内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

アルザス ・欧州日本学研究所研究集会第1日目

2013-09-28 06:28:00 | 雑感

 今日(27日)が2日間の研究集会の第1日目。朝パリ東駅から定刻通り6時55分のTGVで出発。コルマールには9時50分着。駅には研究所の職員がすでに待っていてくれた。すぐに会場へ車で向かう。会場に到着したときは、ちょうど集会が始まったばかりのところ。当初の予定では発表者4名だったが、ポーランドから参加する予定だった研究者が健康上の理由で急遽参加をとりやめざるをえなくなり、発表は3人。しかし、その分質疑応答の時間をたっぷりとることができたのはよかった。会場には、発表者6名、議論の相手として来ている研究者3名、研究所職員5名、ストラスブール大学日本学科の教員4名、ドイツ・ボッフム大学日本史学科の教員夫婦の他にストラスブール大日本学科修士以上の学生たちも10人ほど来ていて、交通の便がいいとは言えないところにある研究所であるにもかかわらず、結構な聴衆であった。
 最初の発表は万葉集の恋の歌についての発表。私が遠い昔の若い日に万葉集を勉強していたことは8月6日の記事「私撰万葉秀歌(1)」で話題にした(その後、このテーマでの続編を書く時間的・精神的余裕がないのを残念に思う。目標は百首と高く掲げているのだが)。当然のこととして、楽しみにもしていたし、実際とても興味を持って耳を傾けることができ、質問もいくつかした。2つ目は日本哲学研究で中心的なお仕事をされてきた先生による「自然の美、作為の美」についての発表。まず岡倉天心、西田幾多郎、深田康算等の考えを紹介した後、柳宗悦の「無事の美」と芭蕉の「造化」が取り上げられた。この発表も興味深く聴くことができ、いろいろと質問したかったのだが、時間の制約もあり、一つしか質問できなかったのは残念だった。昼食の席では、最初の万葉集の発表をなさった先生と隣り合わせになり、比較的最近研究成果に基づいた、古来名歌とされてきた志貴皇子の歌の読み方の変更についてお尋したら、まさに先生がその新しい読みを提示されたご本人で、貴重なお話をうかがうことができた。午後は、ヨーロッパ中世史をご専門とされる先生による中世末期の日本とヨーロッパにおける自律したローカル・コミュニティの成立過程についての比較研究の発表。私にとってはこれが一番面白かった。明日の自分の発表内容の背景となっている問題意識とぴたりと重なったからだ。私の考えたいことは、自律したローカル・コミュニティの形成の原理とモメント、そしてその地理的条件ということなのだが、それについて豊臣政権成立期の畿内の惣村の事例と南アルプスのチロル地方における村組織が比較されたこの発表は、具体的な事例を提供してくれていたのだ。発表を聞きながら、自分が概念操作のレベルで考えていたことが、歴史的事実によって具体的裏付けを与えられ、それによって私自身の理論的構成がにわかに生命を与えられたかのような感をもった。
 発表後の夕食はコルマール市内のレストランで。総勢17名の賑やかな会食。楽しい数時間を過ごした。さあこれから明日の自分の発表の準備にとりかかる。聴衆の顔ぶれがわかったのでそれに合わせて発表内容をどう変えるか考える。


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