内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

当たり前にあるはずのものなしで日常を過ごすという「実験」

2023-01-02 23:59:59 | 雑感

 今日の話題は、ほんとうは具体的に事例を挙げて話さないとよくわからないことなのですが、今はまだ私自身が日常生活の中で「実験」中のことで、いまだ結論を出すには至っていないので、ぼかした話になります。
 今日の私たちの日常生活にとってなくてはならないいわゆるライフラインを構成している要素として、常時供給される安全な水道水や安定的に十分に供給される電力とガスなどがあります。災害などによってある地域全体でこれらの要素が供給できない状態に陥ると、公権力が緊急措置を講じます。それによって急場を凌ぎつつ、復旧を急ぐというのが一般的な構図です。
 このような事態に遭った当事者たちからよく聞くのは、こうした生活に不可欠な要素は日頃あまりにも当たり前のように供給されていたので、それらが得られない状態に陥ってはじめてそのありがたみがわかったというたぐいの話です。それは至極もっともな話だと私も思います。幸いなことに、私自身はそういう被災者になったことはありませんが、なったときの多大な困難は想像することができます。
 上に挙げた三つの要素のうち、水道水が止まってしまったことは、数時間であれば実際に経験したことが何度かあります。ただ、これは工事のためであり、予告されていたことなので、事前に対処の準備をすることができましたし、ちょっと不便だったなあという程度の話です。でも、それらの経験は、水道水が止まってしまった場合にどのような困難が待ち受けているか想像する機会を与えてくれました。
 電気に関しては、幸いなことに、長時間に渡る停電を経験したことはありませんが、これは大変だろうとはすぐに想像がつきます。自家発電装置を常備しているならばともかく、それなしでは日常生活の多くの部分がたちまち機能不全に陥ります。電気なしのキャンプ生活の経験はありますが、それはせいぜい数日のことでしたし、予めそのための準備を整えてしたことですから、普段の日常生活とは話が違います。電気のない日常生活の大変さはちょっと私の想像を超えています。
 ガスに関しては、水道と電気に比べれば、依存度にかなり幅があります。例えば、フランスでは、調理にはガスを使わないほうが今では多数派です。そもそも台所にガス栓がないことも特別なことではありません。私が現在暮らしているアパートもガス栓はどこにもありません。以前住んでいたパリのアパートもガスはまったく使われていませんでした。この場合、ガスの供給が居住地区で止まったとしても、さして日常生活に直接的な影響はありません。しかし、それは電気への依存度がその分大きいことを意味してもいます。
 災害あるいは事故によって上記の三要素の供給が停止してしまった場合を想定して、そのための備えをしておくことは決して無駄ではないでしょう。しかし、具体的に何をどう準備すればよいのかは、経験がないとよくわかりませんね。
 実は、ちょっとしたことがきっかけで、ガスが使えない生活を一月半ほど続けています。我が家にとってガスが使えないということは、アパートの大型のガス湯沸かし器が使えないということです。そのため、水道の蛇口からもシャワーからも温水が出なくなっただけではなく、この湯沸かし器の温水を各部屋のラジエーターに回流させる方式の暖房システムも使えなくなりました。これから本格的な冬を迎えようというときにです。当然、すぐに修理してもらうために各所に連絡したのですが、それに対する先方の反応が鈍かったことで、ちょっと考え方を変えてみました。
 当たり前に使えていたものが使えなくなったとき、それが引き起こす困難をどのような工夫で乗り越えていくか、ちょっとゲーム感覚で実験してみることにしたのです。
 最初は、なんでこんなバカバカしいことを、と思わなくもなかったのですが、二週間、三週間と経つうちに、「そうか、ここはこうすればいいのか」、「なんだ、これで十分いけるじゃないか。いや、こっちのほうがエコロジカルでさえある」、「いや、しかし、これはこれで他のエネルギーへの依存度を強めているな」等々、いろいろ気づかされるのですね。それがけっこう面白いのです。
 というわけで、もうしばらく「実験」を続けてみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あけましておめでとうございます。 (yuki-omolola)
2023-01-03 11:09:14
SDGsにも通じる試みですね。
工夫や新発見を楽しみながら実験を続けて下さいね。
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お言葉ありがとうございます (kmomoji1010)
2023-01-03 17:09:04
励ましのコメントありがとうございます。当該記事を少し増補したヴァージョンをアップしました。
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