内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

二つの異なったコースの学生たちの答案を採点しての感想

2021-12-16 23:59:59 | 講義の余白から

 今日は文字通り朝から晩までずっとメディア・リテラシーの試験答案の採点をしていた。フランス語での小論文。長さとしては、日本語に訳したとすれば1200~1500字くらいになるだろうか。読むのに結構時間がかかった。
 この授業は一時間で、履修コースごとに二グループに分けて行っている。正式に分けるにはそれだけ予算が必要なわけだが、そう簡単には予算がつかないので、私個人の意思で一時間分ただ働きしている。学生たちにも私にもそのほうが学習条件として好ましいから少しも苦痛ではない。
 一グループは、日本学科の学生たち二十三名である。学生間の学力に大きな開きがある。それが論文の出来にそのまま反映している。見事な文章で設問に対して的確な答えを書ける学生がいる一方、漠然としていてありきたりなことを稚拙な文章でしか書けない学生もいる。
 もう一つのグループは、英語・日本語併修コースの学生たち二十二名。彼らは日本語力では日本学科の学生たちに明らかに劣るが、概して知的レベルが高く、文章力もある。このコースは、二つの言語と経済・商法・国際関係など実践的な科目を同時に学ぶ学科に属している。この学科は書類選考があるので、バカロレアに合格しても入学でるとはかぎらない。人気の高い学科で、選考で篩い落とされる学生の方が多い。
 このコースには、一年から三年まで、フランス語のライティング実習の授業がずっとある。この授業で学生たちはとても厳しい訓練を受ける。だから三年生まで上がって来られた学生たちは相当に文章力が鍛えられている。それが如実に答案に反映されている。
 再来年度から実施される予定の次期カリキュラムでは、日本学科でもフランス語の授業を導入すべきだと私はかねてより思っているが、総授業時間数には制限があるから、多分無理だろう。しかし、日本語をしっかり身につけるためにもフランス語で書く力(すなわち思考力)を鍛えることは必要だと確信している。