内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

地球・大地・世界、あるいは地球の住まい方 ― ミッシェル・リュソー『世界の到来』

2019-09-04 15:15:11 | 読游摘録

 月曜日の発表では、「大地への回帰」というテーマをめぐって提起する問題をできるだけ明確に定式化するために、Michel Lussault, L’avènement du monde. Essai sur l’habitation humaine de la Terre, Seuil, coll. « La couleur des idées », 2013 が提案する近接概念の三分法を枠組みとして使った。
 リュソーは、「地球 la planète」「大地 la Terre」「私たちの世界 notre Monde」の三つの概念を明確に区別して使用することを提案する。
 La planète は、そこに棲まう諸生物の世界とそれを取り巻く無生物世界とを統べている生物・物理学的な法則に従ってすべての変化が起こる惑星としてそれを捉えるときに使用される概念である。その生物には人間も含まれるが、あくまで生物学的な対象としてである。
 La Terre は、人間の「住まい」としての大地である。単にその一部が人間によって占められているというだけでなく、人間による多様な文化、想像の産物、イデオロギー、地球を様々な仕方で捉える能力もそこには含まれている。一言で言えば、人間の生活空間として変容された地球のことである。
 Notre Monde とは、外部から一つの全体として捉えられた地球のことである。大地との違いは、大地が人間によって住まわれていない野生の自然もまだ残っている広大なものであったのに対して、私たちの世界は、外から、つまり宇宙空間から、一つの統一体としてみられた地球である。私たちの世界は、もはや自然と文明とを区別することはできず、人間の諸活動によって構成された一全体として 、地球全体を覆う一つの社会空間として、自己自身を認識している。そればかりか、私たちの世界は、地球の外へと拡張され、地球を外から観察することができるようになっている。
 このような時代に生きている私たちが大地への回帰の可能性ということを問題にするとすれば、上掲の三つの概念を用いて、「地球上の私たちの世界において生きながら、いかにして大地へと回帰することができるか」という問いを立てることができるだろう。












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