内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

ドミニック・ジャニコー『ラヴェッソンと形而上学 ― フランス・スピリチュアリスムの一つの系譜学』

2023-01-12 11:59:59 | 哲学

 フランス近現代哲学を主たる研究分野とする研究者やそれを専攻する院生、特にフランス・スピリチュアリスムに興味がある人たち、フランスにおけるヘーゲル研究を通覧している人たち、フランス現象学の神学的転回という話をどこかで聞いたことがある人たち、フランスにおけるハイデガー受容について関心がある人たちなどは、ドミニック・ジャニコーの名前はよくご存知か、少なくとも上掲のそれぞれのテーマで重要な著作をものした哲学者として知っているだろう。
 しかし、日本語訳は『フランス現象学の神学的転回』(日本語訳のタイトルは『現代フランス現象学―その神学的転回』文化書房博文社、1994年) しかない。管見の限りでは、今後も他の著作が訳される気配はなさそうである。せめて Ravaisson et la métaphysique. Une généalogie du spiritualisme français, Vrin, 1997 くらいは訳されてもよさそうに思う(だったらお前がやれってか)。本書の初版は1969年に刊行され、翌年、アカデミー・フランセーズのボルダン賞を受賞している名著である。
 博士論文を書いているとき、本書は、博論の内容に関わるところで参照しただけでなく、私にとってはまさに論文のお手本だった。書誌的にきわめて厳密、論の運びが鮮やか、批判の刃の切れ味が実に良く、カフイフモノヲワタシモカキタイと身の程知らずにも憧れたものである。そして、今も憧れつづけ、人生ダケガ黄昏レテユク次第である。トホホ……。
 明日から気を取り直して、本書を読み直していこう。