしい。

2016-11-14 00:25:29 | Weblog

最近お父さんは、私が行っても

「お前もういいから帰りなさい。お前にはお前の生活があるんだから。

ありがとよ。」

と、すぐ帰そうする。

最近お父さんは必ず帰る前に握手を求める。

 

最近のお父さんの言動や行動が、全体的にいいひとっぽくなっているのが、

逆に弱っているのかなと思って悲しくなる。

 

 

それにしても、お父さんが絶好調のとき、

私が子どもの時にこんな思いやりのある言葉をもらっていたら、

もっとまっすぐないい子に育っていたかもしれないのに、うまくいかないもんだ

あのころの暴言の嵐からは今のお父さんは考えられない。

やっぱり長生きはするもんだね

 

お父さんの涙。

2016-11-13 23:31:36 | Weblog

入院ももう一月半くらいになった。

むくみも引いていないし、談話室まで歩くのも息を切らしている。

でも私が行くといつも談話室で雑談をして、

しゃべるうちにだんだん調子が出てきて、

早く出たいな、もう飽きたよ、と言ってはいるが

基本的には明るいお父さんだった。

でも、その父が今日、泣いたのだ。

雑談の最中に、突然!!

 

おばあちゃんが亡くなった時も、お母さんが亡くなった時も

私の前では涙を見せなかった父が!!

(陰では泣いていたらしいが)

本当に驚いてしまった。

「胸を突かれる」って表現があるけど、

これだな、と後から思った。

 

何事もないように、不安そうなところやイライラしたところをみせなかった

父だけど、本当はいろいろ不安だし、つらいんだろうなあ。

と、改めて思い知った感じがした。

回復が思うように進まず、先が見えない不安。

自由な生活ができないまま、どんどん病気が進行して行くんじゃないかと言う不安。

失業して働こうともしない弟のことも涙の一因だったのかもしれないけど。

(その話しているときに泣いたから

 

 

ステロイドは情緒不安定になるっていうからそれもあったかもしれないけど、

あの父が泣いたということに、とにかく驚いてしまった。

 

客観的にみれば、お父さんももうりっぱな老人だし、しかも病気だし、

気が弱っていても不思議はない。

私はまた、自分の精神年齢の低さもだめだなと思った。

いつまでも強いお父さんのイメージが抜けないのだった。

 

 

いつも、自由に好きなことをやって、何でも自分でできると行動していた父が、

こんなに閉鎖的な空間に閉じ込められて、体もままならないのは

さぞかしくやしいことだろう。

 

いつもすぐそういう年寄りたちを下にみて、

優越感に浸っていた父だから(そういうところが嫌いだった)、

ほら、そういう人たちの気持ちがわかったでしょ、

あんなにバカにしてたから、と思うけど、

さすがに気の毒すぎて言えない。

 

「どうしたの、大丈夫?」

と声をかけた私に、見えないように下を向いて涙を拭きながら、

「大丈夫だ。おれは男だから。」

と強がってる父は、本当に偉いなあと思った。

さすが、いつもいばっているだけのことはある

たぶん、つらいことはたくさんあっても、子どもの私には

弱い自分をみせないようにがんばってくれているんだろう。  


もうやけくそだ〜。

2016-11-01 10:04:27 | Weblog

病室に行くと、お父さんは私の顔を見るなり

「もうやけくそだ〜」

と言いました。

水とお茶だけ700ccだけ、という毎日にがまんできず、

ついにこっそり病棟を抜け出して(!)缶コーヒーを買って

飲んでしまったというのです。

「でもなー」

と情けなさそうに

「あんなに飲みたかったのに、思ったより全然おいしくなかったんだ」

と。

町をぶらついて、ふらりと喫茶店に入る。

回りの人のおしゃべりとか店に流れる音楽を聴きながら、

入れたてのコーヒーの香りをかぎながら、今買ってきた本を読む。

あるいは家でのんびりしていて、喉が渇いた頃合いに

コーヒーを入れて、飲みながらおしゃべりをする。

 

やっぱりそういう環境じゃないとおいしくないんだなあ、と。

 

「そんなことは当たり前のことだと思っていたけど、

いざできなくなるとそのありがたさがわかるなあ」

としみじみ言って、

ああ〜いつになったら帰れるんだろう〜。

と心からの声、と感じでため息をついていました。

 

暴飲暴食はぜったいだめだよ、と口を酸っぱくして言っていたのに、

にやにやしながら聞き流して、あげく勝手にもう治った、と

自信満々で、入院直前には同窓会でお酒を飲みまくったあげくのこの始末です。

自業自得だよ!と思いつつ、

やっぱり気の毒です。

好きな物も食べられず、飲めず、外出もできずに日がな一日過ごすなんて。

外に出て、人と遊ぶのが大好きなお父さんならなおさらつらいだろうな。