今日は御即位のパレードの日。
病棟の休憩室の前を通り過ぎると、いつになくたくさん患者さんが集まってテレビをみていました。
まだ寝たきりのお父さんにも見せようと思って、ポータブルテレビをもっていきました。
病室に入ると、天井をじーっと凝視しています。
きたよ、と言っても反応が薄い。なおも天井をみています。
テレビをつけて
『ほら、ちょうどパレードが始まったところだよ。きれいだねえ」
とお父さんの前に差出しました。
『ほんとだ」
とほんの数秒見たかと思うと、また押し返して来て天井をながめはじめるのです。
「なんか見えてるの?」
試しに聞いて見ました。
すると、回らない口で、ほとんど出ない、ささやき声で
『うん、ほら洪水が映っているだろう。あれはどこだ?台風19号か?」
というのです。
そう、お父さんには天井にテレビが映っているように見えるのです。
前に見たテレビの映像の記憶が流れ出ているのでしょうか?
入院前もほとんど一日中テレビを見ていたので。
それからしばらくいましたが、新聞を見せても興味ない、CDでモーツアルトを聞かせても
天井をながめつづけたまま音楽を聴いている様子もない。
爪を切ったり保湿剤を塗ったりしても反応はありません。
ビー玉のように目を丸くして天井を凝視していたかと思うと、目の玉が上の方に移動していき、
まぶたがほぼ閉じていく‥寝たかと思うとまた天井を凝視‥の繰り返しです。
ときどき何かを食べるしぐさをします。
口はずっと半開きで、おばあちゃんが痴呆になったときによく似た表情です。
入院して一週間でこんな状態になってしまったことに唖然としました。
一時的なものかもしれないけれど。そうだといいけれど。
何回も入院しているけれど、こんなに意思の疎通ができなくなったのは初めてです。
救急入院させなかった方が良かったかも。と思いました。
でもどちらにせよ、入院になったでしょう。
一時的なものかと思い、看護師さんにも話をきいたら、もう透析始まってからはずっと幻覚がみえているそうです。
テレビついてないのに「うるさいから消してください」と言ったり。
トイレも間に合わないから、夜はオムツにしようと思っているんです。
熱が38℃台と高いせいもあるんでしょうね、お年も高齢ですし、とこともなげに言っていたけれど、
家にいるときは熱が高くてもアタマはしっかりしてたぞ
て言うか、熱あるんだ。また何かしら感染症を起こしているのか?
もうろうとしているお父さんを見ているのはつらい。
もしもう少し回復したら、透析になってもやっぱり家でみようかなと思った。
私ひとりでどこまで見れるかわからないけど。
やっぱり透析病院でぽつんとぼーっと寝ているのを想像するとやりきれない。