内的自己対話-川の畔のささめごと

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抜書的読書法(哲学篇22)― モンテーニュ(十五) 死の学びとしての哲学(2)

2015-05-26 00:00:00 | 読游摘録

 ストア派の哲学徒として、モンテーニュは、死は避けがたいのであるから、むしろそれに近づき、それを手懐けなくてはならない、と主張する。この死の馴致は、死という観念の解体を通じて為される。モンテーニュは、古代ローマ人たちの例を引く。彼らは、死を別の仕方で言い表すことで死の観念の弱体化を図る。例えば、「彼は死んだ」と言うかわりに、「彼は生きた」と言うように。
 死は常に身近にあり、いつ訪れるとも知れない。モンテーニュは、そのことを歴代フランス王たちなど著名人たちの死に方を叙述することで例証する。例えば、一頭の豚のせいで騎乗していた馬から転落し、わずか十五歳で亡くなった、ルイ六世の長男フィリップ。亀を岩の上に落として、その甲羅を割って食べるという習性を持つヒゲワシが、岩と間違えてその頭の上に亀を落としたことが原因で亡くなったと伝説が伝える、古代アテナイの三大悲劇詩人のひとりアイスキュロス。このような列挙を通じて、いかに死が突然に思いもかけぬ仕方で訪れうるものであるかを具体的に示す。
 これらの叙述によって、モンテーニュは、自分から死に近づき、それを馴致するという、ストア派の哲学的実践(精神的実践)の一つを自ら実行する。自分がもし作家だったならば、これらそれぞれに異なった不慮の死についての叙述を集成した本を一冊書くだろうとも言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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