内的自己対話-川の畔のささめごと

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ピエール・フルニエ&フリードリッヒ・グルダ演奏『ベートーヴェン・チェロ・ソナタ全集・変奏曲集』― 音楽を聴く喜びで心が満たされる

2023-02-21 06:44:36 | 私の好きな曲

 昨日の記事で話題にしたようなわけで音楽鑑賞をより良い音質環境で再開することができたので、「私の好きな曲」(このカテゴリーの記事の中には、むしろ「私の好きな演奏」と題した方が適切な記事も含まれます)について、この機会に聴き直した曲を中心に記事にしておきたいと思う。
 交響曲が嫌いなわけではなく、大好きな曲は少なくないけれども、あまり大きな音量で聴くわけにもいかず、そうするとやはり十分に細部まで味わって鑑賞するには至らず、聴く頻度はそれほど高くない。声楽曲は歌手の声質についての好き嫌いがかなり激しく、いつ聴いてもいいなあと思えるほどのお気に入りは数少ない。よく聴くのは、器楽曲と室内楽曲と小規模な管弦楽曲。器楽曲ではピアノ曲のCDが圧倒的に多い。ついでチェロ。今回購入したマランツの装置とJBLのスピーカーはチェロとの相性が特にいいようだ。
 ベートーヴェンのチェロ・ソナタはどれも好きだけれど、特に有名な三番(作品69)の演奏では、フルニエ&グルダの演奏が一番好きだ。2014年10月19日の記事ですでに話題にしたことだが、そのときは別の話題(いやいややっている採点作業のこと)が中心だったので「雑感」として投稿した。「私の好きな曲」のカテゴリーの記事として、この曲に関する部分だけここに再掲する。

今聴いているのはベートーヴェンのチェロ・ソナタ全五曲(CD二枚組であるから相当な演奏時間であることは言うまでもない)。演奏はピエール・フルニエとフリードリッヒ・グルダ。こういうときには軽快でエレガントで愉悦感のある演奏がいい。ロストロポーヴィチとリヒテルの演奏だと、これはもう大相撲千秋楽横綱同士の優勝がかかった結びの一番のような演奏(特に第三番)で、息抜きとして気軽には聴けない。桟敷席に腰を据えて、固唾を飲んで勝敗の行方を見守るような気持ちで聴かないといけない(そんなこと誰からも頼まれていないが、そんな気持ちになるのである)。同じフルニエだったら、ケンプとの演奏もあって、こっちも巨匠同士ではあるが、演奏者自身が音楽の愉しみを味わいながらの演奏で、決して腹に持たれることのない良い演奏だ。でも、渓流を跳ね泳ぎまわる若鮎のようなグルダのピアノ伴奏が今日の気分には合っている。フルニエはいつだってエレガントな貴公子。

 1959年の録音だが、なんといつまでも新鮮でしなやかで輝かしい演奏なことだろうか。同曲の好演・秀演はあまたあれど、円熟した巨匠と若き天才の一期一会がもたらしたこの名演奏を凌駕する演奏は私にはありそうもない。それでなんの不満もない。今回もまた、この唯一無二の演奏は私の心を音楽を聴く喜びで満たしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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