内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日本滞在中に観たHNKドラマのなかから推薦二作品 ―『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』『あれからどうした』

2024-01-21 16:29:38 | 雑感

 今朝、目立った症状はすべてなくなっていた。まだ少し咳が出るが、喉はもうほとんど痛まない。ただ、この五日間での体力の消耗は相当に激しく、運動ができる体に戻るにはまだ数日かかりそうだ。もうなんでも食べられそうだが、量は病気以前の半分くらいしか食べられない。これも徐々に回復するのを待つしかない。病気の話は今日で止める。
 年末年始の帰国中、滞在したホテルでは夜よくテレビを観た。元日以降は能登半島地震関連のニュースを追うことが多かったが、年末はNHKで放映されていたドラマをいくつか観た。あるいはそのうちの一部をたまたま見かけて興味を覚え、オンデマンドで回を遡ってパソコンで全編を年が明けてから観た。その一つが草彅剛主演『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(前・後編)である。多数のろう者が出演しているこのドラマには心を深く揺さぶられ、多くのことを考えさせられた。丸山茂樹の原作(文春文庫)も年明けに購入し、フランスに戻る機内で読み終えた。
 もう一つ興味深く観たのが『あれからどうした』(全三話)。最初に観たのが第二話で、それがとてもよかったので、第一話へと遡り、最後に第三話を観た。それぞれ一話完結だから、バラバラに観ても楽しめる。
 三話観た後では、第一話が一番のお気に入り。飯豊まりえの演技が実にいい。制作スタッフの話によると、彼女のアドリブ力は卓越していたとのこと。実際、どこまでがセリフで、どこからがアドリブなのかわからないくらい自然でかつユーモラス。すべて場面にぴったりなのだ。
 三話とも、登場人物たちの言っていることと実際の行動とは違っているというのが基本パターンなのだが、飯豊まりえ演ずる証券会社社員だけが、本当に自分の身に昨晩あったことを話しているのに、「よくできた話だねえ」とからかうような反応しか同僚から返って来ず、誰にも信じてもらえないという設定で、そこがまたおかしい。
 無思慮で無益な帰国もまったく無駄だったわけではないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


無思慮で無益な日本滞在の高い代償

2024-01-20 18:15:38 | 雑感

 昨夕、ほぼ四日ぶりに食事(と言えそうなもの)を再開した。といっても、空っぽな弱った胃に負担になるようなものはもちろん摂取できるはずものなく、野菜コンソメのだしの素を解いて卵を二つ落としたスープを飲んだだけである。それでも、ちゃんと味のある温かいものが喉から胃の腑まで広がっていくのを感じられただけで幸いであった。まだ液体が喉を通過するときに痛みを感じるが、食べ物の味を感じられる喜びがそれを打ち消してくれる。
 今朝になって体が昨日よりは軽快になっているのが感じられた。見たところ、口蓋垂及び口蓋扁桃の炎症は縮小している。咳はまだときどき出る。その度に喉の奥がヒリヒリ痛む。唾を飲み込むときもまだ少し痛む。悪寒はまったく感じない。昨日までは感じていた膝から下の倦怠感はなくなった。体温もほぼ平熱に戻ったが、なにか体全体の輪郭がぼやけているようなだるさは残っている。全体として快方に向かっているのだとは思うが、昨日までは感じなかった圧迫感を気管及び気管支のあたりに感じるようになる。炎症部位が拡大あるいは下降しているのかも知れない。
 昼過ぎ、四日ぶりに入浴する。体をきれいにすることができて気持ちがよかったが、浴槽から立ち上がろうとして立ちくらみがする。入浴後、体組成計で計測してみる。この四日間で体重が四キロ減少し、BMIが二〇ちょうどまで下がっているのに対して、普段は一五%前後の体脂肪率が二一%にまで跳ね上がっている。これはそれだけ筋肉量が急激に落ちてしまったことを意味している。それだけこの四日間で体力を消耗してしまったのだ。
 無思慮で無益な日本滞在が招いた、金銭には換算できない高い代償である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今年度前期期末試験監督終了

2024-01-19 14:44:20 | 雑感

 今日午前中の試験監督をやっとのことで終えて昼過ぎによろよろと帰宅した。ほぼまる三日、ほとんど何も食べていなのに等しい状態で外に出たとき、最初はフラフラしてまっすぐ歩くことができなかった。徒歩八、九分の路面電車の最寄り駅まで歩くのもしんどかった。
 教室に入って試験問題と答案を配るとき、「試験問題も下書き用紙も答案用紙に挟んであります」と言ったときの自分の声があまりにも弱々しいことに我ながら驚く。学生たちも怪訝な面持ちで私を見ている。一昨日の試験を受けた学生たちと同じ学生たちなのだが、水曜日のときは、風邪声ではあっても、もう少し大きな声だった。
 「実は日本から帰国した十五日以降病気になってしまって、昨日は最悪で、体温は四十一度まで上がり、悪寒が止まらず、何よりも喉が痛くて唾も飲み込めない状態でした。ここ三日、ほとんど何も食べていないんですよ」と言った後、「だから、もしかすると試験中に気を失って倒れてしまうかも知れません。」と付け加えたら、かなり受けた。「そうなったときは、よろしくお願いネ」と、いつも最前列で授業を聴いている最優秀の学生の一人で、看護師として働きながら勉強している男子学生にお願いする。
 試験中は、ユーカリのエッセンシャルオイルを染み込ませたガーゼ状のタオルをずっと口に当てていた。こうしていると呼吸がかなり楽になる。ただ、ときどき咳き込むのは止められなかった。喉の痛みは昨日よりは軽減しているが、唾を飲み込むのはまだつらく、咳をしただけで喉が痛むのも変わりない。
 上記の看護師の学生は、答案提出の際に、「先生、お薬は飲まれていますか。どうぞお大事になさってください」と日本語で言い残して教室を後にした。その他にも、答案提出の際に、日本語で「どうぞお大事になさってください」と言ってくれる学生もあれば、フランス語で « Bon rétablissement » と言ってくれた学生もあり、答案の最後に「どうぞお大事になさってください」と書き加えてくれた学生もいた。
 別の科目の追試も兼ねていたので都合ニ時間の拘束だったが、終わったときにはほんとうにホッとした。教室で学生の前に立つのはこれが今年度最後、九月の新学年までは教壇に立つことはない。採点は来週月曜日から始めることにして、今週末は安静にして過ごすつもりだ。
 元来頑健な私にして症状がこれだけ重篤化したのは、ウイルスが強力だったということももちろんあるだろうが、三週間の日本滞在中に知らず知らずに積み重なったストレスによって免疫力が低下していたということもあるだろうと今では確信している。
 最初から事情がわかっていれば、今回の帰国などキャンセルしたに違いない。手順前後は私の責任だが、ほとんど無益に何十万円も浪費したことには悔いが残る。今回はっきりしたことは、日本は私にとってもはや帰国する国ではなく、外つ国だ、ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


つばを飲み込むだけでも激しい痛み

2024-01-18 23:59:59 | 雑感

 今日も症状は一向に改善しない。熱は四十度にまで一時達し、少し下がってからも高止まりのまま。布団にくるまって寝ているのに背中に悪寒が走り続ける。何よりもつらいのは、つばをちょっと飲み込んでも激しく痛む喉である。口蓋垂および口蓋扁桃が赤く腫れており、日に何度うがいしても、その直後に多少口内がすっきりすることはあっても、つばを飲み込むときの痛みは同じである。こんな状態でとてもまともな食事はできない。この二日間、ごくわずかの流動食しか口にしていない。スープを一匙流し込むのさえ痛みなしにはできない。ところが、ほとんど一日中布団の中でじっとしているだけなのに、口内にやたらと唾液が溜まる。それを飲み込む痛みを避けるために、唾液を洗面所で吐き出すためだけに何度も起き上がる。だからほとんど眠ることもできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


症状さらに悪化する

2024-01-17 23:59:59 | 雑感

 昨日に比べて症状が改善するどころか悪化する。悪寒、発熱、口蓋垂の腫れがひどく、机に向かって座っているのもしんどく、日中はほとんど布団の中で過ごす。寝ていてもつばを飲み込むたびに口蓋垂に強い痛みが走る。午後四時までには試験監督のために大学に行く必要があり、それまでに多少なりとも症状が改善すればと願ったが、そうはいかず、四十八時間ぶりに外に出たときには足元がふらつく。試験監督をなんとか無事に終えて帰宅すると、症状がさらに悪化している。これほど苦しい状態に陥ったのは、このブログを始めた二〇一三年六月以降初めてのことだ。たった三日でこれほど体力を消耗してしまったことにショックを受ける。回復にはまだ二三日かかるだろう。明日のストラスブール日本総領事公邸での賀詞交換会は欠席せざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


久しぶりの体調不良

2024-01-16 23:59:59 | 雑感

 昨日、午後ニ時過ぎに帰宅してから、妙に体がだるく、長旅直後のいつもの疲れ方と違うことに気づく。いつもなら帰宅直後に荷を解いてすぐにすべてを所定の位置に戻すのだが、そんな気になれない。TGVに乗車中から覚えていた違和感がはっきりと徴候として現れてきたようだ。
 九時前に就寝したが、膝関節まわりに疲労が蓄積したかのような鈍い痛みを感じ、両下肢が何度も攣り、よく眠れなかった。微熱を感じるのだが、体温計で測るかぎりは平熱の範囲内だ。
 昨日、ホテルのバーに避難する前にTGVの待合スペースで寒さに震えながら三十分ほど我慢していたのが祟ったのかも知れない。風邪の前駆症状だと思われる。こんな状態に陥ったのは六年以上前のことで、それ以後風邪一つ引いたことはなかった。
 食欲はあり、一時帰国前に買い置きしてあった長期保存が可能な食品をいつものように食べることができた。
 ここのところ、フランスは寒波に襲われており、ストラスブールの早朝の最低気温は零下五度くらいまで下がっている。日中もせいぜい二、三度までしか上がらない。今日は日中澄んだ青空が広がっていて、ジョギングには好適だったが、さすがに自重した。一歩も外出せず、映画を観たり、湯船にゆっくり浸かったり、くつろいで過ごす。
 明日は午後四時から試験監督があり、休むわけにはいかない。それまでには体調が十分に回復してほしい。今日も九時すぎには就寝する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


復路が順調すぎて駅で寒さに震え、結局ホテルのバーに避難する

2024-01-15 10:18:48 | 雑感

 搭乗便はシャルル・ド・ゴール空港に定刻よりも一時間早く6時55分に着いた。預けたスーツケースも荷物引き取り場に着いたときにはすでにベルトコンベア-から降ろされていた(誰が下ろしたのだろう?)。ここまでは完璧である。
 ただ、その分、乗車予定のTGVまでの待ち時間が延びた。発車予定時刻まで4時間近くある。しかも、今日のパリは朝の気温が1度。TGVの待合スペースはろくに暖房も効いておらず、寒さが身に染みる。おまけに待合スペースの半分が改装中で、通常の半分の広さしかない。一本前の8時59分発のストラスブール行きに乗れないかと駅内の端末で検索してみたが、空席無し(ホントかね?)。
 寒さに震えながら3時間以上じっと待っているのは耐えがたい。待合スペースの周囲にはスターバックスなどいくつか暖房の効いたカフェなどがあるが、どこも一杯だ。
 しばらく寒さをしのげる場所を探して空港内をさまよったが、適当な場所は見つからず、結局シェラトンホテルのバーに避難する。もちろん、ただというわけには行かない。が、簡単な朝食を取りながら3時間、暖房のよく効いている広々とした静かなバーで座り心地のよいソファーで快適に過ごせるのだから、15€というのは十分リーズナブルな料金だと思う。
 ここであと45分ほど過ごす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最初で最後

2024-01-14 23:23:48 | 雑感

 本日深夜、正確には15日午前一時発のエール・フランスAF293便でフランスに戻る。明日月曜日午前7時55分シャルル・ド・ゴール空港到着予定。昼過ぎにはストラスブールに帰り着けるはずである。
 今週は試験週間で、私の授業の試験は水曜日と金曜日にそれぞれ一つずつある。その二つの試験の採点と明日15日が締め切りの修士一年レポートの評価を終えれば、前期に関するすべての職業的義務を終える。
 それ以後も授業外の責任は継続して引き受けるが、八月末まで大半の時間を研究に捧げることができる。「捧げる」とは大げさに聞こえるかも知れないが、本人としては大真面目である。と同時に喜びも感じている。これが最初で最後だ。
 一日一日を大切にしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


これからどのように協力関係を発展させていくかという課題

2024-01-13 23:59:59 | 雑感

 二日間に渡る日仏シンポジウムは無事終了した。
 主催者である早稲田大学からストラスブール大学日本学科への連絡が諸般の事情で10月後半になってからと遅く、ストラスブール大学側から見込める参加者が当初から少なく、参加を打診された本人が希望しても、日本への渡航費の捻出が難しかったり、すでに一月の予定が決まっていたりして、12月も下旬になってようやく参加者が確定するという有様だったのだが、全体として内容豊かなシンポジウムであったし、よりワークショップに近い形でという主催者の意図もある程度は実現されていた。
 すでに二十年の歴史がある早稲田大学演劇博物館とストラスブール大学日本学科との学術的な協力関係をさらに発展させていきたいという点では双方異存はない。ただ、次回はストラスブールでの開催となると、とりわけ財政上の困難に直面せざるを得ず、見通しは必ずしも明るくない。しかも、日本学科が中心になるよりも、芸術学部演劇学科が中心になったほうがより密な協力関係が構築できるだろうというのが日本学科長と私の共通した見解で、その上で、どう協力関係を学際的に展開していくかが今後の課題となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


日仏シンポジウム「病とその表象」プログラム

2024-01-12 23:59:59 | 雑感

 今日明日のシンポジウムのプログラムは一般公開されているので、ここに転載します。特記なき場合の発表者の所属は早稲田大学です。今日の発表は、いずれも興味深いものでした。私の発表も意外にもわりと好評でした。

2024年1月12日(金)
10:00〜12:00 分科会I「演劇・舞踊」(座長:藤井慎太郎)
・關智子(文学部講師(任期付))「病への眼差し―サラ・ケインの作品における病の体験」
・関根遼(文学研究科博士後期課程)「村川拓也作品における介護の表象」
・近藤つぐみ(文学研究科博士後期課程)「舞踊史における病める身体の排除と表象」

13:30〜14:30  基調講演
・竹本幹夫(名誉教授)「能と病」

14:40〜16:00   分科会II「文化」(座長:竹本幹夫)
・黒田昭信(ストラスブール大学准教授)「なつかし- nostalgie - Sehnsucht ― 現存在分析のための比較的考察」
・山吉頌平(文化構想学部助手)「利用される疫病―泰澄伝に見える奈良時代の疱瘡流行―」

16:30〜18:30  分科会III「文学・アニメーション映画」(座長:ルシーニュ=オドリ)
・エヴリーヌ・ルシーニュ=オドリ(ストラスブール大学准教授)「『枕草子』における病―叙述表現と映像表現の相違について」
・ヴィクトワール・フユボワ(ストラスブール大学准教授、リモート参加)「ロマン主義の病とその読書療法
・イラン・グェン(INALCO博士課程、リモート参加)「「祈りのように」響く映画:岡本忠成『南無一病息災』(1973年)」

2024年1月13日(土)
10:00〜12:00  分科会IV「歌舞伎」(座長:児玉竜一)
・児玉竜一(文学部教授)「歌舞伎・文楽と病」
・陳夢陽(文学研究科研究生)「疫病流行下の歌舞伎狂言「傾城天羽衣」をめぐって」
・高橋和日子(文学研究科博士後期課程)「近世期の歌舞伎における佯狂の表象―一条大蔵卿と蘭平を中心に―」

13:30〜15:30  分科会V「フランス文学・文化」(座長:オディール・デュスッド)
・宮川知子(文学研究科博士後期課程)「ブリヤ=サヴァラン『味覚の生理学』における「生理学」と「病」について」
・谷澤真優(文学研究科博士後期課程)「バルザックにおける「社会の病」と相続」
・林明日佳(文学研究科博士後期課程)「エミール・ゾラ『愛の一ページ』考察——病巣としてのパリ」

16:00〜18:00  分科会VI「フランス演劇」(座長:藤井慎太郎)
・シルヴァン・ディアズ(ストラスブール大学准教授)「症状=徴候としての演劇(症例=事例ワジディ・ムワワド)」
・笠原志保(ストラスブール大学博士課程)「燃ゆる記憶——現代演劇におけるアルツハイマー病の表象」
・藤井慎太郎(文学部教授)「病むほどに日本を——太陽劇団『金夢島』における病の表象」